22インチのフットボール

備忘録を兼ねて試合を振り返ります

2022年07月

川崎にとって新型コロナウイルスの影響が自チーム内に大きく出たのは初めてでした。陽性者が続出し、試合開催も危ぶまれた中で選手達は最後まで戦い抜きました。

スタメンこそ全員が経験済みのポジションに違和感なく11人並ぶことができたものの、ベンチ入りは5人。しかも本来のポジションで言えば、フィールドプレーヤーは山村和也と宮城天だけでした。すなわち、よほどのことがない限り、交代枠は実質2しかありません。

必然的に大半の選手がフル出場を余儀なくさせる上、簡単には負傷することも許されない状況に陥っていました。

そんな中で立ち上がり20分は、人数がいるのに守り切れずあっさりと2点を献上しました。結果としてこの連続失点が響きます。その間、家長昭博のクロスをレアンドロ・ダミアンがバックヘッドでゴールを狙うも、西川周作に阻まれました。

以降はボール保持の時間が長くなっていき、リズムも生まれましたが得点には結び付きません。マルシーニョは酒井宏樹に封じられ、左からの攻撃が繰り出せませんでした。

また、瀬古樹のスルーパスを脇坂泰斗が懸命に生かしてポケットからレアンドロ・ダミアンにつないだシーンは、シュートの当たりが弱く、西川に止められました。

後半も試合の主導権は川崎が握っていました。65分頃からは試合の終わりが見えてきたこともあってか、勢いも増してきます。

73分、鬼木達監督はマルシーニョを下げて宮城を入れます。宮城はシュートの意識高くプレーしており、苦しいチームのために結果を出そうとする必死さが前面に出ていました。

78分には遠野大弥に代えて山村を投入。ユーティリティで頼れる背番号31は、最前線にポジションを取り、レアンドロ・ダミアンと2トップを形成します。

その山村が中央でクロスを求める仕草を見せると、宮城がそこへ放り込みます。山村は競り負けたものの、セカンドボールの争いの中で橘田健人が柴戸海にユニフォームを引っ張られてPKを獲得しました。これを家長が冷静に沈め、追撃の1点を奪います。

ただ、直後に関根貴大のドリブルを許し、山村が懸命に戻るも及ばず、最後は岩尾憲にゴールを許してしまいました。試合は再び2点差となります。

残された時間が少なくなっても川崎は最後の力を振り絞って攻め続けました。アディショナルタイムには家長のクロスをレアンドロ・ダミアンがダイレクトでオーバーヘッド。西川に触られ、惜しくもクロスバーを叩きます。

3-1で敗れたこの試合に関しては、プレー続行が不可能になるような深刻な負傷がないまま90分を終えられたことをプラスに考えたいところです。ルヴァンカップを含めた今後の過密日程を果たして乗り切れるかどうかはわかりません。危機的状況はしばらく続くかもしれません。


3年前のチェルシー戦よりもはるかに落ち着かない空気に満ち溢れていた国立競技場。その64,922人の大観衆を前に川崎の選手は最後まで戦う姿勢を貫きました。

川崎にとってこの試合最大のトピックは、ジェジエウの実戦復帰でしょう。45分間のプレータイムの中で持ち味のスピードとパワーを存分に発揮しました。頼れるセンターバックの帰還は、残りのシーズンに向けての大いなる好材料です。

パリと川崎の立場は当然異なり、シーズン前でありなおかつ指揮官が変わって新体制となった前者と、シーズン中であり、先週末の試合が中止になって比較的フレッシュな状態の後者という違いがまずあります。

それゆえ代表組不在ながら、現状のベストメンバーで臨んだ川崎の方が機動力では優位に立てました。早速、立ち上がりから家長昭博、マルシーニョ、そしてレアンドロ・ダミアンがハイプレスを見せます。

とはいえ主導権自体は個の力で上回るパリに握られてしまいます。細かい局面局面で後手を踏む格好となり、たとえばトップ下のリオネル・メッシにはアンカーの橘田健人が翻弄させられました。

そうした劣勢の中でも川崎は選手達がおなじみのプレーを随所に披露します。チャナティップ・ソングラシンは低い姿勢のドリブルでボールをキープし、レアンドロ・ダミアンはジャンルイジ・ドンナルンマのポジションを見てロングシュートを放ちました。

チームとしては相手3バックの横、アクラフ・ハキミの裏のスペースを活用。マルシーニョを走らせる攻撃に活路を見出そうとします。残念ながらこの形で枠をとらえた際どいフィニッシュには至りません。

決定力ではパリが勝り、メッシに右足での先制弾を許します。シュートは登里享平に当たってコースが変わったため、ネイマールやキリアン・エンバペ相手に再三好セーブを見せていたチョン・ソンリョンも及びませんでした。

2失点目もメッシが司令塔となって生まれます。いずれのゴールもウイングバックが絡んでいたため、パリとしては新しいやり方が一つの形になったと言えます。

後半は両チームともメンバーが大幅に変わり、パリは60分過ぎまでに主力がごっそり抜けました。ただ、ベンチメンバー主体となったことで機動力は上がり、川崎のボール保持時は人につく守備をしていました。

川崎は84分にコーナーキックの流れで瀬古樹のアシストから山村和也が1点を返し、残り時間も手を緩めることなく同点に追い付くべくプレーを続けました。

加えて最後は高井幸大、永長鷹虎もピッチに立ち、このゲームを経験することができました。スコアの上では負けましたが、真剣勝負ではないとはいえ川崎が得るものは多かったはずです。


ミッドウィークのサガン鳥栖戦が中止となり、試合間隔が1週間空いた川崎。ここのところ流れが悪く、切り替えるにはいい期間になったはずです。ただ、鬼木達監督がベンチ入りできないため、寺田周平コーチのもとで戦うこととなりました。

この日はアンカーの位置から絶妙なパスを連発する大島僚太が不在でそこに橘田健人が入り、レアンドロ・ダミアンとマルシーニョがスタメンに起用されました。

すると先発起用に応える形で6分に幸先よく先制に成功します。チャナティップ・ソングラシンの浮き球のパスに反応したマルシーニョが右足アウトサイドでパスを出し、レアンドロ・ダミアンが合わせました。

直後、奥野耕平が脇坂泰斗に向かって足を上げて退場処分になり、川崎にとっては追い風が吹いた格好になります。

数的不利になったガンバが4-4-1、4-3-2とシステムを変える中で、ホームチームは意に介せず着実に得点を重ねました。

特に躍動したのが脇坂でした。マルシーニョの得点につながる鋭い縦パスをレアンドロ・ダミアンにつけただけでなく、自らもマルシーニョがスルーした佐々木旭のパスをダイレクトで合わせてゴールを奪いました。

もう一人のインサイドハーフ、チャナティップは鋭い動きを見せてディフェンスで貢献します。チーム加入当初は空回りもあったのか、ファウルとそれによる警告が目立ちましたが、それもなくなってきました。

36分には脇坂のコーナーキックが流れると、家長昭博が右足での美しいバイシクルを決めます。早くも4-0とし、前半の段階で試合を決めてしまいました。

よほどのことがなければ勝ち点を落とさないシチュエーションとなったためでもあるでしょうが、後半はここ数試合同様に攻撃の迫力がトーンダウンしました。

加えて東口順昭の好セーブが光り、橘田のミドルやレアンドロ・ダミアンのヘッド、チームが連動して放った遠野大弥のシュートも防がれてしまいました。また小林悠のシュートはクロスバーを叩きます。

とはいえ、大きな負傷を負った選手が出ないでクリーンシートで試合を終えられましたし、知念慶と長期離脱していた登里享平が途中出場で復帰を果たすという明るいトピックもありました。

もちろん欲を言えば、今後への大きな弾みとすべく5点目を取りたかった後半でした。最後の最後まで強烈なインパクトを残せれば言うことなしだったはずです。


引き分けに終わった前節と同じスタメンで臨んだ川崎ですが、遠野大弥とチャナティップ・ソングラシンのポジションを入れ替え、遠野を左ウイングに配しました。

川崎のビルドアップの際、ブルーノ・メンデスと山田寛人がアンカーの大島僚太の脇に立って、谷口彰悟と車屋紳太郎を牽制しますが、大島は柔軟に移動。時にはセンターバックの間に立って数的優位をつくりだします。

自陣でボールを引っ掛けられるケースは少なく、川崎は主体的にゲームを進めます。開始4分には大島のパスを起点に脇坂泰斗と家長昭博が連続してシュートを放ちました。

その後、ボールを保持しながら15分ほど攻めあぐねていたものの、再びゴールに迫るシーンが増え始めます。

大島中心に流れをつかんでいた川崎は、36分に脇坂のコーナーキックを谷口が合わせて先制しました。蹴る直前にショートコーナーをやめたためにチャナティップがセレッソゴール前を横切り、それが相手の視界に入って邪魔をする格好となりました。

しかしここからセレッソの逆襲が始まります。立て続けにコーナーキックを獲得したあたりから勢いを増し、後半になってもそれは衰えませんでした。

車屋の腕にボールが当たったシーンは、VARによってハンドによるPKとはならなかったものの、セレッソサイドはヒートアップ。得点への執念が強まりました。

結果、距離はあっても正確なキックを繰り出せる鈴木徳真のリスタートから2失点を喫しました。

逆転弾をもたらすきっかけとなった佐々木旭のファウルは、場所や時間帯を考えてもいらないファウルでした。鈴木のキックを考えれば、ゴールから遠い位置でも余計なフリーキックを与えない必要があります。

もちろん失点しても相手より多く得点を重ねられればいいのですが、川崎は時間の経過とともにまたも失速しました。攻撃の安定感、テンポが失われていき、鬼木達監督が選手交代と配置変えを行っても改善されません。

たとえば、交代によって橘田健人は左サイドバックからインサイドハーフに変わりますが、慣れないポジションをこなしていたがゆえに持ち前の機動力が失われていました。

また、79分以降は宮城天を入れたことでマルシーニョを右ウイングに移動させるも、右では躍動感が出ず、イージーなミスも犯してしまいます。

リードを許した後は残り少ない時間でパワープレーにシフトし、山村和也も前線に入れます。最低でも勝ち点1を持ち帰りたい試合でしたが実りません。

今節を終えて、横浜F・マリノスと鹿島アントラーズがともに勝ったため、両者との差は開く一方です。優勝争いから脱落しないためには、これ以上勝ち点を落とすわけにはいきません。


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