22インチのフットボール

備忘録を兼ねて試合を振り返ります

2022年06月

リーグ戦においては前節から継続された前半の充実ぶりにもかかわらず、次第に失速してしまい、前回対戦とは逆に川崎が先制しながら追い付かれる展開となりました。

前半は攻撃もさることながら、守備面の激しさが効いていました。インサイドハーフを務めた脇坂泰斗、遠野大弥のプレスバック、そして相手陣内深い位置でボールロストした際のカウンタープレスに迫力がありました。加えて左サイドバック起用となった橘田健人のボール奪取能力の高さも随所に見られました。

こうした激しさゆえに時折見せる磐田のカウンターを確実に封じることができ、シュートも打たせませんでした。トップに入った杉本健勇にも仕事をさせません。

15分過ぎ、最初のコーナーキックを獲得したあたりから川崎は攻勢に出ます。磐田が5-4-1で構えていても動じることなく、大島僚太、チャナティップ・ソングラシン、家長昭博を中心にパスを入れていきました。

強気の姿勢を貫く中で33分に谷口彰悟の背後を狙った浮き球に抜け出した山根視来が、小林悠へのラストパスにも見えるフィニッシュで先制します。裏を狙うボールはあまり繰り出していなかったため、非常に効果的でした。

後半になると磐田は大森晃太郎を前に出して5-3-2で構えだします。これにより谷口、車屋紳太郎へのプレッシャーが強くなりました。

こうなると逆に磐田の2列目が3枚と前半よりは手薄になるのですが、そこを突いて押し込むことはできませんでした。

55分、中盤で遠野が引っ掛けたことでチャンスが生まれます。大島のパスを受けて運んだチャナティップのシュートは惜しくもポストを叩き、追加点は奪えません。

60分過ぎからベンチが動き、遠野、脇坂、チャナティップがピッチを去りました。残り30分を切ってフレッシュな選手によって活性化を図りたかったはずですが、中盤の強度は落ちてしまいます。ただし点差はわずかに1しかありません。

最後にジョアン・シミッチとレアンドロ・ダミアンが投入されますが、タッチラインにボールを出してプレーを切るタイミングが遅れてしまいます。

些細なズレが見られた数分後、磐田のコーナーキックになります。遠藤保仁の蹴った絶妙なボールに伊藤槙人が見事に合わせて同点に追い付かれました。シュートはチョン・ソンリョンの伸ばした腕を越えてゴールネットに吸い込まれます。

残り時間が5分となり、逆転の芽が出たことで磐田が攻めに出てきます。川崎はセンターバックコンビを中心にしぶとく守りました。

相手が出てきたため、引っ繰り返せればチャンスが生まれやすい展開に変わるも、決定機は磐田に訪れます。ジャーメイン良のヘッドはポストに救われました。

さらに大井健太郎がベンチから前線に送り込まれるも、川崎は仕事をさせずにタイムアップを迎えました。

ミッドウィークの天皇杯敗退の悪い空気を払拭したいゲームでしたが、勝ち点1を獲得するにとどまりました。


中断前に連敗を喫した悪い流れの中で、鬼木達監督は人選を変えてきました。負傷から復帰した大島僚太とチャナティップ・ソングラシンをスタメン起用し、レアンドロ・ダミアンとマルシーニョはベンチからのスタート。左サイドバックは佐々木旭ではなく橘田健人が起用されました。

このメンバーにしたことで、左サイドの流動性は高まりました。チャナティップはインサイドハーフがスタートポジションですが、時に大外に開くと代わりに遠野大弥や橘田がハーフスペースに立ちます。人につく守備をする札幌相手には有効な対応に思われました。

右サイドに関しては、すでに関係が構築されている山根視来と家長昭博のコンビに脇坂泰斗も絡んで攻めました。また、1トップの知念慶は前線にとどまらず、前後左右に幅広く動きます。

加えてこれまでは長くなっていた選手同士の距離感の改善も見られる前半でしたが、ゴール前での不運も重なり先制を許してしまいました。連敗中のチームにとっては嫌な流れです。

しかし、相手を押し込んだ攻撃から、ゴール前でのこぼれ球を家長が逃さず同点に追い付けたことで川崎は蘇ります。リーグ戦では得点から見放されていただけに大きな1点でした。

意気上がる川崎は後半になるとプレス強度をさらに上げます。高い位置でのボール奪取を狙って、果敢に前から追っていくようになりました。

それでも66分に福森晃斗の完璧なコーナーキックから荒野拓馬に勝ち越し点を許してしまいます。

再び重苦しくなりかけた空気を一変させたのは小林悠でした。負傷した知念に代わって入った背番号11は、失点の3分後にバイシクル気味のアクロバティックなジャンピングボレーを決めて、またも同点に追い付いたのです。

終盤にはベンチが動いて、マルシーニョ、ジョアン・シミッチ、レアンドロ・ダミアンが相次いで送り込まれました。余力十分の選手達がチームを活気付けます。

3点目、4点目は相手のミスを逃さない前線からの激しい追い込みでボールを奪い、そのチャンスを逃さずに決めて生まれました。レアンドロ・ダミアンの強烈なプレスや小林の粘りが実ります。

リードした後は福森のキックを警戒して、安易にコーナーキックを与えない守備をしました。橘田、車屋紳太郎が体を張ってゴールキックにします。

仕上げは札幌陣内からの福森のフリーキックを谷口彰悟が跳ね返し、届いたボールをマルシーニョが生かしました。マルシーニョは単独でカウンターを完結させたのです。

川崎らしい攻守がつながったプレーの連続で、リーグ戦では初めてゴールを量産しました。もちろんチョン・ソンリョンの好セーブがあったことも忘れてはなりません。

強い王者の帰還。それを感じさせる90分でした。前半戦を終えて3位ながら、首位の横浜F・マリノスとは1ポイント差での折り返しです。登里享平、ジェジエウの復帰も期待されるシーズン後半に向け、反撃の態勢は整いました。


ワールドカップ予選の重圧から解放され、パラグアイに快勝した日本。ようやく優勝経験国であり真の強豪であるブラジルとの対戦を迎えました。

ブラジル戦というと親善試合であっても勝ったことがなく、毎回いいようにやられていた日本ですが、新しい国立競技場での初戦はいつになく全員守備で耐えていました。

例えば、ビニシウス・ジュニオールと対峙した長友佑都は、本職の山根視来を差し置いての右サイドバック起用に応える働きを見せました。

ただ、主に伊東純也にボールを預けて攻め、コーナーキックを獲得するまではできるものの、セットプレーでの得点の可能性は低く、マルキーニョス、エデル・ミリトンがセンターで構えるボックスの中には簡単に入らせてもらえません。

実際、シュートストップに優れたアリソンが慌てたのは、前田大然の猛烈なプレスを受けた時だけでした。日本は最後までブラジルゴールを脅かすことができずに終わります。

一方のブラジルは25分頃からギアを上げ、ネイマールの強烈なミドルシュートが権田修一を襲ったのをきっかけに怒涛の攻撃を仕掛けました。

そこからハーフタイムまでは日本陣内でプレーが続き、実質4-2-4のアグレッシブなブラジルにほぼ一方的に攻められました。ネイマールに対してはファウルでしか止められないのです。

しかし、森保一監督は劣勢の中でも強気の姿勢を貫こうとします。ハーフタイム明けには攻守に気の利いたプレーのできる原口元気を下げて、鎌田大地を投入します。

以降も前田、三笘薫、堂安律、さらに柴崎岳と山根をピッチに送り出しました。

その中で三笘は持ち味を出すべく果敢にドリブルで仕掛けていきます。それでもチアゴ・シウバが入ったことで右サイドバックにポジションを移したミリトンに完璧に封じられました。

結局、ややペースの落ちかけていたブラジルにPKを献上。ネイマールのスローな動作からのキックに沈みました。日本にとっての歴史的初勝利はまたもお預けとなります。

ワールドカップでベスト8に進みたいのであれば、強豪相手の勝利が必須です。とりわけ今年の大会はドイツ、スペインと同居しているのですからなおさらです。

現実はと言えば、日本のシュートはわずかに4本。最多が遠藤航の2本という結果ですから、悲願達成の可能性を感じられる内容ではありませんでした。

後半のアディショナルタイムの使い方にしても、最低でも1点が欲しいはずなのに後方でボールを動かすばかりで攻めの姿勢を感じられません。結果、時間を浪費してタイムアップを迎えてしまいます。

どんな相手でも守ろうと思えば守れる、ただし得点は取れないというのでは以前からの日本と変わりません。一皮むけるにはまだまだ時間がかかりそうです。


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