22インチのフットボール

備忘録を兼ねて試合を振り返ります

2022年04月

最初に致命的なミスをしたのは蔚山の方でした。立ち上がりに自陣深い位置でセンターバックのキム・ヨングォンがパスミスを犯し、ボールはレアンドロ・ダミアンのもとへ。背番号9は逃さずシュートを放つも、ピッチコンディションが悪かったためにボールはクロスバーを越えていきます。

川崎の試合の入りはよく、快勝した前節からの流れを継続して蔚山を圧倒していた時間帯でした。それだけにこの一撃が決まっていれば、流れを大きく引き寄せられたはずです。

しかし、先制したのは蔚山でした。14分に中央を破ってバレリ・カザイシュビリとレオナルドの力で最初の決定機を生かしたのです。谷口彰悟、チョン・ソンリョンをはじめ守備陣が懸命に阻止に出ましたが及びません。

その後、川崎は二度のミスからカウンターを食らって20分と47分に失点します。佐々木旭のバックパスと橘田健人のパスを奪われました。難しいゲームが続いており、休みなく出場せざるを得なかったことが少なからず影響したのかもしれません。

得点を重ねるごとに蔚山はブロックを敷き、カウンターをちらつかせながら向かってきました。川崎はその攻略に手を焼きます。ボールが思ったように転がらないことも不利に働きました。

苦しい状況下で40分に谷口の出した浮き球をマルシーニョが折り返し、レアンドロ・ダミアンがジャンプして合わせたゴールは見事でした。チームにエネルギーを与える追撃の一発でした。それだけにミスが悔やまれます。

2点のビハインドを解消すべく鬼木達監督は70分から知念慶、レアンドロ・ダミアン、小林悠を同時期用しました。ゴール前にストライカータイプの選手を増やし、得点の可能性を少しでも上げるベンチワークでした。

そうして奪ったのが、後半アディショナルタイムのレアンドロ・ダミアンによる得点です。知念が左サイドから左足でクロスを入れ、谷口が競り勝って落とすと最後はエースがボレーで決めました。

ただ、90分を通してチョ・ヒョヌの再三の好セーブがあり、それ以上のゴールは生まれませんでした。川崎は重要な一戦を引き分けにもできずに落としてしまい、グループステージ突破は厳しくなりました。


次のラウンドに進むためには絶対に落とせない一戦でした。川崎はそれを見事な勝利で、今シーズン最高のパフォーマンスで終えてみせました。

過密日程でやり繰りの難しい中、鬼木達監督は守備の安定を確保しつつ、攻撃陣は比較的フレッシュな面々を起用しました。2試合続けてベンチからも外れていた家長昭博も初戦以来の復帰となりました。

立ち上がりはジョホールにボールを持たれたものの、10分頃から主導権を握りだします。その中で好位置のフリーキックを獲得。脇坂泰斗が直接叩き込んで先制しました。背番号14を背負った今シーズンは公式戦でゴールがありませんでしたが、大事な試合で決めてみせます。

得点は選手を変えるもので、脇坂のプレーに躍動感が生まれます。同様に広州FC戦で移籍後初ゴールを決めていたチャナティップ・ソングラシンも中盤で効果的な動きを見せていました。

チーム全体も流れに乗り、31分には家長、脇坂、山根視来が絡んで、最後は小林悠が右足を伸ばして加点します。川崎らしいスムーズな連携が発揮されたシーンでした。

さらに43分、家長に預けた瞬間に山根が猛スピードで相手最終ラインの背後をとり、パスを受けてクロスを上げると小林がきっちり合わせて3点差とします。

前半のうちにリードを広げられたことで、後半は優位に試合を進められました。無理をせずにボールを確実に動かし、ベンチワークでも余裕を持って家長を早々に休ませることができました。

スコアはしばらく動きませんでしたが、終盤になってチャナティップが存在感を増します。チーム4点目となるマルシーニョへのアシストを得意のドリブルから記録すると、88分には自らも得点を挙げました。

川崎は最後まで集中を切らさず、非常に充実した状態でライバルのジョホールを下しました。77分から中盤に入った塚川孝輝、小塚和季も安定したプレーで貢献しました。まだ決して気を抜ける状況ではないものの、次の蔚山現代戦に向けて弾みのつく快勝です。


川崎が大きく崩れることはありませんでしたが、逆に最後まで相手を崩し切ることもできず、ジョホールの選手、サポーターに手応えを感じさせるスコアレスで長い前半を終えた格好となりました。

直近の広州FC戦に先発したフィールドプレーヤーのうち、前半だけで退いた知念慶は引き続きスタメンで、ほかの9人は初戦の蔚山現代戦の先発メンバーが戻りました。

ただし、システムは橘田健人とジョアン・シミッチを横並びにするのではなく、シミッチをアンカーにして橘田が状況に応じてポジションを微調整する4-3-3をベースにします。

慣れ親しんだ形で戦い、ホットラインが確立されつつあるシミッチからマルシーニョへのロングパスを使った攻めや、ファリザル・マルリアスがゴールを離れて上がっているのを逃さないレアンドロ・ダミアンのロングシュートが見られたものの、枠をとらえた際どい決定機をつくることはできませんでした。

もっとも相手ゴールに近付いたのは、成長著しい佐々木旭のロングシュートでした。74分、マルリアスの蹴ったボールを懐に収めた左サイドバックはそのままドリブルで中央へ。脇坂泰斗がコースを開けた後に放った一撃は、惜しくもポストを叩きます。

残り5分のところで小林悠と宮城天がウイングに入り、小林は後半アディショナルタイムに車屋紳太郎のロングパスを粘り強くコントロールしてシュートに結び付けましたが、シュートは枠を外れました。

一方で前節、蔚山を倒したジョホールの攻撃に対しては警戒を怠らず、ラベル・コービン=オングのロングシュートに対するチョン・ソンリョンの好セーブもあり、得点を許しません。センターバックが山村和也から車屋に代わってもそこは変わりませんでした。

できれば勝ってジョホールを引きずりおろしグループ首位に躍り出たい試合でしたがかなわず、次節の再戦に持ち越しとなりました。


7分、脇坂泰斗のコーナーキックに知念慶が頭で合わせて先制。12分には車屋紳太郎のロングパスに追い付いた宮城天の折り返しを知念がダイレクトで合わせて加点。早い段階でなおかつ美しい形で2点を決めた後も川崎は順調にゴールを重ねていきました。

ただ、家長昭博、レアンドロ・ダミアン、マルシーニョが出場しなかった90分で、先発はフィールドプレーヤー全員を入れ替えた中、結果を残していくのは、いずれも既にチームでその力を示している選手達でした。

守備を固めるものの、そうした場合に重要となるカウンターの迫力を欠いている若手中心の広州相手で、川崎は多くの選手にプレータイムが与えられました。それでも既存の選手を脅かし、今後待ち受ける重要な試合に名を連ねるほどのインパクトを残せた選手は決して多くありませんでした。

69分に細かいステップのドリブルからゴールを奪ったチャナティップ・ソングラシンは、北海道コンサドーレ札幌で実力を証明済みですが、川崎加入後は先発出場からシーズンをスタートしたものの、チームにフィットするのにやや苦しんでいる様子でした。

しかし、自陣でのドリブルではなく、相手に脅威を与えるエリアでの突破からの移籍後初ゴールで吹っ切れたように見えました。得点後はインサイドハーフとしてゴール前に出ていくシーンが増え、宮城が下がって橘田健人が入った後は左ウイングでのプレー機会を与えられました。

また、ルーキーの五十嵐太陽は後半頭から右ウイングを務め、柔らかいボールコントロールとゴールに向かう積極的な姿勢が光りました。アシスト、ゴールといった数字に残る結果は出せなかったものの、小林悠や知念とは違うタイプとしてこれからに期待を持たせてくれました。

最終的に27本のシュートで8点を奪い、相手のシュートをわずか1本に抑えて完封勝利を収めました。圧倒と言えるほどの内容ではありませんが、序盤はロングパス主体で次第にパスのレンジを短くして崩しにかかった中で確実に大量点で勝てたことは大きいでしょう。


日本勢の先陣を切ってアジアでの本戦に臨んだ川崎は、相手にコーナーキックを一度も与えずにいながらロングボール一発に沈められかけましたが、辛くも勝ち点1を獲得しました。

川崎は6日前の柏レイソル戦と同じく橘田健人とジョアン・シミッチを横並びにした4-2-3-1でスタートします。コンディションが心配されたマルシーニョもスタメンでした。

蔚山は盛んに川崎の最終ラインの背後に勝負を仕掛け、21分には後方に下がったパク・ヨンウのロングパスをレオナルドが収めてフィニッシュ。これで先手を取ります。

川崎は4-4-2でブロックをつくる蔚山に向かって攻撃に出るも、ペナルティボックスまで近付きながら最後のところで迫力を欠いて得点を奪えません。

後半は橘田をインサイドハーフにした4-3-3に変更。選手交代をしないでシステムを変え、前方に人数をかけて相手にプレッシャーを与えます。暑さを考慮してか自重気味だったプレー強度も同時に上げます。

ただ、決して多くはなかった決定機も蔚山のゴールを守るチョ・ヒョヌに防がれました。シミッチのロングパスをマルシーニョが受けて、レアンドロ・ダミアンがシュートにつなげた場面も決まりません。

鬼木達監督は63分に柏戦で出番のなかった脇坂泰斗を遠野大弥に代えて送り込み、その6分後には3人同時交代を行います。ここで車屋紳太郎、知念慶、宮城天が入りました。知念は右ウイングに立ち、家長昭博が中盤に下ります。

最終的には小林悠もピッチに入り、しばらくして知念との2トップに変更。時間をかけてプレーする蔚山に焦れることなく、一気にボールを送り込んでゴールを奪いにいきました。

宮城の強烈なボレーシュートはチョ・ヒョヌに阻まれ、後がなくなりかけた川崎。しかし、脇坂のコーナーキックをチョ・ヒョヌがまさかのキャッチミス。こぼれ球を車屋が押し込んで同点に追い付きました。肩の負傷からの復帰を自ら祝うゴールでした。

今季、公式戦のドローゲームはいずれも相手GKのミスを突いた形になっていますが、それだけ最後までしぶとく粘り強く戦っている証でもあります。

苦労はしましたが、蔚山に勝ち点3を与えることなく試合を終えることができました。総力を挙げての90+4分の得点ということで、川崎はチームのムードも上昇するでしょう。


このページのトップヘ