22インチのフットボール

備忘録を兼ねて試合を振り返ります

2022年03月

オーストラリアとの大一番とはいえ、日本にとっては引き分けでも問題のない一戦でした。それでも84分に投入された三笘薫が2ゴールを挙げて、この試合でワールドカップ出場を決めました。

酒井宏樹の負傷があってスタメン起用された山根視来のパスが開始早々、南野拓実に通ってシュートにつながり、幸先のいいスタートを切りました。以降は大迫勇也不在で9番のポジションを任された浅野拓磨を走らせるやり方を貫き、オーストラリアのディフェンスを間延びさせます。

結果、ハイプレスのない中でミドルゾーンにスペースが生まれやすくなり、比較的楽に攻められました。ただ、南野が中央に入って盛んにシュートを放つも決まりません。一方、攻め込める裏返しでカウンターを食らいやすくもなりました。

失点を恐れて激しく出てこなかったオーストラリアの中で日本の脅威になったのは、アイディン・フルスティッチの左足でした。強烈なキックには何度も脅かされます。それでも最後の精度を欠いていたため、失点には結び付きません。

もう一つの脅威はセットプレーです。マーティン・ボイルのコーナーキックから山根のオウンゴールかと思われたシーンは、トレント・セインズベリーの権田修一に対するファウルがあったために大事には至りません。

森保一監督は64分に動きます。いつものように長友佑都に代えて中山雄太を入れるだけでなく、同時に浅野を下げて上田綺世を送り込みました。上田はコンディションのよさを感じさせ、きわどいシュートを放ちます。

時間の経過とともに日本優勢になりながらも、決定力を欠いたまま推移しました。0-0の状況で無理をして得点を狙いに行く必要がありませんでしたので、アウェイチームからは多少の余裕を感じられました。

三笘が原口元気とともにピッチに入ったのは、そんな展開で終盤に突入した頃でした。

5分後、ゲームが動きます。右サイドで山根が守田英正とのコンビネーションで抜け出し、ライン手前で懸命にマイナスのクロスを入れると、素早く反応した三笘がフィニッシュ。相手を追い詰める1点を奪います。

残り4分のアディショナルタイムはうまく相手をいなして逃げ切ればよかったのですが、90+4分、三笘は左サイドで時間を使ってキープすると見せかけて得意のドリブルを始めます。川崎フロンターレ時代から幾度となく見せてきたプレーです。

ペナルティボックスに入ると、相手はファウルを恐れて強く当たりに行けなくなり、三笘はそのままシュートまでつなげます。マシュー・ライアンはボールに触れることはできましたが、その威力に負けてしまいます。日本の勝利を確実にする、オーストラリアの希望を打ち砕く一撃が決まりました。

試合はそのままタイムアップ。序盤のオマーン戦、サウジアラビア戦を落として一時は絶望の淵に立たされた日本が、6連勝で7大会連続となるワールドカップ出場を果たしました。


終わってみれば0-2の完封勝利でしたが、またしても苦しい戦いを強いられました。加えてわずかな差ながら珍しく川崎の方が相手より走らされた90分でした。

とりわけ前半は広島の攻撃にさらされる時間が長くなりました。藤井智也、満田誠の両ウイングバックに幅を取られ、中央には人数をかけて入り込まれ、時には最終ラインの野上結貴、佐々木翔も顔を出す厚みのある攻めに手を焼きます。

橘田健人がボールを奪うよりも追いかけるシーンが多く、佐々木旭は背後を突かれることがしばしばありました。15分には藤井のクロスをきっかけに満田がフィニッシュ。チョン・ソンリョンと谷口彰悟で防ぎ切れなければ先制を許していました。

川崎は決定機をほとんどつくれず、小塚和季のサイドチェンジを起点として山根視来からレアンドロ・ダミアンへつながった場面はシュートがミートしきれませんでした。

幸い劣勢だった前半をスコアレスで終えたため、後半は修正が施されて盛り返します。前線からのプレスの強度を上げ、怯まず攻める姿勢を見せるようになりました。

流れを引き寄せるべく鬼木達監督は67分に3人同時交代を行います。チャナティップ・ソングラシンが出場停止のためスタメン起用されて、アグレッシブさだけでなく展開力を披露したもののファウルが目立ち始めた小塚に代えて大島僚太を、さらにレアンドロ・ダミアンとマルシーニョを下げて知念慶と宮城天を送り込みました。

ここで違いを見せたのが大島でした。優れた視野を生かして落ち着いて家長昭博にパスを繰り出し、そこからチームが粘ってコーナーキック獲得につなげると、脇坂泰斗に代わってキッカーを務め、野上のオウンゴールを誘発します。

73分に先制できたことで、一旦は落ちたプレー強度が再び戻ります。宮城、小林には決定機がありました。逃げ切りを図りたいところで、88分に山根が追加点を奪って勝利を決定付けます。山根は中央で一度知念にパスを出し、知念のシュートのこぼれ球を狙って押し込みました。

リーグ戦未勝利の広島に辛くも勝利を収め、7試合を終えて5勝1分1敗としました。インターナショナルマッチウィークによる中断が明けると、AFCチャンピオンズリーグもスタートする過密スケジュール下の戦いが待っています。


当たりの激しさと縦に速い攻撃という、長谷川健太監督のチームらしいアグレッシブな戦い方に苦しみ、立ち上がりの川崎にはパスの乱れが頻繁に起こりました。

リズムをつかめずにいたこともあり、チャナティップ・ソングラシンが早々にファウルを犯して警告を受けてしまい、次節出場停止となりました。川崎としては珍しい出来事です。

それでも次第に相手のやり方に慣れ、前向きに攻撃できるようになりました。25分にはチャナティップのスルーパスが流れ、前方を走るマルシーニョにわたると、戦列に復帰したウインガーが冷静にシュートを決めます。

先制したことで川崎サイドに余裕が生まれて、落ち着いてボールを動かしだします。いい流れを継続させるべく、マルシーニョを生かした攻撃が軸になりました。

後半になると名古屋は相馬勇紀とマテウス・カストロの左右を入れ替えてきますが、川崎が混乱する事態にはなりません。むしろ時間の経過とともにどんどん川崎ペースになっていきます。左センターバックの谷口彰悟が主に左足を使いながら繰り出すパスも効果的でした。

後半半ばには序盤から飛ばし過ぎたのか、名古屋が引き気味になって中盤にスペースができ始め、川崎としてはパスを回しやすくなり、脇坂泰斗がフリーでボールを受けられる場面が増えました。

ただ、ゴール近くまで攻めることはできるものの、エリア内に人数をかけた名古屋を崩し切れません。家長昭博のシュートもポストを叩きます。追加点を奪えそうな予感がありながらスコアは1-0のまま推移しました。

最少失点にとどめている名古屋は終盤、希望をもって攻めてきました。川崎はゴール前でのセカンドボールを生かされて失点を重ねたガンバ大阪戦の反省を踏まえて、守備陣がはっきりしたプレーや大きなクリアで流れを切っていきます。

また橘田健人が運動量を落とさずにピッチを縦横無尽に走り、自陣ボックス内では途中出場の金崎夢生からボールを奪ってチームを救いました。

最後は名古屋陣内で時計を進めて逃げ切ります。残念ながら2点目こそ奪えなかったものの、攻守に安定感のある戦いぶりを披露した90分でした。


連戦の一区切りとなるガンバ戦は、ここまでタフな戦いが続いていた川崎の動きが重く、スムーズにゲームを進められませんでした。

特に序盤は川崎にアタッキングサードでのミスが見られ、効果的な攻撃を仕掛けられずにいました。しかし、20分過ぎあたりから両サイドを使った攻めにリズムが出始めます。

それでも先制したのはガンバでした。34分、高尾瑠のクロスを谷口彰悟が跳ね返すも、そのボールを山本悠樹にダイレクトで合わせられました。

追い付きたい川崎は自陣でチャナティップ・ソングラシンが相手に囲まれながらも小回りの利いたドリブルで剥がし、カウンターの起点になったものの攻撃を完結できずに終わります。

流れが大きく変わったのは後半に選手交代を行ってからでした。宇佐美貴史が負傷してプレーが中断したところで、鬼木達監督は3枚替えを決断。ここで中盤に入った家長昭博がボールを持ちながら時間をつくり、相手を冷静に見ながら攻撃の糸口を探しました。

家長のおかげで主に右サイドが活性化した反面、交代時に右ウイングから左に移っていた知念慶が消えてしまいました。そこで左ウイングに仕掛けが持ち味の宮城天を送り込みます。

投入からわずか2分後、小塚和季がボックス手前を横切って出したパスを宮城が受け取り、小野瀬康介を切り返しでかわしてフィニッシュ。ついに同点に追い付きました。

安堵したのもつかの間、今度は逆に小野瀬が宮城につかれている中で勝ち越しゴールを奪います。ボールは宮城に当たって軌道が変わりました。またもクリアした後のセカンドボールを生かされての失点でした。残り時間は15分を切っています。

小林悠のパスを宮城が頭で合わせるもポストを叩くなど、運にも見放されて時間ばかりが過ぎます。それでも川崎の選手はタイムアップの瞬間まであきらめていませんでした。

90+5分、石川慧がボールを地面に放した瞬間、その背後に気配を消して立っていた小林が猛然と走って奪い、それを受けたレアンドロ・ダミアンがゴールへと蹴り込みました。アディショナルタイムが終わろうとしていた中での同点弾です。

土壇場で勝ち点1を得た川崎は、序盤の5連戦を3勝1分1敗で終えました。スタートダッシュとまではいかないものの、まずまずの滑り出しに成功しました。


4日前のスコアラー、知念慶と佐々木旭がベンチにもおらず、大島僚太も引き続き不在。さらに26分に登里享平が負傷によりピッチを退くこととなり、川崎は開幕から4試合目にして総力戦の様相を呈します。

代わって左サイドバックとしてピッチに入った塚川孝輝は、不慣れなポジションゆえか横向き、後ろ向きのパスが多い上、自陣でファウルを犯してしまい、与えたフリーキックから岩波拓也に先制点を決められてしまいます。

チームとしても先日の日産スタジアムでの対戦時よりは対抗できていたものの、またしても浦和の圧力に押されて思うようにパスがつなげずにいました。

それでもハーフタイムを経て落ち着きと強い意思を取り戻すと、ようやく得られたコーナーキックを生かします。脇坂泰斗がファーサイドに蹴ったボールを家長昭博が頭で合わせて同点に追い付きます。

同点からわずか2分後には脇坂が中盤で受けたところからそのまま粘り強くボールを保持。ボックスに進入し、相手をひきつけてパスを出すと、右サイドから走り込んだ山根視来が左足を振り抜きました。

逆転された浦和は縦に速く攻めますが、後半途中で山村和也と左右のポジションを入れ替えた谷口彰悟を中心に最後のところはやらせません。また塚川も後半に入ると攻守にわたって前向きで安定したプレーを見せるようになりました。

全体としても戦う姿勢を前面に出しており、コンペティションは違えど同じ相手に二度負けるわけにはいかない、必ず勝つという気持ちをプレーから感じました。

レアンドロ・ダミアンは最後まで前から時には中盤でプレッシャーをかけ続け、左ウイングを任された小林悠もディフェンスで奮闘します。ともにゴールこそありませんでしたが、勝利のために労を惜しみません。

残り時間が少なくなるとジョアン・シミッチが入って橘田健人と横並びになり、逃げ切る態勢をつくりました。そして浦和の猛攻を堪えて逃げ切ります。

AFCチャンピオンズリーグ出場チームとのタフなゲームで王者らしく勝負強さを見せた川崎。今は厳しい現実と向き合いながら活路を見出そうとしています。


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