22インチのフットボール

備忘録を兼ねて試合を振り返ります

2022年02月

今シーズンはここまで相手の圧力に屈して苦しむことの多かった川崎ですが、この日は日程面での不利を抱えながらも相手を上回る激しさで試合を優位に進めました。

前線からプレッシャーをかける積極的な姿勢は早速実り、最前線で起用された知念慶が2分に先制します。関川郁万のミスを突いて奪い、冷静に左足で決めました。

17分には脇坂泰斗のコーナーキックを山村和也が頭でコースを変え、最後はスタメンに抜擢された佐々木旭が初ゴールを記録します。

佐々木は初出場した先日の横浜F・マリノス戦でも安定したプレーをしており、この日は谷口彰悟や小林悠のフォローを受けながら両足を器用に使って戦いました。終盤には限界が訪れて退いたもののチームの活性化に大きく貢献しています。

早々に2点を取った川崎の勢いは衰えず、得意とする崩しの形もたびたび披露しました。3点目こそ取れませんでしたが、鹿島には33分のディエゴ・ピトゥカのフリーキックに合わせた関川のヘッドまでシュートをまったく打たせず、前半を通してもこの1本にとどめました。

鹿島は後方からのつなぎがやや不安定だったため、ロングボールを蹴って左に張らせた鈴木優磨を山根視来にぶつける形をとりますが、チャンスには結び付けられません。

もっともこのまま終わる鹿島ではなく、ハーフタイム明けにはシステムを4-3-1-2に変えてきました。中村亮太朗が中盤の底を務めることで樋口雄太とピトゥカが前に出てくるようになり、川崎は一時的に混乱に陥ります。樋口にはクロスバーを叩くシュートを打たれました。

それでも5分少々でシステムを鹿島と同じ形にすることを決断。右ウイングをベースにしていた家長昭博をトップ下に置き、わかりやすく対応できるように修正しました。

終盤は塚川孝輝とレアンドロ・ダミアンを入れ、塚川と橘田を横並びにした4-2-3-1に変更。時間帯を考慮して中盤の守備を強化します。

アディショナルタイムは橘田の頑張りで鹿島陣内深くまでボールを運んだ後、フィジカルの強い家長とレアンドロ・ダミアンでボールをキープしながら時間を使うなどして逃げ切りました。

ミッドウィークのルヴァンカップが中止となり、試合間隔に余裕のあった鹿島に対し、川崎は運動量が落ちても、後半だけで8本のシュートを浴びても最後まで我慢強く戦って完封勝利を収めました。


橘田健人の戦列復帰は川崎にとって大きなものでした。すばらしい機動力を誇る23歳は頼もしさを増しており、今や攻守両面でチームに欠かせません。

先制の場面も相手最終ラインと駆け引きをした橘田の抜け出しが功を奏し、そのクロスから高丘陽平の目の前でボールを軽く叩き付けた家長昭博のゴールに結び付きました。

それでも虎の子の1点を守った開幕戦のように勝ち切ることはできませんでした。チャナティップ・ソングラシンが負傷して一時的にピッチを離れた57分、セーフティに凌ぎたい場面にもかかわらずハイボールを入れられて登里享平に競り勝ったエウベルに同点とされます。

流れは完全に変わり、かさにかかったホームチームにわずか1分後に試合を引っ繰り返されてしまいました。川崎としては前半の猛攻を堪えただけに悔しい展開となります。

鬼木達監督はすぐさま3枚替えを行い、前線の活性化を図ります。昨シーズンの最終節、前回対戦で機能した大島僚太と知念慶、そして遠野大弥が入りました。

ところが直後の64分、エウベルのミドルシュートがブロックに飛んだ橘田に当たってゴールネットを揺さぶりました。これには名手チョン・ソンリョンも反応できません。

73分に山根視来のクロスに左から中央に入って飛び込んだ知念が頭で合わせて追撃の1点を奪うも、仲川輝人のゴラッソが決まり再び2点ビハインドになります。

その後、遠野のコーナーキックからフリーのレアンドロ・ダミアンが決めたかに思われましたが、VARにより高丘に対する佐々木旭のファウルが認められ取り消されます。試合はそのまま4-2で終わりました。

崩壊、とまではいかないものの、走力で川崎を上回るF・マリノスにほとんどの時間で圧倒され、早くも厳しい現実を突き付けられる結果となりました。

馬力とパワーを持った長期離脱中のジェジエウがいつ万全な状態で戻れるかは不明ながら、昨シーズンからのメンバーは概ね揃っているだけに三連覇の難しさを感じます。


先週の浦和レッズ戦からの立て直しが期待されたリーグ開幕戦でした。序盤のボールが落ち着かない展開が治まると一時はペースを握ることに成功します。先発起用したマルシーニョを生かす形で、東京の最終ラインの背後を狙い続けました。

谷口彰悟、車屋紳太郎からの差し込むパスも効果的で、一気にボールを前進させます。19分には谷口のパスをレアンドロ・ダミアンが生かし、マルシーニョがシュート。ヤクブ・スウォビィクがボールに触れてポストを叩き、先制とはなりませんでした。

こうして決定機をつくれたものの、試合はそこから東京ペースに変わります。レアンドロの強烈なシュートを皮切りに攻勢に出てきました。ルーキーの松木玖生も続いて川崎ゴールを襲います。ただ、チョン・ソンリョンが抜群の反応を見せてゴールを許しません。

カウンターの迫力も持ち合わせている東京は、アンカーの大島僚太の脇を突いて効果的に攻めており、川崎は次第にインサイドハーフも下がってスペースを埋めざるを得なくなります。

悪い流れを断ち切るべく、鬼木達監督は塚川孝輝と知念慶を投入。大島を一列前に上げて攻撃の組み立てに注力させ、左ウイングに入った知念は持ち前のフィジカルと向上した守備力で東京に対抗しようとします。

それでも事態が好転しないため、76分に遠野大弥が中央に送り込まれ、4-2-3-1にシステムを変更。塚川をフォローすべく大島に再び守備的な役割も担わせます。

劣勢が続く中、遠野のボックス内でのがむしゃらなプレーもあってコーナーキックを獲得。脇坂泰斗が下がったため、遠野がコーナーキックのキッカーを務めました。

背番号19がニアサイドに蹴ったボールの軌道をレアンドロ・ダミアンが巧みに変え、ついにスウォビィクの牙城を崩しました。待ちに待った先制点です。

これで多少の余裕が生まれたのもつかの間、あらためて東京が怒涛の攻撃を見せます。不運にも車屋が空中戦で肩を負傷してピッチを去った後、永井謙佑に代わって入ったばかりの紺野和也に際どいシュートを打たれるなどピンチが続きました。

7分のアディショナルタイムにも肝を冷やす場面があり、いつ同点にされてもおかしくありませんでした。それでも必死のプレーで凌ぎ切り、勝利を収めることができました。

試合全体を通して王者の戦いぶりとは言い難い内容で、今シーズンは難しくなりそうな予感が漂います。しばらくはミッドウィークにもリーグ戦が組まれており、時間をかけて立て直す余裕はないですが、勝つことで開ける道もあるはず。どんな形であれ、勝ち点3にこだわった戦いを継続するほかありません。


3週間経たないうちにリーグ戦で勝ち点3をかけてぶつかる相手とのゲームということで、鬼木達監督としてはどういう出方をするか難しい部分も少なからずあったはずですが、人選に関しては出し惜しみしませんでした。スコットランドに旅立った旗手怜央の抜けた穴を埋める形で、新加入のチャナティップ・ソングラシンを左ウイングに起用します。

しかし、川崎にとっては中盤の底で運動量豊富に動き回れる橘田健人の不在が大きく響く90分となりました。移籍が噂されながら残留したジョアン・シミッチが同じ位置で先発し、久々の出場でチームのために尽くそうとはしていましたが、ボールをうまく前進させられずに前半だけで交代することとなります。

チーム自体も試合の入りはあまりよくなく、規律の取れた浦和の守備に圧倒されて自陣からほとんど出られない時間帯に先制を許してしまいました。

失点シーンは昨シーズンのホームゲームでつくられた決定機を思い出させるものでした。酒井宏樹に深い場所からクロスを入れられ、中央でフリーになった江坂任に決められます。

ゴールを奪われて目が覚めたのか、川崎はそこからギアを上げ始めます。それでもどこかまだ本調子ではないのか、相手を圧倒しきることができません。中央で構えるレアンドロ・ダミアンにボールを集めることもままならないまま時間ばかりが過ぎていきます。

ハーフタイム明けにはシミッチのいた場所に大島僚太を配し、チャナティップをインサイドハーフに変え、新たにマルシーニョを左ウイングに投入しました。

チャナティップはハーフスペースや中央にいる方がタッチライン際にいるよりは動きやすそうで、大島、脇坂泰斗と巧みに絡みながらボールを動かしていました。

ただ、チームとしては肝心のペナルティエリアの攻略に手こずります。たとえば、マルシーニョは積極果敢にドリブルを仕掛ける選手ですが、対峙する酒井を翻弄するには至らず、効果的な突破ができませんでした。

0-1で動かないまま推移する中、鬼木監督は残り20分になると得点を狙いに行きつつも今後をにらんだ選手起用にシフトし始めます。71分には脇坂とレアンドロ・ダミアンを下げて瀬古樹、知念慶を送り込みました。

フレッシュな選手を使って攻め込むものの、81分にカウンターから再び江坂にゴールを許します。直前のプレーで腕を引っ張っても止められなかった明本孝浩に対する車屋紳太郎のコンタクトが甘くなり、ラストパスを出させてしまいました。

結局、このままリーグ屈指の攻撃力は封印されて終わりました。シュート数は浦和と同じ8本にとどまり、西川周作を慌てさせる機会はありませんでした。

単にこれが本調子ではないことによる敗戦であればいいのですが、状態が上がらずに今日のような戦いが続く場合、難敵との対戦が目白押しの序盤でスタートダッシュに失敗する危険性もあります。


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