22インチのフットボール

備忘録を兼ねて試合を振り返ります

2021年12月

あとは逃げ切るだけ、のはずでした。

113分、山根視来の左足のパスに反応した小塚和季が懸命に折り返し、小林悠が決めた、川崎が総力を挙げて奪った1点を守り切れば決勝に進むことができました。

ところが遠野大弥が負傷により座り込み、ピッチを後にしたことでリズムが崩れ始めます。すでに交代枠を使い切っており、送り込むフィールドプレーヤーがベンチに残っていない川崎は10人で戦うことになったのです。

結果、アディショナルタイムにスローインを起点にフリーの下田北斗から高精度のクロスが上がり、前線に出てきていたエンリケ・トレヴィザンが頭で合わせて同点に追い付かれてしまいます。120分で8本目のシュートでした。

リスタートきっかけの対応の遅れ、負傷退場に伴う動揺。いずれも先日の横浜F・マリノス戦で露呈した悪い部分を再び繰り返すこととなりました。

流れは完全に大分に移ります。PK戦はどちらに転んでもおかしくない決着方法ですが、この日好セーブを連発した高木駿が立ちはだかるゴールはここでもこじ開けるのが難しく、チョン・ソンリョンもPKストップで応戦しますが及びません。

90分で仕留められず、延長を含め28本のシュートを放ちながら1点しか奪えなかった川崎は、苦労しながら勝ち抜いた大会から去らなくてはならなくなりました。

裏返せばそれだけ大分の守備が堅固だったと言えます。脇坂泰斗、大島僚太のミドル、旗手怜央のボックス内でのシュートをことごとく止めた高木のプレーも見事でしたし、4-3-1-2のシステムで中央を厚くした守備網は簡単には崩れませんでした。分厚い守備を前に山根とレアンドロ・ダミアンのホットラインも開通しません。

最終的には前線と中盤をそっくり入れ替えて戦いましたが、1点どまりでした。同点に追い付かれてからも怒涛の攻撃を見せたものの勝ち越し点は奪えずに終わります。

これで今シーズンは終了となります。想像していたより1週間早く終わった格好ですが、オフが早くなったことをポジティブに考えて、気持ち新たに来シーズンに向かってほしいところです。


すでに順位が確定している両者の激突は、オープンに攻め合う形でスタートしました。当初はどちらも譲らない戦いを繰り広げます。

ところが川崎は車屋紳太郎が早々に負傷して11分に山村和也と交代を余儀なくされ、約1ヵ月前のサガン鳥栖戦でのジェジエウに続くセンターバックの離脱にチーム内に動揺が走ります。

この試合のみならず先々のことを考えてしまったのか、山村は決定的なシュートを放つなど問題なく戦っていたにもかかわらず、チーム全体としてはプレーの安定感を欠き始めて横浜FMに付け込まれてしまいます。

その後、ハーフタイムまでは完全に相手に主導権を渡す格好となりました。脇坂泰斗は窮屈な局面でもボールをキープしますが、一人では如何ともしがたく苦しみます。

幸いにも被決定機は少なく済んだ川崎。鬼木達監督は前半苦しんでいたマルシーニョと旗手怜央のところを修正します。マルシーニョを下げて大島僚太を投入し、中盤でミスが目立った旗手はピッチに残して左ウイングに移しました。

この交代が的中し、大島が川崎にリズムをもたらして攻勢に出られるようになりました。前半の劣勢が嘘のようにアウェイチームが盛り返したのです。

そして67分、山村がスペースに出したボールを家長昭博が受け取り、右足で中央にクロス。レアンドロ・ダミアンが高丘陽平のタイミングを外すような叩き付けるヘッドで先制しました。試合を動かすとともに前田大然との得点王争いでも一歩リードします。背番号9は喜びながら家長を称えました。

しかし7分後、家長のハンドで与えたフリーキック時に対応が遅れます。準備がままならない状態でリスタートを許し、最後はこぼれ球を前田に決められてしまいました。ここまでチームを救っていたチョン・ソンリョンも止められませんでした。

終盤は是が非でも2点目を取りたいケヴィン・マスカット監督が積極的な交代策をとると、鬼木監督も応戦。4-3-3のシステムは変えずにアタッカーを次々と送り込みました。

そこで機能したのが左ウイングに入った知念慶でした。時間を使う意味で以前同じ位置を任された際はキープに徹していましたが、この日は左サイドで効果的な働きを見せます。新たな可能性を感じるプレーぶりでした。

結局、両者に2点目は生まれず、家本政明主審の最後の笛が鳴りました。レアンドロ・ダミアンは前田とともにシーズン23ゴールで得点王に輝きます。


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