22インチのフットボール

備忘録を兼ねて試合を振り返ります

2021年11月

立ち上がりから10分間は、川崎の破壊力を見せつける形となりました。その間奪った2得点とも左右に揺さぶってのピッチを広く使ったゴールでした。旗手怜央が落ち着いて頭で決めた2点目は、家長昭博が得意とする相手DFの裏を狙ったファーサイドへのクロスから生まれています。

電光石火の攻勢でしたが、長続きはしません。17分にはミドルゾーンでの連係ミスを突かれ、宇佐美貴史の個人の力にねじ伏せられて1点差に詰め寄られました。次第にガンバのプレーに激しさが生まれていきます。

ボールは保持できているものの主導権を十分に握れず、ガンバを突き放す1点が取れないまま時間が経過しました。ただ、相手に中盤を飛ばされた中でも守備は安定しており、前線で追い回す役割を果たしているマルシーニョやレアンドロ・ダミアンも状況次第で自陣深くに戻ってチームを助ける場面があり、同点弾は許しません。

すると85分、先制点と同様に山根視来のクロスにレアンドロ・ダミアンが合わせて、待ち望んでいた試合を決定づけるゴールが生まれました。これでレアンドロ・ダミアンはシーズン22得点を記録します。

先日、川崎との契約を更新した背番号9はチームのためにプレーを続け、常に強引にでもシュートを打つというより、確実なゴールのためにボックスの中でパスを選択することも珍しくありません。この日もそうしたプレーが見られる中で2得点を挙げました。

チームメイトは得点王を取らせたいという狙いがあってか、特に終盤はレアンドロ・ダミアンにラストパスを供給しようとする強い意思が感じられました。チーム内の優しく良好な関係がそこにはありました。

アディショナルタイムには遠野大弥のコーナーキックを車屋紳太郎が合わせて、今シーズン初ゴール。直後には温かい祝福の輪ができました。

結果、ホーム最終戦を4-1の完勝で締めくくりました。最終節はリーグ王者のプライドを胸に2位の横浜F・マリノスとの決戦です。ゴール数で並んだレアンドロ・ダミアンと前田大然の得点王争いにもその場で決着がつけられます。


80分に奥埜博亮にゴールを許し、クリーンシートとはならなかったものの、前節のサガン鳥栖戦での不甲斐なさを払拭するプレーを選手全員が続けて1-4で勝利を収めました。

キム・ジンヒョンの好守に阻まれることが何度かありながらも記録した4ゴールは、いずれも得点の欲しい時間帯に奪いました。川崎らしい流麗なつなぎをきっかけにレアンドロ・ダミアンが2ゴールを挙げ、マルシーニョもリーグ戦初ゴールを記録。1点失った5分後には遠野大弥が瀬古歩夢の当たりに負けずニアゾーンから上げたクロスに宮城天がダイレクトで合わせて試合を締めくくりました。

4得点を挙げたのは、リーグ戦では4月末の名古屋グランパス戦以来、公式戦で見ても7月のAFCチャンピオンズリーグ、北京FC戦以来となります。東京オリンピック後では初めてです。

この日の川崎は前線からのプレッシャーの強度が非常に高く、セレッソを長い時間自陣に押し込みました。中でもピッチを縦横無尽に走って奮闘していたのが橘田健人です。背番号22のルーキーは激しく粘り強い守備で大きく貢献。全体のバランスを見つつ躍動していました。

攻撃面でも橘田からの配球は優れていて、2点目はボール奪取から得点の起点になり、また、左サイドに張っているマルシーニョへの効果的なパスも繰り出していました。

インサイドハーフの脇坂泰斗、旗手怜央は中盤での周囲と連動した動きのみならず、チャンスと見るや前線に駆け上がり相手ゴール前で厚みをもたらしました。

後半頭からセレッソは現役引退を表明したばかりの大久保嘉人が登場するも、守備陣の冷静な対応で封じます。最後尾のチョン・ソンリョンは好セーブで相手の枠内シュートを防ぎ、残り10分になるまでゴールを許しませんでした。

代表組の不在もありながら、インターナショナルマッチウィークの中断をうまく使って修正に成功した川崎。前節の負傷により長期離脱を余儀なくされたジェジエウのためにも、このまま残り2試合をいい形で終えて天皇杯に向かいたい流れです。


優勝から中3日、固定していたメンバーを大幅に入れ替えて試合に臨みましたが、前半のうちに3点を奪われ今シーズン2敗目を喫しました。

左サイドバックを任された旗手怜央は、立ち上がりからイージーなミスを連発。積極的な守備から入った鳥栖は、安定感を欠くこのサイドを突いて攻めてきました。

川崎は左サイドで対峙するウイングバックの飯野七聖に絶妙なラストパスを2本入れられ失点。さらに山村和也のハンドをとられたシーンも旗手のサイドを狙われての結末でした。

前にいるマルシーニョは自陣に下がって強度の高い守備を見せるタイプではなく、川崎の左サイドは後半に向けて最大の修正ポイントとなります。

鬼木達監督は首を痛めた脇坂泰斗を下げて登里享平を投入するだけでなく、マルシーニョを右サイドに移しました。左の手当てを行うと同時に3バックにシステムを変更。アンカーに前半すばらしい配球を披露した大島僚太を据えて、運動量豊富な橘田健人とポジションを入れ替えます。

1人の交代でガラリと変えた川崎。一時的にハーフコートゲームにするまで攻め込みはしましたが、慣れないシステムゆえかゴールを奪うという点では効果的には機能しません。55分に家長昭博とレアンドロ・ダミアンを送り込んでも決定機をつくれませんでした。

60分を超えたところで大島に代わって入ったジェジエウが直後に負傷するアクシデントもあり、非常に苦しい展開となります。結局、やり慣れた4-3-3に形を戻しました。

この日は終始ボックスの中まで進入できるものの、肝心のフィニッシュの精度を欠いていました。90+1分にようやくレアンドロ・ダミアンがゴールを決めますが、フリーキックのセカンドボールを狙った旗手のシュートはポストに阻まれ、8分あったアディショナルタイムにさらなる得点は生まれませんでした。

すでに優勝が決まっているため難しい状況ではありますが、王者らしい戦いを見せるべくインターナショナルマッチウィークで再び気持ちを切り替え、残り3戦に臨みたいところです。


爽快に勝って終わる理想的な結末ではありませんでした。それでもホームで2年連続のリーグ優勝を飾ることができました。

この日はミドルゾーンやサイドの狭い局面で相手を翻弄する場面はありましたが、それを継続して相手ゴール前まで押し込むまでには至りません。両者の力関係は五分五分、ないしは最終ラインの安定していた浦和がやや優勢に見えました。

苦しい戦いで奮闘したのはまたしても守備陣でした。浦和の最初の決定機で酒井宏樹に左サイドを攻略され、江坂任、関根貴大に立て続けにシュートを打たれるも、山根視来、谷口彰悟が防ぎます。谷口はゴールライン手前でのクリアでした。

先制点も脇坂泰斗のコーナーキックが山中亮輔に跳ね返され、セカンドボールを拾ってクロスを入れたのが山根。空中でレアンドロ・ダミアンと江坂が競ってこぼれたボールを押し込んだのはジェジエウでした。

その後、ハーフタイムを迎えるまでの時間だけは川崎が余裕をもって試合を進めることができていました。じっくりボールを動かしながら、相手の隙をうかがいます。ただ、追加点は奪えません。

後半は決定機をつくれず、1点を守ることがメインになり、清水エスパルス戦、天皇杯の鹿島アントラーズ戦と不動のスタメンを代えたのは75分になってからでした。さらに86分に山村和也を入れて4-2-3-1にシステムを変えて逃げ切りを図ります。

それでも完封できず、旗手怜央の背後を突いてボックス内に走ってきた酒井に同点弾を許してしまいます。起点となったのが川崎の自陣でのスローインだっただけに、慎重にかつ確実に凌ぎたい場面でした。

勝ちにこだわりたい川崎は、おそらく終盤の時間稼ぎないしは不測の事態に備えて残していた最後の交代枠で知念慶を投入。小林悠との2トップにして勝ち越しを狙います。

アディショナルタイムの大島僚太のミドルシュートは流れの中での川崎の最大の決定機でした。しかし西川周作に阻まれます。

結果、引き分けでタイムアップを迎え、同時刻開始のゲームで横浜F・マリノスがガンバ大阪に敗れたため、優勝が確定しました。

シーズンは残り4試合。昨シーズンは同じく4試合を残して優勝後、苦戦を強いられたことを考えると同様の事態に陥る可能性も予想されますが、横浜FMとのアウェイでの直接対決も最後に控えているだけに、その後の天皇杯に向かうためにも意識高く戦ってほしいところです。


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