22インチのフットボール

備忘録を兼ねて試合を振り返ります

2021年10月

すでに2点リードしていた51分、すばらしいゴールが生まれました。脇坂泰斗の放った左足ミドルの弾道が美しかっただけでなく、そこに至るまでの過程が見事でした。

安西幸輝のクロスをジェジエウが跳ね返したところから始まり、そのボールをレアンドロ・ダミアンが生かしてボールをつなぎます。脇坂のキープの後、右から左にボールを動かすと旗手怜央が巧みなボールキープでファン・アラーノをいなし、逆サイドでフリーの脇坂に展開。右サイドの家長昭博のパスを背番号8が受けてフィニッシュへと結び付けました。

リーグ戦での対戦では勝ちはしたもののホーム、アウェイともに難しい戦いを強いられた鹿島相手に会心の一撃を食らわした形で、ノックアウト方式の天皇杯で3点にリードを広げる価値ある得点でした。

脇坂は先制点となる町田浩樹のオウンゴールを誘発するコーナーキックを蹴り、後半開始してすぐに旗手に当たってコースが変わった追加点のアシストも記録。抜群の働きで77分までプレーしました。

前半は川崎優勢でしたが、ビハインドが広がってからの鹿島はゲームを引っ繰り返すべく怒涛の攻めを続けてきました。54分に入った荒木遼太郎と和泉竜司がサイドハーフながらボックスの幅にポジションをとって中央を厚くし、両サイドバックが高い位置をとって押し込んできます。

それでも川崎は最後尾のチョン・ソンリョンはじめ守備陣を中心に懸命のプレーで凌ぎます。90分に谷口彰悟のクリアを荒木に跳ね返されて1失点は喫したものの、それまではクリーンシートを目指して守り続けており、代わって入った知念慶、小林悠も攻撃だけでなく前線からハードなディフェンスを労を惜しまず最後まで続けていました。

鹿島より1日短い中2日のゲームながら清水エスパルス戦からスタメンをいじらずに臨んだ戦いでしたが、鬼木達監督が交代枠を存分に生かして力を落とさずに戦うことができました。

充実の勝利で天皇杯も連覇に向けて一歩前進。リーグ戦終了後の準決勝では大分トリニータと対戦します。ここではモチベーションを維持していけるかどうかがポイントになりそうです。


ミッドウィークに鹿島アントラーズとの天皇杯準々決勝を控える中、3週間ぶりの公式戦は現時点でのベストな11人で臨みました。川崎の試合の入りは落ち着いていて、いくらかはリフレッシュできた様子がうかがえました。マルシーニョと周囲との連携も以前よりスムーズになっています。

ただ前半はミドルゾーンまでは順調にボールを運べるものの、清水の中盤とDFの間が狭いこともあり、フィニッシュにつながる攻撃は決して多くありません。ゴールに迫ったのは2本の直接フリーキックと旗手怜央のニアゾーンからの強烈なクロス、それに脇坂泰斗のコースを突いたシュートくらいでした。

結果、スコアレスでハーフタイムを迎えたため、後半はギアを上げてきました。ミドルレンジのパスを増やして揺さぶりをかけ、インサイドハーフの脇坂、旗手はより積極的に前に出ていきます。

戦う姿勢の変化がすぐさま結果に結び付きます。47分、ライン間に立った脇坂のクロスはファーに流れますが、拾ったマルシーニョは権田修一が迫るのを見てパスを選択。最後はレアンドロ・ダミアンがヒールで巧みに合わせてゴールを決めました。

先制したことで余裕が生まれ、前半よりもゴールに向かう意識が高まっていきます。また、ハーフタイム前は血気盛んでたびたびヒートアップしていた旗手も冷静さを取り戻していました。

試合を楽にするための追加点は奪えずにいましたが、ジェジエウ、谷口彰悟を擁する最終ラインは安定感抜群でピンチを生み出しません。チョン・ソンリョンが忙しかったのは、前半にカルリーニョス・ジュニオにミドルシュートを打たれた場面だけでした。

71分からは3ヵ月ぶりに大島僚太がピッチに姿を現しました。まだ100%のコンディションとは言えないかもしれませんが、随所に技術の高さを見せます。シーズン終盤に向かうチームにとって頼もしい背番号10が帰ってきました。

ミゲル・アンヘル・ロティーナ監督が切った交代カードは少ないものの、清水は残り少ない時間の中で1点を奪いに攻め込んできました。しかし、登里享平に代わって入った車屋紳太郎が左サイドで相手の攻撃をことごとく阻止して、事なきを得ます。

直後の試合で2位の横浜F・マリノスが敗れたため、連覇に王手がかかりました。夏場以降、追われる立場に苦しむ期間が長かった今シーズンですが、視界が開け、心理的には優位に立って戦いを進めることができます。


非常にタフな試合になりました。それでも完封勝ちを収められたのは、一時はやり繰りの難しかった守備陣が戦線復帰を果たして従来通りの厚みを持てるようになったからだと言えます。

前半は東京がやや構えて守ったため、後方でボールを動かすのはそれほど難しいことではありませんでした。ただ、相手のボックス内で決定的なフィニッシュにつなげられずにいました。

守備では縦への勢いのある長友佑都とアダイウトンのサイドで苦しめられ、時折、高萩洋次郎も絡んで攻められました。23分にはジェジエウのコントロールが大きくなったところをアダイウトンに奪われてピンチを招くシーンがありましたが、車屋紳太郎がカバーして失点には至りません。

膠着した中で前半終了間際にマルシーニョのパスを受けた登里享平がクロスを入れ、レアンドロ・ダミアンがジョアン・オマリの一歩前に出て頭で合わせます。ここのところ先制される試合が続いていただけに待望の先制点が生まれました。

ビハインドを背負った長谷川健太監督は、後半頭から永井謙佑を投入。チーム全体で永井を生かすサッカーを遂行してきました。ミッドウィークのヴィッセル神戸戦からスタメンをほとんどいじっておらず、疲労のたまっている川崎にとっては苦しい展開となります。

そこで鬼木達監督は63分に3枚替えを決行します。脇坂泰斗、レアンドロ・ダミアン、マルシーニョを下げて、谷口彰悟、知念慶、小林悠を送り込みます。谷口は橘田健人と並ぶ形で立ち、旗手怜央を左ウイング、家長昭博をトップ下に変更しました。

交代およびシステム変更を行っても東京の勢いは止められません。74分には永井に抜け出され、がら空きのゴールに蹴り込まれますが、ジェジエウが懸命に戻ってゴールラインを割らせません。

残り10分を切ると、登里に代えて山村和也が入りました。山村が中盤センターに立ち、車屋が左サイドバックへ、谷口がセンターバックにポジションを変えます。後方の戦力の充実がなせる業でした。

87分のディエゴ・オリヴェイラの決定機には車屋と山村が体を投げ出し、その後のシュートはチョン・ソンリョンが打たせません。

アディショナルタイムには相手陣内深いところでフィジカルの強い知念と家長でボールをキープ。コーナーキックではボックスの中に誰も入らず、逃げ切りのために時間を使います。

最後の最後まで油断のできないゲームでしたし、特に後半は川崎らしいボールを保持して相手を圧倒するサッカーができませんでしたが、小林も含めチーム全員が虎の子の1点を死守すべく体を張りました。90分間のシュート数は川崎の6本に対して東京は倍の12本でした。

5連戦をすべて勝利で終えた川崎。最高の結果を残し、次の清水エスパルス戦までは3週間ほど空くこととなります。


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