22インチのフットボール

備忘録を兼ねて試合を振り返ります

2021年09月

中2日の川崎と中4日の神戸。試合間隔に差がある両者の激突は、スケジュール的に有利な神戸が前半は主導権を握ります。川崎は相手にテンポよくボールを握られる時間を与えてしまいました。

また、ジェジエウと大迫勇也、レアンドロ・ダミアンとトーマス・フェルマーレンの後方と前線のマッチアップで優位に立てず、重要なエリアを制することができません。

そしてまたしても3試合連続で相手に先制を許す展開となりました。アンドレス・イニエスタの絶妙なロングパスを大迫が受け、ジェジエウを翻弄。ラストパスを出されて最後は武藤嘉紀に決められます。

川崎も旗手怜央がニアゾーンを取って角度のないところからパスではなくシュートを狙ったり、脇坂泰斗がミドルシュートを放ったりしますが、いずれもゴールには至りません。ボックスの中にいるレアンドロ・ダミアンにボールを集めることもできませんでした。

あまりいいところなく終わった前半でしたが、ハーフタイムでのメンバー交代、システム変更は行われず、スタメンの11人で圧力をかけてよりゴールへと迫りました。

すると積極策が実って2回のPKを獲得。マルシーニョの突破から得た1回目は家長昭博がポストに当ててしまいますが、2回目はレアンドロ・ダミアンが正面に蹴り込み同点に追い付きました。

川崎は武藤、大迫にいい形でボールを与えないプレーを続けながら、追加点を狙います。追い付いてから16分後の72分、山根視来がスピードに乗って上げたクロスに飛び込む旗手を意識したフェルマーレンのオウンゴールを誘発しました。

過去2戦より早い段階で引っ繰り返したことで、交代策にも余裕が出ます。疲れの見えるマルシーニョとレアンドロ・ダミアンを下げると、さらに山根、脇坂も下げて山村和也と谷口彰悟で中盤センターを形成する形に変更。確実な逃げ切りに向かっていきます。

85分には旗手のヒールパスを受けた家長のゴールが決まり、失点を過度に恐れることなく試合を楽に終えられる展開となりました。

こうして攻撃面での修正が奏功したのはもちろんですが、前後半に1回ずつあったイニエスタの決定機をいずれもチョン・ソンリョンが好セーブで凌いだ点も見逃せません。

真価が問われる5連戦は、4試合を終えてここまで全勝。残るはFC東京との多摩川クラシコです。


徐々に戦列を離れていた選手が戻っている中、今節は車屋紳太郎がスタメンで復帰。そのため、谷口彰悟をセンターバックではなく中盤で起用する形でスタートしました。

前線は知念慶、小林悠が2トップ気味に並ぶことが多く、全体の距離感も通常とは異なり、たびたびパスを相手に引っ掛けられていました。先制されたシーンも自陣でのボールロストをきっかけに、大橋祐紀にニアゾーンを取られて最後は田中聡に決められます。

前半の川崎にチャンスがなかったわけではなく、小林が切り返しをして放ったシュートは谷晃生に阻まれ、湘南サイドのミスに乗じたショートカウンターでは宮城天のシュートが枠を大きく外れてしまいました。

リーグ戦では約4ヵ月ぶりのホームゲームでしたが、待ちわびていたファン・サポーターの期待に応えているとは言い難く、リズムが悪いままハーフタイムを迎えます。

流れを変えるべく鬼木達監督は後半頭に一気に選手を3人交代します。サイドハーフ起用の遠野大弥、宮城、そして谷口を下げて、登里享平、マルシーニョ、橘田健人を投入。左サイドバックだった旗手怜央をインサイドハーフ、小林を右ウイングに置いて、システムを明確に4-3-3に変えました。

このところは違う形も使っていますが、ずっと親しんできた形に戻したことでパスがつながるようになります。車屋から縦に差し込むボールも増えていきました。

さらに65分に家長昭博を入れてチームに安定感をもたらしつつ活性化させると、直後に山根視来のクロスから旗手が同点弾を奪いました。

後半の飲水タイム明けは湘南が再び運動量を上げてプレッシャーをかけてきましたが、それにも怯まず戦い続けました。ただ、次の1点が取れないまま時間が経過していきます。残り時間が少なくなるとジェジエウを最前線に上げ、ペナルティエリア内の人数を増やしてゴールに迫りました。

がむしゃらな姿勢が実ったのは90+4分でした。家長が畑大雅を抑えながら完璧なクロスを放り込むと、それを足をつらせた知念が頭で押し込んだのです。

ミッドウィークの鹿島アントラーズ戦に続くドラマチックな逆転劇でした。この勝利によって残り8試合で2位の横浜F・マリノスとの勝ち点差が9に開きました。しばらく横浜FMの勢いに飲み込まれそうな苦しい状況だっただけに連覇への道が大きく開かれた格好です。


チームの総力で勝ち切る、勝負強い川崎が戻ってきました。難敵・鹿島を相手に先制を許しながら、残り10分を切ったところから試合を引っ繰り返して勝ち点3を獲得したのです。

中盤に推進力のあるディエゴ・ピトゥカを擁する鹿島に対し、川崎はジョアン・シミッチと橘田健人を横に並べ、旗手怜央をトップ下に配した4-2-3-1でスタート。立ち上がりこそ鹿島に圧倒されますが、次第にボールを握れるようになります。

ただ、後方に人数を割いていることもあり、前線の枚数が足らずにシュートまで至らない時間が続きました。逆に鹿島の安西幸輝には鋭いシュートを打たれます。ここはチョン・ソンリョンが適切に弾いてこぼれ球に詰められるのを回避しました。

ハーフタイムが明けると旗手と家長昭博のポジションを入れ替えますが、試合は鹿島に再び圧倒され、再三ペナルティボックスへの進入を許してしまいます。61分、右サイドで旗手が安西と対峙するもクロスを上げられ、登里享平の一歩前に出たファン・アラーノのヘッドで失点を喫しました。

67分、鬼木達監督は3枚代えを決行。前半に足を痛めていた登里、そしてシミッチとマルシーニョを下げ、小林悠、脇坂泰斗、宮城天を送り込みます。小林を右ウイングに置いて旗手が左サイドバックにポジションを移し、脇坂は通常より低め、橘田と並ぶような位置をとりますが、どちらかと言えば攻撃に軸足を置いています。

その後、知念慶をレアンドロ・ダミアンに代えて入れて2トップとし、鹿島ゴール付近でフリーキックを蹴る直前には山村和也を投入します。

すると脇坂の入れた完璧なボールに山村が頭で合わせて同点に追い付きました。交代策がはまった83分のできごとでした。これで試合の流れは川崎の方に大きく傾きます。

アウェイチームに引き分けでよしとする考えはなく、ひたすらに決勝点を狙います。小林がシュートを放ち、沖悠哉が防いだこぼれに知念が飛び込むなどそれまでなかったゴールに向かう迫力を見せ始めました。

それでも得点を奪えずにいた90+4分、宮城の無回転シュートが鹿島のゴールネットを強く揺さぶりました。ここまでことごとくドリブルを止められていた若武者がシュートを打つために右サイド寄りに流れて、自身のJ1初ゴールとなる貴重な1点を叩き出しました。

結果、消化試合数が同じ2位の横浜F・マリノスとの勝ち点差を7に広げることに成功。シーズン終盤に向けて弾みになる勝利を挙げました。


立て続けにルヴァンカップとAFCチャンピオンズリーグで敗退し、失意と疲労に苦しんでいるであろう川崎にとって、11分の西谷和希のゴールが認められていたら結果は違っていたかもしれません。幸い、VARによってその前のプレーでオフサイドがあり、ゴールが取り消されたことで命拾いします。そこから徐々にアウェイチームにギアがかかりました。

知念慶がドリブルで左サイドを攻めて角度的に少々厳しい場所からシュートを放てば、脇坂泰斗はやや遠い位置からのフリーキックを直接狙うなどゴールに迫るプレーを続けます。

そしてクイックリスタートから新戦力のマルシーニョがドリブルでボックスに進入した際に藤田征也のファウルを受けてPKを獲得。34分に知念が決めて先制します。

すぐさま一美和成の豪快なシュートで徳島に追い付かれはしたものの、そこでは川崎は折れませんでした。42分、戦列復帰した旗手怜央、マルシーニョ、脇坂とつなげてフィニッシュ。相手に囲まれた狭いエリアで見事な崩しを披露して勝ち越します。

試合開始当初は旗手の動きがピッチの中で際立っていましたが、52分に脇坂のコーナーキックを知念が決め、ゲームを優位に進められるようになったことで次第に全体の動きも本来のものに近付いていきました。加えてマルシーニョもスピードと躍動感のある仕掛けをたびたび見せて、62分に担架で運び出されるまで活躍しました。

ただ、90分を戦い抜くには疲労がたまっており、気持ちだけでは如何ともしがたく終盤は苦しみます。ベンチ外のジョアン・シミッチに代わってアンカーを務めていた橘田健人と68分から入った塚川孝輝を横に並べて中盤の守備を厚くしたものの十分なフィルターにはなりきれません。それでも現状、替えの利かないDF陣、そしてチョン・ソンリョンを中心に守ってさらなる失点は防ぎました。

全体を通して余裕を持った試合運びにはなりませんでしたが、確実に勝利を得ることができました。インターナショナルマッチウィークまでの連戦を乗り切る力になり得る結果です。


レギュラークラスの離脱者が多く、やりくりの難しい川崎は小林悠を左ウイングで起用し、現段階でのベストな11人をピッチに送り込みました。出し惜しみなく戦う選択です。

しかし、小林が開始1分でシュートを放ったものの、前半のペースは完全に蔚山にありました。23分にはホン・チョルのクロスにオ・セフンが頭で合わせる場面もあり、必然的に川崎の選手は自陣に下がることとなります。

劣勢の中、少ないタッチで中盤を突破しようと試み、時間の経過とともに少しずつ打開できるようになりました。さらにハーフタイムに修正が施され、エンドが変わるとプレー強度を上げて戦い始めます。川崎に復調の兆しが見られました。

それでもペナルティボックスまでは進入できるものの、最後の最後、フィニッシュまでつなげないシーンが多く、チョ・ヒョヌを脅かすには至りません。

結局、川崎にとっての決定機は延長前半の終了間際、家長昭博のフリーキックをジョアン・シミッチが折り返し、知念慶が合わせた一度しかありませんでした。

また蔚山がユン・ビッカラムやイ・チョンヨンを投入して流れを変えに出るのに対し、川崎は交代カードを切れずにいました。ようやく最初のカードとして知念を入れたのは86分になってからです。

延長までもつれたため、さすがにフレッシュな選手を送り込む必要に駆られ、110分に鬼木達監督はレアンドロ・ダミアンと小林を下げて遠野大弥と長谷川竜也を入れる決断をしました。

直後に山村和也が座り込み、急遽、塚川孝輝をセンターバックで起用することとなりますが、コーナーキックのピンチもポストに救われ、120分まで失点を許しません。一方の川崎も得点の可能性を高めることができずに終わり、PK戦で決着をつけることとなりました。

準々決勝進出をかけた最後の争いはペナルティスポットの足場の悪さに苦しみ、また川崎最後のキッカーを務めた家長がチョ・ヒョヌに止められてしまい、アジア制覇の夢はラウンド16で潰えました。

現有戦力で結果を出し続けてはいましたし、ヴィッセル神戸戦の延期で試合間隔も蔚山より空いていましたが、川崎としてはやはり夏場の補強が十分に行われなかったことが結果として響いたと言えるかもしれません。


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