22インチのフットボール

備忘録を兼ねて試合を振り返ります

2021年08月

等々力陸上競技場が使えないため、天皇杯を含めてアウェイでの戦いが続き、リーグ戦においては望んだ結果が手に入らないという苦しい状況にあった川崎でしたが、札幌相手に苦労しながらも完封勝利を収めました。

ジョアン・シミッチ、家長昭博、レアンドロ・ダミアンをベンチに置いて、ミッドウィークのアビスパ福岡戦以上にターンオーバーの色が濃くなった川崎は、札幌のマンツーマンディフェンスに手こずりました。縦に速いパスを繰り出して剝がそうとしても相手に引っかかって取られてしまい、逆に流れるような攻撃を浴びる格好となりました。

ボール回しで打開できないことから、橘田健人が中盤をドリブルで突き進むなど、個々人の強引とも言えるプレーでついている相手を外しにかかります。

その姿勢を前面に出していたのが小林悠でした。34分、宮城天の出したパスを受けると、高嶺朋樹にタイトにつかれている中で体を反転させながらゴールにねじ込んでみせました。シュートコースはほとんどなかった場面でしたが、貴重な先制点を奪います。

5分後にはこぼれ球に貪欲に反応し、荒野拓馬の背後から出てきた遠野大弥の追加点をアシスト。背番号11が重要な一戦でチームを牽引します。

2点リードしている川崎ですがゲームの主導権を握るまでには至らず、後半は自陣に押し込められる時間が長く、しばらくはほぼ防戦一方になりました。それでもチョン・ソンリョン、ジェジエウ、山根視来をはじめ、全員で懸命にゴールを死守します。

61分には鬼木達監督が宮城を下げてシミッチを投入。最終ラインの前に山村和也と並べる形にして、劣勢を凌ぐべく中盤の守備を厚くしました。早い段階でのこの決断は功を奏します。

84分に小塚和季とレアンドロ・ダミアンが入った頃からようやく川崎が落ち着いてボールを動かせるようになります。残り時間は少なく、点差を考えるとセーフティーに逃げ切りを図れるまでになりました。王者としての冷静さを取り戻した時間帯です。

札幌はルーカス・フェルナンデス、ジェイ・ボスロイドら強力な外国籍選手を送り込んでいましたが、川崎は慌てることなく粘り強く人数をかけて守りました。

テンポよくスピーディーで、相手を圧倒するサッカーは披露できないチームコンディションにありながら、強い気持ちで、執念で勝ち点3をもぎ取りました。無敗記録が途絶えた直後、首位をキープするためにも是が非でも結果が欲しかった川崎にとっては大きな勝利となりました。


3日後に札幌での試合が控える中、鬼木達監督は大胆なターンオーバーは行わず、ジェジエウ、脇坂泰斗、長谷川竜也をベンチスタートとするにとどめました。チーム状況を考えると、それだけ勝利へのこだわりを見せたのだと思われます。

試合は福岡の当たりの強さに手を焼き、立ち上がりはミドルゾーンでのイージーミスも見られました。それでもレアンドロ・ダミアンや宮城天がゴールに迫るプレーをするごとに上向きの兆しがあり、相手を外したボール回しができるようになっていきました。

いい流れができてきたところで、旗手怜央がおそらく体勢を崩しながらシュートを放った際に負傷。39分で退くこととなりました。交代で入ったのは、同ポジションの脇坂ではなく小林悠。家長昭博をインサイドハーフに下げ、前線に厚みをつくります。1点入ればムードは変わる。そういう雰囲気は継続されていました。

ただ、エンドが変わると福岡がゴールに近付くシーンが増えます。杉本太郎がチョン・ソンリョンの正面を突くシュートを放てば、城後寿は激しいプレスで川崎の守護神に襲い掛かりました。

変化を感じた長谷部茂利監督は3枚代えを決行。残り30分を切ったところで前線の強度を高めます。

2分後、鬼木監督はジョアン・シミッチと宮城に代えてジェジエウと長谷川を投入。シミッチを休ませる意図もあったのか、ここで山村和也をアンカーの位置に上げました。

両指揮官が動き、試合も動きます。セカンドボールを拾ったジョルディ・クルークスが左足を振り、鮮やかな一撃を決めたのです。川崎は2試合続けて先制点を奪われました。

追い込まれたアウェイチームは、最後の交代機会で登里享平、レアンドロ・ダミアンを下げて遠野大弥、知念慶を投入。最終ラインの並びを再び変えてフレッシュな選手による打開を図ります。

奈良竜樹を入れて守備固めに入った福岡に対し、最終的には山村を前に上げるなどカウンターを食らってもやむなしといった攻撃偏重の姿勢を見せますが、決定機さえつくれません。

アディショナルタイムのコーナーキックではチョン・ソンリョンも上がったものの実らず、無敗記録はストップしました。勝った瞬間、福岡はサポーターも含めて優勝したかのように喜びを爆発させます。

記録はいつか途切れるもの。川崎は無敗継続のプレッシャーからは解放されたので、新たな気持ちで一戦一戦臨んでいくほかありません。


前半だけを見れば完全な負け試合でした。それでも後半に修正を施し、意地を見せた川崎が辛うじて勝ち点1を獲得しました。

試合間隔のあいていた広島は、ジェジエウ、車屋紳太郎にも積極的にプレスをかけてきました。その鋭さに苦しみ、インサイドハーフに効果的なボールをつけることができず、15分過ぎまでは脇坂泰斗、旗手怜央が試合からほとんど消えていました。

その後もボールを保持して中盤までつなぐことは可能になっても、広島の5-4-1の4のラインをうまく突破するパスが出せず、ミドルゾーンで広島に引っ繰り返されます。

そういった攻防が続く中、27分に失点を喫します。藤井智也のスローインが起点でした。コーナーフラッグ付近でボールを受けた柴崎晃誠はマイナスのパスを選択。川崎の選手はボールに意識を向け過ぎていたため、その先にはフリーの柏好文がいました。柏は丁寧に合わせてゴールネットを揺さぶります。

意気上がる広島の勢いに川崎は飲まれます。広島のボール保持率は上がり、川崎ゴール付近に何度も迫られました。2失点目を許さなかったのが救いでした。

鬼木達監督はハーフタイム明けに宮城天を投入。加えて中盤で苦労していた旗手を右ウイングに、そして安定感のある家長昭博をインサイドハーフへと入れ替えます。

この変更が功を奏し、宮城を生かしながら少しずつ川崎がリズムを取り戻しました。ただ、フィニッシュの精度を欠いたため、得点には至りません。

そこで次の一手が打たれます。ベンチは67分、ジョアン・シミッチに代えて橘田健人、脇坂に代えて遠野大弥を送り込みました。全体のバランスを重視するより、攻撃に注力する交代でした。

6分後、橘田のロングパスを旗手が収め、ボックス内で粘りラストパス。最後はレアンドロ・ダミアンが確実にゴールにねじ込みました。これで同点です。

勝ち点3を得るためにさらに攻める川崎に対し、交代機会をすべて使い切った広島は青山敏弘が負傷した際にフレッシュな選手を入れられない事態に陥ります。

このわずかな優位を生かすことはできないままタイムアップ。勝ち点を得られずに終わることは避けられ、無敗は続きましたが、首位のポジションが危うくなる結果に選手、監督の表情は険しく冴えません。ホームに戻って戦えない厳しい日程がもう少し続くだけにうまく切り替えていかなければなりません。


5日前の大分トリニータ戦で負傷交代したレアンドロ・ダミアンがスタメンに名を連ね、長期離脱中だった小林悠もベンチ入りを果たしており、チームの当面の不安は払拭された試合前でした。さらに東京オリンピックを戦った旗手怜央も戦列に復帰。現段階での陣容は整っていました。

しかし、上島拓巳が退場して高橋祐治が入るまでの5分間を除いては5バックを敷いた柏の守備を破れません。柏の守護神、キム・スンギュにも何度もシュートを阻まれました。

前半はレアンドロ・ダミアンにボールを集められずにミドルシュートが目立ち、ペナルティエリアの深い位置をとれずにいました。得点の可能性の高い、惜しいシュートは旗手の体勢を崩しながら放った1本のみでした。

後半になってニアゾーンを取りに行くプレーが出始め、相手ゴールにより近付くことはできたもののゴールには至らず、宮城天のラストパスを受けた脇坂泰斗のシュートは枠を外れ、積極的な仕掛けで再びボックスに進入した宮城のシュートはポストに嫌われます。

柏は後方に加えて中盤も中央を固めて守っていたため、谷口彰悟、ジェジエウからの縦に差し込む効果的なパスがほとんど出せませんでした。ダイナミックな動きも少なく、攻撃の形がややスローテンポになってしまいました。

逆に柏には川崎以上に大きな決定機を二度つくられます。そこは登里享平、ジェジエウらの奮闘によって防ぎました。

10人になってからの柏は守備に専念する戦い方を志向。数的優位を生かしたい川崎は、インサイドハーフを遠野大弥、橘田健人に代え、残り5分のところで車屋紳太郎と小林を投入しますが実りません。

5分あったアディショナルタイムも生かせず、1年半で21得点を挙げた三笘薫の移籍が正式に発表されて初めてのゲームは、今シーズン初のスコアレスドローに終わってしまいました。


10分にエンリケ・トレヴィザンとの駆け引きに勝ったレアンドロ・ダミアンの先制点が決まり、再開初戦で幸先のいいスタートを切ったかに思われました。ところがレアンドロ・ダミアンが左足の筋肉系の負傷により27分で交代を余儀なくされます。AFCチャンピオンズリーグで離脱した小林悠がまだ戦列復帰していないため、大きな痛手となりました。

ここから川崎は苦しい時間が続きます。自陣深くでボールを回収し、クリアではなく前線へのパスにして攻撃を仕掛けようにも前で、特に代わって入った知念慶のところで収まらず、たびたび大分のターンに戻ってしまいました。大分は40分にコーナーキックを獲得するなどして少しずつ攻めの糸口を見出してきます。

ハーフタイムを挟んでも状況は変わりません。ただ、ジェジエウ、谷口彰悟を中心としたディフェンス陣が相手に容易にペナルティエリアで仕事をさせなかったため、チョン・ソンリョンが慌てる場面はありませんでした。とはいえ点差はわずかに1点。何らかのアクシデントで失点するリスクはあります。

大分が新加入の梅崎司、増山朝陽らを送り込む中、鬼木達監督が動いたのは75分のことでした。車屋紳太郎、遠野大弥、宮城天と一気に3人を送り込んで停滞した流れを変えに出ます。

すると2分後、待望の追加点が入ります。宮城の仕掛けをきっかけにした攻撃から、最後はこぼれ球を拾った登里享平のやわらかいファーサイドへのボールに遠野が反応して決めました。先制後はシュートが枠に入らないことが多く苦しんでいましたが、ようやく2点目が生まれます。クロスには車屋がセンターバックに入ったため、アンカーにポジションを移した谷口も走り込んでいました。

終盤で安全圏に入った川崎は、ようやく落ち着いて時間を進められるようになります。その中心にはキープ力とゲームを読む力に優れた家長昭博がいました。あとは大分の隙をうかがいながらタイムアップを待つのみという状況をつくりだします。

試合はこのままクリーンシートで終わり、無敗記録を継続。川崎を追う横浜F・マリノスが清水エスパルスと引き分けたため勝ち点差を広げることにも成功しました。


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