22インチのフットボール

備忘録を兼ねて試合を振り返ります

2021年07月

難しい試合でした。グループステージ突破をかけた大邱との一戦は終盤まで気の抜けないゲームになりました。

序盤は川崎に自陣でのらしくないミスが散見され、簡単に相手にボールを渡す場面がありましたが、徐々に改善されて安定感を取り戻します。

35分、旗手怜央の右からのクロスを受けた三笘薫がシュートを打つもポストをヒット。反応の難しいこぼれ球に対して体を投げ出したレアンドロ・ダミアンが頭で先制点をもたらします。

ところが43分、エジガルに同点弾を決められてしまいます。安庸佑のクロスに飛んだ谷口彰悟とジョアン・シミッチが重なり、易々と大邱の背番号9にボックスの中央でボールを渡す結果となりました。

追い付いて勢いの出た大邱は後半もじっくりビルドアップするというよりも積極的にロングボールを多用しながら、ピッチを幅広く動くセシーニャを絡めて攻めてきます。

我慢を強いられる苦しい展開の中で違いを見せたのは家長昭博でした。アタッキングサードまで進むと的確にボールを扱い、角度の厳しいところからシュートを放って伏線を張った上で、55分には脇坂泰斗にラストパスを出し決定機を演出するなど非常に効果的な働きを見せます。

そうした中、勝ち越しとなる2点目は得意の即時奪回から生まれました。脇坂がイ・グノからボールを奪い、レアンドロ・ダミアンが仕留めます。

スタメンを引っ張った後の最初の交代では脇坂とシミッチをベンチに下げます。ここですでにイエローカードをもらっていたシミッチのポジションに大島僚太と山村和也を配し、いつもの4-3-3から4-2-3-1にシステムを変更。後方を厚くして自陣での防御力を高めます。

そして87分、家長のリスタートを起点として、三笘がドリブルで仕掛けてニアゾーンへ進入。その流れでラストパスを入れると、レアンドロ・ダミアンが丁寧なインサイドキックでハットトリックを達成。試合を決定付けるゴールが決まります。

アディショナルタイムには三笘の位置に知念慶を送り込み、前線タッチライン際でキープさせて時計の針を確実に進めます。最後は危なげなく相手陣内で逃げ切りました。

過去4戦とはスタジアムが異なりビッチコンディションが悪い中、普段通りのショートパスを連発するプレーを思うように披露できないところもありながら、全員が労を惜しまず攻守にわたって集中した結果、一発勝負のノックアウトステージ進出を決めました。

次の大邱FC戦を万全の体勢で迎えるためにも、川崎にとっては決して落とせないゲームでした。実際には得点を取るまでに苦労しましたが、とにもかくにも無事に勝利で終えることができました。

前半は数的有利なサイドを重視するというよりは、センターバックの山村和也、車屋紳太郎から相手中盤4枚の守備ラインを通過するパスを数多く供給して崩していきました。

先制点は川崎が絶えず行う前線からの守備がきっかけとなります。長谷川竜也のプレッシャーを嫌った相手のバックパスを知念慶がさらってゴールに結び付けました。

以降は形はつくるものの、アンソニー・ピンザスの好セーブにも阻まれて追加点が奪えません。後半はユナイテッド・シティがよりコンパクトな陣形をとるようになり、センターバックからの縦パスが通りにくくなりましたが、川崎が焦れることはなく地道に得点機会を窺いました。

ただ、さすがに2点目が遠い時間が長く続いたため、鬼木達監督は残り20分を切った段階で右サイドを梃入れ。山根視来、家長昭博を揃って投入します。

その効果は覿面でした。78分、家長がニアゾーンに走る山根にパスを出し、山根は懸命にマイナスのクロスを入れます。それを脇坂泰斗が横に流し、最後は長谷川が詰めました。

時間帯を考えてもセーフティリードと言えるスコアになり、終盤のキーラン・ヘイズのミドルシュートはチョン・ソンリョンが防いだことによってクリーンシートで試合をクローズできました。

欲を言えば、この先何が起こるかわからないことを考えて大量点が欲しいゲームではありましたが、最低限の勝ち点3は獲得しました。これで次の試合に引き分け以上でノックアウトステージ進出が確定します。



前節の北京FC戦同様の大勝でしたが、今回の川崎は最後までゴールに貪欲な姿勢を見せました。

34分に大島僚太のコーナーキックを起点に谷口彰悟がフリックして三笘薫が先制するまでは、相手の整えられた5-4-1の守備網攻略に手を焼きます。最終ラインが5枚できっちり埋められていたため、外回りの攻撃も前線で詰まっていました。

ゆえに谷口が一気に前線に蹴り込んだり、大島が狭いところから鋭いパスを出したりするなど工夫をして打開を図ります。そうした中でセットプレーを獲得しました。

大島は前半だけで退きましたが、復活を強く印象付けた得点の場面は、レアンドロ・ダミアン の落としを受けてサイドに展開するかのような態勢からゴールに突き刺してみせました。

後半は今シーズンからの新戦力の躍動が見られました。とりわけフル出場を果たした橘田健人の働きは見事でした。

シーズン当初はボールへの絡みも少なく、やや遠慮がちに見えた背番号22は、精力的にピッチを動き回りハットトリックを達成。残り15分ほどのところでインサイドハーフから右サイドバックに回っても運動量は衰えませんでした。

リードしていて余裕の試合運びができたのも要因でしょうが、鬼木達監督の采配も巧みでした。前節休めたジェジエウと3トップはフル出場させつつ、交代ごとに盛んに選手のポジションを変えていきました。そうして生まれた健全な競争下で崩れることなく選手が期待に応えたのです。

終わってみれば8-0。アディショナルタイムには脇坂泰斗が決めて試合を締めくくりました。

チーム状態は非常によく、中弛みもありません。3日後の再戦にも大いに期待が持てるゲームでした。

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