22インチのフットボール

備忘録を兼ねて試合を振り返ります

2021年07月

余力を残しての完勝でした。警告の累積による酒井宏樹の次戦出場停止を除いては、ベンチワークを含めて実に申し分のない戦いができました。

4-5-1のコンパクトなブロックを敷くフランスの攻略には時間を要しましたが、27分に田中碧が中盤の守備ラインを突破するパスを久保建英につけたところから一気に攻め、最後は久保が先制点を記録します。

また、先制点もそうでしたが、酒井による2点目も先発起用された上田綺世の積極的なシュートがゴールにつながりました。

ビハインドが広がったフランスは前半のうちはディフェンスから入るやり方を変えず、後半になってようやく攻撃に重きを置くようになりました。それでも冨安健洋が戦線復帰した日本の最終ラインには安定感があり、決定機をつくらせません。

70分に旗手怜央のスピードを殺したパスを三好康児が決めて3点差にすると、森保一監督は累積警告による出場停止を避けるべく遠藤航と堂安律を下げて板倉滉と相馬勇紀を入れます。

点差が開いたため、日本は最終ラインを中心にボールを回して残り時間を消化します。三好へのファウルで1人少なくなったフランスが激しく来ないこともあり、余裕を持ってプレーできていました。


最後の交代枠はメキシコ戦でイエローカードをもらっていた田中に代えて前田大然を入れるために使うと、その前田がアディショナルタイムにゴールを決めてみせました。

5人目の前田が入った際には中山雄太と旗手のポジションも変えましたが、チームのバランスは崩れません。タイムアップまで守り切り、3連勝で準々決勝進出を果たしました。

年齢制限のない日本代表にとってはホームの中のホーム、埼玉スタジアム2002での戦いでしたが、余裕を持ってボールを保持できた3日前の南アフリカ戦とは打って変わって、少しでももたつくと激しいプレスにさらされるタフなゲームとなりました。

序盤から苦しい中で日本はサイドに活路を見出そうとします。まずは遠藤航がアウトサイドで相馬勇紀に出してコーナーキックを獲得。続いては酒井宏樹が堂安律に出し、堂安が平行に入れたグラウンダーのボールに久保建英が突っ込みゴールネットを揺らしました。

さらに相馬がボックス内で仕掛けることにより、VARの介入によるオンフィールドレビューの結果PKを得ると、これを堂安がほぼ真ん中に蹴り込んで11分でリードを2点に広げます。

ダメージを受けたメキシコはこれ以上傷口を広げたくないのか、立ち上がりよりも攻守両面で慎重にプレーするようになりました。対する日本は畳み掛けるようにショートカウンターを繰り出して貪欲にゴールに迫ります。

ただ徐々にメキシコがペースを取り戻し、30分過ぎになるとミドルゾーンでは相手が優位に立ちます。ここから日本がボールを支配する時間が短くなり、最後まで体を張って我慢する時間が続くこととなります。

ハーフタイム明けも構図は変わらず、日本はメキシコに押し込まれ、加えて主戦場となるエリアが自陣深いところへと移っていきました。それでも決定的なチャンスをつくらせないで凌ぎます。

防戦気味の日本はカウンターに勝機を見出したいところですが、こちらもビッグチャンスはつくれず、枠内に飛んだシュートもギジェルモ・オチョアの懐に難なく収まりました。

そんな中、田中碧が中盤から出したパスを受けた堂安がペナルティエリア手前で倒され、ファウルを犯したホアン・バスケスが68分に一発退場となりました。これで数の上では日本が有利になります。

相手の枚数が1枚少なくなり、ピッチには日本が攻めるスペースが生まれました。森保一監督は三笘薫、上田綺世を送り込み、前線のさらなる活性化を図ります。

流れの中で崩しての得点は難しくなったメキシコは、セットプレーに狙いを定め、実際に85分に途中投入のロベルト・アルバラドがフリーキックを沈めました。谷晃生は手前で飛んだセサル・モンテスの動きに釣られて阻止しきれません。

1点差に詰め寄られ、アディショナルタイムを含めて10分近くありながら日本は辛抱強く耐え抜きます。終盤は三笘が相手陣内でキープするなどして時間を進めました。

交代枠は2枚残っていましたが、森保監督はそれを使わないまま、谷のファインセーブにも救われてタイムアップを迎えます。これで勝ち点を6に伸ばしてグループ首位に立ちました。

しかしスタメンは過密日程にもかかわらず前の試合から1人変えただけで臨んだ上、後ろのメンバーを中心にイエローカードを受けている選手も少なくないため、引き分け以上で首位通過が叶うとはいえ、次のフランス戦での選手起用が非常に重要になります。


直前まで開催が危ぶまれた試合は、序盤からホームの日本がミドルゾーンで余裕を持ってボールを握りました。前からプレスをかけてこない南アフリカは5-4-1のブロックを敷き、自陣に引いて守ります。

ただ大事な初戦とあって日本に硬さもあり、決定機もコーナーキックもないまま時間ばかりが過ぎる中、32分に林大地のシュートがロンウェン・ウィリアムズの正面を突いたことでゲームが動き始めます。

直後に三好康児のシュートがウィリアムズを襲い、初めてのコーナーキックを獲得するなど日本が少しずつ相手ゴールに迫りだしました。

加えて南アフリカが攻めてきた後、相手の陣形にコンパクトさが失われた際にできたスペースを活用して攻める姿勢を見せて流れをつくります。

後半に入ると多少強引にでも相手のブロックをこじ開けようと攻撃のギアを上げます。堂安律と久保建英を中心に機動力を生かして南アフリカ守備陣をボックスの中に押し込んでいきます。それにより陣形にも乱れが生じます。

一方、ウィリアムズからのロングキックは前半のハイボールからより低く速い弾道に変わったものの、そのボールの大半は日本の選手のもとに飛び、すぐさま攻守が入れ替わります。

日本優位の状況が続くもゴールが奪えず、全体の運動量が落ち始め、森保一監督が上田綺世と旗手怜央を投入しようとしたまさにその時、左サイドに流れていた田中碧のサイドチェンジのボールを抜群のコントロールでトラップした久保が切れ込んでファーサイドを狙って決めました。かつてこの東京スタジアムをホームとしてプレーしていた背番号7による待ちに待った先制点です。

終盤は南アフリカも得点を求め、長いボールをシンプルに前線に放り込むのではなく、中盤からつないで攻めてきたため、日本は対応に追われますが、吉田麻也を中心とした堅いディフェンスによってゴールを許しません。

最後までレフェリーのヘスス・バエンスエラのジャッジにストレスをため、この先を考えると余計なイエローカードをいくつか受けてしまった試合でしたが、1点を守り切って重要な一戦を制しました。



川崎がウズベキスタンでAFCチャンピオンズリーグ(ACL)を戦っていた間、横浜F・マリノスが勝利を重ね続けたため、リーグ戦は独走状態とは言えなくなっており、帰国後間もないとはいえこの試合は是が非でも勝ち点3が必要でした。

清水は川崎のビルドアップ時にハイプレスをかけてはこないものの、前線の鈴木唯人とチアゴ・サンタナがジョアン・シミッチを消す動きをしており、立ち上がりは中盤を効果的に使うことができませんでした。

それでも17分に登里享平のスルーパスを起点にレアンドロ・ダミアンが井林章を引き剥がし、フリーの状態でシュートではなくパスを選び、ACLで存在感を増した脇坂泰斗が押し込んで先制すると一気にリズムを取り戻します。

押し気味にゲームを進めるも前半のうちに追加点は奪えず、次の1点が入ったのは50分でした。ゴール前の混戦からこぼれたボールを大島僚太が受け取り、落ち着いて決めたのです。ウズベキスタンで徐々に実戦に慣れて、この日はプレータイムが45分を超えた背番号10の見事な一撃でした。大島はそれから66分までピッチに立ちます。

71分に決定機を連続してつくられ、その時はチョン・ソンリョンがファインセーブで凌いだものの、以降は川崎の中盤の強度が落ちて清水の攻撃を受ける形になります。それでも最終ラインプラスシミッチを中心に守備を固め、失点は許しません。

苦しい状況でチームを助けたのは家長昭博でした。奥井諒とのマッチアップ後に座り込んだ際にはヒヤリとしましたがプレーに支障はなく、フィジカルの強さを生かしたキープ力で試合を落ち着かせ、川崎に流れを呼び戻します。

一方で鬼木達監督は足をつらせた脇坂に代えて小塚和季ではなく山村和也を投入。シミッチと横並びのポジションに置いてシステムを4-2-3-1に変更。このまま逃げ切りを図ります。

残り時間が少なくなってからは、チーム全体としてボールキープをメインにしつつ、隙あらば3点目を取りに行く姿勢でプレー。最後まで我慢強く戦って完封勝ちを収めました。

移動などもあってコンディション面で難しさはあったはずですが、6日前の北京FC戦とは一変してほぼベストメンバーで臨み、価値ある1勝を挙げるとともに、長谷川竜也不在の左ウイングで先発した宮城天も大島と一緒に退くまでまずまずの働きを見せました。これでリーグ戦の無敗記録は22に伸びました。

前節、大邱FCを下してグループステージの目標を達成した川崎は、山村和也をゲームキャプテンとして大幅にメンバーを入れ替えて臨みました。週末に清水エスパルスとのリーグ戦、その後に天皇杯を控えている中での鬼木達監督の選択でした。

出場した選手に気負いや空回りといったものはまったく見られませんでした。とはいえ、プレッシャーの少ないセンターバックからの球出しを起点にサイドに偏りがちになっていた攻撃のバリエーションの部分や連携面では個性の強いファーストチョイスの面々と比べると物足りなさはあったものの、結果的に前後半に2点ずつ奪って勝利を収めました。

フル出場した中で際立っていたのは、ゴールを含め3得点に絡んだウイングの宮城天とプレースキッカーを任されて68分にはフリーキックからオウンゴールを誘発した小塚和季です。小塚はその前に紛れもない自身によるゴールを決めており、インサイドハーフとして中盤での散らし役としても貢献しました。

残り10分を切ってからは、足をつらせた知念慶に代わってレアンドロ・ダミアンが入ったのを皮切りにアンカーとして谷口彰悟、そして家長昭博が加わり、チームの色合いを変えて試合をクローズしました。

幸いなことにこのゲームでは特段目立った負傷者は出ずに済み、北京のシュートは81分の1本しか与えていません。ベンチ外で休養を与えられたチョン・ソンリョンに代わって最後尾で構えた丹野研太が慌てるシーンはありませんでした。

最終戦も勝ったことによって、グループステージ6試合全勝での首位通過を決めました。東京オリンピック後、シーズン後半になると等々力陸上競技場が使えないためアウェイゲームの続くリーグ戦に加え、ルヴァンカップも日程に組み込まれる過密さを考えても、たくさんのプレーヤーが試合に絡んで戦い抜けたことはプラス材料となるでしょう。


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