22インチのフットボール

備忘録を兼ねて試合を振り返ります

2021年03月

4日前のヴィッセル神戸戦での消耗、それも最後の最後で追い付かれたというダメージの大きさゆえか、前半の川崎は動きが重く感じられました。10分にハイプレスから山根視来のミドルで西川周作を襲いはしたもののそこからが続きません。

この日は右に小林悠、左に長谷川竜也と両ウイングのキャラクターを変えて臨みましたが、ビルドアップから浦和の4-4-2のブロックを攻略する糸口が見つからないまま時間が流れていきます。

それでも39分、小林、山根、脇坂泰斗、そしてレアンドロ・ダミアンが絡んで右サイドを崩して小林のクロスまでつなげたことで感覚を取り戻すと、42分には山根のクロスに小林が合わせて先制します。ウイングながら、相手ゴール付近ではストライカーとして中央に陣取る小林を生かした得点です。

流れをつかんだ川崎は、ハーフタイムを経ても切れることなく圧巻のゴールラッシュを披露します。

49分、直前に危険なミスパスをしてしまったジェジエウのボール奪取を起点に、最後は小林のクロスを胸で受けたレアンドロ・ダミアンの得意とするアクロバティックなボレーが決まりました。

この追加点を皮切りに、2分後には旗手怜央が決めます。ハーフスペースを切り裂くアシストをマークしたのは、神戸戦から基本の立ち位置にとどまらず広範囲を動くようになったジョアン・シミッチでした。さらに今度はレアンドロ・ダミアンから小林という逆の流れで4点目を奪います。

とどめは67分、混戦のあと、脇坂が大久保智明からボールを奪うと、素早く左足を振り抜きます。川崎らしい、攻守の切り替えの早さを体現したシーンでした。

大量リードして試合の趨勢が決まったことで、73分に田中碧を下げることができました。背番号25はフル出場すると12km前後走ってくれる頼もしい選手ですが、ようやく休ませられました。加えてこの日は家長昭博を休ませることもできました。

終盤は優位に立ちながらも前のゲームの反省を踏まえて不用意な失点を防ぐべく、後方でボールを動かす時間を増やし、隙があれば前線に攻め込む形をとります。結果、クリーンシートで終えることとなり、好調な名古屋グランパスの追撃を受けながら首位キープでリーグ戦の中断期間に突入します。


単なる敵地ではありませんでした。川崎の選手は終始、ノエビアスタジアム神戸の芝に苦しめられました。神戸の選手も数回、足を滑らせるシーンはありましたが、川崎の比ではありません。

前線からハイプレスをかけたいのにかけきれない、豊富な運動量が持ち味の田中碧が自陣で寄せ切れない、三笘薫が得意のドリブルをスタートさせてバランスを崩すなど、小さなほころびが数え切れないほど出てしまいます。

それは昨シーズンの神戸戦でも見られた光景であり、川崎としてもなんらかの対策はとっていたはずですが、やはりずっと足元に神経を使わなければなりませんでした。

ファーストチョイスの11人で臨んだ試合はこうして通常以上に消耗する形となり、前半はレアンドロ・ダミアンとジェジエウにフリーでの決定機がありながら枠にシュートが飛ばず、先制したのは72分でした。

前川黛也がボックスを飛び出してクリアしたボールを谷口彰悟がダイレクトで前線に送り、高い最終ラインとの駆け引きを制したレアンドロ・ダミアンが無人のゴールにロングシュートを決めたのです。

鬼木達監督はベテランの家長昭博を64分に遠野大弥に代えただけで、先制点が認められるまで大幅な入れ替えは行いませんでした。それだけ膠着した難しい試合であったと言えます。待望の先制後、ジョアン・シミッチと脇坂泰斗を下げて、塚川孝輝、橘田健人を入れました。

1試合3得点を掲げている川崎は終盤、しっかり逃げ切るというよりは2点目を奪いに行く選択をしました。結果、オープンなボールの行き来が激しい展開になります。

すると下がったドウグラスに代わってトップに入った古橋亨梧のスピードに手を焼き、二度ピンチを迎えますがそこは谷口とチョン・ソンリョンによって逃れます。

しかし90+10分、途中投入された初瀬亮の左足のクロスに菊池流帆が頭で合わせ、同点弾が決まってしまいました。谷口も飛びはしましたが、空中での競り合いに遅れてしまいます。

この場面の前には相手コーナーキックからの流れでチョン・ソンリョンと接触したジェジエウが負傷。治療を行い一度ピッチを出なければならず、失点の場面では許可が出て戻ってはいたもののボックス内の守備には間に合いませんでした。実質、川崎の選手が1人少ない中、パワープレーに出てきた神戸の執念が実った格好です。

川崎としては確実にウノゼロで試合のテンポを遅くしてでも終わらせる策をとってもよかったはずです。ポリシーを貫くのも大事ですが、ピッチ状態へのアジャストに苦労した試合であるからこそ、安全策を選ぶ手はありました。これで開幕からの連勝は5でストップしました。


終盤までゴールを奪えない難しい試合でした。特に前半は柏の適切な対応に苦しみます。

ビルドアップ時は当然のごとくジョアン・シミッチが江坂任と呉屋大翔に消されて、深い位置のパスコースが減る中、ミドルゾーンでのパスや1対1の勝負で引っかかることが多く、リズムがつかめません。雨によってボールの転がりが悪いピッチコンディションも少なからず影響したかもしれません。

一方、柏のターンになった際にキム・スンギュからつなぐ場面は少なく、川崎が狙いとする高い位置でのプレスからのショートカウンターも発動できません。

スコアレスで試合が停滞していたため、鬼木達監督は後半頭に3枚同時交代を決行。長谷川竜也に代えてゴール前での突破が期待できる三笘薫を送り込むとともに、イエローカードを1枚受けていた脇坂泰斗を橘田健人に、シミッチを塚川孝輝に代えます。

早速、三笘が与えられた役割を果たすべく、左サイドから仕掛けます。クリスティアーノと高橋峻希との1対2の局面で見事に2人を引き剥がし、ラインギリギリのところから右足アウトサイドで旗手怜央のシュートにつなげました。

またピッチ状態にもフィットしてチーム全体のビルドアップも改善。車屋紳太郎からライン間への鋭いグラウンダーのパスが通るなど、次第に前へとボールを動かせるようになります。

それでもキム・スンギュの好守もあって1点が遠く、三笘が高橋を振り切り、柏守備陣の裏をかいて針の穴を通すようなパスを出し、家長昭博がゴールに蹴り込むまで80分かかりました。

リードしてからは若干スピードを落としつつ、隙をうかがいカウンター主体で追加点を奪う姿勢を見せました。田中碧がルーズボールをダイレクトでスペースに流し、それを受けた家長が前に出ていたキム・スンギュの頭上を狙ったループシュートを試みるなど決定機をつくりだします。

しかし点差はそれ以上開かずにタイムアップを迎えました。簡単にはいかない、厳しい試合を制してアウェイ2連戦に臨みます。


ターンオーバーを行ったベガルタ仙台戦から中3日、鬼木達監督は再び現時点でのファーストチョイスと思われる11人を選出してホームゲームに臨みました。

開始直後こそ徳島の前線からのプレッシャーを受けますが、5分を経過して以降は現状を把握した選手達によっていつもの川崎ペースに持ち込みます。

この試合では例によって二度追い、三度追いを果敢に行うレアンドロ・ダミアンのスプリントが奏功。2得点とも背番号9の頑張りからゴールが生まれます。

先制点のシーンではレアンドロ・ダミアンがルーズボールの争いで追い続けたことで流れたボールを三笘薫が拾います。三笘は相手守備陣の数を冷静に見極め、オンサイドのレアンドロ・ダミアンにラストパスを供給しました。

42分の2点目はレアンドロ・ダミアン一人でボール奪取からゴールまでを完結させます。一度あきらめたと見せかけて追い回し奪ってからのシュートは、やや前に出ていた上福元直人の立ち位置を踏まえた一発でした。

ピンチらしいピンチは37分の山根視来とジェジエウの間に藤原志龍のスルーパスを通され、オーバーラップした吹ヶ徳喜にクロスを入れられた場面です。ここは飛び込んだ垣田裕暉が合わせることができずに事なきを得ます。90分を通じて打たれたシュートも2本だけでした。

川崎としてはジョアン・シミッチのプレータイムが60分あたりでとどまることが多く、延びないのが気がかりなくらいで、後半もチームは危なげない試合運びをします。代わって入る選手も誰一人ハードワークを惜しまずに行い、中央からの攻撃を封じて試合をクローズしました。

これで無傷の4連勝。過度の消耗もほとんどなく、ディフェンディングチャンピオンは順調に突き進んでいます。今後の不安材料としては負傷もさることながら、再来週のインターナショナルマッチウィークに一部選手が招集された場合の疲労の蓄積が挙げられます。


予想通りスタメンを大幅に入れ替えてきた川崎。ただ、前半に限って言えばその内容は圧倒的でした。メンバーが変わったことによる不安やぎこちなさはまったくありません。

4点を奪ったのもさることながら、ボールを失ったときの即時奪回の速さは驚異的でした。ミドルゾーンで数々のボール奪取を成功させ、攻め続けたのです。単に層が厚いだけでなく、チーム全体の共通意識の高さがうかがえる45分でした。

得点シーンに関しては、左サイドから生まれた2点目が印象的でした。水曜日のセレッソ大阪戦で90分に同時投入された長谷川竜也、小林悠、遠野大弥の3人が絡んで、最後は遠野がJ1初ゴールを記録。起点になるクロスを入れた長谷川は負傷前の好調な状態を取り戻しつつあります。

しかし、さすがに大量リードしての後半は、メンバーの入れ替えもジョアン・シミッチを下げて塚川孝輝を入れただけだったこともあってか、前半ほどの強度が見られなくなります。

逆に緩みがちだったライン間の距離を狭め、復興応援試合と銘打ったゲームでもう一度攻撃に出ていく姿勢を前面に出してきた仙台に押し込まれ、58分に上原力也のゴールを許します。

失点後は多少持ち直したものの、得点を奪うには至らず、鬼木達監督はたまらず72分に家長昭博と三笘薫を投入します。強烈なプレスをかけてくれるハードワーカー、レアンドロ・ダミアンの投入は見送られましたが、勝利は確実な中でも明らかに5点目を求めた交代です。

家長は指揮官の意図を体現するがごとく前線での守備から積極的に行います。また家長が出てきたことで山根視来とのコンビでの崩しが期待できるようになりました。

結果、83分に右サイドに流れていた旗手怜央がゴールを奪ったため、試合を締めくくるべく谷口彰悟が送り込まれます。

谷口には山村和也、車屋紳太郎と3バックを形成するのではなく、アンカーのポジションを任せます。ただ、センターバックを務める普段とは見える景色が違ったため、一度、仙台の攻撃を許す危険なミスを犯してしまいました。

ともあれ3連勝を飾った川崎。3試合で10得点の荒稼ぎで勝ち点を積み上げます。今シーズンは等々力陸上競技場がオリンピック・パラリンピックでイギリス代表のキャンプ地になる関係で、夏場はアウェイ8連戦が予定されており、苦しい日程となっている以上、スタートダッシュは非常に重要になります。


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