22インチのフットボール

備忘録を兼ねて試合を振り返ります

2021年02月

ディフェンディングチャンピオンは全員が労を惜しまぬハードワークを続けたことで美しいサッカーを披露することにつながり、鬼門のホーム開幕戦で白星を挙げました。

初戦としては試合の入りが非常によく、それだけにゴールが欲しい前半でした。川崎は左サイドの三笘薫に注目が集まりがちで、実際に三笘が左サイドバックの旗手怜央とも時折絡みつつチャンスをつくる場面もありましたが、得点はいずれもインサイドハーフが開いた右サイドから生まれました。

先制点は脇坂泰斗の浮き球に対して家長昭博と山根視来が重なりかけるも、家長が山根を見てスローダウン。走り続けた山根が意表をついてヒールで落とし、家長がダイレクトで合わせます。

43分の追加点は、田中碧がサイドに流れたレアンドロ・ダミアンとのワンツーを決めて鋭いクロス。家長が頭で押し込みました。それまでオビ・パウエル・オビンナに阻まれるものの枠内シュート自体は多く、いい流れの中で得点を重ねました。

ただ、一昨シーズンの王者がこのまま終わるはずはなく、アンジェ・ポステコグルー監督は左サイドで魅せるドリブルを仕掛けたルーキーの樺山諒乃介に代えて、プレス強度の高い前田大然を中央に配置。システムを4バックにフィックスして修正を図りました。

ビハインドを追い付こうとする強力な攻めに苦しんだ川崎ですが、ジェジエウ、谷口彰悟を中心に集中したディフェンスで失点を許しません。先週のガンバ大阪戦のような中途半端なプレーはほとんど見られませんでした。加えて前線の3枚も危険な時には自陣に下がって対応するなど、チームの守備意識の高さを感じさせました。

数回あったカウンターのチャンスを仕留めきれず、鬼木達監督が求める3点目を取ることはできませんでしたが、開幕戦としては上々の出来でした。64分からインサイドハーフに入ったルーキーの橘田健人もこのクラブで生き残ろうとして奮闘。リザーブメンバーを含む全員が同じ方向を向いて戦っていたのが印象的でした。


リーグ開幕前の一発勝負で一時は2点差を追いつかれましたが、前後半とも飲水タイム後にゴールを奪って90分で勝ち切ることができました。

先月の天皇杯決勝とは異なり、後方を重くすることなく前線からプレッシャーをかけてきたガンバに対し、序盤は余裕をもってボールを動かせずにいました。

それでも移籍した守田英正に代わって新加入のジョアン・シミッチがアンカーに入った川崎は、昨シーズン終盤に見られた危険なエリアでのピンチを招くようなボールロストはなく、レアンドロ・ダミアン、三笘薫までつないで決定機をつくれていました。ゆえに流れとしては悪くありません。

そして最初の飲水タイム明けに三笘が立て続けに得点を挙げます。ワイドに開いた田中碧からのパスを受けての先制点。追加点は山根視来の積極的な上がりを生かしました。その間わずか3分でした。

これで完全に主導権を握った川崎は、王者の凄味を見せつけて試合を折り返します。

ハーフタイム明けは息を吹き返したガンバに自由を与えてしまい、繊細かつ堅実な対応が求められるペナルティエリアでの振る舞いにミスが出て失点を重ねてしまいました。昨シーズンの対戦ではなかった失点です。

追い付かれた鬼木達監督は小林悠、長谷川竜也だけでなく、新加入の選手もピッチに送り込みます。スーパーカップという舞台を活用して、実戦の中でチームの熟成を進めました。

試合としては同点で推移する中、東口順昭が好セーブを披露していただけにPK方式での決着は川崎にとって不利になりかねない展開でした。

そうした状況下での決勝点は見事でした。残り時間少ない場面で確実に攻めるためにサイドに展開するのではなく、田中、遠野大弥が中央を切り裂くパスを繰り出しました。

ガンバ守備陣の隙間を一気に突いたパスを受けた小林が、最後は絶妙なコースを狙ってフィニッシュ。エースとしての役割を果たします。

完全に本調子とは言い難いコンディションのようですが、新戦力も違和感なくチームにフィットしており、きっちりとスーパーカップを獲得して終えました。


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