22インチのフットボール

備忘録を兼ねて試合を振り返ります

2020年08月

清水が恐れずボールをつなぐサッカーをすることから、比較的フレッシュな面々を揃えた川崎は前線からプレスをかける戦い方を選択します。これによって清水は自陣でミスを連発。川崎は次々とマイボールにしていきました。

川崎がビルドアップをする際、前半の清水は川崎のようにはプレッシャーをかけず、ミドルゾーンで待ち構えていました。おかげでセンターバックの山村和也、車屋紳太郎、さらにアンカーの守田英正から前線に展開するミドルパスを多数供給することができました。

受け手となる選手は最終ラインの背後を狙って走ります。ウイングの宮代大聖、齋藤学のみならず、インサイドハーフの旗手怜央、下田北斗も機を見て上がる姿勢を見せました。

こうした厚みのある攻撃の結果、90分を通じて33本のシュートを浴びせます。前の試合で開眼した旗手の2ゴール、そして3点リードした77分にピッチに入り、長期離脱から復帰を果たした中村憲剛の得点はいずれも相手のミスに乗じて挙げたものでした。

旗手が結果を出したのに刺激を受けてか、同期の三笘薫も奮起。名古屋グランパス戦で負傷しても調子を落とすことなく、ヘナト・アウグストにコースを防がれ、一度体勢を崩しても立て直してチームの5点目を奪います。

ディフェンスに関しては、守田が相手の攻撃を遅らせる働きをしていたものの、前半は中盤がややルーズになり清水に前進を許してしまいました。この点はハーフタイム明けに修正がなされ、相手ボールの際には多少人を見る形に変えました。

それでもシュートを打たれるピンチはありました。そこはチョン・ソンリョンの好セーブがチームを救います。守護神の安定感なくして、クリーンシートは達成できませんでした。

直近2試合は苦しい展開・結果となって迎えたこのゲームでしたが、最終的には5-0の圧勝に終わります。

会心の勝利を挙げたタイムアップ直後、中村憲剛は無事にプレーを終えた喜びと感謝を表すように痛めていた左膝を両手でなでました。ピッチを走る姿は、まだ両足で感触を確かめている風でしたが、背番号14の復活はチームに非常に大きな影響をもたらすはずです。


前半の飲水タイム直前に大島僚太のミドルで先制こそしましたが、最後まで選手達がピッチに足をとられることの多かったこのアウェイゲームは神戸相手に苦戦を強いられました。

神戸は両サイドバックが高い位置をとっており、酒井高徳がタッチライン際に、西大伍はハーフスペース近辺にポジションをとりました。必然的に川崎の両サイドバックはいつものように積極的には上がれません。

そこで手薄になるはずの最終ラインには、展開力のあるセルジ・サンペール、山口蛍が顔を出すことで数的不利に陥らないようにしていて、容易には突破できない形になっていました。

また、ミドルゾーンでは田中碧、脇坂泰斗に対して厳しいプレッシャーがかけられ、ビルドアップがうまくいきません。こうして川崎は手詰まりになります。

鬼木達監督は自分達から打って出るというよりは、押し込まれている状況を解決するための選手交代を多く行います。

まずハーフタイムで脇坂を下げて、キープ力の高い右ウイングの家長昭博をその位置にコンバート。これにより中盤の強度を上げます。

次いで酒井に対して守勢に回っていた山根視来を下げ、守備力の高い守田英正を投入。66分には田中を下げてレアンドロ・ダミアンを送り込みます。ここでは小林悠を残して前線の厚みを確保するとともに技術が高く試合をコントロールできる大島をアンカーに下げてビルドアップ時のリスクを軽減します。

数々の手当てを施したことで川崎は神戸に対抗しうる形となり、その結果、75分に旗手怜央の同点弾が生まれます。

旗手は最初の失点時に自身が見ておかなければならなかった西に抜け出されてシュートを打たれてしまい、一時は逆転弾となった2失点目は西を警戒するあまり、フリーで持ち上がったダンクレーの警戒を怠り、ドウグラスへのクロスを上げられてしまいました。後者は旗手だけの責任にするのは酷かもしれませんが、こうした悔しい状況下で、リーグ戦初ゴールという結果によってチームを救えたのは大きいと言えます。

川崎は最後まで攻撃の手は緩めませんでしたが、クロスが乱れて勝ち越しとはなりません。一方、後半は攻めに転じたためにカウンターを食らいやすくなる中、神戸がフィニッシュの精度を欠いたこともあり、2-2の同点で試合は終わりました。

苦しい敵地での連戦で連敗をしなかったことは今後に向けて意味のある結果であり、独走態勢とは言い難くなったものの、首位チームとして最低限の結果を残してホームに帰ることができました。


ミュンヘンでのラウンド・オブ・16の2ndレグ、チェルシー戦があった分、8月の試合数はパリより多く、準決勝から決勝までの日数も自分達の方が1日短い、という諸条件をものともしない戦いぶりで、ドイツ王者がリバプールに並ぶ通算6回目のヨーロッパ制覇を果たしました。

圧巻なのは日程的な不利にもかかわらず、もっとも長い距離を走り回ったトーマス・ミュラーを筆頭にハイプレスを駆使し続けた点です。準決勝はリヨンがブロックを形成して構えるスタイルだったため、あまり必要とされなかった守備方法でしたが、攻撃の意識の強いパリには効果的でした。

そのプレッシャーをかいくぐるべく、トーマス・トゥヘル監督率いるパリはワンタッチですばやくボールを動かしてミドルゾーンの突破を試み、アンヘル・ディ・マリア、ネイマール、キリアン・エムバペというチームが誇る3トップにフィニッシュを託しました。

ただ、浅いラインを敷くバイエルンは帰陣も非常に速く、簡単にはシュートを打たせません。さらに最後方にはマヌエル・ノイアーがおり、ネイマールの決定機を適切な態勢で防ぎました。

高い強度でプレーするバイエルンにあって、ヨシュア・キミッヒとチアゴ・アルカンタラはリズムを変える働きを担いました。常に落ち着き払ったたたずまいで、冷静にピッチ全体を見ています。

先制点はキミッヒの視野の広さが生きました。5月のドルトムント戦で見せたループシュートのごとく、柔らかな軌道を描いたボールはファーサイドのキングスレイ・コマンにピタリと合いました。

追い込まれたパリは、終盤になると頼みのネイマールがタッチライン際でボールコントロールを誤り、バイエルンにスローインを与えてしまうケースが数回あり、焦りの色があらわになります。

それでも最後までカウンターを見せたフランス王者でしたが、狙いが明確だったリヨンに比べるとこの日に限ってはバイエルンにダメージを与えるほどの切れ味はありませんでした。

パリの悲願のチャンピオンズリーグ初優勝はお預けとなり、歴史と伝統のあるバイエルンにビッグイヤーがもたらされました。


昨シーズンのホーム最終戦で川崎の右サイドを攻略していた選手にまたしても苦しめられます。当時、横浜F・マリノスの一員だったマテウスです。今回はコーナーキックで直接チョン・ソンリョンを脅かすにとどまらず、44分に絶妙なピンポイントクロスを上げました。

その先にいたのは金崎夢生。ポストプレーでは泥臭く動いてファウルを誘わんとする金崎に対しては極力クリーンな対応を心がけていた川崎ですが、この場面ではフリーになられて今シーズン初ゴールを献上してしまいます。

前半は互いにチャンスをつくるオープンな入りとなりましたが、このゴールで先制した名古屋は後半からカウンター狙いに切り替えました。

マッシモ・フィッカデンティ監督のもと構築された守備網は強固でした。中谷進之介、丸山祐市らから持ち前の破壊力を警戒された川崎は、シュートを打つ積極性を欠いた、というよりシュートを打たせない守り方を相手にされてしまいました。

連続してゴールを重ねて好調な三笘薫でさえ、ペナルティボックス近辺でシュートではなく変化をつけたアウトサイドのパスを出すなどしていました。

一方、ハーフタイム明けに投入された旗手怜央は、試合にうまく入ることができ、果敢にゴールを狙うもこちらは相手にブロックされてしまいます。

とにかく脅威を与えるような効果的なボールがミチェル・ランゲラックにまで到達しないのです。これでは同点に追い付くことすらかないません。

加えて三笘が稲垣祥との接触を嫌って負傷。長谷川竜也の不在を感じさせない活躍をしていた23歳の離脱はチームにとって大きな痛手となります。

結局、序盤のビッグチャンス以外は攻撃面でいいところがなく、名古屋にウノゼロで逃げ切られてしまいます。連勝記録更新はなりませんでした。この敗戦を引きずらないためには、水曜日に迫るヴィッセル神戸とのアウェイゲームに勝ち切るしかありません。


大分トリニータ戦、北海道コンサドーレ札幌戦と巧みに選手のローテーションを行ってきた川崎の鬼木達監督。この日は、同じように上位対決だった3節前のガンバ大阪戦とまったく同じ11人をスタメン起用しました。

立ち上がりは瀬古歩夢のロングボールをはじめ、マイペースなセレッソに手を焼きました。7分には丸橋祐介に抜け出され、ジェジエウ、谷口彰悟の間を通すスルーパスを出された上、ブルーノ・メンデスにゴールを割られてしまいます。

ただ、今の川崎は先制されたからといって簡単には崩れません。リズムがつくりにくい中、松田陸のハンドで得たフリーキックを生かします。ペナルティエリアの角付近だったため、いつものようにクロスを入れるかと思われましたが、脇坂泰斗は直接ゴールを狙いました。同点です。

2点目は川崎らしさが出た攻撃によってもたらされます。相手選手がいる中央に窮屈なパスを通してミドルゾーンへ進出。これまでブロックの外を回す傾向が強かったため、効果的な攻めとなりました。そこから前線にいた山根視来へと渡り、山根はマイナスのパスを選択。ボールを受けた家長昭博が倒されてPKを得ます。

これを家長が決めて逆転に成功しました。

53分、ハーフタイム明けの早い段階で小林悠が追加点を挙げます。大島僚太が空間を生かしたパスを小林に供給。小林は一旦後方に落とすも、最終的に自分のもとにボールが来てそれを蹴り込みます。

直後にフリーキックから失点して、再び1点差となり試合の緊張感が増しますが、ゴールに向かう迫力は衰えることなく、途中投入された三笘薫、レアンドロ・ダミアンが結果を残してリードを広げました。

スコアが5-2となってからは、相手陣内で速くて短いパスを連続してつなぐ川崎の真骨頂が見られるなど、余裕を持ったプレーが出るようになりました。

川崎は近年相性の悪かったセレッソを下して、リーグ新記録となる10連勝を達成。得点力のすさまじさ、試合を引っ繰り返せる力強さを見せつけての記録です。


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