22インチのフットボール

備忘録を兼ねて試合を振り返ります

2020年07月

相手を終始圧倒する形とはなりませんでしたが、タイムアップ直前にも下田北斗のコーナーキックから谷口彰悟のゴールが生まれ、終わってみれば1-5の大勝でした。

川崎が思うようにリズムをつかめなかったのは、横浜FCがGKから勇気をもってつなぐサッカーをしていたからでした。前半と後半の立ち上がりに関しては、ボールの動くエリアはともかく相手に主導権を握られます。

それでも前半は脇坂泰斗と家長昭博による変化をつけたコーナーキックを皮切りに、フィニッシュの部分で精度の高さを見せて押し込もうとします。ポゼッションに関しても20分あたりから徐々に川崎ペースとなり、横浜FCの選手を自陣に下がらせるようになりました。

流れをつくった川崎は28分、バイタルエリアで横方向のショートパスを連発。左サイドから右サイドへボールを動かし、家長が右足でクロスを入れます。ボールはこの日DFに阻まれてなかなか届かなかったレアンドロ・ダミアンの頭にピタリと合い、シュートはクロスバーを叩きました。

そのこぼれ球を脇坂がコースを狙ったインサイドキックで丁寧に当てて先制点が生まれます。

ハーフタイムまではそのまま川崎が攻め込むも追加点は奪えず、後半、息を吹き返した横浜FCに押し返されます。

59分、コーナーキックの流れで我慢強く残っていた星キョーワァン、田代真一が絡んで、ホームチームが同点に追い付きました。

後半に失速傾向のある川崎には苦しい展開になるも、失点前に投入が決まっていた小林悠と三笘薫がチームを救う働きをします。

チャンスを与えられた三笘は長谷川竜也に負けじと果敢にドリブルで仕掛ける姿勢を見せ、そのプレーがPK奪取につながりました。それを復帰した小林悠がきっちり決めて勝ち越しに成功します。

以降の残り15分プラスアディショナルタイムで一挙3点を奪い、決定力の差を見せつけました。

川崎がゴールを重ねる一方で横浜FCは戦意を削がれ、テンポのいいボール回しは鳴りを潜めます。唯一、斉藤光毅が意地のドリブルで勝負を挑んできますが追撃の1点は生まれませんでした。

難しいゲームを制して川崎は首位をキープ。次は中3日でベガルタ仙台と対戦します。


登里享平、田中碧、大島僚太をベンチスタートとした川崎は、快勝した多摩川クラシコの勢いそのままに立ち上がりから柏を圧倒しました。速いパスで相手を動かし、4-5-1で構えられている中でもハーフスペースやセンターレーンに縦のボールを次々と入れていきます。

マイケル・オルンガとのマッチアップを考えると16分でのジェジエウの負傷交代は誤算でしたが、その不在を感じさせないくらいゲームを支配しました。相手ゴールに迫る迫力はすさまじいものがありました。

開幕から変わらない前線の3トップは引き続き好調を保っており、昨シーズンゴールのなかった家長昭博は、フリーな状態から頭と右足でゴールを記録。レアンドロ・ダミアンも後半早々に脇坂泰斗のコーナーキックに飛び込んで加点します。

長谷川竜也はゴールこそなかったものの、ボックス近辺で仕掛けるドリブルがことごとく成功。終盤にも強烈なシュートを放つなど存在感は抜群でした。

ただ、前半から全体が連動したプレスを含めて強度の高いサッカーをしている関係で、後半になるとそのクオリティが落ちてしまうのが依然として気がかりです。この試合は前半の終わりから一気に3点を奪ってしまったので、直後に失点してもあまり混乱しないで済みましたが、それでも考えられないような小さなミスが散見されました。

シーズンを通して常に先手を取って安全に逃げ切れるとも限らず、これから本格的な夏に突入することを考えても、今の戦い方を突き詰める一方で、ケースバイケースで90分トータルの戦い方を多少は検討する余地があると思われます。

そんな中、チームにとって救いなのは今年限定で5人まで交代が許されている点です。臨時のレギュレーションを最大限活用して、チームを回していくことが可能です。

理想と現実の間でどこまでやり切ることができるのか。王座奪還のために越えるべき壁は決して低くありません。


前節の薄氷を踏むような勝利が、川崎にとっては良薬になりました。慎重に試合に入ってきた東京に前半だけで4点のリードを奪い、レアンドロ、ディエゴ・オリヴェイラ、さらにはアダイウトンというパワフルなアタッカーを相手にジェジエウ、谷口彰悟を中心に守り抜いて連勝を飾りました。

最終ラインの選手たちは、メインの役割であるディフェンスのみならず、攻撃においても大きく貢献しました。前節にも見られた両センターバックの縦へのグラウンダーのパス、ゴールの起点となった登里享平のサイドチェンジ、山根視来の相手DFを抜き去ってからのマイナスのパスと、後方からの援護でチャンスをつくりました。

先制点も登里のスローインが起点でした。ボールがレアンドロ・ダミアンに向かって転々と転がると、背番号9は確実なポストプレーで落とし、最後は大島僚太の強烈なシュートが決まります。

レアンドロ・ダミアンはこの日絶好調で、チョン・ソンリョンのゴールキックのターゲットになり、競り合いを繰り返しながら、前線で効果的にボールに絡みました。

そこへ左ウイングの長谷川竜也が中央に絞って絡み、2得点を挙げます。後半にはクロスバーを叩く惜しいシュートを放ち、ハットトリックのチャンスもありました。

大量リードと過密日程を考慮して、脇坂泰斗、家長昭博、大島、長谷川が70分までにベンチに下がる余裕を見せられた川崎。欲を言えば交代で入った選手によって、もう1点重ねることができればチームはさらに上昇気流に乗れたかもしれません。

確かに東京を翻弄するほど相手陣内でショートパスはよくつながっていました。ただ、ペナルティエリアの中、フィニッシュの部分に迫力を欠いて決定機はつくれませんでした。

とはいえ、味の素スタジアムでの多摩川クラシコにおけるこの結果は、今シーズンの川崎にとって大きな1勝となるはずです。


ホームで鹿島相手に勝ち点3を獲得――。結果だけを見れば順調なリスタートを切ったかのようですが、内容に関しては手放しで喜べないものとなりました。

前半はアントニオ・カルロス・ザーゴ監督のもと改革途上の鹿島に対し、川崎は持ち味を出しながら得点を重ねました。とりわけ家長昭博のファーサイドを狙ったクロスを受けた長谷川竜也のトラップからのシュートは、一連の流れが見事でした。

しかし直後にファン・アラーノのコーナーキックをチョン・ソンリョンの前に立ったレアンドロ・ダミアンがオウンゴール。そこから少しずつリズムが崩れていきます。

後半、ロッカールームから戻ってきた鹿島が、プレッシャーと囲い込みを強めるようになると、ボールの収まりどころがなくなり、流れるようなボール回しができなくなります。頼みの大島僚太はこの日はボールにフィットしきれていませんでした。

交代で入った選手も齋藤学ががむしゃらさを出すくらいで、チームに変化をもたらすことができません。逆に鹿島は遠藤康、染野唯月が攻撃面で大きな貢献をします。染野はクロスバーを叩く強烈なシュートを披露しました。

終盤は体を張ってコーナーキックに逃げ、それを懸命のクリアで凌ぐ。そんな繰り返しでした。レアンドロ・ダミアンが倒れてもブーイングが起こらないような、無観客でホームスタジアムならではの声援がないからか、はたまた約4ヵ月ぶりの公式戦ゆえの感覚のずれが時間とともに現れたのか、とにかく川崎らしさはほとんど出せなくなっていきます。

そもそもショートコーナーからの谷口彰悟の先制点も、VARがあればオフサイドで取り消しになっていたはずですから、この試合に関してはなにかと幸運に恵まれていました。

ただ、どんな形であれ勝つということでポジティブになれる側面はあるので、これをきっかけに勢いをつけられる可能性はあります。次節、アウェイでの多摩川クラシコでどれだけのパフォーマンスができるかが鍵になるでしょう。


シティにとっての4点目、アレックス・オックスレイド・チェンバレンのオウンゴールが記録される66分までは、非常に緊迫した展開が続きました。リバプールの優勝が決まった直後の対戦だとは感じられないほどの熱量がそこまではありました。

互いに引くことを望まないスタンスで戦うため、リバプールはフィルジル・ファン・ダイク、ジョー・ゴメスの後方からのロングボールを生かしてシティの背後を狙い、シティは窮屈な場面であろうともボールをすばやくつなぐ形を貫きます。

均衡を破ったのはPK獲得能力の高いラヒーム・スターリングのプレーでした。対峙したジョー・ゴメスは、前回対戦でやり合った背番号7をボックスの中でクリーンに止め切ることができませんでした。

さらに2点目もスターリングがゴメスの逆をとって生まれており、ファーストチョイスの右センターバックは前半だけでベンチに下がることとなります。その位置はファビーニョに託されます。

前半、リバプールの誇る3トップが高い位置でディフェンスをスタートし、中盤の3人は呼応するようにハードワークをしていました。攻撃面でも貢献度が高く、しっかりグループとしてはまっていただけにオックスレイド・チェンバレンを入れてそのバランスを崩したメンバー変更は裏目に出てしまいます。

反撃の形がつくれないまま時間が経過し、結果的に4点目を失うこととなりました。

大差がついたことで、さすがのチャンピオンチームも集中が落ちます。シティもクリーンシートで終わらせる意思を見せてはいたものの、ゲームの流れを読んで、容赦なく畳み掛けることはしません。確実に堅実に締めてタイムアップを迎えました。

シティで目を引く出来だったのは、たくましさを増しているフィル・フォーデンです。かつてはバックパスや横パスといった安全第一のプレー選択が多く、怖さを感じなかったプレーヤーでしたが、20歳になった生え抜きは相手に脅威を与え続けました。

45分にはケビン・デ・ブライネとのワンツーから右足でフィニッシュ。早い段階で試合を決定づける3点目を奪います。その後も任されるポジションを変えながら、カウンターの好機に絡みます。

シティは頼もしい若手の働きもあり、自分たちの庭では優勝を讃えて拍手で迎えこそすれ、勝利の美酒だけは味わわせませんでした。


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