22インチのフットボール

備忘録を兼ねて試合を振り返ります

2019年12月

前節、相手のプレッシャーに怯まされた経験を踏まえ、立ち上がりの川崎はいつもとはやや趣の違ったサッカーを披露しました。

通常はボールを握り、出し入れを繰り返して相手を動かし、穴を探る方法をとりますが、今シーズンはそれでは攻略できないチームも多々出てきました。そこで3位浮上のためには最低限勝たなければならないこともあり、テンポを上げて縦方向にすばやくボールを動かして前進しました。

ゴールに向かう強い姿勢が実り、開始1分足らずで右サイドを崩して小林悠が先制点を奪い、前半13分にはク・ソンユンの裏をかいて脇坂泰斗がフリーキックを直接沈めました。

その勢いには新たな戦い方を表現しているようにも見えましたが、急激にやり方を変えた形なので長続きはしません。

次第にホームの札幌がポゼッションを高めると、川崎はそれを受ける形となり、逆襲に転じる際もカウンターを除いてボール回しの速度、方向は普段のそれに変わりました。よりアグレッシブなスタイルは90分続けられないということかもしれません。

それでも1点差で迎えた後半に小林、大島僚太、家長昭博のうち誰かが決定機をものにしていれば、試合を楽に進められたはずです。

結局、チョン・ソンリョン、谷口彰悟を中心とした守備陣の奮闘もあって後半は失点することなく、川崎が最終節を逃げ切って勝利しました。残念ながら3位の鹿島アントラーズが勝ったため、4位でのフィニッシュとなりました。

AFCチャンピオンズリーグ出場権は、天皇杯で鹿島が優勝した場合のみ得られることとなり、わずかながら可能性を残す形となります。

優勝した横浜F・マリノスに力の差を見せつけられた中で、覇権奪回のためには序盤に見せた戦い方を継続的に行うことが必要になりそうです。チームとしては若手の成長といった収穫もあったシーズンになりましたが、来シーズン以降はチーム編成をはじめ、全体としての変化が求められます。


ホーム最終戦であり、3連覇の可能性を打ち砕いたライバルを直接叩ける機会を得た川崎でしたが、最終ラインを高く保ち、激しく圧力をかける横浜の前に完敗を喫しました。

横浜は守から攻、攻から守の両方のトランジションが非常に速く、とりわけ前線のマルコス・ジュニオール、マテウス、エリキといった外国籍選手と仲川輝人がディフェンディングチャンピオンを執拗に襲います。

序盤の圧力は相当に強かったため、その勢いに飲まれて前半8分に仲川の先制ゴールを許しました。

川崎がいつものように余裕をもってボールを動かせるまでにはキックオフから15分ほどかかり、そこから少しずつ自分たちのペースを取り戻していきます。

ただ、大島僚太のファーストシュートをはじめ、枠をとらえるシュートはほとんどなく、朴一圭を慌てさせるほどの決定機はありません。相手の高いDFラインの背後を狙った攻撃も奏功しませんでした。

このまま前半を折り返しての後半、またしても立ち上がりに失点してしまいます。中央にポジションをとった松原健のスルーパスで一気に局面を打開され、エリキに決められました。

この2失点に共通するのは、川崎がシーズンを通して悩みの種となっていた右サイドバックを突かれていた点です。この日は現段階での最適解と言える守田英正が務めましたが、先制された際は縦パスを受けたマテウスとの1対1のぶつかり合いで勝つことができず、パワーとスピードを生かした突破を許してラストパスを入れられ、2失点目は背後からスルーパスを受けに走るエリキを阻止できませんでした。

それ以外の場面ではチョン・ソンリョン、谷口彰悟も失点を防ぐ働きを見せたものの、結果的にさらに2点を奪われてしまいます。ゴール前での好プレーがなければ、屈辱的な大量失点で敗れていたかもしれません。

勝利を求めた鬼木達監督はこの日、早目の交代策をとりました。長谷川竜也でサイドを活性化させ、中央を攻略できずにサイドからのクロスが増えていたところにレアンドロ・ダミアンを送り込んで小林悠との2トップを形成。前線のターゲットを増やしました。

采配が実って長谷川のファーサイドへの浮き球のボールをレアンドロ・ダミアンが合わせて1点を返すことはできました。しかし、さらなるゴールは生まれません。

横浜戦の前には今シーズンのAFCチャンピオンズリーグ(ACL)出場チームとの連戦にすべて勝って波に乗っていたはずの川崎でした。それでも優勝に向けて邁進する横浜には屈してしまいました。

3位の鹿島アントラーズが敗れたため、リーグ戦でのACL出場権獲得の可能性は残ったものの、鹿島が最終節で引き分け以上だった場合には勝利を収めても勝ち点で及ばないという状況に追い込まれました。

苦しかったシーズンの最後を勝利で飾る。他力が必要な最低限の目標達成のためには、それ以外に進む道はありません。


このページのトップヘ