22インチのフットボール

備忘録を兼ねて試合を振り返ります

2019年09月

後半46分、長谷川竜也が鮮やかなシュートを叩き込み、完封負けこそ避けられたものの、それ以上のゴールが生まれることはなくホームで痛い敗戦を喫しました。前節、ジュビロ磐田を下して再浮上のきっかけをつかんだかに見えた川崎でしたが、それは幻でした。

川崎のボール保持はミドルゾーンかつ相手陣内にいる時間が多く、逆に神戸のそれは川崎が深めに構えていることもあって、自陣の比較的深い位置で変則的な立ち位置をとった最終ラインの選手が中心になっていました。

一見、川崎の方が優位に立っているように感じられますが、ベストメンバーの神戸には一気に局面を変えられる、精度の高いロングパスを供給できる選手が揃っており、それが脅威となっていました。

実際、神戸の先制点はカウンターによるものでした。ゴールを決めたダビド・ビジャは直前のフリーキックで大きく枠を外したものの、一度シュートを打っておいたことで感覚をつかみ、古橋亨梧からのラストパスにはきっちり合わせてニアサイドを抜きました。

2点目も大きな展開がゴールにつながりました。ショートコーナーからの流れでアンドレス・イニエスタがファーサイドで構えるトーマス・フェルマーレンを狙い、フェルマーレンが折り返すと大崎玲央がフリーで合わせて決めます。フェルナンド・トーレスの引退試合で負ったケガから1ヵ月ぶりに戻った背番号8が決定的な役割を果たしました。

追い詰められ、なんとしてでも得点の欲しい鬼木達監督は、センターハーフの下田北斗、田中碧を下げ、パス出しに長けた脇坂泰斗、そしてトップ下で先発した中村憲剛にそのポジションを任せる形をとりました。

前線は小林悠とレアンドロ・ダミアンの2トップにして厚みを加えます。アンカーのセルジ・サンペールをフリーにすることが多くなる、守備を多少大目に見た攻撃偏重ともいえる陣容に変わりました。

ただ、3バックの神戸は中央が固く、そこを破るのは容易でないと判断してか、左サイドを中心に外回りでボールを動かして攻め入るものの効果的なフィニッシュにはつながらず、時間ばかりが経過しました。

直前の試合で上位を走る鹿島アントラーズがホームで引き分け、勝ち点差を詰めるチャンスを得ながら、それを生かし切れずにタイムアップを迎えます。

残り試合数が上位との勝ち点差を上回っていて、天皇杯も落とした今はリーグ3連覇ではなく、現在圏外にいるACL、AFCチャンピオンズリーグ出場権獲得がディフェンディングチャンピオンの現実的な目標になりつつあります。


前半にジェラール・デウロフェウがシティゴールを脅かしたことをすっかり忘れてしまうような、それが記録として残らないためにやがては時間の経過とともに人々の記憶からは消されてしまうような、そんなディフェンディングチャンピオンによる8対0の圧勝劇でした。

開始18分までに5得点の荒稼ぎをした攻撃は、シティの強さをまざまざと見せつけるものでした。ただし圧倒的な崩しで相手の守備網を分断して崩壊させたというより、PKを含むリスタートを確実に生かしたゴールが目立ちました。

後半も得失点差の広がりによる多少の緩みはあったとはいえ、ミッドウィークのシャフタール戦で決定機を量産しながら3点目を奪うのに苦労したのに比べると、後半3分にダビド・シルバとベルナルド・シウバの絡みでハーフタイム明け最初のゴールを奪えたあたりに隙のなさがうかがえます。

こうしたチームとしての安定感、すばらしさもさることながら、その中でもっとも輝きを見せた選手はケビン・デ・ブライネでした。3日前、ウクライナで後半32分まで走り続け、カウンターで試合を決定づける3点目のアシストをした背番号17が、ワトフォード相手に先制点のアシストから最後の得点に至るまでフル稼働しました。

前半1分のアシストは、おなじみかつ得意の場所からの鋭いクロスを、ダビド・シルバの頭ではなく足元にピンポイントで供給しました。あそこまで正確に落としたボールですと、ワトフォードの守備陣もどうしようもありません。

8点目のゴールはボックスの中からの容赦ない強烈な一発でした。後半40分になってさすがに疲労の色が隠せなかったデ・ブライネでしたが、チャンスをきっちり決めてしまいます。

指揮を執るペップ・グアルディオラ監督は前半のうちに大量リードをしたことから、負傷者続出のため不安の尽きない最終ラインのバックアッパーを試す方向にシフト。アンヘリーニョ、ジョアン・カンセロを入れ、最後はニコラス・オタメンディに代えて18歳のエリック・ガルシアを起用します。

ゆえに中盤から前の選手は休むことができなくなりましたが、おそらく今度のミッドウィークに控えるプレストンとのカラバオカップではプレーせずに済む、もしくはプレータイムが短くなる可能性が少なくないこともあり、大幅に強度が落ちることなく戦い終えました。

この結果、シティは2位をキープ。チェルシーとの一戦を控える首位のリバプールにプレッシャーをかけることに成功しました。


出場資格を持つ国・地域は多いものの、いかんせん本大会に出られる枠が少ないために早くも始まったワールドカップアジア予選。日本にとっての初戦となるミャンマー戦では、その重圧をはねのけて勝利をつかみました。

雨の降る悪条件のピッチの中、最後方からのロングボールも交えながら攻めていた日本。酒井宏樹や長友佑都もペナルティボックス内に入る積極性を見せるなど序盤から攻勢に出ました。そんな中で幸いだったのは、前半16分という早い段階で先制点が奪えたことです。

まずはミャンマーのカウンターを高い位置で堂安律が阻止。こぼれ球を冨安健洋がすばやくサイドへ展開し、それを受けた中島翔哉がカットインから相手がタイトに寄せてこないのを見てシュート。鮮やかな一撃がネットを揺らしました。

得点がなかなか入らないと焦りも出てきますが、これで余計なプレッシャーから解放されると、10分後には堂安のクロスに南野拓実が頭で合わせて追加点を取ります。

疲労度の考慮や体調のフレッシュさではなく、継続を重視した森保一監督がパラグアイ戦同様のメンバーを送り込み、それに応える形で選手たちが結果を出しました。

前半に限って言えば、枠内シュートが多く、チョー・ジン・ヒョーのファインセーブがなかったならばもっと有利に試合を進められていたはずです。しかしこれ以上のゴールは生まれません。

後半、森保監督は最終的に2列目の選手をすべて入れ替えました。伊東純也を入れてスピードあふれる突破を期待し、大迫勇也を残したまま鈴木武蔵を入れて裏抜けはもちろん、前線のターゲットを増やすことで得点チャンスを増やそうとし、最後に久保建英にテクニックとゴール前での輝きを求めました。

伊東がループシュートを放つ場面があったり、久保と酒井の連携からゴールに迫るなどしましたが、堂安、南野、中島が揃ったときに見せるプレーに比べると変化に乏しく、また真剣勝負ゆえにゴール前で体を張ったミャンマーの守備に阻まれてしまいます。

終盤は時間をゆっくり使って確実にクリーンシートを目指すのか、それともとどめを刺す3点目を狙いに行くのかがやや曖昧になってしまい、ピッチ上で意図がはっきり見えませんでした。まだチームとしてポーランド戦での時間稼ぎのトラウマがあるのかもしれません。

なお、日本の守備に関しては、ほとんど危なげなかったとはいえ、セットプレーを与えた際に変化をつけてくることを警戒しなかったため、アウン・トゥに強烈なミドルを打たれてしまいました。ただ、権田修一の冷静な対応で大事には至りません。

とにもかくにも無事に初戦を乗り切ったことは大きく評価すべきです。90分を通じた戦い方はこれからの予選の中で高めていき、最終予選へとつながる試合を、勝ち点3とともに積み重ねていってほしいものです。


ワールドカップ予選という公式戦を5日後に控える中、現状ベストのメンバーを送り込んだ日本のホームゲームは見慣れた光景が続いて終わりました。

多少のピンチはあれど、基本的には日本が試合を優位に進めて勝つ――。マッチメイクにおいて少なくともアジアで試合をしなければばならない難しさを抱えているとはいえ、新しさや刺激という面では乏しさを感じざるを得ません。

前半は阿吽の呼吸ができつつある堂安律、南野拓実、そして左サイドにとどまらず自由人のごとくふるまう中島翔哉の連携が光りました。前半23分には中島と堂安で相手DFを引きつけて長友佑都の駆け上がるスペースをつくり、長友がハイボールではなく低いクロスを選択したことで大迫勇也のゴールが生まれました。

得点にはならなかった場面でも、パラグアイのコーナーキックから3人と大迫が絡んでの粘り強いカウンターで堂安のシュートまでたどり着きました。しかし、ループではなくロベルト・フェルナンデスの股間を狙ったフィニッシュは阻まれてしまいます。

追加点は左のハーフスペースにいた中島が、サイドから右のハーフスペースに走る酒井宏樹にパスを出してライン間を切り裂き、酒井のクロスに南野が合わせたものでした。

前半終了間際にリフティングをしながらのドリブルを始め、アルナルド・サナブリアの怒りを買った中島や堂安、酒井が下がった後半は、メンバー交代の影響が出て練度が落ちました。

依然として注目を集める久保建英は期待通りのプレーを披露し、フリーキックを含めて45分で5本のシュートを放ちます。チームメイトが久保に代表最年少ゴールをとらせようとするシーンもあり、チャンスには恵まれていましたが、角度のないところから放ったシュートがクロスバーをかすめるなどして得点は奪えませんでした。

また後半から久保と同サイドの右サイドバックを任された冨安健洋は、そのポジションをボローニャで担当しているため、まったく違和感なくプレーしてみせました。迫力ある攻め上がり、サイドでの空中戦での強さなど持っている力を存分に発揮します。

この試合だけを切り取れば若い力の躍動など好印象を抱くポイントが多いとはいえ、過酷なアウェイでもなければ公式戦でもないため、日本の出来を、結果を鵜呑みにすることはできません。

ワールドカップ予選を通してどこまでタフになれるか。今、置かれた状況の中で最優先すべき点はそこに尽きます。


レアンドロ・デサバトのマイナスのクロスを鈴木孝司に合わされ、再びセレッソにリードを許したあと、ミドルゾーンのプレッシャーのかからないなんでもないところで2回のパスミスがありました。

勝ち星から見放されているだけでなく、完敗を喫した名古屋グランパス戦以降、4試合連続の複数失点に川崎の選手たちの気持ちが切れてしまったかのようでした。

もう一度立て直して、同点そして逆転するべく、鬼木達監督は手を打ちます。

ここのところ2トップに変更する際は、中村憲剛を残してトップ下からセンターハーフに下げるパターンが多かったのですが、今回は下田北斗、守田英正を両方とも残します。そして随所でセンスのいいパスを繰り出すも相手に阻まれ続けていた背番号14を下げる決断をしました。

しかし、決定的な働きが数多くできる選手の不在は大きく響き、最後の交代は先発起用に応えようとはしているもののもうひとつチームに馴染みきれていないマギーニョに代えて脇坂泰斗をチョイスしました。脇坂はセンターハーフながら重心を前に置いてのプレーを求められ、右サイドバックは守田に任せます。

迷走、とまでは言えませんが、結果が出ず、勝ち方を忘れてしまったチームは、本来の戦い方を再現することができません。サイドハーフを代えて、ディフェンスを固めに入ったセレッソのゴールをこじ開けるのは至難の業となりました。

相手の攻略には序盤から苦労していました。真ん中を固めつつも、川崎がサイドに展開するとスムーズにスライドされ、一気に3、4人に詰められるケースが多く、相手陣内での余裕を持ったポゼッションはできませんでした。

それゆえ1対1の同点に追い付いたときは川崎らしいパスで一気に崩した形でのゴールではなく、家長昭博のクロスのこぼれ球を阿部浩之が打ち抜いて生まれました。

どんな形でもいいからとにかく勝つ、という結果を残さなければ、現在の負のスパイラルからは抜け出せそうにありません。次節、監督が代わったとはいえ最下位から脱出できずにいるジュビロ磐田との対戦を再浮上のきっかけにしなければなりません。


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