22インチのフットボール

備忘録を兼ねて試合を振り返ります

2019年08月

悪いことというのは続くもので、ここまで安定したプレーで評価の高かったジェジエウが過信したかのようなヒールパスを奪われてピンチを招き、田中碧、谷口彰悟は危険な位置でパスをカットされたりと、川崎らしからぬプレーでリズムを崩していきました。

吉田豊のミドルをバックヘッドですらした和泉竜司の先制点の場面は、コーナーキックのセカンドボールの対応が求められるところで、オフサイドを獲得することを優先して、ゴールエリア手前、中央に立つ和泉を完全にフリーにしていました。当初、マークについていたのは登里享平ですが、放してしまいます。

ガブリエル・シャビエルの鮮やかなターンでジェジエウがかわされ、和泉に追加点を許した際にはその前の中谷進之介の上がりを、なんとなく間合いを詰められずに阻止できませんでした。

3失点目に至っては、右サイドを崩されたあとに吉田豊にボックスの中に入られた時点で勝負ありでした。

スタートから試合の流れをつかめなかったのは、もともとスタメンに名を連ねていた大島僚太がアクシデントで試合に出られなかったことも一因です。しかも大島が復帰するまで主にそのポジションを務めていた下田北斗はベンチにもいなかったため、急遽、山村和也が出場することとなります。

その山村は見せ場をつくれないまま、レアンドロ・ダミアンと交代しました。ここで小林悠との2トップに変更して、中盤でのハイボールの競り合いに小林が下りられるようになり、一時的に厚みをつくることはできました。

ただ、センターハーフに下がった中村憲剛の状態が思わしくなく、やむを得ず家長昭博と代える運びとなりました。家長は攻撃に重きを置くタイプなので、中盤のバランスは乱れますが、その時点で3点のビハインドを背負っていたために鬼木達監督はこの決断をしました。

しかし、その9分後、谷口が2枚目のイエローカードをもらい、退場となってしまいます。すでに交代枠を使い切っていたため、車屋紳太郎をセンターバックに置き、後半から入っていた齋藤学に右サイドバックを任せて急造の4バックを形成します。

攻めにくい、苦しい状況に陥ると、さらにジェジエウが警告を受け、次節出場停止となってしまいました。

立て直しの効かない、なかば崩壊したといってもいい川崎を前に、名古屋は「止める、蹴る」を繰り返し、10戦勝利がないチームには見えない冷静さでゲームをまとめに入りました。1人少ない川崎はほとんどなにもできないで最後の笛を聞くしかありませんでした。

これで3試合勝ちなしと停滞してしまったリーグ王者。次はレギュラーのセンターバックを両方欠いてのベガルタ仙台戦となります。この正念場を乗り切れるか否かが、3連覇を果たせるかどうかを左右することでしょう。


トップの阪野豊史を含めて11人で下がって守る松本に対し、川崎は最後まで崩し切れないまま勝つべき試合をものにできませんでした。

前半は川崎が陥りがちな左サイド偏重の攻撃になることもなく、右サイドもバランスよく使い、攻略の難しい中央でも田中碧がミドルシュートを放つなど、工夫をこらそうとする意図が随所に見えました。

また中盤は、トップ下の位置だと包囲網をつくられて苦労していた中村憲剛が後方まで下がったり、登里享平がハーフスペースにポジションをとるなど、数的優位をつくる努力を続けていました。

それでも決定機をつくれないために鬼木達監督が切ったカードは、大方想定できるものでした。

水曜日のサンフレッチェ広島戦でベンチにも入らず、フレッシュな状態で臨ませながら効果的な働きがほとんどできなかった知念慶を下げてレアンドロ・ダミアンを後半18分に投入。アタッキングサードで小さなミスが目立った齋藤学を前へ突進する力のある長谷川竜也に代え、最後は下田北斗に代えて小林悠を入れて前線中央の人数を増やしました。

それ以外では登里と車屋紳太郎のポジションを入れ替えたり、下田を下げた際に中村をセンターハーフにするなどしますが、劇的な効果は得られませんでした。

逆に決定機をつくっていたのは、ボールを握られていた松本の方で、パウリーニョのミドル、セルジーニョのフリーキックがいずれもチョン・ソンリョンを襲いました。

加えてシュートには至らなかったものの、ジェジエウや谷口彰悟、下田が下がって懸命に足を延ばして防いだ場面もありました。

川崎は攻撃面で最後までらしさを発揮させてもらえず、終盤はクロス主体になるも、レアンドロ・ダミアンがしきりに要求したアーリークロスはなく、ようやく上げたところで守田達弥に簡単にキャッチされてチャンスにすることができませんでした。

前日に横浜F・マリノス、鹿島アントラーズがともに敗れていただけに、ホームで勝ち点3を獲得した上で順位を上げたかったところですが、松本の術中にはまりスコアレスドローに終わりました。


勝てば横浜F・マリノスをかわし、首位を走るFC東京との勝ち点差を1に縮めることができました。その絶好のチャンスを生かすことができなかった川崎ですが、単なる完敗に終わらせなかったところにディフェンディングチャンピオンとしての意地を見ました。

3失点を振り返ると、1失点目と3失点目を許した時間帯がよくありませんでした。いずれもリスタートからの失点で、先制されたのが前半4分。コーナーキックのこぼれ球を守田英正がコントロールしきれず、佐々木翔に決められました。

先手を取ったことで広島は5-4-1のブロックを形成することに力を注ぎます。引かれた中で川崎は長谷川竜也のいる左サイドを中心に攻めようとしますが、それだけでは単調になり、かといってパスで打開しようにも真ん中は固く、広島の中盤のラインを突破することもできません。

後半になってエンジンをかけなおし、守田に代えて山村和也を入れ、クロスに対応できる選手を増やして広島の守備を壊しに出たものの、後半7分に森島司のフリーキックを起点に荒木隼人にゴールを決められてしまいます。またしても出ばなをくじかれた格好です。

ビハインドが3点になってからは、広島が完全に試合を支配します。のらりくらりとボールを動かし、ピッチを広く使って時計の針を進めます。慌てる必要はないため、カウンターを仕掛けられる局面でも無理はしません。

追い込まれた川崎の鬼木達監督は、レアンドロ・ダミアン、車屋紳太郎をピッチに投入。車屋に関しては登里享平の負傷によるものでしたが、攻撃の活性化につながります。

後半30分、下田北斗の縦パスから小林悠とレアンドロ・ダミアンの連携で小林がゴール。3分後には山村が高い位置で奪ったところから左サイドに展開し、長谷川のクロスにレアンドロ・ダミアンが合わせて1点差とします。

息を吹き返した川崎は少なくともあと1点を奪いに猛攻を仕掛けます。それでも守りを固めた広島に阻まれてさらなるゴールは生まれませんでした。

負けたという事実は変わりませんし、鹿島アントラーズに順位を上回られて4位に転落しましたが、たとえ3点差にされようとも追い付くために襲い掛かる姿勢を見せられたことで、これから戦うチームには嫌なイメージを与えたはずです。


このページのトップヘ