22インチのフットボール

備忘録を兼ねて試合を振り返ります

2019年03月

シュート数はイングランドの10本を上回る16本を記録しながら、枠内シュートは相手と同じ4本。イングランドはその4本中3本をゴールに結び付ける効率的な攻撃ができたのに対し、日本は無得点に終わりました。惜しかったのは小林里歌子が後半に放った強烈な2本でしたが、いずれもカーリー・テルフォードに阻まれました。

ベンチ入りメンバーが8人しかおらず、経験豊富な熊谷紗希、中島依美がベンチ外という状況で迎えた最終戦。前半の45分間はとりわけ消極的な安全第一のプレーに終始してしまいました。ブラジル戦でも見られた傾向ですが、どこか遠慮がちでパスにも力強さがなく、逆に時折パワフルなロングキックを蹴り込む相手に押し負けてしまいました。

3失点のうち2点は中盤で杉田妃和が相手の配球を阻止しきれずに前線に展開されて奪われたもので、もう1点は日本が前の試合で成功させたスローインからのゴールでした。自分たちができたことを対戦相手にやられてしまった格好です。

思い切りの悪かった選手はハーフタイムでピッチから退くことになりました。ブラジル戦では効果的な守備をしていた大賀理紗子もこの日は最後の局面で体を張り切れず、センターハーフを務めていた松原有沙にポジションを譲ることとなります。

高倉麻子監督の采配は一時的には吉と出て、横山久美、籾木結花といった中盤から前でボールを持てる選手が前に入ったことで周囲も動きやすくなり、キーラ・ウォルシュをアンカーに配して4-1-4-1のブロックを敷いていたイングランドの守備網を少しずつ乱して攻略できるようになりました。

しかしそれを見抜いたフィル・ネビル監督はウォルシュを下げて、4-2-3-1にシステムを変更。真ん中は3枚から1枚減らしたものの、2枚のセンターハーフをより深い位置に置いてMFとDFのライン間を狭めます。

高さ勝負で分が悪い日本は、単純にクロスを上げてもはね返されることが容易に予想される中、崩し切ってのフィニッシュも少なく、狙ったシュートはそのほとんどが枠を外れました。後半の早い段階で決定機をつくれていれば、一矢報いることも可能だったはずです。

やがて時間の経過とともに長谷川唯や杉田が相手の裏を突いてボックス内へ入ろうとする動きをさかんに見せたものの、そこにはボールは供給されず、動きの少ない選手間でボールを回すにとどまるシーンが多く見られました。

いまひとつ大胆さを欠いた日本にとっての救いは、後半も中途半端なプレーから再三ピンチを招きながら、相手のシュートミスに助けられて失点を増やさなかったことくらいです。この試合に関してはミドルゾーン以外の敵陣、自陣両方のプレーに迫力がありませんでした。

2試合をこなして結果を出し、いい流れで大会を制して、トップレベルの大舞台での経験の少ない選手たちが自信を深めるビッグチャンスだっただけに悔やまれてならない戦いぶりでした。

直前の準備期間を除くと、本大会までに残された試合は4月のヨーロッパ遠征のみとなりました。フランス、ドイツというイングランドよりもFIFAランキングで上位にいるヨーロッパ勢とのアウェイゲームになりますが、なでしこジャパンの世界一奪還のために今回受けたダメージをいかに糧にできるかが問われることとなります。


メンバーを大幅に入れ替えて臨んだ最初の60分は防戦一方に近い試合でした。マルタ、アドリアーナ、ベアトリーズ、デビーニャが4トップを形成するような形で、たびたびポジションを入れ替えるブラジルに対して、日本はサイドバックが容易に上がれる状況ではなく、主導権を握ることができません。

ディフェンスでは大賀理紗子や有吉佐織が最後のところで体を投げ出して難を逃れる場面もありましたが、中盤での中途半端なパス、そして自陣ボックス内で人数をそろえていながらどこか躊躇が見られるシーンが続いてしまい、はっきりしたプレーが少なくなっていました。

前半44分に有吉のスローインを起点に、ペナルティエリア手前でボールを受けた中島依美が巧みな切り返しで籾木結花のループシュートにつなげた先制点は、リスタートからのすばらしい流れでした。劣勢に立たされながら結果を出すという難しいミッションに成功します。

しかしハーフタイムをはさんでからのブラジルのギアを上げての猛攻を凌ぐことができませんでした。後半12分、デビーニャのゴールで同点に追い付かれます。デビーニャの前には3人の選手がいましたが、ブロックしきれませんでした。

事前の予定通りだったのか、その直後の後半13分に長谷川唯はじめ4人が一気に投入され、そこから少しずつリズムを取り戻し、さらに9分後、この日は精彩を欠いた宇津木瑠美に代わり杉田妃和が入ったことで、中盤から前線にかけての運動量がアップ。はっきりとそして正確にボールを動かせる杉田と長谷川を軸にして攻撃の組み立てが成立しだします。

そこへ先制点を奪った籾木が絡み、後半36分に小林里歌子、後半40分に長谷川と立て続けに得点を挙げて再びリードを広げました。両方のゴールシーンでセンターハーフの杉田もボールの近くにポジションをとっており、厚みのある攻撃ができていました。

守備では途中から入って右サイドを主戦場にしたジェイズの馬力あるドリブルに苦戦させられたものの、チーム全体としてブラジルには後半最初の10分強ほどの迫力はなく、失点を許すことはありませんでした。

その後の試合でアメリカがイングランドと引き分けたため、日本はトップに躍り出ました。最終戦は女子ワールドカップでの対戦を控えるイングランド。真剣勝負が控える中でお互いどこまで手の内を出すかが難しいゲームになりますが、自信を深めるには結果を残したい90分です。


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