22インチのフットボール

備忘録を兼ねて試合を振り返ります

2019年03月

鬼門 ――浦和レッズ対FC東京

長らく勝てなかった埼玉スタジアムで、あともう少しのところで逃げ切ることができた東京でした。しかし後半49分、山中亮輔の横方向の絶妙なスルーパスに対して右サイドの森脇良太がボックスの中まで絞って合わせたため、互いに勝ち点1を分け合う結果となりました。

4-4-2で入った浦和の様子を見定めるように、最初の10分ほどの東京はプレッシャーも控えめで慎重に対峙していました。その流れを引きずる形で前半は両者とも守備に重心を置いたプレーが目立ちます。

東京は永井謙佑が裏に蹴り込まれたボールにさかんに突っ込むも、可能性の低いボールがほとんどで、自分で持ち込んで前方にいた槙野智章を警戒しながら放ったシュート以外は前半の見せ場はありませんでした。

一方、浦和では柏木陽介があるときはサイド、またあるときは中央にポジションをとり、変化をつけにかかるも、味方の前線の選手がライン間に入るととっさに東京のMFとDFが互いの距離を縮めるため、そこにボールを通すのは難しく、効果的な攻撃には至りません。

柏木は前半の終わりにフリーキックを獲得した際に負傷。ハーフタイムで退き、クエンテン・マルティノスにあとを託すこととなります。

エンドが変わって少しすると浦和も東京も得点を奪う意識を高め、オープンな展開へと変わります。スイッチを入れたのは東慶悟でした。浮き球で浦和の最終ラインの背後のスペースを突き、室屋成へ。ここから室屋は冷静にマイナスのボールを入れ、永井が狙いますがクロスバーを大きく越えていきました。流れの中で崩しを見せられたことで積極性を取り戻します。

後半17分、U-22日本代表での戦いを終えたミャンマー帰りの久保建英が、永井に代わってピッチに入ります。サイドではなく中央を主戦場としてプレーすることとなりました。

久保は相手をいなすドリブルをたびたび披露。スピード、フィジカルの成長を感じさせる、無駄のない落ち着いたプレーで攻撃を活性化させました。

この交代が実ったのが後半30分。東京のカウンターとなって久保が中盤で運び、一旦はうまくいかなかったもののこぼれ球を拾い、頭でつなぐと見せかけて東へ足を使って預けます。東はたびたび出していた浮き球のラストパスを送って、最後はディエゴ・オリヴェイラが頭でフィニッシュ。待望の先制点を奪います。

7分後、追いかける立場のオズワルド・オリヴェイラ監督は二枚替えを選択。得点を取るために山中と杉本健勇が同時に投入されました。

杉本はチャン・ヒョンス、森重真人を擁する東京の守備に消されていましたが、山中はまず強烈なフリーキックで存在感を見せます。鋭い左足の一撃はクロスバーをヒット。そのまま下に叩きつけられましたがゴールラインは割りませんでした。

浦和はパワープレーとまではいかないものの、きちんとつなぐというよりはやや強引に攻めます。そのままでは難なく東京に逃げ切られる可能性が高かった中、4分のアディショナルタイムが終わろうとしていたときの山中の好判断が功を奏しました。

東京にとっては背番号15の働きによって歴史を変える一戦になりかけながら、「鬼門」という二文字を払拭することはかないませんでした。悔やまれる点があるとすれば、長谷川健太監督が交代枠を一枚しか使わず、時計を進めるための交代をしなかったことが挙げられるかもしれません。


自我 ――日本代表対ボリビア代表

もらったチャンスをなんとしてでも生かしたい。

そんな意欲が表に出過ぎた選手が目立ったのが、後半15分ごろまでの日本でした。宇佐美貴史、香川真司――後半には鎌田大地も加わって――は中盤の低いポジションまで下がって一旦ボールを触りたがり、乾貴士、そしてセンターハーフの小林祐希は得点への意識が色濃く出ていました。

安泰ではないからこそアピールをして結果を出したいのが選手の常でしょうけれど、比較的高いラインを保ってコンパクトに守るボリビア相手にチームとしてどう対処していくかというところへはあまり注意が向けられていませんでした。

前半で唯一といっていい崩しの形は、右サイドで西大伍から鎌田、そして宇佐美へと渡り、逆サイドから走る乾にわたってシュートをした場面でした。カルロス・ランペに防がれはしましたが、複数人が関わって生まれた決定機です。

それ以外は後半の乾から鎌田にスルーパスが通った場面を除いて特筆すべきシーンがほとんどなく、当然スタメン総入れ替えの影響も無視できず、ちぐはぐなままスコアレスで試合は推移していきました。

もともと60分が目途だったのか、後半16分に宇佐美、乾が下がり、堂安律、中島翔哉が投入されます。さらに7分後、小林、香川がピッチをあとにして柴崎岳、南野拓実が代わりに入って前線はほぼ現体制の主力に置き換わりました。

代わった2列目の3人はコロンビア戦では個で打開したがるプレーが多かったものの、この日はむやみやたらにミドルシュートを打とうとはせず、比較的連動して攻めようとします。

後半31分、思わぬ形でボールが堂安のもとにこぼれてカウンターを発動することに。4対3の数的優位な状況での攻撃となり、南野、中島とつないで、最後は中島がルイス・アキンの股間を抜くシュートを決めました。

このゴールが決勝点となり、クリーンシートで試合を終えます。

ボリビアのシュートは90分を通じて3本しかなく、シュミット・ダニエル、三浦弦太、そして初選出の畠中槙之輔といった後方中央の面々はビルドアップで多少の難しさを抱えてはいたものの、問題なくプレーできていました。

また中盤では代表デビューを飾った橋本拳人が、小林と組んでいた際には小林がポジションを捨てて飛び出す回数が多くて苦労していましたが、落ち着いて構える柴崎がパートナーになってからはより迷いなく積極的なディフェンスでチームを助けました。

終わってみれば組織力の向上が見られない日本が、国内でこうしたキリンチャレンジカップという名の親善試合を続けることに意味があるのか。そんなことを考えさせられるゲームになりました。


緩急 ――日本代表対コロンビア代表

両手までは使わなくてよかったものの、前半のコロンビアは片手で数えるくらいのつまらないミスがありました。集中力の高い試合では起こらないようなキックミスでいとも簡単にタッチラインを割っていました。エースのラダメル・ファルカオにもワールドカップで見せたような獰猛さは感じられません。

立ち上がり早々、なぜか日本陣内でフリーになれたハメス・ロドリゲスからルイス・ムリエルに展開、クロスが入ってセバスティアン・ビジャが飛び込んだシュートがクロスバーをヒット。ここで1点を奪えなかったにもかかわらず、前半のコロンビアは特段ギアを上げてきませんでした。

対する日本はロシアで10人のコロンビアにしか勝っていないもどかしさを少しでも払拭したい、さらにワールドカップに出られなかった選手は6万人以上のサポーターが詰めかけたホームでそのチームに結果を出したいと躍起になっているようでした。

森保一監督になって台頭した2列目の堂安律、南野拓実、中島翔哉はその傾向が強く、ペナルティエリアまで攻め切ってフィニッシュするのではなく、ダビンソン・サンチェス、ジェリー・ミナというプレミアリーグ所属のセンターバックを警戒してか、その手前、ミドルレンジからのシュートを選択します。活きがいいこと、シュートで終わることは悪いことではないとはいえ、決して得点の可能性を高める攻撃ではありませんでした。

それゆえややゆったりしていて、ボールを奪われるとすぐに中盤を放棄してでも深い位置に下がるコロンビアの隙をつくことができず、また、中島のやさしい弾道のクロスに鈴木武蔵が合わせたシュートもヒットしなかったためゴールには至りません。

結果として前半のうちに得点を奪えなかったことが仇となります。ハーフタイムでこの日初采配のカルロス・ケイロス監督の檄が飛んだか、後半のコロンビアは集中力を高めて日本ゴールに迫ってきました。

そしてそれがPK獲得につながったと言えます。冨安健洋がハンドのファウルを犯したかどうかはスロー映像で確認しても微妙で、VARが使われていれば違った結論になったかもしれませんが、いずれにしてもコロンビアの攻撃に屈した形になりました。

PKはその前から手を使ってでもゴールを奪いたくなったファルカオが決め、日本は1点ビハインドとなります。鈴木に代わって香川真司がピッチに立つ前のできごとです。

セーフティーリードだと考え、MFとDFの間をよりコンパクトにしたコロンビアに対して、ホームで結果を求めた森保監督は堂安に代えて乾貴士、さらに守備的な役割を担っていた山口蛍に代えて攻撃センスの高い小林祐希を送り込みます。タイミングが遅かったものの後半44分には安西幸輝も入りました。こうしたメンバー構成は相手がそれほどがむしゃらには来ないために許された選択です。

それでも追い付くことはできません。香川と乾のベテランコンビの力をもってしても、小林のアイデアを発揮したプレーでもネットは揺らせません。そんな中、責任を感じた冨安は機を見て前に出ていき、コーナーキックではヘディングシュートが決まらないと非常に悔しがりました。

焦る日本をよそにダビド・オスピナ不在のゴールを守るカミロ・バルガスは残された時間を有効に使い、周囲もそれに呼応して無難に逃げ切りを図りました。乾と香川を中心としたショートコーナーにも決して慌てません。

日本は決定機と呼べるほどの攻めもほとんどなく、無得点で試合を終えました。親善試合ということで力のさじ加減が絶妙だったコロンビア相手に、どんな試合でも頑張る日本らしいサッカーで挑むも結果は残せませんでした。


安定 ――北海道コンサドーレ札幌対鹿島アントラーズ

後半、3回のシュートチャンスに恵まれ、ハットトリックを達成するまであと一歩のところで終わってはしまいましたが、鹿島に新天地を求めた伊藤翔はFWとして順調に結果を残しています。

まず前半12分、鹿島陣内深い位置での札幌のフリーキックからカウンターを発動。レオ・シルバのスルーパスはルーカス・フェルナンデスがタックルで止めにきたものの、伊藤がボールを自分のものにして最後は鮮やかなループシュートでク・ソンユンの頭上を越しました。

その11分後、恐れを知らない勢いで猛然とオーバーラップする安西幸輝が、このときはルーカス・フェルナンデスの股間を抜いてサイドから中央にドリブルで進入。札幌守備陣を混乱させてラストパスを送り、伊藤がフィニッシュ。あっさりとリードを広げます。

札幌は立ち上がりこそ美しいパス回しで鹿島を翻弄したかに見えましたが、最後のところの迫力を欠いており、失点してからは鹿島のカウンターを恐れてか、攻撃での流麗さは失われていきました。

ミハイロ・ペトロヴィッチ監督のサッカーの特徴で、ウイングバックが高い位置をとり、シャドーを含めた前線の選手とともに5レーンを埋めて相手最終ラインに対抗し、ボランチの1枚が最終ラインに下がって中盤中央の人数が少なくなるため、4-4-2のブロックを敷く鹿島のラインの間を突き切ることができません。特に永木亮太、レオ・シルバのいる中央は固く、ただでさえ人数をかけていないのですからここを崩すのは容易ではありません。

ようやく流れをつかんだのはハーフタイムの前で、内田篤人が上がって空いたスペースを使って左サイドに流れた深井一希のクロスを鈴木武蔵が落とし、アンデルソン・ロペスがヒールでループシュートを狙うもクロスバーを越えてしまいます。

この時間帯で1点を返せなかった札幌は、後半からボランチを最終ラインまで下げずに3バックをキープ。中盤に人数をそろえ、チャナティップ・ソングラシンなど前線の選手も多少下がるなどして鹿島攻略に努めますが肝心のシュートが枠をとらえられません。

一方、バランスを保った守備をしていた鹿島は虎視眈々とチャンスを狙っており、後半31分、前に進むと見せかけて一度ボールを下げ、永木が3バックのサイドのスペースにパス。レアンドロがドリブルを仕掛けたときには、鹿島の選手がさらに4人相手ゴール前に殺到。数的優位に立ったことでレアンドロは落ち着いてゴールを奪います。

3点リードで試合は完全に鹿島のものとなりましたが、クリーンシートは達成できず、後半40分に福森晃斗のコーナーキックを鈴木武蔵が折り返し、アンデルソン・ロペスに頭で決められました。

点差が再び2点に縮まったことでホームチームは美しさにこだわることなく攻め立てるも、それ以上得点を重ねることはできないまま、鹿島が札幌陣内でボールキープする時間を与えてしまうなどしてタイムアップを迎えました。

アジア王者の鹿島は開幕戦を落としてスタートダッシュこそならなかったものの、この日は安定した試合運びで前節に続いて勝利を挙げ、インターナショナルマッチウィークによる中断期間に突入します。


異質 ――ベガルタ仙台対ヴィッセル神戸

サッカーはがむしゃらに、ただひたむきに走りまくれば報われるスポーツではない。フアン・マヌエル・リージョ監督率いる神戸はそのことを証明するかのような戦いを披露しました。

試合の入り方は仙台が上手でした。スローテンポでボールを動かす神戸に対してカウンターをしかけられたところから勢いを増し、3-4-2-1の両ウイングバックがタッチライン際まで開いて神戸のサイドバックからはフリーの位置に立って攻め込みます。

神戸の3トップの両翼はともにハーフスペースに基本ポジションをとる時間が長く、ルーカス・ポドルスキにいたっては前節よりもアンドレス・イニエスタとの距離を近くしてプレーしていたため、サイドの攻防では蜂須賀孝治と石原崇兆のいる仙台が優位に立ちます。

また前線の守備においても、サガン鳥栖戦で効果的な縦パスを数多く通したダンクレーを封じるべく、シャドーの阿部拓馬が立ちはだかってコースを塞ぎました。

そうしたいい流れでコーナーキックを獲得し、シマオ・マテのヘッドで先制するまでは見事でした。

しかしダビド・ビジャを含むVIPを中心とした緩急自在の攻撃にさらされ、仙台は追い込まれます。中盤でシマオ・マテが体を張り、最後の砦となるシュミット・ダニエルが落ち着いたセーブを見せて凌いだのは、先制点から20分の間でした。

前半32分、最終ラインからサイドまで幅広いエリアをカバーしていた山口蛍がボールを拾うと、イニエスタ、古橋亨梧との連携でボックス内に進入。最後はイニエスタが体勢を崩しながらふわりとしたクロスを入れ、古橋が頭で合わせて同点に追い付きます。エリア内にはポドルスキ、ビジャもおり、分厚い攻撃が実りました。

後半開始直後、仙台が再びウイングバックを生かして攻めようとしたところ、神戸が逆をとってイニエスタが絶妙なパスを左サイドのスペースに出します。それを古橋が受けてGKとDFの間を狙ったクロスを入れ、ビジャが点で合わせて逆転。ロッカールームで気持ちを立て直したはずの仙台は出鼻をくじかれます。

さらに後半19分にはイニエスタのパスを受けたポドルスキがオウンゴールの誘発を狙ったかのような右足の折り返しを入れ、大岩一貴に当たってネットを揺らします。

もう1点奪えれば神戸は試合を確実に終わらせることができましたが、ビジャに代わって出てきた小川慶治朗はイニエスタとポドルスキからそれぞれ一度ずつ、あとは決めるだけという決定的なパスを受けながら決めきることができませんでした。

一方の仙台も長沢駿が入り、クロスを放り込むという有効な選択肢ができたものの、投入直後は周囲との連携が合わず、終盤のチャンスも生かすことができないまま終わりました。

昨シーズン残留争いに巻き込まれた神戸はこれで連勝。まだ強豪との対戦はありませんが、J1の中ではヨーロッパ風味が強く、異質に見えるサッカーがどこまで通用するかは見ものです。


ギャラリー
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