22インチのフットボール

備忘録を兼ねて試合を振り返ります

2019年01月

成長著しいアイスランドのバイキングクラップを模倣した大勢のイランサポーターの後押しもあり、今までとは一段階も二段階もプレースピードの違う緊張感の高い試合になりました。それでも日本は確実に得点を奪って3対0で勝利を収めました。

要警戒だったサルダル・アズムンに対しては、吉田麻也、冨安健洋がしっかりついて自由を与えませんでした。これが結果的に時間の経過とともにアズムンの苛立ちへとつながり、これまでディフェンスが不安定だった日本がシャットアウトできた大きな要因となりました。

ロングスローや自陣ゴール前でのセットプレーも集中が必要でしたが、もっとも危なかったのは権田修一のパスミスをきっかけにしたイランの前半の攻撃くらいで、このときのアズムンのシュートは原因をつくった権田が足を延ばしてセーブしました。

攻撃はスタメン復帰の大迫勇也が適切なポジションどりをしてチームの潤滑油となり、ときには相手陣内の深い位置まで走る長友佑都にスルーパスを繰り出すなど、まわりの選手が動きやすい状態をつくりました。

イランは日本をリスペクトしすぎたのか、ポゼッションにすぐれたスペインを相手にしているのではないのにしばしばサイドアタッカーが最終ラインまで下がり、5枚ないしは6枚になっていました。ゴール前のレーンは埋めたとはいえ、結果的に中盤にスペースができやすくなり、柴崎岳も苦労することなく比較的自由にボールを持つことができました。

こうしたことからシュート数が前後半通じて7本と多くはなかったものの、日本がミドルゾーンで攻めに行き詰まる場面は準々決勝までと比べると少なくなりました。

悪くない流れの中、光ったのが南野拓実の冷徹さです。後半11分、モハマド・カナニに倒されてもプレーを止めず、イランの選手たちがレフェリーに抗議に向かうのを無視。ゴールラインに向かって転々とするボールを追ってクロスを入れ、大迫のヘッドをアシストします。

さらにそこから10分経たないうちに今度はエリア内でモルテザ・プーラリガンジのハンドを誘発。PKを獲得します。ここも大迫がアリレザ・ベイランバンドの逆を冷静に突いてきっちり決めました。

後半アディショナルタイムの原口元気のドリブルからのゴールも、柴崎の縦パスを受けて原口に預けたのは南野でした。得点こそありませんでしたが、2点リードしたあとに攻守のバランスが崩れたイランに対して堂安律とカウンターを試みるなど、南野は最後まで見事な働きをしてくれました。

有意義でいいことづくめの結果となりはしたものの、攻守にわたって非常に貢献度の高かった遠藤航と酒井宏樹がともにプレー続行不可能になりピッチを去らなければならなくなったことが気がかりです。

ともあれアジア最強と言われるイランを下して、日本は決勝進出を果たしました。2大会ぶりの王座を目指し2月1日の最後の決戦に臨みます。


熱狂的なサポーターに後押しされた伸び盛りのベトナムは5-4-1の形をとるとはいえ、トルクメニスタンほどに圧縮されたブロックではなく、選手間の距離にやや開きがあって中盤とDFの間にはスペースが存在しました。それでもライン間に適切なポジションをとる日本の選手が少なく、思うようにゴールに迫ることができませんでした。

ただ、柴崎岳にとっては得意のパスが通しやすいシチュエーションで、吉田麻也のシュートがVARで取り消されたコーナーキックにつながった場面は、柴崎から北川航也へのボールがスイッチになりました。

こうしたチャンスはあまり多くつくれないまま時間が経過しました。逆に誰も守備をしていないのかと思うほどいとも簡単に中盤を突破されるカウンターを食らって、最前線のグエン・コン・フオンに収まるシーンが数多く見られました。このあたりは前半が終わるまで修正が効きません。

また権田修一、吉田のところでボール処理にミスが出て大ピンチを迎えてしまい、バックパスの際、守備陣のボールを受けるためのポジショニングに難があることを露呈しました。ここは後半も引き続き相手に狙われます。

エンドが変わると日本が積極性を前に出し始めました。勢いに乗って遠藤航のミドルシュートがダン・バン・ラムを襲い、そのあとには中央に絞っていた原口元気のパスを受けた堂安律がブイ・ティエン・ズンに足を踏まれて倒され、結果的にVARによってPKを獲得。堂安がしっかりと決めて得点を奪います。

1点ビハインドの中、歴史的快挙を達成すべくベトナムがラインを上げて、選手を先に代えて攻撃に重きを置きだしましたが、アジアカップでの実績、経験の差と言うべきか、日本が前半よりは危なげなく凌ぎ切ります。欲を言えば、堂安、そしてまだゴールのない南野拓実のコンビでショートカウンターを成立させられればより楽に試合を運べたはずです。

後半27分には北川に代わり大迫勇也が初戦以来の出場を果たし、残り2試合に向けて慣らし運転をすることができました。25分間程度、大迫が普通にプレーできたことは好材料です。

終盤のベトナムのパワープレー気味のシンプルな攻撃をも粘り強く封じて、日本は準決勝に進出。今度の相手はハイレベルな難敵イランとなりました。


このラウンドで唯一、ロシアでのワールドカップに出場したチーム同士の対戦となった屈指の好カードは、日本が前半20分に挙げた冨安健洋の虎の子の1点を守り切って準々決勝進出を果たしました。

しっかりとパスをつないで攻めてくるサウジアラビアに対し、それを受ける形で戦った日本。自陣深い位置のサイドでの長友佑都の空振りや原口元気の軽率な守備といった、ワールドカップを彷彿とさせるようなピンチを招きかけるシーンはあったものの失点することはなく、逆に柴崎岳のコーナーキックを冨安が合わせ、最初のシュートで1点をもぎ取りました。

このときモハメド・アルファティルのマークがあまりにも緩く、冨安はやすやすと飛ぶことができました。テクニカルエリアにいたサウジアラビアのフアン・アントニオ・ピッツィ監督は、思わず手に持っていたボトルをベンチに投げつけます。

若手のゴールによって士気が上がったか、ここから日本は守備時のプレッシャーを強めます。武藤嘉紀、南野拓実が高い位置で相手のビルドアップの阻害を試み、遠藤航がオマーン戦同様がむしゃらに中盤で危険の芽を摘みました。

ボールを保持するサウジアラビアも前線の選手がビルドアップを塞ぎに来るため、武器にしている最終ラインからの大きなサイドチェンジがほとんどできず、権田修一までボールが下がったときの正確なロングキックに頼らざるを得なくなり、それに対して武藤がサイドに流れるなどして競り合う形をとりました。

負ければ終わりのノックアウトラウンドゆえ、後半になると相手はさらに圧力をかけます。サイドからのクロスも増え、日本の選手がクリアしてはセカンドボールを拾われる苦しい場面が多くなりました。

幸いなことに危険なエリアでのフィニッシュの精度が低く、サレム・アルドサリらのシュートはことごとく枠の外に飛んでいきました。サウジアラビアに決定力の高さがあれば、逃げ切れたかどうかはわかりません。

一方、日本は相手最終ラインの背後を狙ってピッチを横断する原口元気の絶妙なパスを受けた武藤が、南野と堂安律が並走する中で強引にシュートを選択。コーナーキックに逃れられてしまいました。それ以外では肩でのトラップがハンドと判定された南野のプレーが後半の数少ないチャンスになりかけたシーンでした。

終盤は吉田麻也を中心に守備陣が人数をそろえてペナルティボックスで構えるものの、エリア外の選手をフリーにしてしまい、より一層集中砲火を浴びる格好となりました。それでも最後まで体を張ることを厭わずにやりきり、途中出場の伊東純也もみずからのスピードを生かしてチームを助けます。

こうして次のベトナム戦に臨むことができますが、前半39分に武藤が相手陣内のそれほど無理をしなくていいエリアでファウルを犯し、累積警告によって次は出場停止となり、頼みの大迫勇也はまだ試合中のウォーミングアップができないという状況。さらにこの日ベンチ外だった青山敏弘がチームから離脱と台所事情は苦しさを増しました。

残り3試合を乗り切るにはまさしくチームの総力を挙げなければならず、日替わりのヒーローの登場が欠かせなくなってきます。


勝つには勝ちました。とりあえず次のステージ、ベスト16に生き残ることができました。しかし90分を通じた戦い方に関しては柔軟性を欠いていた一戦でした。

前半はトルクメニスタン戦の後半、さらに言えば昨年のワールドカップではまった後方からのサイドへの大きな散らしを武器にオマーンの背後を狙っていけました。加えてボールを左右に開くのみならず縦へのロングボールも使いながらチャンスをつくりました。

そこで南野拓実が決めきれていれば、試合はもっと楽なものになったでしょう。特に冨安健洋からの相手の裏を突いた鋭い弾道のパスを受けてのシュートはビッグチャンスでした。

日本は前半28分、原口元気のPKが決まり、リードを奪うことができました。接触シーンの判定は微妙なものでしたが、日本にとってはラッキーでした。

さらなる幸運は前半終了間際、ペナルティエリア内で長友佑都の腕にボールが当たったものの、PKのジャッジが下されなかったシーンが挙げられます。VARがグループステージから導入されていれば確実にハンドとされていたはずです。

ピンチを凌いで臨んだ後半は、ロングボールを供給する形ができなくなります。得点源にしていたパターンを封じられ、途端に攻撃が淡白になりました。かといって柴崎岳からの狙いを定めたスルーパスはトルクメニスタン戦同様に奏功しません。このあたりの状況に応じた工夫、変化の乏しさは優勝に向けて大きな課題と言えます。

結局、堂安律に代わって入った伊東純也のシュートと南野の粘り強いカウンターのドリブル以外は相手ゴールを脅かすことができませんでした。森保一監督は交代枠をまたしても使い切らないまま、追加点を奪えずに試合はタイムアップを迎えます。

この試合の収穫は、前の試合でちぐはぐだったセンターハーフのところに遠藤航が入ったことでバランスがとれ、攻守にわたって安定がもたらされたことぐらいです。遠藤はロシアでの長谷部誠のごとく最終ラインに入ってビルドアップに参加したり、守備でのつぶし、攻撃参加などさまざまな局面でチームに貢献しました。柴崎の守備に不安がある中で遠藤の働きは大きなものでした。

次のウズベキスタン戦は落とした場合、ラウンド・オブ・16で前回王者のオーストラリアと対戦する可能性があるだけに選手のやりくりを含めてどう戦っていくかが問われることとなります。


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