22インチのフットボール

備忘録を兼ねて試合を振り返ります

2018年08月

午後7時キックオフとはいえ猛烈な暑さ、それに加えて中3日という日程の厳しさからか、両チームとも飲水タイムが設けられた前半の出来は芳しくありませんでした。

とりわけアウェイの神戸は4-3-3を基本にしてビルドアップ時には藤田直之が最終ラインに落ちて両サイドバックを上げ、守備になると4-4-1-1にするというシステムをとっていましたが、それが機能していたとは言いがたい戦いぶりでした。

ポゼッション志向とはいうものの、東京がハイプレスをかけてこないからと最終ラインでゆっくりとボールを回すばかりで変化に乏しいプレーを継続。アンドレス・イニエスタ不在の影響もあり、またアンカーの藤田から攻撃のスイッチを入れるようなパスがほとんど出なかったこともあって、中央を崩す機会はあまりなく、サイド偏重の攻撃に終始していました。

吉田孝行監督はたまらずハーフタイム明けに古橋亨梧と渡邉千真を投入。前線のターゲットを増やした4-4-2に固定しました。これで中央も使った縦方向への攻撃の意識が強まり、後半5分には渡邉の落としを三田啓貴がシュート。林彰洋に取られますがチャンスをつくれるようになりました。

発破をかけられたのは東京も同じようで、スコアレスながら試合が動きます。そしてコーナーキックを獲得したタイミングで次々とベンチから選手が送り込まれ、1点を奪いにきました。リンスが入った直後の後半15分には太田宏介のコーナーキックを森重真人が合わせ、クロスバーを叩きました。

両者が積極的に動くにつれて神戸の方にミスが続出。流れが悪くなったため重心がうしろに下がりだし、次第に東京がリズムをつかみます。

シュートこそなかなか打てませんでしたが、押し込む展開が続いた東京は後半45分、ディエゴ・オリヴェイラが運んで相手を寄せ付けてフリーのリンスへパスを送ると、リンスは確実に仕留めて先制します。

ここでは4対4の局面になっており、神戸はセンターハーフの2人も追っていたため、数的には決して不利ではありませんでしたが、前半途中から苦しめられていたディエゴ・オリヴェイラの馬力あるドリブルを警戒し過ぎてやられてしまいました。

最後は東京が神戸以上にテンポよくボールを回してキープを続け、そうした中でも右サイドに入った永井謙佑がダイアゴナルな動きでゴール前に走ってチャンスをうかがうなどして脅威を与えたことで、逃げ切りに成功します。

これで一時は独走状態だった首位サンフレッチェ広島と東京の勝ち点差は5に縮まりました。


ミスが続いているところを放置していれば失点しますし、工夫のない攻撃に終始していれば得点は奪えない。まったく不思議なところのない、至極当然な結果となってしまいました。

前半から狙われていたのは、清水梨紗でした。サイドハーフや周囲のフォローがなかったとはいえ、オーストラリアはエリー・カーペンターにカトリーナ・ゴリーやクロエ・ロガーゾが絡んで、日本の右サイドで再三2対1の状況をつくりだしました。

前半26分にはそこからカーペンターがシュート。前半38分にはロガーゾがクロスを入れますが、この日代表デビューを果たした平尾知佳が難なく処理しました。

さらに前半46分には清水の裏のスペースをカーペンターにドリブルで持っていかれ、要注意人物であるサマンサ・カーにパスが通るも、最後はなでしこらしい人数をかけた守備で乗り切ります。

しかし高倉麻子監督が4人を入れ替えた後半開始直後、またも清水の頭上にパスを出され、サイドに流れていたカーがそれを受けシュート。ここもブロックして阻みますが、セカンドボールの対応で代わったばかりの三浦成美がロガーゾを倒してフリーキックを与えてしまいました。

このチャンスを逃さなかったアランナ・ケネディの低い弾道のキックが壁の間を抜けてゴールに突き刺さります。日本にとってはハーフタイム明けの出鼻をくじかれる痛い失点でした。

これでリズムを崩した日本に対して、優勝を目指すオーストラリアが襲いかかります。

後半8分、クイックリスタートからエミリー・ギールニクが簡単にクロスを上げ、カーがシュートを打ってポストを叩きました。

2分後、カウンターを発動させ、攻め込むヘイリー・ラソに鮫島彩と清水の2人で対応できていたもののシュートまでいかれてしまいます。清水がかろうじてボールに触れてコーナーキックに逃れました。

後半27分には後方からのロングボールをカーがすらし、ギールニクがゴールを狙い、平尾が阻みます。

そして後半36分、清水のパスをカットしたキア・サイモンが一気に縦に蹴り出すとそこにカーが走っていました。平尾がペナルティエリアを飛び出してクリアしようとするも失敗。無人のゴールに向かってカーが蹴り込んでオーストラリアはリードを2点に広げました。

日本の攻撃は特筆すべき点がほとんどなく、序盤から相手のプレッシャー回避とパスミスを減らす目的からか長めのボールを使っていましたが、なかなか形にならず、後半に入ってさらに増えた相手最終ラインの裏へのパスは菅澤優衣香を走らせるという効果的ではないものになっていました。

失点後はパスの受け手を探して逡巡する場面も多く、そうしている間にオーストラリアの選手に寄せられていました。唯一、長谷川唯だけが気を吐いてピッチを動き回っていましたが、孤軍奮闘するだけでは状況は打開できません。

決定機になったのは前半44分の横山久美のやや遠い位置からのフリーキックくらいで、クロスと見せかけて狙ったシュートは少し下がって腕を伸ばしたリディア・ウィリアムズに阻まれました。

日本はアメリカとブラジルの結果を待たずして最下位が決定。熊谷紗希に阪口夢穂、宇津木瑠美といったセンターラインの主軸を欠いていたとはいえ、オーストラリアとアメリカに大敗したブラジルとの試合も落とすなど、対戦相手に嫌な印象を与えられずに終わってしまいました。


相手にとって脅威となっていたのは明らかでしたので、昨シーズンの得点王に最後を任せるのはわからないでもありません。ただ、得意のパスで簡単に打開できないほど中央を狭めて固める浦和に対して、ペナルティボックスの中で小林悠ばかりがシュートを打つ形は得策ではなかったように見えました。また川崎には柏木陽介のように相手をかき回すような精力的な走りを見せる選手もいない状況でした。

もちろん小林がたびたび訪れた絶好のチャンスをものにしていれば、問題はありません。

前半30分、谷口彰悟がボールをカットしながら大島僚太につなげ、そこから中村憲剛を経て一気に小林まで送ったとき、前半37分、奈良竜樹のパスにうまく抜け出してトラップし、西川周作の股間を狙って蹴り込んだとき、あるいは後半21分、橋岡大樹のバックパスのミスをかっさらってシュートしたときにきっちりゴールネットを揺らせていれば結果は大きく変わっていたでしょう。

特に前半37分の場面は、トラップして西川と1対1になったときに埼玉スタジアムが静まり返るほどの決定機でした。同点に追い付いて浦和にダメージを与えるにはここしかないというところです。

後半になると小林頼みの戦い方は多少改善され、小林がサイドからのエウシーニョや車屋紳太郎のクロスに競って、セカンドボールを大島や家長昭博が狙うようになりました。それでもゴールからはやや距離があり、西川を慌てさせることはできませんでした。

この状況を変えるべく、鬼木達監督は後半25分に中村を下げて知念慶を投入。前線のターゲットを増やしました。それでも知念は後半37分にミドルシュートを放ったくらいで、なかなか効果的なフィニッシュに結び付けられません。

結果、シュート数、さらには決定機の数では浦和を圧倒しながら、スコアは2対0で浦和の勝利に終わりました。

先制されたのは前半7分。ノープレッシャーの状態で岩波拓也が前線に出したボールに武藤雄樹が反応。谷口はあっさりと背後をとられてしまい、武藤が抜け出すのとほぼ同時にエウシーニョを振り切って走り出した興梠慎三に技ありのシュートを決められます。

2点目は同点に追い付こうと前がかりになっていた後半47分に李忠成が奈良をかわし、大島の当たりにも負けずに突き進み、それに対して鈴木雄斗がエリア内で李を倒してしまい、PKを与えてしまったことによります。ファブリシオはこのチャンスを確実に生かして試合を終わらせました。

今節は川崎の上をいくサンフレッチェ広島とFC東京がともに勝利したため、両者との勝ち点が開いてしまいました。リーグ連覇のためには連敗だけは避けなければなりません。


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