22インチのフットボール

備忘録を兼ねて試合を振り返ります

2018年08月

よくも悪くもなでしこジャパンらしさが詰まった90分でした。

前半5分、國武愛美のスローインに対してイ・ミナが飛び込んでカットしようとするも失敗。ボールは有吉佐織が受け取り、イム・ソンジュの裏を狙ってラストパスを送ります。これに反応した菅澤優衣香がアウトサイドで合わせて幸先よく先制します。

直後のカウンターで菅澤が2点目を奪えれば楽に進められたはずですが、シュートは外れてしまい、以降は特にサイドの攻防で後手に回り、韓国の猛攻にさらされます。

前半13分にはイーブンのボールを山下杏也加が飛び出してクリアしたためゴールががら空きになり、こぼれ球をキム・ヘリに狙われてしまいます。やや角度のないところから放たれたシュートはクロスバーを叩き、かろうじて失点を免れました。

続く前半20分には、イ・ミナのマイナスのパスを受けたチ・ソヨンがシュート。この背番号10の一撃に屈するかに思われましたが、清水梨紗が懸命に下がってクリアします。清水はその勢いから自身がゴールネットに吸い込まれるほどの必死のプレーでした。

中盤では長谷川唯、中里優が戻っての好守備を見せ、鮫島彩も突破を許すまいと奮闘します。なでしこのひたむきさが前面に現れる場面がいくつもありました。

一方で守備時にウイングが下がって形成される韓国の5枚の中盤を攻略するのに苦労してしまい、パスミスから招くピンチも数多く見られました。正確にパスをつなげる韓国は、日本の自滅を待っているかのようでした。

前半33分には國武の中央へのパスをカットされ、イ・グンミンの迫力あるドリブルを3人がかりでも止められず、最後はイ・ミナにシュートを打たれました。ここはシュートに力がなく、山下が押さえます。

後半17分、今度は鮫島がチ・ソヨンにボールを渡してしまい、危うくなりかけましたがソン・ファヨンのクロスを鮫島自らブロックして防ぎました。こうした守備陣のミスはなかなか減らず、苦しい時間が続きました。

押し込まれるのであればカウンターは効果的な攻撃ですが、日本からそれを仕掛けることはほとんどありません。

チャンスをつくったのは連動した攻撃でした。後半8分、長谷川が中央で受けて、岩渕真奈、菅澤、中島依美とつなぎ、中島がマイナスのボールを出してフリーの長谷川がシュートを打ちました。ボールは枠を大きく外れ、ゴールにはなりません。

少ない好機を生かせないでいると、後半23分、ムン・ミラのクロスを後方から上がってきたイ・ミナに頭で合わされ同点に追い付かれました。イ・ミナには誰もついておらず、自由を与えてしまいました。

しかし厳しくなってきた日本はここからギアを上げます。相変わらずボールロストからたびたび逆襲を食らいはしたものの、最後のところはやらせない守備をしながら前への意識を強めていきました。

その流れを受けて高倉麻子監督は中島に代えて籾木結花を投入。攻撃の活性化を図ります。

すると後半41分、ロングボールを菅澤が落として籾木がシュート。これはブロックされますが長谷川が中央で拾って粘り強くボールを運び清水につなげます。清水はファーサイドにクロスを入れ、菅澤が折り返すとイム・ソンジュがクリアしようとしたボールは韓国ゴールに向かって飛んでいき、日本は勝ち越しに成功します。

残り時間が少なくなり、アディショナルタイムに入ると韓国はセットプレーの際にはユン・ヨングルも上がってきて総攻撃を仕掛けますが、全員守備で日本は凌ぎ切りました。

自陣に押し込まれる苦しい戦いを最後まで粘り強くプレーして制したなでしこは、女子アジアカップに続く今年2回目のアジア制覇を目指して中国との決勝を戦うことになりました。


「高橋陽一初の自叙伝」としてrepicbookから発行されました。「初回シリーズ」第1巻の表紙に使われた大空翼の絵が同書の表紙にも使われていますが、「通巻100巻」を突破した単行本を出している集英社は「協力」の立場にとどまっています。

この本では著者の幼少期の話からスタートして、マンガ家を志し『キャプテン翼』の連載を始めるまでの日々が克明に描かれています。プロのマンガ家になるべくとにかくひたすらに、まっすぐに突き進む姿はピッチで輝く翼のようです。

子どもにも読めるようにほとんどの漢字にはふりがながついていて、読み進めていてわからなくならないように同じ内容を繰り返す部分もあり、さらには読者に語りかける箇所も随所に見られます。

こうした配慮は4度目となるアニメ版『キャプテン翼』が春から新たにスタートしたので、そこから興味を持った読者でも楽しめるようにという考えからだと想像します。発行時期からして子どもたちの読書感想文に使ってもらいたいという意図もあるかもしれません。

必然的に『キャプテン翼』に関するエピソードは新作アニメの初回放送が終わっている小学生編の初期の話が中心となります。「『週刊少年ジャンプ』の連載を勝ち取るには3話分のネームをつくり、編集部の連載会議でOKをもらわなければならない」ということで、この3話作成にあたっての裏話などが詳しく記されています。

ほかには当時のオフサイドのルールを理解するのに大変役立った、武蔵FCによるオフサイド・トラップを作品に導入した点についても触れられています。

ただ、『つくり方』とタイトルでうたっている割に、作品に関する具体的なエピソードは決して多くありません。15年前に集英社から出た『キャプテン翼3109日全記録』での「スペシャル対談 乙武洋匡×高橋陽一」で出てきたような話を多く期待していると肩透かしを食らいます。

文庫版最終巻のあとがきでも触れられている「ワールドユース編」の「ショックだった打ち切り」の話は出てくるものの、「初回シリーズ」の中学生編や第1回フランス国際Jr.ユース大会、そして「ROAD TO 2002」から続く翼がバルセロナに移籍してからの話はあまり載っていません。

なので欲を言えば、『つくり方』を知る上でストーリーやキャラクターの裏話をもっと掲載してもらえれば、往年のファンがより深く楽しめたはずです。

たとえば最初は映画版のオリジナルキャラとして出てきたカール・ハインツ・シュナイダーやカルロス・サンターナが原作にも登場した流れとか、立花兄弟のスカイラブハリケーンや、数年前に企画で中村憲剛と大久保嘉人が実際に挑戦した肖俊光の反動蹴速迅砲といった独創的な必殺技が生まれた過程、あるいは中学生編の終盤に中沢早苗をめぐって神田幸志と対決した経緯などを詳しく知ることができれば、『つくり方』がいろいろと垣間見えて満足の一冊となったでしょう。

とはいえ「多くの学びがあった海外取材」でブラジルとドイツに行ったことが印象的だったと振り返っていることで、これまで翼を擁する日本が世界大会を制するために決勝で立ちはだかったのが両国だったこと、「ライジングサン」のマドリッド五輪予選グループ、ブラジル対ドイツが第42話から第58話までがっつりと描かれたことは当然の流れだったのだとわかります。もちろん両国とも現実の世界でもサッカー大国であることは間違いないのですが。

全編を通して著者のマンガに対するまっすぐな姿勢が貫かれていて、また人柄のよさ、温厚さも感じられ、読後感は非常にさわやかです。現在『グランドジャンプ』では「ライジングサン」が休載中で、単行本の第10巻も第9巻の巻末予告によれば「2019年初春発売予定!!」ですが、10月以降もぶれないテイストで物語が続いていくことを予感させます。


準々決勝屈指の好カードとなってしまったこの試合、なでしこジャパンにとっては案の定厳しい戦いとなりました。

北朝鮮は日本の最終ラインにはプレッシャーをかけてこないものの、FWとMFの間が非常に狭く、さらに中盤の選手は絞り気味にポジションをとってハーフスペースを封鎖しており、なかなかボランチにボールをつけることができませんでした。

持ち前のパスワークがうまく発揮できないため、ピッチ全体を使うべく、ピッチコンディションが悪い中でも球離れを速くしてサイドに開いたり、大きく蹴って相手MFとDFの間ないしはディフェンスラインの背後めがけるなどして打開を試みます。

とにかく焦らず我慢強く戦う時間が続く中、逆に相手のカウンターの餌食になる場面がしばしばありました。前半21分には阪口萌乃がボールを失い、一気に運ばれ最終的にはキム・ユンミの落としをユ・ジョンイムがミドルシュートにつなげます。

さらに前半36分には相手陣内でのフリーキックを中島依美が下げ、三宅史織が出したパスがミスになって逆襲を食らい、ペナルティエリア手前で阪口がファウルを犯して警告を受けました。幸いキム・ユンミのフリーキックは枠を外れたため大事には至りません。

こうした比較的シンプルに縦に速く攻める北朝鮮に苦しんでいましたが、鮫島彩を中心とした最終ラインでスピード勝負に懸命に挑んでどうにか凌ぎます。

そしてビルドアップ時に有吉佐織が最終ラインに落ちるなどしてサイドバックを高く上げてパスの出し手を増やし、リ・ウニョンのサイドを狙った攻撃で流れを引き戻します。前半40分、このときは中盤にいた有吉がそのサイドのスペースに走った清水梨紗にパスを出し、清水のクロスは阻まれますがコーナーキックを獲得します。

ここで中島のキックをファーサイドにいた田中美南が折り返し、岩渕真奈が押し込んで先制に成功しました。決していい流れではありませんでしたが、ハーフタイムを前に確実にチャンスをものにしました。

エンドが変わった後半3分には岩渕がドリブルで相手を引きつけ、交代で入った菅澤優衣香に預けるもゴールにはならず。この決定機を逃して以降、日本は押し込まれてしまいます。

原因の多くは前半以上のボールロストや不完全なクリア、後方でのパスが引っかかるなどといった日本側のミスでした。北朝鮮が日本の最終ラインにもプレッシャーをかけ始めたこともありますが、この悪癖はレベルの高い相手になるとどうしても出てきてしまいます。それでも後半11分のピンチは阪口が絞って凌ぐなどして、無失点のまま時間が経過しました。

苦しい状況を打ち破ったのは長谷川唯でした。後半17分、中央のレーンで菅澤に一度預けてからゴール方向へ走り、背番号9のポストプレーによるリターンを受け、技術の高さを見せて追加点を奪ったのです。

欲を言えば直後の後半19分、キム・ミョンスンからボールをプレゼントされた岩渕が無人のゴールに蹴り込んだシュートか、後半37分の縦パス一本に抜け出した岩渕が狙ったループ気味のシュートが決まっていればもっと楽に試合を終えられたかもしれません。

とはいえ、ウィ・ジョンシムにボックスの中でフリーで打たれるシーンもありながら、最終的にはキム・ナムフィのPKによる1点に抑えて難関突破を果たしました。南北対決の実現を阻み、なでしこ達は決勝進出をかけた日韓戦へと向かいます。


前半は高い位置でのボール奪取を行い、左サイドを中心にした攻撃で圧倒的にゲームを支配してベトナムの選手を自陣に押し込み、シュートチャンス、決定機を数多くつくりました。にもかかわらず奪ったゴールは菅澤優衣香、籾木結花、中島依美による3点のみ。飲水タイムを必要とする暑さだったとはいえ、物足りなさが残りました。

そこで高倉麻子監督は後半頭からシステムを3-4-1-2に変更。最終ラインを一枚削り、両翼を高く保って中盤を厚くする形にしました。しかしこのとき右ウイングバックを任されたのは増矢理花でした。

対するベトナムは戦い方を変え、深い位置で守りに力を注ぐのではなく、攻守において積極的に出てきました。すぐさま増矢のサイドを突いて、この試合初めてのシュートを放ちます。ベトナムはなでしこジャパンのシステム変更をすぐさま察知したというより、トーナメント・オブ・ネーションズで露呈した日本のウイークポイントである清水梨紗を狙うつもりでいたのかもしれません。

当初の目論見は外れたでしょうが、実際は決して守備力が高いとはいえない増矢が立ったため、その攻撃は非常に効果的でした。さらには強烈なミドルシュートを放ち、山下杏也加がかろうじてコーナーキックに逃れる場面もありました。

さすがにこのままでは危ういということで、後半14分、阪口萌乃を右ウイングバックに据え、増矢は攻撃に専念できるよう、トップ下にポジションを変えました。阪口が入ったことで右サイドは安定を取り戻します。

そんな中でボールを奪おうとスライディングをした際に高木ひかりが負傷。鮫島彩を交代要員として送り込むこととなります。現在の代表ではセンターバックを任されることが多い鮫島が入ることで、3-4-1-2の形は継続させるかと思われましたが、慣れ親しんだ4-4-2に戻します。

3バックに変えていた間に田中美南と増矢が得点を挙げたものの、30分弱で元に戻したことで今後に向けてのオプションのひとつになりうるかどうかははっきりしないままとなりました。

左サイドバックを担当した鮫島は爆発的な攻撃参加をたびたび見せました。センターバックをやるよりも、こちらの方が躍動感にあふれています。あまりの勢いに明らかなオンサイドながら、アシスタントレフェリーがフラッグを上げてオフサイドとされるシーンもありました。

結局、後半は4点を追加し、7対0の圧勝に終わりました。しかし90分を通じての戦いぶりは満足のいくものとは言えず、自身のやり方がうまくいかずに修正を重ねることとなり、やや消化不良に終わってしまいました。

次の準々決勝は中国ないしは北朝鮮との対戦となります。どちらであっても早い段階で当たるには難しい相手であり、複数のシステムを試すような余裕のない試合になることが予想されますが、アジアカップを制したチームとしては是が非でも乗り越えなければなりません。


前節、首位サンフレッチェ広島戦は厳しい判定で与えてしまったフリーキックを柴崎晃誠に決められてしまったことと、ヨルディ・バイスを前線に上げたことが裏目に出たことが原因で敗れた長崎。今節は鹿島をホームに迎えました。

低めに構えた長崎は前半6分、バイスを起点にカウンターを発動。最後は鈴木武蔵がゴールを狙い、曽ヶ端準に阻まれます。2分後には磯村亮太がレオ・シルバからボールを奪い、再びカウンター。しかし澤田崇のドリブルはゴール手前で阻止されました。

ただ、こうした攻撃を仕掛けたことで鹿島の3ラインにばらつきが生まれ、付け入る隙が出てきました。

そのいい流れの中で前半14分、セットプレー崩れの中、最後方からの放り込みを高杉亮太が折り返しと思しき動きで足を合わせると、ボールはそのまま曽ヶ端の伸ばした手の上を越えてゴールに吸い込まれていきました。

リードした長崎は守備時に左右のウイングバックがきちんと帰陣しつつも、機を見て高い位置からのプレッシャーをかけて鹿島ゴール前で数的有利な状況をつくりますが、ボールを奪いきることができず、そこから鹿島に流れを持っていかれます。

前半22分、伊東幸敏のクロスが大きくなったものの、それを事前に察知したレオ・シルバがファーサイドで拾ってそのままフィニッシュ。弧を描いたボールがゴールラインを割りました。

同点にして落ち着きを取り戻した鹿島は、遠藤康が冷静なボールさばきでゲームをコントロールし、レオ・シルバが左右に大きくボールを散らして長崎の陣形を広げさせます。

まだ時間は十分に残されていましたが、長崎の選手は鹿島の変化に動揺してか、安易なミスが増えていきました。追加点もミスがきっかけでした。

前半39分、高杉のサイドチェンジのミスを拾われると、スペースを埋めるためサイドに下がった島田譲が伊東と遠藤の2人を見なければならない局面をつくられ、最後は遠藤に鮮やかなシュートを叩き込まれます。

3-4-2-1の形をとる以上、4-4-2の鹿島に対しては常にサイドで1対2になるリスクを抱えていますが、ミス絡みということでそのリスクが現実のものとなりました。

逆転を許した長崎は前線の選手が相手の2ライン間に立ってはいても、鹿島のDFが長崎の選手にぴったりとついて余裕を与えません。それゆえなかなかボールを前に供給することができませんでした。

後半に入ると前半は目立たなかった飯尾竜太朗と翁長聖のウイングバックが縦に仕掛ける場面が増えていきます。しかし中央で待っているファンマや鈴木武蔵にまでボールが渡らず、シュートにまでは至りません。

また前田悠佑が加わってディフェンスの激しさを前面に出すようにした結果、ファウルが増加。流れをつかめなくなると選手の距離感も悪くなり、守から攻への切り替えがうまくいかなくなったため、立ち上がりのようなカウンターは繰り出せなくなりました。

残り5分を切ったあたりからはバイスが前線にポジションを上げましたが、ファンマは後半16分に退いていてターゲットが限定されており、思うようにパワープレーで押し込めません。

最後は安定感を取り戻して中盤とDFのラインを狭めた鹿島にうまく支配されてタイムアップ。長崎は90分を通じて3本しかシュートを打てませんでした。同点に追い付くことも厳しい数字です。

この敗戦によって長崎は自動降格圏の17位に転落。最下位に沈んだガンバ大阪とは勝ち点で並んでしまいました。


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