22インチのフットボール

備忘録を兼ねて試合を振り返ります

2018年07月

前半、日本の遠慮ない斜めのパスを駆使した攻撃と相手最終ラインへのハイプレスは非常によく機能していました。しかしその一方で続いた自陣でのミスの連発が敗戦につながってしまいました。

いただけないミスは前半3分から起こっていました。横山久美のパスを引っかけられ、デビーニャにミドルシュートを打たれます。ここは池田咲紀子が防いで逃れました。

前半32分には三浦成美が自陣深い位置でヒールパスを選択。リスクの高いプレーをブラジルに狙われましたが、最後は國武愛美が阻止します。三浦は前半39分にもパスミスをしてデビーニャのロングシュートにつなげられてしまいました。

こうした日本の脆さをブラジルは逃すまいと、後半は前半よりも運動量を上げ、圧力をかけてきました。それに怯んでしまったか、日本は自陣でのパスが弱くなり始めます。こうなると完全にブラジルペースです。

来るべき時が来てしまったのは後半31分でした。人数をかけてプレスをしてきたブラジルに圧倒され、三浦のバックパスを受けた鮫島彩がコントロールミス。ラケルにボールをかっさらわれ、エースのマルタがフィニッシュ。痛恨の先制点を許してしまいます。

直後に隅田凛を下げて中島依美を入れ、攻勢に出ようとしますが、逆に後半45分、ラケルのスルーパスに反応してダイアゴナルに走り込んだベアトリーズが土光真代のタックルを簡単に外して追加点を奪いました。

後半48分に中島の変化をつけたコーナーキックを受けた阪口萌乃がクロスを入れ、増矢理花が飛び込んで頭で押し込み、完封負けだけは阻止することができました。

残り少ない後半50分には相手陣内深いところでフリーキックを得るも、長谷川唯のキックはクリアされてしまい、コーナーキックを蹴らせてもらえないままタイムアップとなりました。

遡れば前半6分に人数をかけてプレッシャーをかけたことでアリーネのクリアミスを誘い、三浦がシュートを打ったもののボールが高く上がらず、下がったアリーネの正面に収まった場面や、前半10分の籾木結花の早めのクロスを中央に走った岩渕真奈がループシュートに結び付けながらアリーネに阻まれた場面のように早い段階で仕留めるチャンスは日本の方にありました。

その後は長めのボールを駆使するなどしてブラジルゴールに迫り、前半36分には横山が中央でドリブルを仕掛けてフリーキックを獲得。これを自ら狙うもアリーネの好セーブにあいました。

こういった限られたチャンスを確実に生かすことができれば、ゲームの流れは日本がつかんだままで後半も余裕をもって対処できたかもしれません。それだけに悔やまれる前半となりました。


サイドハーフがハーフスペースから中央のレーンにまで入り込む形を増やして中盤に厚みをもたらし、1点ビハインドの前半20分に三浦成美、有吉佐織、そして左サイドハーフの長谷川唯が中央で絡んで田中美南がゴールを決めたシーンは見事でした。

また後半31分にペナルティエリア手前の角からここしかないというコースを狙った阪口萌乃のシュートもすばらしいフィニッシュでした。

しかし日本はライン間を狭める相手の攻略に苦しんでペナルティエリアの中に入る回数が少なくなり、高さとパワーで上回るアメリカにまたしても大量失点を喫して初戦を落としてしまいました。

前半18分にはセンターバックが2人でアレックス・モーガンを挟んでいたにもかかわらず、ミーガン・ラピノのグラウンダーのクロスに合わされて先制を許すと、前半26分にはアメリカの狙っていた形で勝ち越されてしまいます。

攻撃の際には左サイドバックのクリスタル・ダンがウイングばりに高い位置をとり、ダンのポジションをインサイドハーフのどちらかが下がって埋めていたアメリカ。そのダンが逆サイドにボールを放り込み、エミリー・ソネットが折り返すと最後はモーガンがゴールネットを揺さぶります。

日本はソネットがボールを持ったときにエリア内にいた全員が完全にそちらに気をとられてしまい、警戒しなければならないモーガンをフリーにしてしまいました。

その後は日本の選手の動きがやや落ちた前半42分にティアナ・デビッドソンのロングボールをモーガンが落とし、アンカーの位置から上がったジュリー・アーツにフリーで打たれるも山下杏也加が阻みます。

後半になっても引き続きアメリカの攻勢にあいました。後半5分に日本の悪癖である中盤でのパスミスからボールをつながれ、リンジー・ホランがシュートを放ち、山下がキャッチ。3分後にはコーナーキックのこぼれ球を狙われ、田中がゴールライン手前でかろうじて阻止しました。

ギリギリのところで凌いでいたなでしこジャパンでしたが、直後に投入されたトビン・ヒースが阪口を振り切りラストパスを入れ、一度はカットするもまたしてもモーガンに決められます。これでモーガンはハットトリックを達成しました。

さらに後半21分、ラピノとローズ・ラベルのワンツーを三宅史織がカットしたものの、ボールがラピノにわたってしまい4点目を奪われました。サイドを生かした攻撃によって失点を繰り返していましたが、今度は中央を破られてしまいました。

点差が開いた状況で日本は途中から入った川澄奈穂美、横山久美、増矢理花そして菅澤優衣香が奮闘。後半24分には増矢のヒールパスを受けた菅澤がシュートを打ち、1分後には菅澤が縦に出して川澄がクロスを上げ、ファーサイドで待ち構えていた横山がフリーでボレーシュートを打ちました。

ただいずれも得点には結び付かず、阪口のゴール以降、終盤はアメリカに簡単にいなされ、キープをされて逃げ切られてしまいました。アメリカに対する苦手意識を克服することは今回もできませんでした。

3試合を戦うリーグ形式の大会でこのままズルズルといかないためにも、同じく初戦を落としたブラジルとの一戦を確実にものにできるかどうかが問われます。


短時間で一気に体から汗が噴き出る暑さの中、主力選手を大量に欠きながらも終始ハードワークを惜しまなかった東京がアウェイで勝ち点3を獲得しました。

東京は例のごとく東慶悟と大森晃太郎がハーフスペースに位置どることが多く、前半22分にはその2人の中央での絡みから太田宏介がクロスを入れ、高萩洋次郎が落としてチャンスになりかけました。

前半27分には太田がペナルティエリア内に進入。深い位置からマイナスのクロスを入れると、この日右サイドバックを任された小川諒也がゴールを狙うも亀川諒史にブロックされます。

さらに前半35分から前半37分にかけて太田のプレースキックが続き、前半37分のコーナーキックではセカンドボールを太田がゴール前に入れ、森重真人が落とすも中村航輔が弾き、こぼれ球を東が蹴り込みますが中村の正面でした。

前半の終盤は柏に小川と岡崎慎のいるサイドを狙われ出し、江坂任やクリスティアーノからクロスが放り込まれますが、体を張った守備で難を逃れます。

後半になると東京はサイドのスペースを有効に使い始めました。後半7分には太田が縦にボールを出すと、トップから流れてきた富樫敬真がフリーで受けてクロスを入れました。

そして後半16分、今度は右サイドで同じようなプレーを見せます。小川が左足アウトサイドで前方のスペースに出し、東がマイナスのボールを中央に送るとゴール方向に走り込んでいたパク・ジョンスの足にきれいに当たりオウンゴールで先制しました。

東の好調ぶりは終盤まで持続します。後半35分には鎌田次郎の頭上にボールを浮かせてかわし、スルーパスを繰り出しました。残念ながら矢島輝一との呼吸が合わず、フィニッシュには至りません。

一方、守備面では柏のカウンターをたびたび阻止。後半6分にはパスが通れば数的不利でピンチになったところを東、さらには米本拓司が防ぎ、後半39分は伊東純也の仕掛けを米本と森重で止めました。

点差はわずかながら余裕が出てきた東京は、パス回しもスムーズになり、3人目の動きも活発になりました。そして中村の負傷退場によってアディショナルタイムが長くなるのを見越したのもあってか、ゆっくりと時間を使ってキープをするのではなく、あくまでも2点目をとりに行きます。

その姿勢が得点に結び付くことはなく、仕留めることこそできなかったものの、最後は後半52分のクリスティアーノによる3回連続のロングスローを凌ぎ切り、5試合連続のクリーンシートでリーグ戦3試合ぶりとなる勝利を収めました。


約1ヵ月にわたる戦いは、フランスが20年ぶり2度目の優勝を果たして幕を閉じました。

序盤は慎重だったフランスに対して、疲労が蓄積しているはずのクロアチアは積極的に仕掛けていきます。ルカ・モドリッチがファウルにはなったものの果敢に高い位置からたびたびつっかけていき、前半3分にはボールを奪ってからイバン・ペリシッチがドリブルで攻め入ろうとしました。

さらに前半10分、中盤に安定感をもたらしているエンゴロ・カンテからボールを奪い、最後はペリシッチが低いクロスを入れるシーンがあり、1分後にはイバン・ラキティッチが裏に出したボールをペリシッチがトラップしながらボールが流れてしまう惜しい場面がありました。

シュートこそなかったとはいえ、モドリッチがカンテを引っ張り出すべくサイドに流れるなどしてそこからフランスの守備を崩そうとしており、試合のペースはクロアチアが握っていました。

ところが最初のチャンスを生かしたのはフランスでした。前半18分、アントワーヌ・グリーズマンのフリーキックがマリオ・マンジュキッチの頭をかすってオウンゴールとなり、先制に成功しました。

ただ、これで屈しないのが今大会のクロアチアです。前半27分、ペリシッチがカンテのファウルを受けてフリーキックを獲得。モドリッチはゴール前ではなくやや右サイドの方向に蹴り、シメ・ブルサリコが折り返すと頭でつないでドマゴイ・ビダが後方に落とし、最後はペリシッチがカンテを外してシュートを決めます。

同点となって一旦膠着しかけたかに見えたゲームは、グリーズマンのコーナーキックに対してペリシッチがハンドをしたとネストル・ピタナ主審がVARを用いて判定を下し、このPKをグリーズマンが確実に決めてフランスが再び勝ち越しました。

こうなるとレ・ブルーはオリビエ・ジルーも引いてペリシッチを監視するなど、前半をこのまま折り返すべくブロックを敷いて応対します。前半44分から前半46分にかけてはラキティッチのコーナーキックが3本続きましたが、いずれも生かすことができませんでした。

後半の立ち上がりは両チームに枠内シュートが生まれる中、クロアチアはポール・ポグバとカンテを飛ばした裏へのボールを増やします。後半4分にはマルセロ・ブロゾビッチのボールが最終ラインの背後に出るも、ラファエル・バランが触り、ウーゴ・ロリスがエリアを飛び出して胸で押さえます。

小柄なカンテの頭上をボールが飛んでいく展開に対してディディエ・デシャン監督は、すでに1枚イエローカードをもらっていたカンテを下げてスティーブン・エンゾンジを入れます。これで最終ラインの前にも高い壁ができました。

その前後、後半7分と後半11分にカウンターを発動させていたフランスが、後半14分に一気の攻撃でリードを広げました。ポグバが鋭い斜めのパスを送ってキリアン・エムバペを走らせ、そのパスをグリーズマンが落ち着いて保持して落とし、ポグバがシュート。最初のシュートはブロックされるも、再び放った一撃がゴールに突き刺さりました。今大会、比較的地味なプレーを厭わなかったポグバが、オウンゴールを誘った初戦のオーストラリア戦以来となる決定的な仕事をやってのけました。

後半20分にはエムバペがクロアチアの選手達の心を折るようなミドルを決めて試合を優位に進めます。

それでも4分後にマンジュキッチがあきらめずに走って、ロリスの軽率なミスを逃すことなく追撃のゴールを奪いました。するとズラトコ・ダリッチ監督はすかさずアンドレイ・クラマリッチを投入。ただしフランスのカウンターを警戒してか、アンカーのブロゾビッチは下げずに残しておきます。

攻勢に出ようとする相手に対してフランスはベルギー戦と同様に中盤と最終ラインの間を狭くしてスペースを消し、残り10分を切ったところでジルーを下げてナビル・フェキルを入れ、攻撃に強みを持つエムバペをセンターに配して逃げ切りを図ります。

クロアチアはラキティッチが積極的にボールに絡むものの、クイックリスタートをピタナ主審にやり直させられたあたりからフラストレーションがプレーに出てしまい、ボールロストをしてカウンターを食らう場面もありました。

終盤はポグバもゴールライン付近での守備に奮闘するなどして、フランスが4対2で勝利を収めました。

初優勝を狙ったクロアチア側からすると、最初の2失点は不運でした。フリーキックを与えたブロゾビッチのファウルのシーンはグリーズマンのシミュレーションのように見えましたし、PKとなったハンドの判定もたしかにペリシッチの体から腕が離れていたとはいえ、やや酷なものでした。

それだけにいまひとつ後味がすっきりしないゲームとなりましたが、優勝候補の一角だったフランスはアルゼンチン、ウルグアイ、ベルギーとタフな山を乗り越えて、最後はクロアチアを下して黄金のトロフィーを掲げることができました。

ドイツによる支配が終わり、個性豊かなタレントを擁するフランスの選手達がチームのために堅実な働きを懸命にこなして試合をマネジメント。結果的にはその攻守にわたる安定ぶりが光っていた大会でした。


決勝トーナメントに入ってからデンマーク戦、そしてホスト国のロシアとの準々決勝がいずれもPK戦にまでもつれ込んだクロアチアは、この試合も延長に突入。それでも最後まで勝ち切るために戦い抜きました。

ロシア戦とは違い、デンマーク戦のようにマルセロ・ブロゾビッチをアンカーにして、ルカ・モドリッチとイバン・ラキティッチをインサイドハーフに置いたクロアチアでしたが、前半5分にキーラン・トリッピアーのフリーキックで先制を許します。

イングランドはその後、手堅く守りながらスピード豊かなラヒーム・スターリングを走らせることで追加点を狙ってきました。ただスターリングが決定機を迎える場面はなく、シュートも1本しか打てていません。

追いかけるクロアチアは前半31分に中途半端なクリアに反応したアンテ・レビッチがシュートを打つも、ジョーダン・ピックフォードの正面でした。前半の決定機はこれくらいしかなく、前半18分にラキティッチのサイドチェンジがタッチラインを割ったり、前半22分にイバン・ストリニッチが自陣でのパスミスでピンチを迎えたりと疲労が表れているようなプレーぶりを見せてしまいます。

後半がスタートした段階でも状況はあまり変わらず、単純なパスミスが目立ちました。選手間の距離も悪く、イングランドの中盤とDFの間に選手がいない時間が多くありました。

一方、イングランドの選手達は1点リードしているのもあってかよく動けていました。後半11分にはピックフォードの精度の高いロングキックをハリー・ケインがすらしてスターリングが落とし、ジェシー・リンガードがシュートを打つシーンがありました。

このままイングランドが逃げ切るかに思われましたが、後半23分、ラキティッチが逆サイドに展開するとシメ・ブルサリコが早めにクロスを入れ、イバン・ペリシッチがカイル・ウォーカーのほんの少しだけ前に足を出してボールに触り同点に追い付きます。

同点になったことでクロアチアは完全に復調。後半27分にはペリシッチのシュートがポストを叩き、レビッチも続いてゴールを狙いました。

また勝ち越したいため再び上がってくるイングランドに対してはブロックを敷いて冷静に対処。ズラトコ・ダリッチ監督が交代カードを切らないまま、逆転のチャンスをうかがいながら11人で90分を乗り切ります。最初の交代は延長前半5分、ストリニッチがプレー続行困難となったためにヨシプ・ピバリッチを入れました。

イングランドは前線にいるべきケインが下がってボールの配給役を担う中で、クロアチアは延長前半17分に決定機をつくります。ペリシッチがDFとGKの間に低いクロスを入れ、マリオ・マンジュキッチが合わせるも距離を縮めたピックフォードが防ぎました。

この低いボールが伏線となったのか、延長後半4分、ウォーカーのクリアが中途半端になったのを逃さなかったペリシッチがバックヘッドでゴール前に送り、マンジュキッチがすばやく走り込んでゴールを決めます。イングランドの守備陣は一瞬足が止まってしまい、マンジュキッチの動きをとらえきれませんでした。

ダリッチ監督はその後、殊勲のマンジュキッチ、そしてここまで働きづめだったモドリッチを下げます。最後は代わったミラン・バデリのハンドでフリーキックを与えてしまいましたが、マーカス・ラッシュフォードのキックを弾き返してタイムアップを迎えました。

初出場した1998年以来の、いやそれをも上回る快進撃を続けるクロアチアは、初めてのワールドカップ優勝をかけてフランスと戦うことになりました。


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