22インチのフットボール

備忘録を兼ねて試合を振り返ります

2018年05月

ヴァイッド・ハリルホジッチ前監督のやり方に異を唱え、親善試合であろうが勝ちにいくはずの新生日本は、大半が2日前に来日したばかりのガーナに0対2であっけなく敗れてしまいました。

日本の戦いぶりは親善試合であることを考慮しても、どう見てもテストというよりは寄せ集めのオールスターのチームような、組織としてできあがっていない状態でした。

そんな中でよくも悪くも目立っていたのが本田圭佑です。3-4-2-1のシステムで2シャドーの一角を任され、守備時には5-4-1の4の右サイドを担当するはずの本田でしたが、フリーマンであるかのように自由にピッチを動き回り、左サイドにも流れるなどして頻繁にボールに触ろうとします。そのため、ときにはトップの大迫勇也が右サイドをカバーしなければならなくなりました。

前半13分、原口元気のクロスに対して、相手DFにブロックされているにもかかわらずオーバーヘッドを打ちにいこうと動いたあたりは、じつにらしい判断でした。

とはいえ、止まったボールを蹴る力はさすがで、前半33分には無回転フリーキックを披露。リチャード・オフォリに阻まれはしたものの、ビッグチャンスをつくりました。

その勢いで宇佐美貴史のコーナーキックからの流れでゴール手前からシュートを放ち、再びオフォリに止められます。

一方、西野朗監督の采配は今までの代表ではないような大胆さで、後半14分には山口蛍を下げて同じ位置に柴崎岳を入れるという措置をとります。これで柴崎と大島僚太が守備的な中盤の位置でしばらく並ぶ形になりました。

この時点で2点のビハインドだったこともあり、攻撃に重心を置いた起用なのでしょうが、日本の選手の運動量がガーナのそれに比べて少なく、相手DFを外す動きもあまり見られなかったため改善しません。しかもボール支配率が60%近かったとはいえ横パスが多く、つなぐサッカーの片鱗さえありませんでした。これでは何も生まれません。

後半31分に3バックのセンターを務めていた長谷部誠を外して、井手口陽介を入れることで柴崎を右サイドハーフに上げる4-4-2にフォーメーションを変えても、大きな変化はなく、サイドからの単調なクロスばかりで工夫が見られませんでした。

結局、流れの中からは失点しませんでしたが、VARが必要なほどきわどいシーンもなく、まるで収穫のない90分でした。あえて何かを挙げるとすれば、残り10分を切ったあたりで足に違和感を覚えたかのようなしぐさを見せた大島が最後まで無事にプレーできたことでしょうか。

さすがに残り3週間弱でもう少し規律正しいサッカーができるようになるとは思います。それでもワールドカップで結果を残す可能性は3月よりもはるかに低くなったと言わざるを得ません。


やはりレアルは強かった。大一番でわずかな隙を見逃さず、確実に仕留める力はさすがとしか言いようがありません。

立ち上がりこそリバプールがゲーゲンプレッシングを発動させ、エル・ブランコは混乱に陥りました。クリスティアーノ・ロナウドやカゼミーロがボールロストし、思うようにパスを回すことさえできませんでした。

そしてモハメド・サラー、ロベルト・フィルミーノ、サディオ・マネという破壊力抜群の3トップがレアルゴールに襲いかかってきました。前半6分、ジェームズ・ミルナーの変化をつけたフリーキックを受けたサラーがゴールを狙い、2分後にはアンドリュー・ロバートソンのクロスにフィルミーノが頭で合わせます。

それでも準決勝のバイエルン・ミュンヘン戦でもチームに大きく貢献したセルヒオ・ラモスとケイロル・ナバスを中心にリバプールの怒涛の攻撃を凌ぎ、前半の半分を乗り切りました。

流れが変わったのは、イスコがファウルを誘って耐えていた時間帯でのことでした。前半26分、セルヒオ・ラモスがサラーの腕を引っ張り、サラーが肩を負傷。プレミアリーグ得点王がピッチを離れなければならなくなりました。

貴重な得点源を失ったリバプールが動揺して激しいプレッシャーをかけられなくなったこともあり、ここからレアルは主導権を取り戻して、サラーのいなくなったサイドを積極的に使っていきます。前半45分にはカリム・ベンゼマのクロスを負傷離脱したダニエル・カルバハルに代わって出てきたナチョがファーで合わせました。

前半は0対0のまま終わりましたが、試合は思わぬ形で動きます。後半6分、ロリス・カリウスが転がそうとしたボールにベンゼマが足を出し、そのボールがゴールに吸い込まれていったのです。準決勝2ndレグでバイエルンのスベン・ウルライヒのミスを逃さなかったように、背番号9はここでもしたたかに得点を奪いました。

4分後にコーナーキックからマネの得点で同点に追い付かれはしますが、またしてもジネディーヌ・ジダン監督の采配が的中します。状態のよかったイスコに代わって後半16分に入ったガレス・ベイルが大仕事をやってのけたのです。

まずは後半19分、マルセロの右足のクロスに対してオーバーヘッドでゴールを決め、勝ち越しに成功します。ジダン監督が現役時代、レバークーゼンとのチャンピオンズリーグ決勝で決めたボレーシュートに匹敵するほどのスーパーなゴールでした。

さらに後半38分、フリーの状態でミドルシュートを放ち、これをカリウスがキャッチミス。ボールは後方に飛び、試合を決定付ける1点となりました。カリウスは最初にミスをしたあと復調して、イスコやベンゼマのシュートを阻んでいましたが、ここは止めきれませんでした。

またユルゲン・クロップ監督がミルナーを下げてエムレ・ジャンを入れた直後で、シュートレンジの広いベイルに対するリバプール守備陣のケアが足りなかったことも影響しました。

後半48分にはピッチへの乱入者に邪魔をされたこともあり、大会得点王のロナウドにゴールは生まれませんでしたが、レアルは現行のシステムになって初めて3連覇を達成しました。長年積み上げてきたクラブの力が最後まで発揮されたことによるすばらしい優勝です。


前節まで1試合平均の失点が1.00点と守備の安定している両チームの対戦は、両守護神の好セーブもあり、スコアレスドローに終わりました。

アウェイの札幌はパスを細かくつないで崩すのではなく、ジェイ・ボスロイド、都倉賢の高さを生かすべく、ウイングバックの菅大輝、駒井善成からのクロスや後方からのボールを多用しました。

そこに立ちはだかったのが林彰洋でした。前半42分にはジェイが空中で競ったボールに反応した都倉がシュートを放ちますが、これを見事に防ぐと、後半18分の福森晃斗のフリーキックも外に弾き出し、後半46分のピンチも体を張って凌ぎました。

一方、東京は序盤は札幌の執拗なプレッシャーに苦しめられ、その後も最終ラインを5人で固める守りの攻略に苦労しますが、クロスの精度に定評のある太田宏介を除く両サイドの選手がしばしば中央のレーンに入ることでチャンスをつくろうとします。

前半29分には最終的に永井謙佑がオフサイドにかかったものの、東慶悟と大森晃太郎がともに中央でパス交換をして札幌ディフェンスを崩し切るシーンがありました。また前半44分には大森が中央からミドルシュートを狙い、ク・ソンユンに阻まれます。

後半になると東京がカウンターを仕掛けられる場面が増え、後半8分には永井の好判断によるパスを受けた室屋成がク・ソンユンとの一騎打ちとなりました。しかし室屋のシュートは札幌の守護神に止められてしまいます。

後半15分にもカウンターで3対3の局面をつくりだすなどしたものの、持ち味である永井とディエゴ・オリヴェイラの縦への推進力を生かすことはほとんどできず、特にディエゴ・オリヴェイラはほとんどチャンスに絡むことができませんでした。

最後は東京がスローインからパスを後方でゆったり回して時間を使っている間にタイムアップを迎えてしまいました。前の日に首位のサンフレッチェ広島が勝ち点を伸ばしていただけに、どちらにとっても痛い引き分けとなりました。


勝ち点差は2しかなかったにもかかわらず、どちらがホームチームかわからなくなるような、それほどまでの差が両者にはありました。

動き出しがよく、球際では負けず、最後まであきらめない、ひたむきな姿勢を見せていたのはほぼベストな陣容で臨んだ東京の方でした。永井謙佑、ディエゴ・オリヴェイラの前線での頑張りもさることながら、川崎のパスを阻んだボランチの橋本拳人のボール奪取能力の高さが光っていました。

先発メンバーを大幅に入れ替えることで鮮度を重視した川崎は、4-4-2のブロックを敷いて中を固めた相手に対してゴールへの道筋をつくることがなかなかできませんでした。前半はリーグ戦初先発の齋藤学が果敢にクロスを供給しますが、唯一決まった前半39分の低いボールは、知念慶のシュートがヒットしなかったため林彰洋に難なく押さえられます。

その知念に代わってハーフタイム明けにピッチに入った中村憲剛は、嫌な流れを払拭すべく東京の中盤とDFの間にポジションをとったりしながら広範囲を動き回ります。

後半6分にはバイタルエリアで相手に囲まれながら強引に抜け出し、車屋紳太郎に一旦預けてリターンを受けるとファーサイドにクロスを上げました。そこで待っていた大久保嘉人が頭で合わせますが、角度が厳しく枠にはいきません。

さらに後半9分にはみずからミドルシュートを放ち、林のセーブにあってコーナーキックを獲得すると背番号14はサポーターを煽り、スタンドからの後押しを求めました。

しかしその後も中央は思うように崩せなかったため、車屋や途中出場の長谷川竜也による左サイドからのクロスを主体に攻めるも、いずれも簡単に阻まれてしまい決定的なチャンスをつくることができません。

得点を奪えないまま終盤に突入すると谷口彰悟がしばしば前線に顔を出すようになり、守田英正を最後方に下げて3バック気味にしましたが、これも形にはなりませんでした。

結局、出場停止のチョン・ソンリョンに代わってゴールを守った新井章太が前半45分と後半18分の二度のピンチを防ぎはしたものの、太田宏介の正確なフリーキックから橋本、森重真人に得点を決められ、東京に完敗するという形になりました。

川崎は東京のように相手陣内深いところでのフリーキックのチャンスをほとんど得られず、そのあたりでは東京の守備陣が名古屋グランパス戦とは違って非常に注意深かったと言えます。

ホーム等々力で2試合続けて0対2の完封負けを喫した川崎は5位に転落。中断前の残り2試合でどう盛り返せるか、昨季王者の真価が問われます。


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