22インチのフットボール

備忘録を兼ねて試合を振り返ります

2018年03月

キリンチャレンジカップの海外開催がもっと早くできていたならば……と思わせるほどタフなウクライナとの対戦となりました。もちろん海外で行うにしても日本で見やすい時間にキックオフを合わせなければならず、それもあって集客面はまったく期待できないことや、ワールドカップ以後、ヨーロッパではネーションズリーグが始まり、こういった手合わせが難しくなることなどから、現実的には今後も継続して行うには課題が山積みでしょうが、とりあえず今回は本大会の準備をするにはいいマッチメイクとなりました。

貴重な場を生かしたい日本は、ウクライナの攻守における出足の速さにアジャストするのに時間がかかってしまい、流れの中での決定機は後半41分の長友佑都のクロスを小林悠が落とし、中島翔哉が粘り強くシュートを打ち続けた場面まで待たなければなりませんでした。

前半の守備では、中盤の3人が対峙する選手に可能な限りついていくような形を試みましたが、左サイドでスペシャルな働きをするイェウヘン・コノプリャンカを除いては、オレクサンドル・ジンチェンコがハーフスペースにポジションをとる左サイドバックのような動きを見せるなど、ピッチの中を自在に移動するため、捕まえきることができず、この形は断念せざるを得ませんでした。

攻撃は甘いパスが簡単に狙われ、さらに先制した直後のウクライナはマリ同様にセンターバックにボールを持たせまいとプレッシャーをかけてきました。しかし彼らより前の選手の受ける動きは少なく、苦し紛れのロングキックを用いる結果となりました。

それでも柴崎岳のフリーキックから槙野智章が同点弾を奪ってから、多少は息を吹き返し、日本のプレー強度も高まりつつありましたが、左を活性化させてもサイドからのクロスは形にならず、そうこうしているうちにコノプリャンカに日本の右サイドを突破され、マイナスのボールに走り込んだオレクサンドル・カラバエフに勝ち越し点を決められてしまいました。

そこから15分以上経過してようやく流れの中での決定機をつくると、最後の最後で小林がアンドリー・ピャトフに寄せたことでパスミスを誘発し、拾った中島が持ち込んで倒され、フリーキックのチャンスを得ます。ここで中島が直接ゴールを狙いますが、ピャトフに阻まれてしまいました。

再び同点にすることはできず、外野の雑音がますます大きくなる結果となりました。中島が見せ場をつくった以外に特筆すべき点はなく、23人の選考がいい意味で難しくなることはなかったので、悩ましい状況ではありますが、5月に再集合してからの1ヵ月でどこまで組織的に戦えるチームにできるかが本大会に向けては重要となります。


本大会でも起こりえないとは限りませんが、吉田麻也、酒井宏樹といった主力が負傷のため、井手口陽介、浅野拓磨が所属クラブで確固たる地位を築けていないことを理由にメンバーに入っていないという苦しい状況の中、さらに大島僚太がE-1サッカー選手権の中国戦と同様に前半半ばで負傷交代するアクシデントに見舞われてしまいました。

大島は守備時には長谷部誠と並んでボール奪取に貢献し、攻めに転じたときはキャプテンよりも前目にポジションをとって前線とのつなぎ役を見事に果たしていました。前半23分には狙いを定めてミドルシュートを放ち、ジギ・ディアラを襲いました。

重たい背番号25を背負っていたMFは、この日も攻守にわたって存在感を発揮できていただけに再びの負傷退場は残念でなりません。代わりに入った山口蛍はどちらかと言えばディフェンスで力を発揮するタイプのため、チームのクリエイティブな部分はややダウンしてしまいました。

しかも、不慣れな右サイドバックを任された宇賀神友弥のファウルでPKを献上、前半のうちにリードを許す展開となりました。マリには流れの中で前半9分のアダマ・トラオレのシュートくらいしか決定機をつくらせていなかっただけに悔やまれる失点です。

試合を難しくしてしまった中で後半15分に長谷部が下がると、状況はより厳しくなります。これは本番に向けてのテストの一環でしょうから必要以上に悲観する必要はないものの、長谷部が広範囲を的確にカバーしていたのに対し、三竿健斗も幅広く動いてはいましたが、ポジションを捨てて相手をつぶしに行くリスキーなプレーを何度かしており、中盤の安定感がやや失われてしまいました。

こうした影響もあってか、昌子源、槙野智章、中村航輔でボールを回す際に、高い位置をとるマリの前線の選手の存在を怖がってなかなか前に運べないシーンがありました。またいつものような最終ラインから前線への斜めのロングパスもボールが緩かったりして奏功しませんでした。

それでも後半48分に中島翔哉が3人を外して小林悠に預け、小林がタメをつくってクロスを入れ、弾かれたボールを三竿がすかさずファーサイドに蹴り込み、最後は中島が合わせて同点に追い付きました。

アフリカのワールドカップ3次予選で1勝もできず、最下位に終わった相手に……という見方もできるでしょうが、コートジボワールとモロッコにアウェイで負けたほかはスコアレスドローが4試合だったというチームですから、今回はメンバーが落ちているとはいえ、楽に勝てる相手ではなかったと考えられます。

もちろん日本が改善すべき点は多く、ロシアで23人の総力を結集して戦えるかどうかという点ではまだ首をひねらざるをえない90分となりました。


ボールを握っての攻撃に重きを置く同じ流派の両者の対戦は、得点こそ中村憲剛のフリーキックに入ったばかりの大久保嘉人が合わせた1点のみでしたが、フィールドプレーヤーが密集したピッチの中で互いに主導権を譲りたがらない見ごたえのある戦いとなりました。

それでも相手を食いつかせてからパスではがすプレーを含め、局面における戦いでは、苦しみながらAFCチャンピオンズリーグを戦っているJ1王者が勝っていました。ひとつひとつの小さな勝利が積み重なり、完封勝利につなげた格好です。

とりわけ攻守において存在感を見せたのは、大島僚太と小林悠という代表組です。後半8分には家長昭博とともに怒涛の攻撃でゴールに迫るなど、鋭いボールを使って攻める一方、守備への切り替えも非常に早く、高い位置で名古屋から自由を奪っていました。

また、名古屋のキープレーヤーであるガブリエル・シャビエルを抑えた登里享平の働きも見事でした。サイドのポジションに固執することなく、ときには執念深くシャビエルについて、前半30分には強いシュートを打たせまいと最後まで食らいつきました。

最後方ではチョン・ソンリョンが立ちはだかり、前半10分の青木亮太のシュートはジョーがこぼれ球に詰めようとしていたため、ボールをはじく際にコーナーキックに逃げる判断をし、後半50分の佐藤寿人の至近距離からのボレーシュートには懸命に反応してセーブ。後方に流れた緩いボールは谷口彰悟がゴールライン手前でクリアしました。

その谷口も長身の元セレソン、ジョーを相手に一歩も引かない戦いを見せ、ほとんど仕事をさせませんでした。頼もしさを感じさせる安定したプレーぶりです。

ホームの名古屋はやや守らされる時間を乗り切った前半35分と前半42分にそれぞれジョーとシャビエルにシュートチャンスが訪れましたが、どちらも枠をとらえきれず、それ以降は流れの中でほとんど決定機がつくれませんでした。

こうして無敗対決は違いを見せつけた川崎の勝利に終わり、首位に浮上。いい形で中断期間を迎えることとなりました。


滑り出しは上々でした。持たれたらすかさずブロックを形成する清水に対し、札幌は果敢に攻めていきました。最終ラインから長いボールで両ウイングにつけたり、ショートパスは相手がいてもかまわずに縦につけたりして、前への意識を強めていました。

ミハイロ・ペトロヴィッチ監督の志向するサッカーが早くも浸透しているようで、プレーする選手たちも今シーズンからの変化を楽しんでいるかのようでした。

ゲームを支配するいい流れの中、前半15分に大きなサイドチェンジを駒井善成が受け、そのクロスにジェイ・ボスロイドが合わせて先制します。

しかし、チームはまだ発展途上にあるようで、3バックの外側を使われて失点してからは守勢に回り始めます。特に後半3分の金子翔太の逆転弾を食らってからは、完全に清水に主導権を明け渡してしまいました。前半の清水は札幌の失速を見越して我慢をしていたのかもしれません。

劣勢になって弱気になり、迷いが生じ、ホームグラウンドにもかかわらずパススピードは明らかに落ちました。必然的に中盤でのボールロストが増え、立ち上がりのようないいリズムを取り戻せません。連動性、継続性といった点では改善の余地があります。

そこで指揮官はヘイスや都倉賢といった強さを持った選手を前に送り込む一方で、三好康児をボランチとして、チャナティップ・ソングラシンを左ウイングバックとして残したのです。プレー続行となった2人はともに不慣れなポジションで、シャドーを任されていたときのような攻守における機動力、躍動感は鳴りを潜めてしまいました。

こうして選手構成としては攻撃に相当軸足を置いた格好になったものの機能はせず、前線の選手を生かしたパワープレーをするでもなく、サイドからのクロスは簡単に跳ね返されてしまい、札幌からは得点のにおいを感じられませんでした。

時間の経過とともに課題が目立ち、1対3の逆転負けを喫したホーム開幕戦。それでも可能性を秘めていることは間違いないので、これからの成長に期待したいところです。


流れの中でのシュートは田中美南が後半34分に放った1本のみ。獲得したコーナーキックはゼロ。終了間際の田中のPKはステファニー・ラベに阻まれ失敗――。なでしこジャパンはいいところを出しきれないまま、無得点で最終戦を終えました。

こうなってしまったのは、ビルドアップから苦労していたことが大きな要因でした。最終ラインでボールを回していても、カナダの2トップとセンターハーフに阪口夢穂と隅田凛へのパスコースを封じられ、出しどころに困って相手の背後に大きく蹴ってもデンマークのようにはたやすく裏を取らせてもらえず、待ち構えていた屈強なカナダのDFに弾かれました。

また、前半31分に菅澤優衣香がバランスを崩しながら懸命に出したパスに中島依美が抜け出しチャンスになりかけたときは、ジャニーン・ベッキーの体を張ったディフェンスに止められ、シュートを打つことができません。

逆に日本はペナルティエリア内での集中力を欠いて失点を重ねてしまいます。前半20分にはベッキーのシュートが中島の腕に当たり、主審が判定を下す前に中島はそばにいた有吉佐織とともに動きを止めてしまうと、ハンドのアピールをしつつもシュートを放ったベッキーにしてやられました。

後半5分には長谷川唯がサイドで奪われたボールに対し、熊谷紗希と山下杏也加が連携ミスをしてしまい、さらに熊谷が大きく蹴り出さずに持ち出そうとしたところをアシュリー・ローレンスに狙われて追加点を許しました。

隙のなさではカナダに圧倒され、馬力やスピードでもなでしこはかないませんでした。来月に迫った女子ワールドカップ予選の突破は、リオ五輪にくらべて出場枠が多いことから決して難しくないでしょうけれど、どれだけ海外遠征を繰り返してもそこから先の戦いに光明を見出すことがいまだにできていません。


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