22インチのフットボール

備忘録を兼ねて試合を振り返ります

2017年12月

前半はベレーザを意識し過ぎたのか、石田みなみ、川島はるなの両ウイングがかなり引き気味なのもあって、最終ラインの統制をとりきれていなかったノジマステラ。当然、ベレーザはそれを見逃しはしません。

前半6分と前半24分、岩清水梓の縦へのフィードをそれぞれ田中美南と阪口夢穂が抜け出して受け、田尻有美の頭上を越すシュートを決めます。ノジマステラの選手はオフサイドをアピールしましたが、いずれも副審の旗は上がりませんでした。

同じ形で失点を繰り返したノジマステラは、後半頭からミッシェル・パオを送り込み、ウイングの高さを修正。変に怖がらずにこの形を早めにとっていれば、試合展開はもう少し違ったものになったかもしれません。

前への意識を高めたことでコーナーキックを獲得する機会も増え、田中陽子の正確なプレースキックがチャンスへとつながります。後半21分にはそのキックのこぼれ球に反応した吉見夏稀がゴールを狙い、ボールは惜しくもポストを直撃します。

流れを引き寄せ、得点まであと一歩のところまで近づきながらネットを揺らせずにいると、後半29分にまたしても田中美南に決められてしまいます。ミッシェル・パオがボールを失うと、中里優がそれをすかさず前線に送り、裏に抜け出た得点女王が冷静に処理しました。

残り約15分となり、厳しい状況に追い込まれた挑戦者は、それでも気持ちを切らすことなく攻め続けました。後半38分には田中陽子が強烈なシュートを放ちますが、山下杏也加に阻まれます。

ノジマステラは最後までひたむきな攻撃でベレーザを追い込みはしましたが、結果を出すという点においては優勝経験の豊富なベレーザが一枚も二枚も上手だった、という決勝でした。


試合を通じて三浦弦太と昌子源の間でどれだけの意味のないパスが行き来したでしょうか。そして得点が必要とされる状況で、どれだけ相手にボールをプレゼントしてしまったでしょうか。優勝をかけた日韓戦はもはやため息すら出ないような惨敗でした。

前半3分、小林悠がPKを決めたことで、勝ち点で上回る日本は優位に立ったはずでした。これでもし仮に1失点したとしても大会を制することはできたのです。にもかかわらず、韓国に押し切られて不用意な失点を重ねてしまいます。

まず前半13分、警戒していたはずの長身FWキム・シヌクにヘディングシュートを決められます。アシストとなるクロスを上げたキム・ジンスは、得点した選手かのように両膝をついて激しいガッツポーズをしていました。まだ同点という中でのこの喜び方からして、試合にかける強い思いを見た気がしました。

さらにその10分後、今度は元ヴィッセル神戸のチョン・ウヨンに美しいフリーキックを決められ、あっという間に逆転を許しました。これは車屋紳太郎がボールコントロールを誤り、取り返すべく危険なタックルをしたために与えたセットプレーからの失点でした。

それだけでは終わらず、前半35分にもキム・シヌクをフリーにして失点を喫して前半を終えます。ただ、2点差ということを考えれば、まだまだあきらめる状況ではありませんでした。

しかし攻撃はちぐはぐでボールをなかなか前に運ぶことができず、そんな中で倉田秋が前半にくらべて下がってボールを受けに行く動きは見せましたが、そこから先がつながりません。

一方、守備時のプレッシャーも単発のものが多くて連動性が見られず、チームとしてどうボールを回収するのかが不明瞭でした。

実質、小林のオウンゴールとも言えるヨム・ギフンのフリーキックが決まると、スタンドを埋めていた観客が日本の不甲斐なさと寒さにしびれをきらしてか、続々と席を立ち始めました。その流れは止まりません。中には周囲に人がいなくなった席とはいえ、試合そっちのけでピッチを背にして記念撮影に興じる者もいました。

もはやこの日の日本に見るべきものは何もない。そう思われた状況で、意地を見せようとしたのが川又堅碁でした。阿部浩之のクロスに頭で合わせて、流れの中で初めての決定機をつくり、北朝鮮戦の決勝点の時のように左サイドからクロスを入れるなど、ゴールへの貪欲な姿勢を見せていました。

それでも3点のビハインドを埋めることはかなわず、韓国に叩きのめされて逆転優勝を許してしまいました。結果、MVPを含めた個人賞とチームに与えられる賞は韓国が総なめ。表彰式は宿敵の歓喜を見届けるだけになってしまいました。

今大会は国内組の最終テストの場でしたが、韓国戦の結果を受けてアピールに成功したと言える選手は川又と、この日は4失点しながらも幾度か好セーブを見せた中村航輔くらいしかいませんでした。期待の伊東純也はPK獲得に貢献して以降、1対1の球際の勝負でほとんど負けてしまい、突破からの好機はあまりつくれませんでした。

とはいえ、この結果だけを受けてヴァイッド・ハリルホジッチ監督を解任しようというのは、ワールドカップまでの時間を考えても、また今回のメンバーがベストではないことを考えても愚策でしょう。ただ、永遠のライバルに大敗しただけに解任論がますます沸騰することは避けられそうにありません。それだけが心配です。


勝利が優勝への絶対条件だったなでしこジャパン。その前半は戦う姿勢が前面に出ていました。立ち上がりこそ北朝鮮の切り替えの早さに戸惑っていたものの、前半15分あたりから徐々にパスで相手を揺さぶれるようになりました。また、相手の中盤とDFの間にバランスよくポジションをとり、いい位置でボールを受けられる態勢を整えてもいました。

そうしたいい状況の中で放たれたシュートはわずかに1本。前半23分に田中美南が振り向きざまに打ったものだけでした。

それ以外は前半19分に阪口夢穂が前線に入れて岩渕真奈が落とすも、田中が打てなかったり、前半40分の高木ひかりのクロスを受けた籾木結花が打ちきれなかったりと、あと一歩のところでフィニッシュまで至りませんでした。

ただ、流れとしては悪くなかったため、後半もこれを継続できればチャンスは生まれたはずですが、ハーフタイムを終えたあとの日本は全体的に重たくなり、なかなか前に出ようとしません。詰まっては下げ、詰まっては下げという動かし方が多くて、バイタルエリアからペナルティエリアの中まで侵入する機会が少なく、なかなか脅威にはなりえませんでした。

日本がもたついているうちに北朝鮮は2点を挙げます。まず後半20分に櫨まどかのクリアが中途半端になったのを拾われ、最後はキム・ユンミに強烈な一撃を食らいました。

さらに後半37分、高木ひかりがキム・ピョンファに振り切られ、そのクロスはキム・ユンミがコントロールし損ねたものの、こぼれたところにフリーでいたリ・ヒャンシムに決められてしまいます。

優勝するには3点が必要になったなでしこの選手たちは、これで明らかに萎えてしまいました。たしかに後半4分の隅田凛のロングシュート以降、シュートがなかった中、後半40分に菅澤優衣香、後半43分に隅田のフリーキックから阪口、そして後半45分には櫨がゴールを狙ってはいます。しかし、シュートの数が増えてもボールの威力が弱かったり、枠をとらえられなかったりして決定機にはなりません。

また高倉麻子監督の選手交代も後手になってしまいました。流れを変えるには早めに動きたいところでしたが、後半17分に中島依美が入ってからはしばらく動きはなく、2人目の菅澤がピッチに入ったのが奇しくも2点目を許した直後の後半38分。そこで3バックに変え、最後に中里優が投入されたのは後半43分でした。

システムを変えた影響もあってか、最終的には全体の距離感が悪くなり、統制のとれていない状態で試合を終えてしまいました。

大事なところでなかなか勝ち切れない。立ちはだかる壁を破れない――。安定した強さを再び手に入れるには絶好の機会でしたが、彼女たちはそれを生かしきれませんでした。


中2日ということもあってか、初戦とは大幅にメンバーを変え、テスト的な意味合いがより一層強い構成でしたが、選手たちの意欲がうまくかみ合って勝利につながりました。

立ち上がりに積極性を見せたのは、大島僚太でした。攻守にわたって精力的に動き、ゲームを落ち着かせながらボールをさばいていました。ただ、残念なことに前半27分にシュートを放った際に左太もも裏を痛めてしまいます。

いつものように近づいてくる相手DFをターンしながらいなしたり、体を寄せてボール奪取したりする背番号10の姿を見られるかといったところでの離脱となってしまいました。ほろ苦い代表デビューとなったワールドカップアジア最終予選の初戦、UAE戦以来の出場とあって、期するものもあったはずです。

一方、守備では東口順昭が中村航輔に負けじと好セーブを披露しました。後半12分、李学鵬のスルーパスに抜け出した于大宝のシュートを完璧に防いだのです。それまで中国のシュートが1本もなかった中での集中したプレーでした。

また、後半3分にはボールをすばやく遠投して、相手陣内で伊東純也を走らせるなど、持ち味である守から攻への切り替えの早さも随所に見せてくれました。

得点シーンでは小林悠が見せました。前半4分の伊東のクロスに頭で合わせたときには枠をとらえられず、ピッチをたたいて悔しがりましたが、試合を通して北朝鮮戦よりもシュートの意識は高く、後半39分に川又堅碁と中央を強引にこじ開け、体勢を崩しながらも角度のないところからねじ込みました。

このときボールがゴールラインを割らず、クロスになってもいいように阿部浩之と倉田秋がゴールに詰めていたのも印象的でした。

しかし、チームとしての試合の締め方は中途半端になってしまいました。後半43分に相手の虚をつくすばらしいロングシュートを決めた昌子源が、その後やや不安定になってしまい、直接関与はしていないもののPKによる失点を許してしまいました。

ともあれ無事に勝ち点3を確保し、首位をキープした状態で気の抜けない相手、韓国との決戦に臨むこととなりました。


アンカーに隅田凛を置いて、阪口夢穂、猶本光というボランチタイプの選手をインサイドハーフとして起用した4-1-4-1の布陣で臨んだ日本でしたが、新たな形が機能したとは言いがたい内容でした。

序盤は攻撃参加を得意とする阪口が自由に上下動できる利点を生かして試合を進め、前半20分の田中美南の得点シーンでは隅田も中島依美のパスを受けるべくゴールに向かって走り込んでいました。

ところが前半30分ごろから、慣れない布陣を敷いた日本が中盤のバランスを欠き、中国のミドルレンジのパスがいとも簡単に通るようになります。特に猶本のポジションが不安定で、攻撃にも守備にも関与できていない中途半端に前目のところで浮いてしまいました。

必然的にハーフタイム明けには猶本に代えて岩渕真奈が入り、4-4-2にシステムを変更。比較的慣れ親しんだ形に戻します。

首位を走る北朝鮮を上回るにはさらなる得点が必要だった日本ですが、後半6分には阪口が、後半12分と18分には田中がゴール前で決定的なパスを受けるも、クリーンなシュートが打てません。

終了間際の後半43分にもボールを奪った阪口からのパスに岩渕がうまく抜け出してシュートを放ちましたが、これは枠をとらえられませんでした。

結局、1対0で試合は終了。前半25分の三宅史織、そして後半47分の池田咲紀子のミスパスからピンチを招くも失点につながることはなく、完封勝利を収めることはできました。

これで優勝に王手とはなったものの、3大会ぶりの制覇のためには次の北朝鮮戦に勝たなければならなくなりました。引き分けすら許されない一戦でどのように戦って有終の美を飾ることができるでしょうか。


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