22インチのフットボール

備忘録を兼ねて試合を振り返ります

2017年11月

日曜日、柏レイソルの中村航輔が鹿島アントラーズの猛攻をシャットアウトしたことで再び芽生えたリーグ優勝の可能性。それを残すためには絶対に勝つしかない川崎に対し、AFCチャンピオンズリーグを制した直後で達成感に満ちあふれているかに思われた浦和のモチベーションは下がってはいませんでした。

特に終盤はベンチに休ませていた槙野智章、柏木陽介がピッチに入り、1点を取りに攻め込みました。両サイドが広くポジションを取りながら、放り込み気味のボールを用い、後半46分には矢島慎也のクロスに槙野がフリーで合わせる場面もありました。

川崎にとって幸いだったのは、早い時間帯に先制に成功していたことです。前半14分、谷口彰悟がボールを奪い、それを受け取った家長昭博が意欲的に縦へ進み、最後は右足で絶妙なクロスを入れました。少なくともここのところは左足に持ち替えることが多く、右足ではラストパスを供給していなかった家長が、ここぞというシーンで最高のボールを繰り出しました。

それを信じて走っていた小林悠が滑り込んでフィニッシュ。鮮やかな攻撃でゴールネットを揺さぶります。

前半31分にも小林が強烈なシュートを放ちましたが、ここは西川周作が防ぎ、こぼれ球に反応したエウシーニョのシュートも枠を外れました。このときに追加点を奪えればもう少し余裕をもって戦えたかもしれません。

しかし、スコアは1対0から動かず、川崎はペナルティエリア付近でのファウルが多かったため、浦和に何度もいい位置でのフリーキックのチャンスを与えてしまうなど、苦しい時間帯が続きました。

結局、浦和の粘りもあって、中村憲剛と小林を下げたのは後半アディショナルタイムに入ってからという状況になり、次の最終節まで中2日しかないにもかかわらず、余力を残して試合を終えることはできませんでした。

優勝の行方は依然として勝ち点2差で首位に立つ鹿島アントラーズの結果次第ではありますが、等々力での大宮アルディージャとのラストゲームは疲労を抱えながらの総力戦で臨むことになります。


中盤にスペースが生まれていたものの最後のところで体を張り、辛抱強く守った浦和と、後方の守備にやや不安定さを抱えていたアル・ヒラル。両者のディフェンス面の差が明暗を分けた一戦でした。

前半1分と前半8分には長澤和輝が相手からボールを奪い、シュートにまで持ち込みました。その後もアル・ヒラルはボールコントロールに覚束なさを見せていました。付け入る隙は十分にありそうでした。

ただ、ボールを支配していたのはどうしても1点が欲しいアル・ヒラルの方で、サレム・アル・ダウサリやニコラス・ミレシを中心に浦和ゴールに攻め立てます。そうした状況下で浦和はピッチを大きく使い、無理をすることなく、前にボールを出すのがきつそうな場面ではバックパスを用いました。

後半になると、今度は浦和サイドに小さなズレが生じ始めます。なんでもないところでミスが目立つようになり、ここでアル・ヒラルに付け込まれてしまうと失点する可能性がありました。

しかし、槙野智章、阿部勇樹を中心にゴール前で懸命の守備を見せ、相手に自由を与えることなく、後半17分にはエースのオマル・ハルビンをベンチに追いやりました。

劣勢ながらカウンターとセットプレーに活路を見出そうとした浦和は、後半28分、柏木陽介のフリーキックを興梠慎三が合わせるもアブドゥラー・アル・ムアイフに阻まれ、こぼれ球に槙野が飛び込むも押し込むことができませんでした。

直後に宇賀神友弥に代えてマウリシオを入れ、槙野を左に出し、同時に興梠を左サイドに配してサイドの守備のてこ入れをすると後半34分にアル・ダウサリが2度目の警告を受けて退場となります。

それでもアル・ヒラルの攻勢は続きましたが凌ぎ切り、後半43分に待望の瞬間が訪れます。ラファエル・シルバが相手のボールコントロールミスを逃さずにみずからのものにして、豪快な一撃を見舞ったのです。最高の時間帯にゴールが決まり、4分のアディショナルタイムも守り切ってアジア王者に返り咲きました。

昨シーズンのチャンピオンシップ決勝では、アウェイで勝ちながらホームで鹿島アントラーズに逆転負けを喫し、アウェイゴールに泣きましたが、さらにタフなこのコンペティションのファイナルではきっちりと勝ち抜くことができました。

これで鹿島がJリーグ王者としてレアル・マドリーと戦うなど躍動した舞台、クラブワールドカップにアジアを代表して出場することが決定しました。この勢いを持続してどこまで戦うことができるでしょうか。


天皇杯の柏レイソル戦以降、公式戦ここ3戦は内容、結果ともに思うようなものにならなかった川崎でしたが、鹿島アントラーズの優勝を許さないためには負けられないこの試合は、25本ものシュートを浴びせて勝利をもぎ取ることができました。

試合はガンバがルヴァンカップ決勝のセレッソ大阪のように自陣でブロックを形成したため、川崎がほぼ一方的に攻め立てる展開になりました。そんな中で前半27分にはカウンターを食らいかけた場面もありましたが、大島僚太が阻止します。

川崎の攻撃は2週間前の反省が生かされ、ブロックを敷かれたからといってサイドに固執することはなく、中央からも攻める意識が見られました。エドゥアルド・ネットはさかんにスルーパスを繰り出し、またブロックされるケースが多かったものの選手達はミドルシュートの意識を高く持っていました。

しかし、そこに立ちはだかったのが東口順昭でした。特に後半は大活躍で、後半9分に小林悠、後半13分と後半28分に家長昭博、後半15分にエウシーニョからゴールを狙われましたが、いずれも見事に阻止しました。

それでも焦らず、必死に攻め続けた川崎に先制点が生まれたのは、後半37分のことでした。10本目を数えた中村憲剛のコーナーキックを家長が頭で落とし、最後はエウシーニョが押し込みました。東口も懸命にコースを消しに行きましたが、ボールは股の下を抜けていきました。

川崎が勝ったことで今節での鹿島の優勝はなくなりました。残り2試合は過密日程となりますが、鹿島の失速を願いつつとにかく勝ち続けるしかありません。


ロースコアだったとはいえ、惜敗という表現はどうもしっくりこないので疑問符をつけたくなりますが、とにもかくにももったいない試合になりました。

この日のベルギーが4日前の立ち上がりのブラジルのような激しいプレッシャーをかけてこなかったおかげで、日本は落ち着いてかつ積極的に縦方向にパスを出すことができました。少なくともボールの出しどころに戸惑う場面はほとんどありませんでした。

守備面では井手口陽介がケビン・デ・ブライネを、長澤和輝がアクセル・ビツェルを注意深く見て、効果的な攻撃を封じようとしていました。アンカーの位置に入った山口蛍も幅広いエリアをカバーして奮闘します。

こうして意図することがそれなりにできていたにもかかわらず、日本は最後のところで攻撃の精度を欠いてしまい、大迫勇也や吉田麻也がシュートを放ってもなかなか枠をとらえられません。

逆にブロックを敷くベルギーは日本が少しでも甘いボールを入れるとかっさらい、すぐさまスピードを上げて攻め込んできました。それでも最後のところで川島永嗣を中心に体を張って守ります。

後半に入っても0対0のまま時間が経過していた中、大事なところで甘さが出て失点します。後半27分、ナセル・シャドリに対する森岡亮太と久保裕也の寄せがいまひとつだったためにクロスを上げられ、警戒していたロメル・ルカクにゴールを許してしまったのです。

途中から入った2人のベルギー組はこれ以外の場面でも守備でのハードワークがいまひとつでした。たしかに、特に森岡は攻撃の活性化を求められるタイプの選手ではありますが、現在の日本の、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督のサッカーに欠かせない要素を十分に体現できていませんでした。

そんな状況ながら失点してからようやく最後の局面でのエンジンがかかってきたと言うべきか、後半32分に杉本健勇が、1分後には乾貴士がゴールを狙うも、シモン・ミニョレの好セーブに阻まれました。

親善試合なので過度に一喜一憂しても仕方がないとはいえ、ペースを握って得点を奪える可能性のある試合で無得点に終わってしまったのは残念です。ハリルホジッチ監督の選手交代がパターン化しているのも少々気になります。次にフルメンバーを招集できる来年3月の試合で、ワールドカップに向けてもう少し勝負強さ、粘り強さを見せられればいいのですが、果たして改善されるでしょうか。


過去11回戦って一度も勝ったことがないだけでなく、メンバーをいじられても接戦に持ち込むことすらほとんどできない相手。そんなブラジル代表との今回の対戦も、両者の差がはっきりと表れてしまいました。

立ち上がりは意欲的だった日本。フェルナンジーニョへの対策として、長谷部誠も中盤の底で構えるのではなく、積極的に前に出てディフェンスをしていました。

しかし、前半7分のコーナーキックの際、吉田麻也がフェルナンジーニョを倒したとしてVARによりブラジルにPKが与えられ、ネイマールがこれをきっちり沈めたことで、0対0の時間を長くしたかったはずの日本のプランが狂います。

ブラジルは攻撃だけでなく前からの寄せも速く、日本の選手がパスの出しどころを探しているうちに2、3人に囲まれてしまいます。かといって急いでパスを出しても精度が低く、簡単に失ってしまいました。よって日本が思うような攻撃をさせてもらえませんでした。

そうこうしているうちにブラジルは追加点を奪い、リードを3点に広げます。特に久保裕也のボールロストからのカウンターによるガブリエウ・ジェズスの3点目は痛恨でした。

こうなってしまったのはここまでヴァイッド・ハリルホジッチ監督になって以降、世界トップクラスのチームと対戦する機会がまったくなかったことが少なからず影響しているように思えます。もちろんワールドカップ予選が長期にわたって行われたため、そういうマッチメイクが難しかったという事情もありますが……。

後半はガブリエウ・ジェズスとマルセロが下がった後、井手口陽介のコーナーキックを槙野智章が合わせて1点を返しました。それまで井手口のコーナーキックにまったく可能性を感じなかったことから、ブラジルが油断したのかもしれません。

さらにネイマールとウィリアンがピッチを去ると、日本も多少余裕をもってボールを動かすことができるようになりました。それでも流れの中から決定機をつくることはできずに終わってしまいます。後半49分の酒井宏樹のマイナスのボールに合わせようとした浅野拓磨がしっかり仕留めきるなど、この状況で1点でも奪うことができれば、もう少し光明を見いだせたはずです。

またしてもほろ苦い結果となってしまいましたが、本番に向けてこうした経験ができたことをプラスに変えていくしかありません。


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