22インチのフットボール

備忘録を兼ねて試合を振り返ります

2017年10月

苦戦 ――柏レイソル対川崎フロンターレ

激しい雨の影響でボールが止まりやすくなるほどにピッチコンディションが悪化したため、予定より30分遅れで始まった試合は、4日前の対戦とはまったく違った戦いとなりました。

この悪条件に苦しんだのは川崎の方でした。得意とする戦い方をあきらめ、自陣からロングボールをスペースに蹴り込んで、止まったボールを拾って生かす戦い方を選択したものの、小林悠をはじめとした前線の選手はそうした形を得意としておらず、なかなか形になりませんでした。

逆にブラジル人トリオと伊東純也を擁する柏は、パスサッカーができなくても、もともとカウンターを武器として持っていることもあり、川崎の背後のスペースを狙った攻撃が脅威となりました。

そして後半3分、奈良竜樹がボール処理にもたついたところをクリスティアーノがかっさらい、最後はハモン・ロペスが仕留めて柏が先制します。

勢いに乗った柏は4分後、ハモン・ロペスのクロスを受けたディエゴ・オリヴェイラが決めて点差を2点に広げました。ハモン・ロペスに対する川崎守備陣の詰めの甘さが仇となった格好です。

追い込まれた川崎は、ここから目が覚めたように怒涛の攻撃を仕掛けました。後半頭から入っていた森本貴幸に加え、知念慶もピッチに入り、前線でボールを落ち着かせようとしたことも奏功します。ただ、中村航輔が立ちはだかる柏のゴールを破るのは容易ではありません。

それでも車屋紳太郎の2アシストで同点に追い付き、かろうじて勝ち点1を獲得しました。劣勢に立たされた中で見せたその執念はすばらしいものでした。ただ、鹿島アントラーズが勝利したため、両者の勝ち点は4に広がりました。残された試合の数が3しかないことを考えると、リーグ優勝はかなり厳しい状況に陥ってしまいました。


裏目 ――天皇杯準々決勝 川崎フロンターレ対柏レイソル

後半頭からピッチに送り込まれた中村憲剛の役割は、停滞気味のチームの流れを変え、均衡を破る得点を奪って勝つため、のはずでした。しかし後半15分、背番号14のパスはクリスティアーノへのプレゼントボールとなり、柏の9番は迷わずシュート。これが川崎の選手に当たってコーナーキックとなります。

このチャンスをショートコーナーにして、再びボールを受けたキッカーのクリスティアーノはクロスではなくシュートを選択。すると強烈なボールがゴールを揺さぶり、柏に先制点が生まれました。

柏は前半、再三にわたりショートコーナーを使っていましたが、後半に入ると直接ゴール前に放り込む形に変更。それゆえ川崎はショートコーナーへの警戒を怠っていました。前半19分には柏のショートコーナーに対し、ハイネルがプレッシャーをかけ、クロスを上げようとしたキム・ボギョンからボールを奪取してカウンターにつなげる場面があったにもかかわらず、このときはクリスティアーノへのアプローチが甘くなりました。

失点のきっかけをつくってしまった責任を感じてか、中村憲剛は積極的に鋭いパスを前線に入れようとしますが、味方との呼吸が合わないなどしてなかなか奏功しません。後半25分までに3人の交代枠を使い切った川崎は、時間の経過とともに焦りの色がチーム全体に浸透してしまい、冷徹な判断が下せなくなり、ブロックを敷いた柏守備陣を前に手詰まりとなります。

その様子を見抜いてか、柏は相手をじらすようなパス回しでボールを保持。隙を見ては裏のスペースにボールを出し、スピード豊かな伊東純也や技術の高いクリスティアーノを使って追加点を奪おうとしました。

終盤に入ると今度は川崎陣内でボールをキープして時間を稼ぎ、より一層ホームチームを焦らせ、最終的に逃げ切りに成功しました。

結果、川崎はまたしても初タイトルへの道を阻まれてしまいました。奇しくも次のリーグ戦は柏との対戦です。90分でシュート3本に終わったこの試合の悪い流れをどう打開できるかが、タイトル獲得に向けて非常に重要になってきます。


光明 ――日本女子代表対スイス女子代表

立ち上がりは規律正しく、プレッシャーも速いスイスに思うようにプレーさせてもらえませんでした。ショートパスをつなごうにもパスコースは寸断されてしまい、長いボールに頼らざるを得ない展開でした。

それでも前半18分の櫨まどかのシュートが枠をとらえてからは少しずつリズムが出てきました。中里優の巧みなボールコントロールをはじめ、なでしこらしい細やかなプレーが徐々にボディブローのように効いてきて、整然としていたスイスの陣形が乱れていきます。

つかんだ勢いを持続させるべく、中島依美を投入して後半も積極的に攻めた日本。待望の先制点が生まれたのは後半24分のことでした。この日好調の櫨からのスルーパスに中島が抜け出してシュート。一度はセライナ・フリードリに阻まれますが、こぼれ球に反応してゴールを決めました。

後半48分には田中美南が確実に追加点を挙げ、そのまま試合は終了。なでしこジャパンは6月のオランダ戦以来、5試合ぶりの完封勝利を収めました。

とはいえ、手放しで喜べる内容ではありません。前半36分にはカウンターを食らい、エセオサ・アイグボグンにフリーでシュートを打たれましたし、後半31分には最終ラインから前へのパスコースがなく、みすみす自陣でボールを失う羽目となり、あわやPKというシチュエーションをつくってしまいました。幸い笛は鳴らなかったため救われたものの、日本の悪い部分が出てしまったシーンでした。

また攻撃時のセットプレーはフィジカルで勝るスイス相手ということで、直接放り込むのではなく変化をつけたものがほとんどでしたが、あれこれ試した割にそこから決定機には至りませんでした。このあたりは今後に向けての課題となります。

ただ、アメリカで行われたトーナメント・オブ・ネーションズで結果が出なかったあとの試合をしっかり乗り切れたことは、女子ワールドカップ出場をかけた女子アジアカップに向けて大きな収穫となりました。


貪欲 ――サンフレッチェ広島対川崎フロンターレ

最終ラインでのボール回しに余裕を与えないプレスを前線からかけ、最後の最後まで攻撃の姿勢を貫いた川崎が、残留争いの渦中にいる広島を3対0で下しました。

ただ、序盤は三好康児や長谷川竜也の仕掛けは奏功したものの、濡れたピッチを考慮してか、得意のパス回しがやや丁寧になりすぎたため、広島のプレッシャーのスピードが川崎のパスのそれを上回る場面が多々ありました。それゆえなかなか主導権を握れません。

しかも前半31分には好セーブを見せていたチョン・ソンリョンがプレー続行不可能となり、新井章太との交代を余儀なくされます。

そんな中、先制点は幸運な形で訪れました。前半40分、中村憲剛のフリーキックを中林洋次がキャッチしそこねたため、こぼれ球をエドゥアルドがつつき、最後は谷口彰悟が押し込みました。

すると前半46分、中村がパスアンドゴーで前方へ走る中、ボールを受けた三好がシュートを選択。青山敏弘をはがした中村の走りが相手を惑わせる形になり、鮮やかなミドルが決まりました。

エンドが変わってからは川崎が後半7分、11分のチャンスを逃すと、広島が右サイドからだけでなく、左サイドからもクロスを入れて川崎ゴールに襲い掛かります。しかし、いかんせんサイドに偏った広島の攻撃が単調だったため、ことごとく跳ね返しに成功します。

そうして凌いでいた後半40分、新井のロングキックを受けた小林悠が試合を決定づける一撃を食らわし、リードを3点に広げました。ハイボールへの水本裕貴の対応がまずかったのもありますが、小林は冷静にボールを懐に収めて豪快に決めました。

アディショナルタイムに入っても川崎はゴールへの意欲を隠しません。後半49分には中村が変化をつけたコーナーキックを蹴って、登里享平がシュートを放ち、その直後にも奈良竜樹の縦パスに抜け出した小林がゴールを狙いました。

主力の多くを欠いた苦しい台所事情のため、決してリズムがよかったとは言い切れませんが、首位に立つ鹿島アントラーズを追撃するためには負けられない試合をものにしました。


激闘 ――AFCチャンピオンズリーグ準決勝2ndレグ 浦和レッズ対上海上港

1stレグでのアウェイゴールによって優位に立っていたとはいえ、一瞬たりとも気の抜けない試合でした。そんな中、浦和の選手たちは最後まで細かくポジションを修正して足を止めることなく、完封勝利を収めて見事に決勝進出を果たしました。

特にフッキについていた槙野智章をはじめ、中盤で潰し役を担った長澤和輝、そして後半33分にフッキのミドルシュートを阻み、そのこぼれ球に反応したエウケソンのシュートをも防いだ西川周作など、ディフェンス面での選手のプレーの充実ぶりが光りました。

とはいえ、ボール支配率こそ高くなかった浦和も決して防戦一方というわけではなく、ラファエル・シルバの先制点以外にも決定機をつくっており、その数では上海上港にも負けていませんでした。さらに言えば、アンドレ・ビラス・ボアス監督に率いられた上海上港よりも浦和の方が全体として連動性が高く、常に次のパスコースがよく見えていた印象です。

そのつなぎの形から遠藤航がクロスを上げ、武藤雄樹がフリーで合わせた前半17分のシーンは追加点を奪う絶好のチャンスでした。ボールが枠を外れてしまうと、エリア内にいた柏木陽介とラファエル・シルバは思わず頭を抱えたほどです。

決定機としてはほかにも後半11分に柏木のコーナーキックに合わせた槙野智章のヘッド、後半23分の阿部勇樹のオーバーラップからのクロスに興梠慎三が頭で当てたシュートなどがありました。これらのいずれかが決まっていれば、試合はもっと楽になったかもしれませんが、そうはいきませんでした。

そして終盤、残り5分を切ったところで相手陣内でキープをして時間を稼ごうとしたもののうまくいかず、逆に自陣深くに引かされる展開となったものの、最後のホイッスルが鳴るまで集中して対応しました。

これでアジア王者復活まであと2試合となりました。浦和にとっては今シーズン最大かつ最後のタイトルをかけて、来月、サウジアラビアのアル・ヒラルと戦うことになります。


ギャラリー
  • 曖昧 ――FUJI XEROX SUPER CUP 川崎フロンターレ対セレッソ大阪
  • 動揺 ――ルヴァンカップ決勝 セレッソ大阪対川崎フロンターレ