22インチのフットボール

備忘録を兼ねて試合を振り返ります

2017年08月

局面を打開するには個の力が欠かせないとはいえ、サッカーはやはりチームスポーツなのだということをあらためて思い知らされた一戦でした。

神戸はルーカス・ポドルスキが後半3分に小川慶治朗のクロスに合わせて先制したものの、何度もボールを欲しがるしぐさを見せた元ドイツ代表を中盤でしきりにフォローするような選手がいないためにゴールを重ねることができず、ミスやファウルが原因で逆転負けを喫しました。記録によるとシュートの数はわずかに6。磐田の3分の1以下でした。

守備においてはセンターバックの不安定さが深刻で、前半24分には岩波拓也が自陣ゴール前でボールを失い、アダイウトンにループシュートを打たれてしまいました。ここは渡部博文がゴールラインの手前で弾き出して難を逃れます。渡部のプレーは明らかなハンドでしたが、幸運なことに反則は認められませんでした。

その後ブーイングを浴びせ続けられた渡部は、同点で迎えた後半31分に川又堅碁を倒してフリーキックを与えてしまい、これを松浦拓弥に沈められてしまいます。

さらに悪いことは重なり、後半44分には中坂勇哉が一発退場となってしまい、10人での戦いを強いられました。ここで選手が減ってしまうことがなければ、無暗に放り込まずにポドルスキを生かそうとしたアディショナルタイムの猛攻もひょっとすると実ったかもしれません。

逆に勝った磐田には急遽欠場となった中村俊輔の不在を感じさせない一体感がありました。全員が終盤まで足を止めることなく機敏に動き、判定に対するフラストレーションもうまくコントロールして冷静に戦っていました。名波浩監督の指示がチーム全体にいきわたり、選手がそれをしっかりと共有していたのかもしれません。


なかなか波に乗り切れないガンバはほとんどの時間で柏にペースを握られてしまい、ゴールを奪うことなく敗れてしまいました。決定機は前半7分のアデミウソン、ファン・ウィジョ、倉田秋とつながり、シュートを放った1回のみでした。これは中村航輔に阻まれてしまいます。

柏は序盤、ロングボール主体のサッカーで中盤を省略してガンバの守備陣を押し下げると、前半10分ごろからボールを少しずつ繋ぎだし、ハモン・ロペス、小池龍太によるサイドからのクロスに活路を見出そうとしました。

ただ、ウイングバックも絞って対応したガンバにクロスをことごとく跳ね返され、うまくいきません。それでも慌てず、無理はせず、落ち着いてブロックをつくって構えて45分を凌ぎました。

そんな中、ガンバが主導権を唯一握れたのが前半40分過ぎでした。連続して高い位置でボールを奪い、勢いを持って攻めることができました。しかし、守備を固めた柏の前にフィニッシュまでもっていくことができないまま、いい流れをふいにしてしまいました。

後半に入ると今度は柏がギアを上げてきました。特に伊東純也とクリスティアーノの動きが活発になります。後半19分には伊東がドリブルで三浦弦太を振り切ってマイナスのクロスを入れ、クリスティアーノが合わせる場面がありました。

その後も何度かチャンスをつくるも、最後の精度が低く、得点の可能性が高まらなかった中で後半23分に柏が均衡を破ります。ロングパスをほぼフリーの状態で受けた伊東がそのまま持ち込みフィニッシュを決めたのです。対峙していた藤春廣輝は戻りながらのディフェンスとなり、伊東との距離を縮めることができず、シュートを許してしまいました。

優勝争いをするためには是が非でも逆転して勝ち点3を取りたい長谷川健太監督は、長沢駿、初瀬亮、泉澤仁を送り込みますが、いずれもボールを触る機会はあったものの、なかなか決定的な仕事ができませんでした。また、初瀬投入時にシステムも3バックから4バックに変えましたが、それも奏功しません。

これでガンバはホームで2試合続けての完封負けを喫しました。頼みの井手口陽介もこの日は精彩を欠いており、上位に浮上するための光明が見えない状況は続いたままです。


注目の上位対決は終盤になるにつれてゴール前での攻防が激しくなる熱いゲームでした。

前半はホームの川崎が中盤を完全に制圧。落ち着きがあってパスも冴える大島僚太を中心に前線の選手が目まぐるしく動いて鹿島守備陣を翻弄します。ただ、ペナルティエリア内でのプレーに迫力を欠き、選手が渋滞してしまうなど、あと一歩のところで合わない場面が多々あり、攻め込みながらもゴールのにおいがしない時間が続きました。

鹿島も少ないチャンスで決定機をつくったものの、大岩剛監督はこのままでは失点を喫するのも時間の問題と考えたか、三竿健斗を下げて3バックにシステムを変更しました。この決断が裏目に出ます。

結果、前半46分と後半1分という川崎にとってはいい時間帯に得点を重ねることができました。先制点は大島のシュートを阻もうとした西大伍の懸命のスライディングがオウンゴールになる形でしたが、2点とも川崎らしい見事な連携によって生まれました。

追いかける鹿島はシステムを慣れ親しんだものには戻さず、鈴木優磨、安部裕葵を立て続けに投入し、なおかつ3バックの左右にいる三竿と昌子源をサイドの高い位置にとらせて、あくまでも攻撃的な姿勢を貫きます。

鹿島の猛攻を耐えた川崎は、自陣からの攻撃で家長昭博が試合を決定づける3点目を奪いました。残り20分弱という状況で、普通ならばこれで意気消沈してもおかしくない点差ですが、常勝軍団の鹿島は違いました。あくまでも勝ち点を奪いにいくために攻め続けます。

後半42分に鈴木のゴールで反撃ののろしを上げると、後半44分には再び鈴木が、1分後には金崎夢生がゴールを襲いました。鹿島は勝利へのこだわり、執念が最後まで衰えません。

それでも川崎はチョン・ソンリョンを中心に守り、逃げ切りに成功しました。これで両者の勝ち点差は4に縮まり、優勝争いはさらに混沌としてきました。


前半24分、コーナーキックのセカンドボールを中島依美がシュート。前半34分には田中美南がアリッサ・ナアーをかわしてゴールに蹴り込みました。後半23分には横山久美のパスを受けた櫨まどかが相手に詰め寄られながらもシュートを打ちます――。

最終的にナアーやジュリー・アーツにギリギリのところで阻まれたり、わずかに枠をとらえられなかったりしましたが、このように決定的なチャンスをつくることはできました。

試合の中で攻撃面の修正をすることもできました。前半、後ろ向きのパスが多くなり、怖さがなくなっていましたが、最終ラインから長いボールを積極的に入れることでアメリカを押し込み、縦への意識を強めてシュートにまで繋げることができました。

さらに相手にみすみすプレゼントを贈るような自陣でのつまらない凡ミスも減りました。それゆえ日本は世界女王にまったく手も足も出なかったわけではありません。しかし終わってみれば、パワフルでスピーディーなアメリカの決定力の高さが際立ち、0対3の完封負けを喫しました。

なでしこジャパンは高倉麻子監督になって以降、失点すると勝てない状況が続いており、突破口を見いだせていません。まるで暗闇の中に迷い込んでしまったかのようです。

そこを抜け出すにはたとえアウェイの試合が続こうが、強豪相手であろうが結果を出すしかなく、それができないまま時間だけが過ぎています。

女子ワールドカップ出場権をかけた女子アジアカップまでに残された日々は1年を切っており、勝利の味を忘れつつある日本は苦しい状況に立たされています。果たしてこの壁を破ることができるのか。かすかな光は見えてきてはいるものの、なでしこ復活の道のりはいまだ険しいままです。


田中美南がアランナ・ケネディからボールを奪ってシュートまでもっていったことで得たコーナーキックから、田中が先制するまでの一連の流れには力強さがありました。しかし、大幅にメンバーを変えた影響なのか、その強度が持続しません。

日本の生命線ともいえるパスがどれも弱いため、選手間の距離を広くとることができず、相手には簡単に間を詰められてしまいます。そしてそんななでしこ達の弱気な心を見透かされたかのように、オーストラリアは遠慮なくロングボールを豪快に蹴り込んできました。

その後方からの長いボールを起点に2失点を喫し、それ以外にも前半16分に坂本理保がサム・カーに1対1でボールを奪われ、ゴールを許す場面がありました。

結局、前半の試合中には修正を施すことができず、後半頭から宇津木瑠美をセンターバックで投入したところから日本のプレーが変わっていきました。全員がはっきりしたプレーを心掛け、パスの強度を上げられるようになります。そして宇津木は最後方に構えているだけでなく、センターサークル付近での空中戦にも果敢に挑んでチームを鼓舞。ディフェンスには積極性が出てきました。

そんな中でペナルティエリア内での長谷川唯のハンドの判定は、腕が体についていただけに酷な判定でしたが、そのPK以外には余計な失点はありませんでした。

逆にアディショナルタイムに籾木結花と田中のコンビネーションで1点返して意地を見せたものの、前半の3失点が大きく響いてしまい、アジアのライバルに敗れてしまいました。

大会を通して多くの選手にチャンスを与えるスタンスは悪くないのですが、男子のコンフェデレーションズカップでのドイツ代表ほどとは言わないまでも、なかなか安定した結果を残せない状況が続いているのが気がかりです。最終戦となるアメリカ戦で90分を通じた強度の高いサッカーを披露できれば、今後への希望となるのですが果たしてどうなるでしょうか。


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