22インチのフットボール

備忘録を兼ねて試合を振り返ります

2017年07月

世界王者が3年後のコンフェデレーションズカップを制したとしても、翌年に控えるワールドカップ本番での成功を約束してくれるわけではありません。場合によっては、悲劇的な結末を迎えることすらあります。

たとえば1998年に地元開催のワールドカップで初優勝したフランスは、2001年のコンフェデで一部主力を欠きながら優勝。しかし日韓大会では大黒柱のジネディーヌ・ジダンの負傷もあってグループステージで敗退しました。

ただ、今回のドイツの場合はこうしたチームとは違うかもしれません。なにせワールドカップ優勝メンバーを中心にしたフルメンバーのチームではない、別チームといってもいい若手主体の構成で優勝してしまったからです。

決勝では序盤、チリの前線を流動的にしたハイプレスからの怒涛の攻撃に若い選手達はやや混乱気味でしたが、それを懸命に耐えて先制すると落ち着きを取り戻しました。

試合を決めた先制点は、ティモ・ベルナーとラース・シュティンドルがマルセロ・ディアスをじわりじわりと追い詰めてコースを狭め、コントロールミスを逃さずベルナーが奪い、最後はシュティンドルが無人のゴールに蹴り込みました。このあたりの抜け目なさ、したたかさというのはさすがです。

結果的にこの試合も相手に倍以上のシュートを浴びたものの、ゴール前のディフェンスでは可能な限り体を寄せてコースを消そうとしていました。それがマルク・アンドレ・テア・シュテーゲンの好セーブにもつながりました。

また終盤のチリのパワープレーにも落ち着いて対処し、VARの判定などによって中断した分、5分もあったアディショナルタイムを乗り切り、ドイツは見事タイトルを獲得しました。決して圧倒的にゲームを支配するような、強力な攻撃力を誇るような派手なチームではありませんでしたが、チャンスに確実にゴールを決め、勝利に結び付ける力を持った堅実なチームでした。


連敗中で勝ちに飢えていた両チームの戦いは、勝利への強い気持ちを最後まで持っていた浦和に軍配が上がりました。

遠藤航をボランチに据え、柏木陽介を1列前に上げて臨んだ浦和でしたが、遠藤のポジションが低いことが多く、また長いボールで相手の背後を狙っていたこともあり、ボランチとシャドーの間隔が広く空いてしまい、攻撃の連動性を欠いていました。

やがて柏木が下がり目の位置をとり始めたところで先制点が生まれます。直後の追加点も柏木が関与していました。これで浦和は重圧から解き放たれたかに思われました。

ところが後半9分までにあっさり同点に追い付かれてしまい、後半27分には浦和のコーナーキックの後、カウンターで圧倒的な数的優位をつくられ、アンデルソン・ロペスの逆転弾を許します。

2点のリードをひっくり返されても気落ちせず、貪欲にゴールに向かう姿勢を見せたのが左ウイングバックの関根貴大でした。振り返れば前半45分の2点目は、関根が清水航平のキックミスを逃さず拾ってからできたものでした。

関根は後半33分にドリブルからシュートを放ち、積極性を前面に出すと、森崎和幸を投入して試合を終わらせようとした広島に対し、後半40分には中央にポジションをとって、入ったばかりのズラタン・リュビヤンキッチのゴールをアシストします。その後も果敢に左サイドを駆け上がり、クロスを入れようとしました。

そして後半47分、槙野智章がアンデルソン・ロペスからボールを奪ったところから始まった攻撃で関根がドリブルをスタート。パスを選択することもできましたが、左サイドから右へと流れていき、ゴールまで単独で持ち込んで決勝点を挙げました。ゴールへの意地、執念を感じさせるプレーでした。

この劇的な得点により、浦和は連敗を脱出。3失点したところは依然として課題ですが、乱戦を制したことで一つ壁を破ることができました。


電光石火の攻撃で前半8分までに2点を奪い、そこからは省エネサッカーで機を見てゴール前を崩して後半に2点を追加。途中で殊勲のレオン・ゴレツカとキャプテンのユリアン・ドラクスラーを下げる余裕を見せて、ドイツが決勝進出を果たしました。

日本が出場選手の条件を付けずにキリンチャレンジカップのマッチメイクをして、ふたを開けてみたら……というような完全なるBチームで臨んだ今大会のドイツ。初戦のオーストラリア戦こそ勢いに任せて攻めた反動で終盤になって露骨に失速して、代表チームとしての経験の浅さを露呈しましたが、この短期間で確実に、恐ろしいほどに成長を遂げています。

メキシコ戦は4点を奪った攻撃力よりも守備力の高さ、固さが光った90分でした。たしかにマルク・アンドレ・テア・シュテーゲンの好セーブが光ったのも事実ですが、5-4-1の守備ブロックは強固で、倍以上のシュートを放たれたとはいえ、ほとんど楽な形ではシュートを打たせていません。

特にトップのハビエル・エルナンデスにはなかなかいい形でボールを収めさせませんでした。チチャリートはパサーとしての役割に回ることが多く、フィニッシュに至る場面は前半35分のループシュートなど数えるほどしかありませんでした。

ドイツはまだ若さゆえの多少の油断、粗さはあるものの、ワールドチャンピオンの名に恥じないすばらしい戦いを見せてくれました。公式戦では一度も負けたことのないチリとの再戦もさることながら、主力が復帰するであろう1年後の姿がとても楽しみなチームです。


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