22インチのフットボール

備忘録を兼ねて試合を振り返ります

2017年07月

鮮やかな逆転劇でした。前半のガンバはファン・ウィジョがトップに張っていたものの、ボランチ含めて全体の重心が低く、必然的に長沢駿も下がらざるを得なくなり、攻撃に転じてもセレッソの形成する3ラインのブロックに苦しんでしまい、ミスも多くて手詰まり感が否めませんでしたが、ハーフタイムでの修正が奏功しました。

特に井手口陽介をはじめとして、前への意識が強くなり、セットプレー以外で相手陣内深くまで入り込めるようになりました。ただ、それゆえに後ろの方がおろそかになってしまい、山村和也がすらしたキム・ジンヒョンのロングキックの処理を2人のセンターバックが誤り、杉本健勇の先制ゴールを許してしまいました。

しかし失点したことでゴールへの意欲がより一層高まり、後半20分に藤春廣輝のクロスをファン・ウィジョが合わせて同点に追い付きます。加入したばかりゆえ、しばしば連携不足から味方との呼吸が合わなかったストライカーが、是が非でも得点の欲しい場面で結果を出してくれました。

勢いを増したガンバは、井手口の縦へのボールがどんどん入るようになり、セレッソ陣内を切り崩していきます。そしてアデミウソンのシュートをきっかけにして得たコーナーキックで逆転に成功します。井手口の速いキックに三浦弦太がニアで合わせてネットを揺らしました。

とどめは後半41分、カウンターが発動してアデミウソンが独走、ゴール前まで運びながら二度シュートを阻まれましたが、最後はアデミウソンが蹴り込んで試合を決定づけます。

リーグ戦ではここのところ負け慣れていなかったセレッソは、2点のビハインドを背負ってパスが雑になり、得点の気配を感じさせなくなりました。アディショナルタイムはガンバの勝利を確信できる時間でした。

ガンバはこれで首位のセレッソとの勝ち点差を6に縮めることに成功。ダービーでの勝利は、今後につながる価値ある1勝となりました。


またしても勝ちきれませんでした。それもなでしこジャパンでは恒例となってしまっているミス絡みの失点です。前半は意欲的なサッカーを披露していただけに、90分を通して結果が出ないというのはもどかしいものです。

キックオフとともに始まった立ち上がりのブラジルの猛攻を凌ぐと、相手の背後を狙った縦への速い攻撃を仕掛けます。両サイドバックの大矢歩と万屋美穂も前方のスペースを狙ってパスを供給しました。

選手間の距離という点では、守備の時にはすばやく囲んで密集をつくってスペースを消し、攻撃に転じると間隔を広くとって、得意のショートパスを多用するのではなく、ビルドアップからミドルレンジのボールを繰り出していきました。

さらにサイドハーフはサイドのポジションに縛られることなく、中央に立ち位置を移すなど、ある程度フリーな動きをすることが許されていました。これで中央に厚みができました。ただ、そうしたことで逆に長谷川唯が中盤でボールを失い、二度シュートまで持っていかれたシーンがあり、いずれも山下杏也加が防いで難を逃れます。

このボールロストのためか長谷川は前半だけで退き、籾木結花が代わりにピッチに送り込まれます。

籾木は攻撃にアクセントをつけるだけでなく、後半18分には中島依美のクロスに頭で合わせて先制点を奪いました。ここでは田中美南と横山久美がディフェンスを引き連れて、籾木がフリーで打てる状態をつくりだした動きも見逃せません。

しかし前半に激しいサッカーを展開した反動か、日本は次第に劣勢になります。1対1の勝負ではがすことができずにつぶされる場面が多くなり、リズムがつくれなくなり、チーム全体が運動量で圧倒されるようになりました。

その流れでラインが下がってしまったところ、宇津木瑠美のクリアが小さくなり、ボールを拾ったカミーラのミドルシュートを食らって、同点に追い付かれてしまいました。カミーラに寄せる選手は誰もおらず、みすみすゴールを許してしまった形です。

これで日本は勝ち点1を獲得するにとどまりましたが、ホスト国のアメリカがオーストラリアに敗れる波乱がありましたので、大会の行方はまだわかりません。


自信、勝ち方、覇気、意欲……。浦和の選手達は勝利に必要なものを喪失してしまったかのようでした。まるで何か呪いにかかってしまったかのような、はたまた病に侵されてしまったかのような。それくらいらしくない戦いぶりでした。セレッソに鋭いカウンターがあれば、もっと失点していたかもしれません。

ミハイロ・ペトロヴィッチ監督の采配も微妙でした。2ゴールのきっかけをつくっていた森脇良太を前半だけで下げ、サイドで孤軍奮闘していた関根貴大も後半38分に変えてしまいました。

もちろんそれなりの理由はあったでしょう。森脇は4失点目を食らった際に水沼宏太のクロスへの対応を誤っていましたし、関根は仕掛けの意識こそ高かったものの、武藤雄樹のように動き回る選手がピッチにいなかったせいもあってか、効果的なボールはなかなか入れられていませんでした。

それでも攻撃面を考えると、2点のビハインドを追いかけるためにはどちらも欠かせないピースでした。森脇のポジションを任された遠藤航は、森脇同様に前線に顔を出してクロスを入れましたが、森脇のそれには及びません。

後半の早い段階で山村和也を後方に下げて守備を固めたセレッソを攻略できないでいた浦和は、後半アディショナルタイムに入ると、ただボールを蹴っているだけといった風な、意志の感じられないボール回しが目立ち始めました。柏木陽介と興梠慎三、駒井善成とズラタン・リュビヤンキッチでどうにかシュートまでもっていったシーンもありましたが、得点には至りません。

憎らしいほどたくましい。そんな浦和の姿を再び見られるまでには、もう少し時間がかかるのかもしれません。


7人交代可能というテストマッチ特有のレギュレーションゆえに、後半はメンバーが大きく変わり、ゲームとしての緊迫度は次第に下がってしまいましたが、勝ったのは3バックに変更して選手間のバランスを崩し、テンポの落ちていたドルトムントでした。

後半38分、ロマン・バイデンフェラーのキックミスを浦和が生かせなかったのに対し、ドルトムントは後半43分の遠藤航のクリアミスをアンドレ・シュールレが逃さず決め切りました。相手のミスをしっかり生かせたかどうかが、この試合の勝負の分かれ目となりました。

前半は早めに試合を決めてしまおうとせんばかりの圧力で、ドイツの強豪が攻めていきました。攻守の切り替えは速く、エメル・トプラクがセンターサークルを越える場面も珍しくない状態で、ハーフコートゲームになる時間帯が多くありました。

浦和の選手は必然的に素早くボールを回さなければならず、相手の守備網を打開するにはためをつくっている余裕はありませんでした。そんな中で前半22分、槙野智章の力強いサイドチェンジを受けた関根貴大がクロスを入れて、武藤雄樹が合わせるビッグチャンスがありました。これは惜しくもポストに当たりますが、この流れでコーナーキックから興梠慎三が体を投げ出して先制しました。

ゴールへ迫る回数はドルトムントが上回っていました。ただ、先制したことで浦和も自分達のプレーが少しずつできるようになります。前半37分にラファエル・シルバ、前半44分に武藤がシュートを放ちますが、追加点は奪えません。

後半に入ると、若きアタッカー、エムレ・モルが盛んにドリブルで仕掛けることで浦和ディフェンスを翻弄。後半31分、34分と立て続けにゴールを奪って逆転しました。チームとしての出来は決してよくなかったのですが、個の力で悩める浦和を攻略しました。

その後、再びコーナーキックから遠藤のヘディングで同点に追い付くも、試合は2対3でタイムアップ。90分を通してのクオリティは、シーズン中の浦和が新体制になったばかりのドルトムントを上回りましたが、小さな差の積み重ねで敗れてしまいました。


大久保嘉人、森重真人という攻守の要を欠きながらも、逆転勝利で見事に連敗脱出――とはなりませんでしたが、東京にとっては悪い流れを断ち切る試合となりました。

前半16分、ペドロ・ジュニオールに先制されてからしばらくは、鹿島の駆け引きのうまさが際立ち、東京にはいいところがありませんでした。攻撃はピーター・ウタカにボールを集めるものの、鹿島の厳しいプレスに苦しめられ、また前線に人数がかかりすぎて中盤でボールを回せなかったりするなどリズムが出ず、守備では逆にプレッシャーをかけようとしても簡単にいなされ、テンポよくボールを回されてしまいます。

流れを自分たちの方に引き寄せたのは、前半35分のことでした。東慶悟がクロスを入れると永井謙佑が落とし、ウタカ、高萩洋次郎とつながり、最後は再び東がシュートを放ちます。この一撃はブロックされましたが、ようやく連動したいい攻撃が出ました。

その勢いで前半44分に同点に追い付いたことでチームに活気が戻り、後半立ち上がりには前半かからなかったプレスの強度を上げて激しさを増したことで主導権を握り返します。

そして後半2分に永井がボールを拾ってウタカにスルーパスを出し、ウタカは昌子源を外してパスを出し、橋本が冷静に決めて勝ち越しに成功しました。

以降は小さなミスでピンチを招きかけるも、大事には至らずに時間が経過していきました。しかし、なかなかフィニッシュまでいけない状況が続く中で、またしてもペドロ・ジュニオールにゴールを許してしまいます。

同点になってから篠田善之監督は中島翔哉、前田遼一、田邉草民を送り込んで、勝ちに行く姿勢を見せます。入ってきた選手は期待に応えようと奮闘し、後半45分には中島が三竿健斗をトラップではがし、振り向きざまにシュートを打ちますが曽ヶ端準に阻まれました。

結局、2対2からスコアは動きませんでしたが、チームが再浮上できる可能性を感じさせる内容でした。それだけにこれから中断期間に入ってしまうのが惜しまれます。


このページのトップヘ