22インチのフットボール

備忘録を兼ねて試合を振り返ります

2017年06月

なでしこジャパンは最後まで気持ちの途切れないプレーを披露してくれました。見事な修正力を発揮したため、アルガルベカップでの対戦時の緩慢さはまったくありませんでした。特にボールを失ってからの攻撃から守備への切り替えが終始すばらしく、高い位置で阻止することでオランダに思うように攻め込ませない場面が多々見られました。

また失点パターンと化していた自陣での不用意なミスもほとんどありません。唯一あったのが前半44分の熊谷紗希のパスをカットされ、最終的にビビアネ・ミーデマにシュートを打たれたシーンです。しかしこれは山下杏也加の正面でした。

決勝点は菅澤優衣香に代わって入ったばかりの横山久美が後半17分に挙げます。中盤で阪口夢穂のパスを受けると、寄せてきたシェリダ・スピッツをいなして叩き込みました。ゴールしか見ていないといった力強い一連のプレーでした。

その後、後半26分にはシャニセ・ファン・デ・サンデンの右サイドからのクロスにリーケ・マルテンスが飛び込んで合わせるオランダ得意の形を見せましたが、山下の好セーブによって失点を免れます。

終盤、1点を返すため怒涛の攻めを仕掛けてきたオランダに対し、日本はペナルティエリアを固めて対応。なかなか攻めに転じることができず、コーナーキックのピンチも三度ありましたが、危なげなくしっかりと守り切りました。

こうしてアウェイの親善試合で会心の完封勝利を収めたことで、なでしこジャパンは久しぶりに上昇気流に乗っていきたいところです。次は1ヵ月後に開催される女子EUROでオランダと同組のベルギーとの対戦が控えています。


前半、がむしゃらでひたむきだったのは、シリアの方でした。4-3-3の形で現時点でのベストメンバーを起用したはずの日本は、香川真司が早々に負傷退場するアクシデントがあったとはいえ、攻撃では後ろ向きのプレーが多くて縦への推進力がなく、大迫勇也のポストプレーが光ったくらいで決定機もコーナーキックもゼロに終わり、一方の守備においては組織だったつぶしがあまり見られず、個々で追い回す場面が目立ちました。

ハーフタイムを終えて、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督から発破をかけられて奮起が期待できるかに思われましたが、川島永嗣のファインセーブのあとのコーナーキックの流れから、マルデク・マルドキアンのゴールを許してしまいました。

日本が目を覚ましたのはここからでした。長友佑都が初めて相手陣内の深い位置まで入り込んで上げたクロスを今野泰幸が合わせて同点に追い付き、得点に喜ぶ中でひっそりとピッチに入った乾貴士がそこから存在感を発揮します。乾はこれまでなかった前へ進む意欲が前面に出ていて、積極的に鋭いドリブルを仕掛けていきました。

またこの日は精彩を欠いた久保裕也に代わって、後半の頭から出てきた本田圭佑もミランで試合勘を取り戻せたためか、右足でのシュートこそ大きく外してしまいましたが、インサイドハーフでの働きを含めて安定したプレーをしていました。

そして今後に向けての希望を抱かせたのは、後半8分からアンカーを務めた井手口陽介です。代表デビュー戦ながら攻撃の時には右サイドにややポジションを移して酒井宏樹の上がりを促し、守備でも精力的に動いてチームに貢献していました。

こうした交代して入った選手達の活躍もあり、勝ち切れそうな試合ではありました。シリアは終盤になるにつれて負傷という理由で座り込む選手が多くなり、時間稼ぎと思しきシーンが増えたほどです。

ただ、今回の代表にとってコンディションを最大に高めなければいけないのは、13日に行われるワールドカップ予選のイラク戦です。東京スタジアムですべてを出し尽くす必要はありません。仮想イラクとはいえ、シリア戦はあくまで親善試合であり、言ってみればホームで限定ユニフォームを着用して一度限りのお披露目をするための興行ですから、引き分けという結果についてはあまり深刻に考えなくてもいいでしょう。


延長までもつれ込んだAFCチャンピオンズリーグの激闘から間もないものの、大事な上位対決とあって大胆なターンオーバーをすることができなかった浦和は、森脇良太、槙野智章が中央に絞り、自陣に密集をつくってブロックを形成して我慢強く守ろうとしました。

ゆえに柏はポゼッションは高いものの、ペナルティボックスにボールを運ぶのに苦労する時間が長くなりました。なんとかクリスティアーノが打開を図ろうと二度、三度と攻め込みますが、西川周作の好セーブもあってゴールには結び付きません。

しかし、スコアレスのまま前半が終わろうとしていた時でした。小池龍太の逆サイドへのクロスを武富孝介が折り返し、最後は中川寛斗が詰めて柏が先制します。この時、浦和の守備陣はボールウォッチャーになって足が止まっていました。守りに重点を置いていた浦和にとっては痛恨の失点です。

どうしても勝ちたい浦和は、後半になると攻撃に比重をかける従来のやり方に戻してきました。こうなると柏はカウンターやクイックリスタートといった素早い攻撃を繰り出しやすくなります。この形で決定機はつくれませんでしたが、それでも相手には十分なプレッシャーとなりました。

守備においては中川寛斗を筆頭に前線からの激しいプレスをかけることを怠りません。終盤になってもチームの勢いそのままに積極的に追い回して、浦和の選手に余裕を与えず、時にはミスを誘いました。

最後方では中村航輔が立ちはだかり、いつものように安定した好セーブを連発します。後半4分には興梠慎三とPKで対峙する場面がありましたが、興梠の失敗に終わりました。

これで8連勝を飾った柏は、暫定首位の座をキープ。若いチームの躍動はまだまだ続きそうです。


大会のフォーマットが変わり、チャンピオンズリーグと名称を変えて以降、どのチームも成し遂げられなかった偉業を達成したのは、1955-56シーズンにヨーロピアンカップが始まってから5連覇を達成した実績を持つレアル・マドリーでした。これで2シーズンおきに優勝することが連覇に匹敵すると言われた時代は終わりを告げたのです。

ただ、前半27分にマリオ・マンジュキッチの絶妙なコースを突いたゴールが決まった時、レアルにとっては難しい試合になりそうな予感がしました。7分前に流れるようなボール回しからクリスティアーノ・ロナウドが先制点を決めたものの、ここまでの試合の主導権は序盤から畳み掛け、あっさり追い付いてみせたユーべにあったからです。

ゆえにどうもリズムが悪そうに映ったレアルでしたが、後半になると一変します。マルセロが縦に2回ボールを入れて、前への姿勢を出すと、後半9分にはルカ・モドリッチのミドルがジャンルイジ・ブッフォンのほぼ正面を突き、後半11分にはマルセロがシュートを放ち、後半13分にはラファエル・バランが攻め上がってクロスを入れます。

そんな勢いの中でカゼミーロのミドルが決まり、3分後にはモドリッチがゴールラインギリギリのところで入れたクロスをロナウドが仕留めます。エンドが変わって20分足らずで勝負は決しました。

もちろん、一気に劣勢に立たされたとはいえユベントスはそのまま食い下がることなく、選手交代とシステム変更で流れを変えようとします。しかし指揮官のすばやい動きが焦りにつながったか、チームはこれまで保たれていたバランスを崩してしまいます。

イタリア王者にとって後半最初のシュートは、3枚の交代カードを使い切った後、後半37分のダニエウ・アウベスのフリーキックに合わせたアレックス・サンドロのヘッドまで待たなければなりませんでした。

さらにユーべにとって誤算となったのは、後半21分に投入されたばかりのフアン・クアドラードの退場です。せっかく流れを少しばかり引き寄せかけてきたところだったのに、残り時間を10人で戦わざるを得なくなったのです。

最後は貪欲なマドリーが4点目を奪って終わりました。こちらは途中出場のマルコ・アセンシオが、果敢にゴールに向かって攻め込んだマルセロのボールを合わせて決めました。終わってみればエル・ブランコの強さと偉大さをまざまざと見せつけられた90分でした。


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