22インチのフットボール

備忘録を兼ねて試合を振り返ります

2017年05月

序盤こそ神戸の激しい守備からのショートカウンターに苦しめられる場面があったものの、渡邉千真に同点弾を決められるまではほぼ東京のペースでした。

前節の柏レイソル戦とは違って、大久保嘉人が川崎フロンターレ時代のように中盤まで下がってボールに積極的に関与し、最前線では前田遼一がファウルの判定に泣かされることなく空中戦を制していました。先制点はこの2人が絡んで生まれます。

前半14分、中盤で大久保嘉人が斜めに鋭いボールを出すと、前田がそれをダイレクトで送り、最後は永井謙佑が高々と浮かせたループシュートを決めました。

しかし、後半18分にキム・スンギュのロングキックを起点にした攻撃で、ウエスクレイのペナルティボックスへの進入を、PKになるのを恐れた森重真人が塞ぎきることができず、やすやすとマイナスのクロスを入れさせてしまい、渡邉のゴールを許してしまうと、流れは一気に神戸に傾きました。

劣勢を跳ね返して勝ち越し点を奪うため、事態の解決を図ろうと篠田善之監督は徳永悠平を入れて、4バックから3バックへと変更。両サイドの室屋成と太田宏介に高い位置をとらせようとしました。

ところが前方へのボールが雑になりがちでなかなかパスがつながらず、終盤になってようやく上がれた両サイドからクロスを入れようとしても、ピーター・ウタカが左右に流れるなどして真ん中に選手がいない、いたとしても小柄な中島翔哉だけという状況になりました。これならばターゲットになれる前田を残しておいた方がよかったかもしれません。

一方の守備に関しては、日曜日の反省を生かして逆襲を食らってもすばやい寄せで潰せていました。最悪、シュートを打たれても最後尾に構える林彰洋がファインセーブを連発して凌ぎます。

東京にとっては前の試合の反省が生かされた戦いではありましたが、勝ち点3をもぎ取るまでの修正には至りませんでした。


中盤では相手の寄せがあまりない余裕のある場所へのパスを繰り返し、じっくりとポゼッションをしながら、チャンスと見るや前方のスペースにボールを出す――。おおむねそんなサッカーを展開していた柏に対し、特段ビッグチャンスをつくられなかったことから隙ができてしまい、東京は失点を重ねてしまいました。

前半33分には手塚康平のミドルシュートに意表を突かれ、林彰洋が懸命に手を伸ばすも抑えきれずにネットを揺らされると、入り方が大事な後半開始早々には柏がやり方を変えて一気にギアを上げて攻めてきたのを、東京守備陣が止めることができないまま伊東純也の追加点を許してしまいました。

点差は2。時間は十分。にもかかわらず、東京は試合終盤かのように前への意識が強くなりすぎ、林も含めて後方でミスパスを連発しては再三カウンターを食らう嫌な展開に陥り、いつ3点目を奪われてもおかしくない流れになりました。

篠田善之監督も失点直後のピーター・ウタカ投入を皮切りに後半16分までに3枚の交代カードを使い切ってしまい、それも影響してか、チーム全体が落ち着きを失ってしまっていたようでした。終盤になるまで動かなかった下平隆宏監督の柏とは対照的でした。

また、期待されたウタカは最前線で構えるものの、ことごとくオフサイドにかかり、なかなかボールが収まりません。

東京はずっと悪かったわけではなく、前半は柏の守備網を切り裂く鋭いパスを応酬し、東慶悟や前田遼一のシュートで決定機をつくっていましたが、後半はアディショナルタイムに入るまで柏ゴールを守る中村航輔が場内を沸かせるシーンはありませんでした。

どうにか後半48分に丸山祐市のクロスに田邉草民が合わせて1点差に詰め寄るのが精一杯で、追加時間が残り1分しかない状況では勝ち点をもぎ取ることはできませんでした。

東京は連勝が3でストップし、5位に転落。逆に柏は5連勝を飾って3位にまで浮上しました。


敵地に乗り込んだ鹿島の選手一人一人が、誰もサボることなく自分の役割を最後まで全うした姿が印象的な90分でした。

特に光ったのが中央の4人――センターバックの植田直通、昌子源とボランチの小笠原満男、レオ・シルバです。小笠原、レオ・シルバが中盤で果敢につぶし、植田と昌子は危険なエリアで安定した守備を披露。破壊力抜群の浦和の攻撃陣を見事に封じ込める働きを見せました。

攻めては金崎夢生が前半24分に森脇良太と関根貴大をはがし、貴重な決勝点を奪いました。ゴールだけしか見ていないといったエースの強い意思が現れたシーンでした。

また、このゴールの起点がスローインだったという点も見逃せません。昨年のチャンピオンシップ準決勝の川崎フロンターレ戦と同様に、こうしたリスタートを確実に生かすあたりは、さすが鹿島だと言わざるを得ません。

対する浦和は鹿島のディフェンスの固さもあって中央からの攻めがなかなか奏功せず、後半16分に青木拓矢を下げて、駒井善成を投入。一応ボランチではありながら、基本的には右サイドに張って攻めるという変則的なシステムに変えてきました。

しかし、しばらくすると石井正忠監督は駒井のサイドに守備力の高い永木亮太をぶつけ、そこを抑えにかかります。その後、終盤に二度ほど駒井にクロスを上げられはしましたが、ピンチには至りませんでした。

終わってみれば鹿島の安定感、大一番での強さが発揮された一方、ホームの浦和にとっては前節の大宮アルディージャ戦に続き、2試合連続で0対1という悔しい結果に終わり、首位の座は暫定ながら鹿島に譲ることとなりました。


試合当初に精神的な余裕が見られたのは浦和の方でした。最近のチームの好調ぶりが選手たちの自信につながっているのか、後方でのボール回し一つとっても、落ち着きが感じられました。

そんな中で長いボールを時折織り交ぜながら大宮ゴールに迫り、前半42分には関根貴大、武藤雄樹、ラファエル・シルバと渡って、最後は宇賀神友弥がシュートを放つ決定機がありました。ここは塩田仁史に阻まれますが、大宮にゴール前を固められてはいるものの、関根のところから崩せれば、ゴールが奪えそうな雰囲気がありました。

このように決して悪い流れではなかった浦和でしたが、中盤で小気味よくボールを散らしていた柏木陽介が下がった後半になると、展開力が一気に下がり、攻めが単調になりだしました。

大宮サイドは状況の変化を感じ取ったか、次第に相手のペナルティボックスに入る回数が増えていきます。そして後半18分、茨田陽生の力強く、迷いのないシュートがゴールネットを突き刺しました。

点差はわずかに1。とはいえ、浦和にとってはこの上なく重い失点となりました。そして、ダービーに負けたくないという強い思いが逆に空回りしてしまったか、単調さに拍車がかかってしまいます。シンプルなクロスはことごとく跳ね返され、頼みのラファエル・シルバはなかなかシュートを打たせてもらえません。

渋谷洋樹監督が高山和真を送り込み、ホームチームが5バックにしてさらなる守備固めに入ると、浦和の焦りはピークに達します。相手のプレッシャーのない中盤でのつまらないミスが増え、ファウルを連発するなど悪循環に陥りました。

結局、終盤のパワープレーが実ることなく、最後まで大宮ゴールを破ることができずに、因縁のライバルに今シーズン初勝利を献上することとなりました。次節は鹿島アントラーズとの大一番が控える中、厳しい結果を突き付けられてしまいました。


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