22インチのフットボール

備忘録を兼ねて試合を振り返ります

2017年05月

多少は選手をやりくりしてきたとはいえ、イタリア戦は終盤楽になったとはいえ、中2日で戦い続けて4試合目とあって、後半30分を迎えるあたりから日本の選手の運動量が落ち、ラインがかなり深くなってしまいました。

それは立ち上がりの粘り強い守りとは違っていました。この時は、今大会の日本が序盤にもろいとあって、一気に攻め込んできたベネズエラをきっちり受け止め、マイボールになっても無理をしてつながず、はっきりしたロングボールを蹴って流れを切るという明確な意図が見られました。

しかし時間が経過して終盤になるにつれ、全体的に動きが重くなり、攻撃にもリズムが出なくなります。また、期待の久保建英はウルグアイ戦以上に1対1で簡単に止められるシーンが多く、なかなかゴールに迫ることができませんでした。

といっても当然、15歳の久保一人に責任があるわけではなく、120分で12本のシュートを打ちながら、後半12分に市丸瑞希、堂安律と渡り、堂安のパスを受けた高木彰人が放った1本しか枠をとらえていないことが問題でした。この課題は南アフリカ戦の前半にも見られたものです。

延長後半3分にヤンヘル・エレーラに先制点を奪われてからは、中央から崩すのではなく、さかんにクロスとロングボールを放り込み、残り5分となったあたりからは板倉滉を前線に上げるなどしましたが実りませんでした。

結局、75分ごろからの失速から再びギアを上げることはできず、ノックアウトラウンド最初の脱落者となってしまいました。克服できた課題もあれば、克服しきれなかった課題もあった。そんな戦いとなりました。


東京はリーグ戦ここ2試合の悪い流れを断ち切ることができず、ヴィッセル神戸戦に引き続いて、またしても先制してから追い付かれてしまいました。サポーターからブーイングを受けるのも致し方ない出来でした。

象徴的だったのは、後半40分に阿部拓馬と室屋成がお見合いをしてボールが難なくタッチラインを割ったシーンです。どうしても勝ち点3が欲しい中、集中を欠いた緩慢な部分が見えてしまいました。

当初は前半2分に太田宏介のコーナーキックを高萩洋次郎が頭で合わせて先制し、幸先いいスタートを切ったかに思えましたが、そこから苦しみました。甲府のオフサイドがとれるくらいにラインを保った、引き過ぎていない8枚のブロックを崩そうにも崩し切れず、ペナルティエリア手前までボールを運べたとしても、シュートが打てない時間が長く続きました。

すると前半44分、田邉草民のバックパスがミスになり、堀米勇輝に拾われ、ゴールに流し込まれてしまいます。自陣でのミスは禁物だと、柏レイソル戦で嫌というほど味わったはずでしたが、前半終了間際の大事な時間帯にやってしまいました。

後半になってようやくシュートの意識が高まり、後半17分にはピーター・ウタカが阿部拓馬からのボールを受けて、後半30分には太田が丸山祐市の浮き球のパスを見事に収めてシュートを打ちましたが、いずれも判断よく反応した岡大生に阻まれます。

ただ、全体としてはサイドからのクロスが多く、それが中央で合う前にクリアされる状況が続きました。毎度のことながら前田遼一を早く投入していれば、このやり方ももう少し有効になったでしょう。

そして終盤は、甲府にたやすくカウンターを許す展開が続出します。そのほとんどが不発に終わり、ホームチームは救われていたものの、後半48分に最大のピンチを迎えました。

中島翔哉のパスがカットされると、山本英臣からウイルソンにパスが通り、1対1の状況になってゴールを狙われます。ただ、ここは林彰洋がセーブして事なきを得ました。この時間帯に失点していれば、勝ち点1すら確保することができません。

攻撃の工夫や迫力も守備の安定もいま一つの現状を打破するには、内容はともかく、どんな形でもいいのでリーグ戦で勝つしかないのかもしれません。


それは後半半ばを過ぎたあたりから緩やかに形成されていきました。日本が最終ラインでボールを回していても、イタリアはペースを落として詰め寄らなくなったのです。

前半、日本に何もさせることなく、集中した怒涛の攻めでリッカルド・オルソリーニとジュゼッペ・パニーコがゴールを奪うと、守備においても日本以上に機敏に動き回り、ボールホルダーに対してはすかさず密集をつくってコースを消していたイタリアが、別人のようになりました。

さらに後半40分過ぎからは最終ラインの選手とゴールキーパーのアンドレア・ザッカーニョとでゆっくりとパスを回し、誰の目にも明らかな時間の消費を始めます。日本も2トップの岩崎悠人と田川亨介がプレッシャーをかけるのをやめました。

主審は律儀に3分のアディショナルタイムをとりましたが、それすら必要のない状況でした。2対2のスコアのまま終われば、両者とも決勝トーナメントに進める――。頂点に立つことが最終目標の世界大会だからこそ見られた光景です。

最後は南アフリカ戦同様に足をつらせて座り込んだ堂安律の足を、イタリアの主将を務めるロランド・マンドラゴーラが伸ばしてあげるという微笑ましい場面もありました。

日本とイタリアの合意はこうして達成されましたが、残り10分を切った段階でそれを破棄しようとした選手がいました。開始早々に2点のビハインドを背負った中、ゴールに向かう強い意志で追い付いてみせた堂安です。

もう1点取ればハットトリックという背番号7は、後半35分にザッカーニョの正面を突くシュートを放つと、1分後には右サイドをドリブルで突破してコーナーキックを獲得しました。あの時のイタリアは少なからず動揺したはずです。約束が違うではないか、と。

そういう貪欲な姿勢を見せたからこそ、堂安は終盤に足をつったのでしょう。そのスタンスを負ければ終わりという今後の試合でも貫いてほしいところです。エースの小川航基が離脱した今、まだまだ頑張ってもらわなければなりません。


若き日本代表は南米勢特有の足腰、フィジカルの強さに屈し、初黒星を喫することとなりました。

序盤は南アフリカ戦の反省が生かされ、相手に怯むことなく、恐れずにボールを動かしていました。前半8分には舩木翔のクロスに小川航基があと一歩という場面もつくれました。

しかしその小川が前半16分に負傷し、ピッチをあとにしなければならなくなります。これが誤算でした。クロスに合わせられる選手が真ん中にいなくなり、日本は大きな武器を一つ失うこととなりました。

急遽、代わりに出場した久保建英は前線で果敢にドリブルを仕掛けるも、屈強な男達にことごとく阻止されてしまい、なかなか持ち味を出させてもらえません。

そうしているうちに最終ラインからのロングボールを起点にニコラス・スキアッパカッセに先制点を奪われます。警戒すべき縦へのパスでしたが対処しきれず、中山雄太がタックルをするも、スキアッパカッセはそれを冷静にいなしてシュートを放ちました。

ただ、前半1本しかシュートを打てなかった日本が、後半になるとゴールへの意欲を前面に出し始めます。そして久保が絡んで3度チャンスが生まれました。

まず後半10分、市丸瑞希がボールを奪ってシュートを打ち、サンティアゴ・メレに弾かれたボールを久保が頭で押し込みますがクロスバーを越えます。3分後には久保のシュートをまたしてもメレに防がれ、こぼれ球に反応した堂安律のヘッドはマティアス・オリベラにクリアされました。

さらに後半22分、久保のスルーパスを受けた岩崎悠人がゴールを狙いましたが、メレの正面でした。

以降はコーナーキックや流れの中でクロスを上げる場面があったものの、やはり小川の不在も響いてそれらを生かすことができません。コーナーに関しては、単純にゴール前に入れるのではなく、ウルグアイが後半45分に見せたように、変化をつけるためショートコーナーを織り交ぜてもよかったかもしれません。

それではと、日本らしく中央を細かいショートパスで崩しにかかったりもしましたが、中をがっちり固めた相手を崩し切ることは最後までできませんでした。

せめて最少失点で終えたい日本でしたが、後半46分にオリベラに決められてしまい、2対0で敗れてしまいました。ただ、グループ3位でも成績上位であればノックアウトラウンドに進出可能なので、逆転勝利でつかんだ南アフリカ戦の勝ち点3を無駄にしないためにも、イタリア戦で勝ち点を獲得しなければなりません。


後半40分の堂安律をはじめ、終盤に足をつる日本の選手がちらほら見られました。これは、それほどまでに最後まで全力を尽くした戦いだったことを物語っています。

ただ、立ち上がりの入り方は最悪でした。南アフリカの選手の個の能力の高さにたじろぎ、戸惑い、受け身になり、前半7分にはグラント・マージマンにゴールを許してしまいます。シュートの軌道は枠を外れていましたが、飛び込んだ冨安健洋に当たってコースが変わりました。

その後もしばらくはロングボールの対応に苦慮し、さらにはスピードで引きちぎられ、ルーサー・シングやマトララ・マクガルワにシュートを放たれました。

試合に入り切れていない日本は、攻撃においてもパスが無難でスピードも遅く、相手に脅威を与えるまでに至りません。

流れが変わり、落ち着きを取り戻したのは、前半19分に堂安のコーナーキックを起点として、小川航基のシュートがポストを叩いたところからでした。そこからようやくアジア王者のエンジンがかかり始めます。相手のロングボールへの対処も慣れていきました。

攻撃では特に左サイドの三好康児が果敢に行き、クロスを供給したり、途中からはドリブルで勢いよく仕掛ける場面も見られました。しかし、いかんせん前線の選手のシュートが枠をとらえられず、フィニッシュの精度の低さを嘆かざるを得ませんでした。

枠をとらえたシュートが放たれたのは、後半3分。岩崎悠人のクロスに小川が合わせたものでした。そのボールはゴールラインを割り、後半の早い段階で同点に追い付きます。

これでより一層落ち着いた日本は、攻撃の際にペナルティボックスに入る選手の数が増え、堂安、初瀬亮のシュートもモンドリ・ムポトの正面ではありましたが、枠に飛ぶようになりました。

そして後半27分、三好に代わって入り、効果的なパスを供給していた久保建英のマイナスのクロスを堂安が蹴り込み、逆転に成功します。

守っては冨安がシングやマクガルワを完璧に封じ、ほとんどチャンスを与えませんでした。

どうなることかと思われた初戦でしたが、全員のハードワークによってどうにか勝ち点3を獲得し、決勝トーナメント進出に近づく大きな1勝を挙げました。


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