22インチのフットボール

備忘録を兼ねて試合を振り返ります

2017年03月

スタンドから大きなため息が絶えず漏れるようなボールロストの連発でした。4点リードしながら、終盤には余計なPKを与えてしまいました。それでも日本は確実に勝利が必要な試合を無失点で切り抜けました。

最初に吠えたのは香川真司でした。前半8分、タイのコンパクトな陣形を崩すために序盤から試みていたセンターバックからサイドハーフへのロングフィードが決まり、森重真人のボールが右サイドの久保裕也に渡ると久保がクロスを入れ、受けた香川は相手DFが前を固める中、落ち着いてゴールに沈めました。後方からフリーで上がっていた山口蛍に預ける選択肢もありましたが、香川が密集地での強さを発揮しました。

最終予選はあまりいいところがなかったのもあってか、背番号10は感情を解き放ち、喜びを爆発させました。そして、両手で力強くサポーターを煽り、スタジアムのボルテージをさらに高めます。

11分後、久保が今度は岡崎慎司のダイビングヘッドをアシストすると、タイのディフェンスの重心が低くなりました。選手間のバランスも崩れ始め、つけ入る隙も出ていました。ところが日本はボール回しが単調になり、やってはならないミスを繰り返してはピンチを招きます。

幸い、タイが昔の日本代表のように、ゴール付近まで攻め込みながらなかなかシュートを打たずにボールを回してしまう悪癖を持っていたため、それほどの怖さはありませんでした。前半アディショナルタイムのピンチもひたむきなディフェンスで凌ぎました。

そして後半12分、香川がDFを引き付けて空いたスペースに久保が持ち込んでいって3点目を挙げ、後半38分には香川に代わって投入された清武弘嗣のコーナーキックを吉田麻也が合わせて試合を決定づけます。

最後に大きく吠えたのは、GKの川島永嗣でした。スタジアム中から響くブーイングを味方につけ、完璧なセーブで失点を免れました。このティーラシン・デーンダーのPKを阻んだファインプレーが、最終予選では非常に大きな意味を持ちます。実際、その後の試合でサウジアラビアがイラクに勝ったものの、1対0に終わったため、日本が勝ち点で並びながら得失点差でグループ首位に立つことができました。

残る3試合はイラクとのアウェイゲームに始まり、オーストラリア、サウジアラビアとの決戦が待ち受けており、まだまだ油断はできません。また次節、オーストラリアのコンフェデレーションズカップ出場の関係か、日本より5日早く開催されるオーストラリア対サウジアラビアの行方も気になるところです。


ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は、川島永嗣、長友佑都、そして長谷部誠の代わりに背番号17を背負った今野泰幸といったベテランを起用し、前線には香川真司、久保裕也、大迫勇也ら所属クラブで最近好調な選手を並べてUAEに挑みました。これが絶妙なバランスを生み、ものの見事に快勝します。

前半14分には酒井宏樹の鋭いパスを受けた久保が、ゴールをしっかり見て狙いすましたシュートを決めました。後半7分には、その久保のファーサイドへのボールをトラップした今野が追加点を生み出します。エンドが変わるとともに、UAEがギアを上げてきた最中での貴重なゴールでした。

その後、後半15分と29分に大迫がシュートを放つも、ハリド・エイサに防がれてしまいます。また、後半43分には、久保に代わって入った本田圭佑から原口元気を経由して、岡崎慎司がゴールを狙いましたが、枠を外れてしまいました。ゴール量産とはいかないまでも、チャンスはつくれていました。

ディフェンスにおいては、危ない場面がまったくなかったわけではありません。前半20分、森重真人がボールを奪われ、最後はアリ・アハメド・マブフートにシュートを打たれるも、川島が身を投げ出してセーブ。さらに前半26分、今度は吉田麻也のパスミスからカウンターを食らいかけましたが、吉田がみずから回収しました。

とにもかくにもアウェイで2対0の完封勝利を収め、グループ2位の座をキープしました。次は移動距離では不利なホームでのタイ戦ですが、ここも勝って、本大会へストレートインできる態勢を保ちたいところです。

 

2対0のリードで迎えた後半34分、試合の命運を分ける場面で東口順昭は大久保嘉人のPKを見事に止め、さらにこぼれ球に詰め寄って打たれたシュートも体を張って防ぐと、そこから一気に好守を連発しました。

後半37分、43分は再び大久保嘉人のシュートを、同じく後半43分には中島翔哉の強烈なシュートを阻みました。こうした守護神のすばらしい働きによって、大事な時間帯を凌ぎ、1点も奪われることなく勝利をつかむことができました。

また東口はカウンターの起点としても好判断を披露。前半32分に太田宏介のコーナーキックをキャッチするとすかさず前方へボールを投げました。ボールはアデミウソンを経由して倉田秋へと渡り、最終的にシュートにまで結び付きました。

ガンバが東口の奮闘で光った一方、ここまで2試合無失点だった東京はディフェンス陣が安定感を欠いてしまいました。先制された場面は、丸山祐市が遠藤保仁のロングパスを受けたアデミウソンに引き離されて決められたものでしたし、2失点目は藤春廣輝のクロスがファーサイドにいた太田に当たり、こぼれ球を倉田に打たれ、ポストと丸山に当たってゴールに吸い込まれていきました。

PKを止められた6分後には、アデミウソンの絶妙なクロスをクリアしようとした橋本拳人が足を滑らせてオウンゴールを献上してしまいます。これで勝負はほぼ決しました。

この完勝でガンバは勢いに乗ることができるかもしれません。GKの好調さもさることながら、攻守において選手間の意思統一ができており、非常に充実した状態にあります。逆に新戦力の多い東京はまだそこまでの成熟度には達していないため、しばらくは決して楽ではない戦いが続きそうです。


3失点したうち、2失点目はオランダが狙いとしていたサイドを使った攻撃が見事に形になったもので、右サイドを突破したシャニセ・ファン・デ・サンデンが出したマイナスのパスにリーケ・マルテンスが合わせました。ただ、残りの2点は日本の緩慢さが招いた失点でした。

オランダの先制点は、コーナーキックの目測を山下杏也加が誤ったことが原因でした。タイムアップ間近の後半48分に許した決勝点は、ビビアネ・ミーデマがドリブルで運んでいたところへの寄せが、人数はいたもののいまひとつで、さらに鮫島彩がPKをとられるリスクを避けるためか、あるいはボールがラインを割ると予測したのかタックルが甘くなってしまい、最終的にシュートを打たれてしまいました。

後半16分にセンターバックのマンディ・ファン・デン・ベルフが退場となり、引き気味に4-4-1のブロックを敷くしかなくなったオランダだっただけに、なでしこジャパンとしては逆転勝ちできる試合でした。しかし、前半豪快なミドルを決めた横山久美と得点に飢えていた田中美南が果敢にゴールを狙うも、決めきれません。

また終盤、籾木結花のクロスからのシェイラ・ファン・デン・ブルクのオウンゴールで同点に追い付いてからは、中央で攻めつつサイドからのクロスに活路を見出そうとしましたが、ボールが大きかったり、カットされたりしてチャンスには至りませんでした。

結果、ベテランはいないものの昨年のリオ五輪のアジア最終予選を戦った選手達を軸にした、今大会でのベストなメンバーを擁しながらの敗戦となりました。せっかくいい流れで順位決定戦に突入しても、こういう惜しい試合をしっかり勝ち切れる力をつけていかなければ、世界トップクラスへの返り咲きは難しいでしょう。壁を破るためのなでしこの試練はまだまだ続きます。


前半1分のカロリーネ・ハンセンのポストを叩いたシュートが決まっていれば、大きく違った展開になったかもしれませんが、そこを凌げたことでリズムをつかみ、日本は勝利することができました。

アイスランドより馬力があって、ハンセンやアダ・ヘゲルベリが縦への強さを見せたノルウェーに対し、メンバーを大幅に変えても遜色なく戦えたこと――。かつては経験豊富な主力とそれ以外とでピッチで発揮できる実力の差が明確だったことを考えれば、これはなでしこジャパンにとって大きな収穫と言えるでしょう。

たしかに中盤でのボールロストからピンチを迎えることは何度かあったものの、前の試合の勝利が自信になったのか、最後まであきらめない姿勢を貫けたことで全体的には安定感がありました。特に熊谷紗希、中村楓の両センターバックは非常に落ち着いていました。

攻撃では横山久美が結果を出します。まずは日本に流れが来ていた後半14分、籾木結花が相手DFを引き付けて出したボールをうまく収めて先制点を奪いました。そして後半44分には中里優のクロスを田中美南が合わせてポストを叩いたあとのこぼれ球を押し込んで加点します。この2点目はやや形勢が悪くなりかけた中での貴重な得点でした。

2勝1敗でグループステージを終えた日本は、水曜日にオランダとの5位決定戦に挑むこととなりました。2年前の親善試合では痛い敗戦を喫した相手だけに、きっちり勝って大会を終えたいところです。また、ターンオーバーを続けてきたチームがどういう編成で臨むのかも非常に楽しみです。


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