浦和側からすれば、残念無念としか言いようのない逆転負けでした。

前半7分、関根貴大のスローインから高木俊幸がクロスを入れ、ファーサイドでフリーになっていた興梠慎三がダイレクトで合わせてゴールを決めた時点で、浦和の勢いは止まらなくなるのではないかと思いました。準決勝の川崎フロンターレ戦でスローインから決勝点を奪った鹿島が、今度は逆に失点するというあたりも皮肉な展開でした。

鹿島サイドのダメージは大きかったようで、小笠原満男の蹴ったボールが近くにいた味方に当たったり、パスミスが目立ったりとどこかちぐはぐで、焦りの色が濃く出ていました。

その流れが変わったのは、40分のことでした。ファン・ソッコのロングボールに対して、宇賀神友弥が遠藤康に簡単に自由を与えてしまうと、遠藤康は右足でクロスを上げ、金崎夢生の同点弾をお膳立てしました。

宇賀神はその後もロングボールで狙われていましたが、後半16分の交代は逆サイドの関根を下げて、駒井善成を入れるというものでした。しかも関根に疲労は見られていない段階で引っ込めてしまったという点でも、采配としては裏目に出てしまったかもしれません。それは既視感を覚えるような光景でした。

あと1点で優勝を手繰り寄せられる鹿島が押し気味に試合を進める一方、逃げ切りでもOKだった浦和の攻撃は雑になってきました。雑な面は最後まで解消されることはなく、西川周作が前線に何度も蹴り込んでのパワープレーもほとんど効き目がありませんでした。試合の中で浦和は失速してしまったのです。

結局、32分に槙野智章が鈴木優磨を倒して与えたPKが決め手となり、鹿島が逆転で年間優勝を果たしました。

終了直後のテレビインタビューで小笠原が、このレギュレーションでの優勝について「ルールはルール」と話したところは非常に力強さと聴き手を納得させる力がありました。15年前、当時圧倒的な強さを誇ったジュビロ磐田とのチャンピオンシップで、Vゴールとなるフリーキックを沈めて優勝した男の、鹿島の歴史をつくってきた男ならではの言葉の響きでした。

振り返ってみると、歴史を変える難しさ、歴史がつくる強さを思い知らされた今年のチャンピオンシップでした。