22インチのフットボール

備忘録を兼ねて試合を振り返ります

2016年10月

ホームで是が非でも勝ち点3が欲しいオーストラリアが主導権を握る中で、本田圭佑を1トップに据えた日本はアウェイの戦いを徹底し、最後までやり抜きました。サイドハーフの小林悠と原口元気が深めのポジションをとり、トップ下に入った香川真司も自陣深くまで戻るなど守備で貢献。全員がフィジカルの強い相手にも怯むことなくぶつかっていき、自由を与えませんでした。

攻撃面はボールを取ったら手数をかけずにすばやく前方へという意識が統一されており、先制点はトレント・セインズベリーの緩慢な縦パスをカットした原口に始まり、原口に終わる一気のショートカウンターでした。イラク戦の1点目同様に見事にはまった攻めでした。

ただ、後半6分、フリーのトミ・ユリッチを原口が倒し、ミル・ジェディナクにPKをゴールの真ん中に決められた後は、勢いづき、圧力をかけてきたオーストラリアに押し込まれ、苦しい時間帯が続きました。日本は前半から積極的に相手を追い回した影響もあってか、運動量が落ちてきてプレッシャーに行けない場面が多々ありました。

それでも10年前のカイザースラウテルンの悪夢のような劇的な失速はなく、辛抱強く守って、オーストラリアには決定機を与えません。特に日本にとって厄介なベテランストライカーのティム・ケーヒルには何も仕事をさせませんでした。

逆に29分に酒井高徳のクロスに小林が頭で合わせ、マシュー・ライアンをヒヤリとさせましたし、40分には原口の低いクロスに浅野拓磨が合わせようとしてわずかに合わなかったシーンもあり、中央に寄りすぎるあまりサイドの守備が甘くなる点を突いた攻撃で脅威を与えました。

90分をチーム一丸となって凌いだ日本は無事、アウェイゴールを奪った上で勝ち点1を獲得しました。贅沢を言えばキリがありませんが、アジア最強のチームを前に現状では申し分のない結果でした。大事なのは負けなかったことです。そして、この結果、内容ならば、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督を解任することはできないでしょう。

 

後半15分、アハメド・ヤシーン・ゲニのフリーキックの場面で、酒井高徳がサード・アブドゥルアミールに押されて競り負け同点弾を喫した時、今回の試練は相当なものだと覚悟しましたが、50分に貴重な勝ち越し点が決まり、ひとまず胸をなでおろすことができました。

この試合で奮闘していたのはロンドン世代の選手達でした。不振にあえぐ香川真司に代わってトップ下に入った清武弘嗣は、ボディを蹴られるアクシデントに見舞われながらも技術の高さを見せてゲームをコントロール。先制点のアシストを含め、全得点に絡む働きをしました。

好守にわたって最後まで走り回って貢献していたのは原口元気でした。守備においても決してサボることなく、その姿勢が前半26分のボール奪取からのカウンターに繋がり、最後はみずからヒールで流し込みました。終盤にも果敢にクロスを上げてシュートチャンスをつくろうとしました。原口は結果を出し続けることで、今や日本代表に不可欠なプレーヤーとなりました。

山口蛍は堅実に戦うなら、タイ戦同様に先発もありうると思いましたが、途中からの出場となりました。そのせいか中盤でパスが何度か引っかかり、危ない場面もありましたが、最後の最後で強烈な抑えの利いたシュートを叩き込み、ギリギリのところで勝ち点3獲得に結び付けてくれました。

また、「世代」ではないものの、ロンドン五輪にオーバーエイジとして出場した吉田麻也は、アディショナルタイムに入る直前に前線に上がってパワープレー要員として体を張り、後半49分にワリード・サリム・アルラミに倒されて勝利に繋がるフリーキックを獲得しました。吉田のパワープレーが奏功したのは初めてかもしれません。

こうしてアルベルト・ザッケローニ体制以来、長らく停滞し、止まっていた時を動かして勝利に結び付けたヴァイッド・ハリルホジッチ監督に対しては、まだまだ世間の風当たりが強そうですが、この一勝は称賛に値するものだと言えます。


2ndステージ第7節のヴァンフォーレ甲府戦以降、連勝も連敗もなく、勝っては負けの繰り返しが続き、この第14節も敗れた川崎はついに年間首位から陥落。2ndステージの2位のポジションも神戸に譲ることになってしまいました。

守備は守護神チョン・ソンリョンの負傷、不在の影響もあって、ここ3試合で8失点と、上位争いをしているクラブとしては深刻な状況に陥っています。神戸戦では切れ味鋭いカウンターに苦しめられて疲弊。失点はミス絡みのものが目立ちました。

先制された場面は、レアンドロのプレッシャーを受けた高木駿のキックが相手に渡り、3点目は三好康児がシステム変更に伴うポジション移動を怠ったため、空いたサイドを突かれて、最終的にはそれぞれ渡邉千真、レアンドロにゴールを奪われてしまいました。

持ち味の攻撃は、風間八宏監督が3-4-2-1から4-2-3-1、そして4-4-2へとシステムを変え、田坂祐介や小林悠ら選手の配置を変え、前への圧力を強めようとするものの、ボール回しのテンポがなかなか速まらず、肝心のアタッキングサードで迫力を欠いてしまい、不発に終わりました。

決定的な場面がなかったわけではないのですが、前半1分の小林の巧みなかわしから放たれたシュートはキム・スンギュに防がれ、後半21分の中村憲剛からエウシーニョを経由しての三好のシュートは右足だったため枠をとらえきれず、40分と45分の森本貴幸のシュートはいずれも力が弱く、キム・スンギュに難なくキャッチされてしまいました。

言い訳のできない完敗を果たして乗り越えられるかどうか――。代表戦とルヴァンカップによる中断期間でどれだけ立て直せるかが重要になってきます。

 

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