22インチのフットボール

備忘録を兼ねて試合を振り返ります

2016年10月

好守ともに距離感がいいのは鹿島の方でした。堅い守備網を構築して隙をつくらず、攻撃ではクロスバーを叩くようなシュートを何本も放ちました。それゆえ川崎は得意のパスワークで押し込むことができずに90分を過ごしました。後半、システムを3-4-1-2から鹿島と同じ4-4-2に変えても、状況は変わりません。

川崎にとっては中盤でボールをたくさん触り、チームのリズムをつくる大島僚太の不在が大きく響きました。必然的に中村憲剛の配球役としての負担が増し、そこをたびたび永木亮太、小笠原満男の両ボランチに狙われてしまい、時にはピンチを招きました。

ただ、圧倒的に不利な状況に追い込まれながら、ワンチャンスをものにする力が今の川崎にはあります。 後半20分、谷口彰悟のパスに抜け出したエウシーニョがやや角度のないところからシュートを放ち、これを曽ヶ端準がセーブ。そのこぼれ球を森本貴幸がプッシュして先制しました。

前半33分に負傷によりピッチをあとにした小林悠に代わって入った森本は、鹿島守備陣とのボールの奪い合いでファウルをすることが多く、プレーを切るばかりでFWとしての仕事を果たせていませんでしたが、大事な場面で決めてくれました。

一方、守備では新井章太の活躍を忘れてはなりません。前半19分には谷口のコントロールミスから金崎夢生に奪われてシュートを打たれるも、見事な飛び出しで阻止。後半6分と26分の遠藤康のシュートもファインセーブで阻みました。

この勝利で川崎は約3ヵ月ぶりの連勝となりました。苦しい試合を勝ち点3に繋げた勢いで最終節に臨み、チャンピオンシップに弾みをつけたいところです。

 

2点多く取っているのでスコアこそ違いますが、残留争いをしているチーム相手に前節と同じような展開になってしまいました。前半はいとも簡単にボールを奪い、おもしろいようにゲームを支配。前半6分の大野忍とのワンツーを決めた中島依美のゴールに始まり、25分の鮫島彩、33分の道上彩花のミドル、そして35分の守屋都弥、高瀬愛実と繋いでからの杉田妃和のフィニッシュと、鮮やかで見事なまでのゴールラッシュを見せました。

ところが後半は一変。次第に前線の動きが少なくなり、横やうしろ向きのパスが増えてしまい、攻撃のリズムが悪くなってしまいました。さらに杉田を筆頭に中盤でのボールロストも増え、成宮唯、サラ・グレゴリアスを中心としたコノミヤのカウンター狙いがいっそう強まりました。

また、前半は得点者がすべて違ったくらい攻撃に厚みがあったのですが、後半、シュートの数は激減。ゴール近くでのシュートの意識が高かったのは高瀬くらいでした。チョ・ソヒョンと杉田は遠目の位置から狙ったものの、決定機と呼べるものではありませんでした。

せっかくスピーディーでテンポのいいサッカーをできる能力があるにもかかわらず、時間の経過とともに判断力が落ちてしまうのか、90分間ハイパフォーマンスを持続できません。もちろん難しいことではあるので、せめて状況に応じて緩急をつけ、優位に試合運びができるとチームとしての強さが増すのですが、それもできていませんでした。そのため順位こそ2位で終えたものの、リーグ優勝に輝いた日テレ・ベレーザとの差は大きいように感じます。

残すは皇后杯だけとなりました。川澄奈穂美が期限付きで復帰する大会で、どのようにゲーム全体をコントロールするのか。連覇に向けては欠かせないポイントとなります。

 

後半21分、ゴールネットを揺らした塩谷司の強烈なフリーキックがオフサイドの判定をとられていなければ、試合はおそらく違った結果になっていたでしょう。結果として2対0の完封勝ちに終わったものの、それほどまでに両者の力は拮抗していました。

とりわけ序盤は広島が主導権を握りました。守備では高い位置で密集をつくって川崎のパスコースを寸断。特にボランチのところを狙い目にしていて、その結果、大島僚太のボールロストが目立ちました。

一方、攻撃では後方からも仕掛けていき、最終ラインに入った森崎和幸とボランチの青山敏弘が精度の高い長いボールを供給。川崎のディフェンスラインを押し下げます。

対応に苦しむ展開になったため、風間八宏監督は前半半ばに大島と中村憲剛のポジションを変え、中盤に安定感を取り戻そうとしました。実際、その通りに改善され、次第に川崎が広島ゴールに迫れるようになりました。ただ、広島の安定した守備の前になかなか崩しきるところまではいきません。

エンドが変わると今度はシュートの意識が高まり、後半11分にはエドゥアルド・ネットのスルーパスに抜け出したエウシーニョが、12分にはコーナーキックのセカンドボールを小林悠が狙いましたが、いずれも林卓人に阻まれました。

しかし39分、左サイドの崩しから小林が後方に預けると、それを受けた途中出場の森谷賢太郎が林の頭上を射抜く豪快なシュートを叩き込みました。林は何もできず、後ろに倒れるだけでした。

追加点は是が非でも同点に追い付きたい広島が、コーナーキックで林まで上がったあとのカウンターから生まれました。自陣で塩谷からエウシーニョが奪った段階で勝負ありでした。最後は中村が冷静に流し込んで、試合を決定付けました。

厳しい試合をものにしたことで、川崎は前節の完敗による嫌なムードを払拭することができました。浦和レッズとの年間首位の座をかけた戦いはまだまだ終わりません。


危なげない勝利でした。最下位に沈み、2部降格の危機に瀕している湯郷相手に2対0の完封勝ちを収めました。高瀬愛実のPK失敗はあったものの、前半13分に中島依美がミドルシュートを叩き込み、45分には展開力の高さを発揮していたチョ・ソヒョンから近賀ゆかりへとパスが送られ、近賀が懸命に左足のつま先を伸ばして追加点を奪いました。

ただ、90分を通じてシュートを2本しか打てず、中盤からゴールに向かって蹴り込むのが精一杯の湯郷に対し、後半に1点も取れなかったのには物足りなさが残ります。もちろん相手の守備が改善され、追いかけさせられるものから追いかけるそれへと変わったことで、前半のようにボールをテンポよく繋げなくなったのは事実です。

それでもゴール前まで迫りながら、後半32分の高瀬のポストプレーを受けた近賀のプレーをはじめ、シュートではなくパスを選択するシーンが目立ちました。クリーンなシュートを打つことがほとんどなく、とどめを刺すまでには至りません。ゴールネットを揺らしそうなシュートらしいシュートを放ったのは、47分のことでした。チョ・ソヒョンが打ったもので、これは惜しくもクロスバーに嫌われました。

また、交代して入った杉田妃和、京川舞、増矢理花がゴールへの意欲は見せながら、なかなか違いを見せるプレーをできなかったことも、後半無得点に終わった要因の一つとして考えられます。

前節、AC長野パルセイロ・レディースとの上位対決で大勝した反動なのかもしれませんが、やはり欲を言えば、貪欲に相手を凌駕するサッカーを披露し、ホーム最終戦を締めくくってほしかったところです。次も残留争いの渦中にいるコノミヤ・スペランツァ大阪高槻が相手ですが、最後まで手を緩めない姿勢を貫いてリーグ戦を終えられるよう期待します。


バックスタンド寄りのゴール裏の一部を含め、販売当初はガンバサイドに与えられていたはずのゾーンも相当が赤く染まっており、およそ中立地とは言いがたい環境で、ホーム扱いのガンバは最後の最後まで戦い抜きました。

0対4の完敗に終わった2週間前のリーグ戦での対戦とは打って変わって、前半はガンバが落ち着いた試合運びを見せて試合を優位に進めました。中盤では安易に勝負せず、縦に大きく蹴って浦和のコンパクトな陣形を伸ばし、選手間の距離を広げようとしました。

そんな中で前半17分にアデミウソンが個の力を発揮。浦和の最終ラインを単独で振り切り、見事に攻略して見せました。

対する浦和は得意とする連動したパスで崩してくるのではなく、サイドからの単純なクロスが多く、東口順昭を慌てさせる場面をつくれずにいました。

ところが後半、相手陣内深い位置までボールを運び、進入するようになった浦和が次第にペースを握り始めます。そして後半31分、入ったばかりの李忠成が同点弾を決めます。浦和のコーナーキック時の投入で、ガンバの選手のマークが甘くなったところを見事に突かれてしまいました。

これでスタジアムのボルテージが上がり、勢いを増した浦和は逆転を狙って攻勢をかけ、ガンバがそれを耐え忍ぶ流れになっていきました。ただ、互いに疲労の色が濃くなっていき、最後のところでの精度を欠いたため、スコアは動きません。

厳しい状況の中で長谷川健太監督が送り込んだ最後の選手は呉屋大翔でした。後半43分からピッチに立った新人ストライカーは苦い経験をすることになります。延長後半に放ったシュートはポストに当たり、ゴールラインのわずか手前を転々として得点には至らず、4人目を担当したPKはコースが甘くなり、西川周作に阻まれてしまいました。

結果、ガンバは残念ながらあと一歩のところでタイトルに手が届きませんでした。チャンピオンシップ出場は極めて困難な状況にありますが、「本拠地」で開催される天皇杯決勝で勝利を挙げたいものです。

 

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