22インチのフットボール

備忘録を兼ねて試合を振り返ります

2016年07月

相手に与えた決定機は一度だけでした。その最初にして唯一のチャンスを決められてしまい、東京は0対1で敗れてしまいました。

試合を優位に進めていたのは東京の方でした。橋本拳人、中島翔哉、ムリキ、ネイサン・バーンズといった前線の4人が柏ゴール付近で有機的に絡んで、シュートまで結び付けていました。

前半27分、ムリキからボールを受けた中島がすばやく縦に出し、バーンズがクロス。中山雄太に当たったボールは再びムリキの下に渡り、シュートを放ちます。ここは中村航輔がセーブしますが、こぼれ球を橋本が打っていきました。

34分には橋本がドリブルで柏ディフェンスを引き付けてからムリキへパス。ムリキは左でフリーだった中島に託します。しかし、中島のシュートは枠をとらえられません。 3分後にもムリキと中島で崩し、最後はバーンズがシュートを放ちました。

こうしてゴールに迫り続けた前半に得点を奪えずにいると、あまりチャンスをつくれなかった後半の13分に痛恨の失点を喫します。中山のロングフィードをクリスティアーノが落とし、ディエゴ・オリヴェイラと丸山祐市が競ってこぼれ球を森重真人が触ると、ボールは転々と伊東純也のところに到達。フリーだった伊東は冷静にゴールを射抜きました。

窮地に陥った東京は、果敢に攻めていきます。17分には中島がミドルシュート、20分には中島のクロスに橋本が頭で合わせ、22分には高橋秀人がミドルシュートを放ちますが、いずれも中村に阻まれます。

あと一歩という状況を打開したい城福浩監督は、河野広貴、平山相太、東慶悟をピッチに送り込み、選手の配置も変えていきました。ところが、この采配によって効果的だった前線の連動性が失われてしまい、決定機をつくれなくなってしまいました。44分にカウンターから米本拓司のパスを受けた平山は、増嶋竜也に阻止されてシュートを打てません。

意外にあった5分のアディショナルタイムも生かすことができず、勝ち点1すら奪えずにタイムアップを迎えました。最後の笛と同時にスタンドからはブーイングが聞こえてきました。シーズン二度目の連敗です。

この厳しい状況の中、土曜日には年間首位の川崎フロンターレとの多摩川クラシコを迎えることとなります。


日本が勝つと、準々決勝進出が決まるマドリッド五輪第2戦のアルゼンチン戦。最終戦のナイジェリア戦を消化試合にしてしまうのかどうかがストーリー展開的には気がかりな中、輝きを放ったのはディエゴ・マラドーナをモデルにしたファン・ディアスでした。

ディアスのマラドーナ要素は以前に増して濃くなっています。時代が流れ、リオネル・メッシの要素が多少は混じるかと思いましたが、そうはなっていません。プーマのスパイクを履いた背番号10は、大空翼がいるためかバルセロナを経由しないものの、代わりにボカジュニアーズでリベルタドーレス杯を獲得し、来シーズンはナポリへの移籍が決まっています。ディアスがバルサに入って、翼やリバウールと共演する姿を見てみたい気もしますが、翼をライバル視しているがゆえにそうはいきませんでした。

試合でのディアスは軽やかにピッチを舞い、攻守両面において奮闘します。特に守備面での貢献度が高く、味方に力を温存するため休むよう言われるまでは、翼と岬太郎のツインシュートを至近距離でブロックしたり、コーナーキックで意表を突いた井川岳人のヘッドを阻止したりしていました。

そして、失点のピンチを防いだ後は、自陣ゴール前からの100M独走ドリブルを試み、成功します。相手コーナーキックからのカウンターということで、抜き去らなければならない日本の選手は少なく、岬も、若林源三も、さらには翼もボールに触れることができず、アルゼンチンが先制しました。

と、この巻ではディアスが主役の座を奪っていますが、ディアスのアクロバティックなミラクルオーバーヘッドを自分のものにしたように、これまで数多のライバル達の技を完コピしてきた翼が、このまま終わるはずはないでしょう。100M独走ドリブルをやり返す可能性もあり得ます。全日本少年サッカー大会決勝で明和FC相手に見せたゴールへのドリブルを彷彿させるプレーが、カンプノウで見られるかもしれません。

果たして試合はどんな結末を迎えるのでしょうか。ロベルト本郷、ナトゥレーザ、カルロス・サンターナが予想した通り、日本が勝利してしまうのか、リバウールの引き分け予想が当たるのか、はたまたロベルト・カロルスのアルゼンチン勝利の予想が当たるのか。後半の戦いに期待が高まります。


野津田岳人と大島僚太の強烈かつすばらしいゴールで1対1となっていた後半20分、川崎に不運なアクシデントが起こりました。自陣でボールを収め、攻撃に転じようと大島が橋本晃司にパスを出そうとしたところ、ボールが榎本一慶主審に当たってしまったのです。

こぼれ球が新潟に渡り、レオ・シルバとラファエル・シルバが2人で崩し、最後はレオ・シルバが体勢を崩しながらゴールを決めました。チョン・ソンリョンも飛び出しましたが、ボールはその体の上を通過していきます。川崎は思わぬ形で勝ち越し点を許してしまいました。

試合は終盤に差し掛かっており、気候の影響か、運動量が落ちた川崎の選手は間で受ける動きができなくなっていました。前半立ち上がりのようにグラウンダーのパスで押し込めなくなっていたのです。何とかシュートまで持ち込んでも、29分のエドゥアルド・ネットのキックは守田達弥に防がれてしまいます。

すでに2人の交代枠を使っていた風間八宏監督は、34分にエウシーニョを下げて田坂祐介を右サイドに投入。最終ラインを4枚から3枚に減らして、両サイドを高くする形に変えました。

これで攻撃への意識が高まると、39分に同点に追い付きます。ショートコーナーから大島が山崎亮平の背後を突くパスを供給。裏に抜け出した橋本が低いクロスを入れ、守田が弾いたボールが小林悠に当たり、それを新潟の小林裕紀がクリアしようとしたものの、ボールはゴールネットに吸い込まれていきました。

さらに意気上がる川崎は、前掛かりになり、バイタルエリアに選手がいなくなるほどバランスが悪くなりながらも、サイドを使って攻め込みます。そしてその攻撃が実ります。

4分のアディショナルタイムが終わりに近づいた49分、橋本の落としを受けた車屋紳太郎がクロスを入れると、エドゥアルド・ネットがそれを突き、落としたボールを小林悠がヒールで決めました。小林悠のポジションはオフサイドでしたが、副審はエドゥアルド・ネットではなく前野貴徳に当たったと判断したのか、ゴールが認められて劇的な逆転勝利となりました。

年間順位で下位に沈む新潟相手に苦しみながらも勝ったことで、年間総合でも2ndステージにおいても首位の座をキープすることができました。


ホームの大歓声に後押しされ、勢いよく攻めるフランスに対し、序盤のポルトガルは立て続けにミスを犯していました。前半10分にはペペが足を滑らせてボールを失うと、それを拾ったディミトリ・パイエがクロスを入れ、アントワーヌ・グリーズマンがヘディングシュートを放ちました。ここはルイ・パトリシオが防ぎます。

なかなか落ち着かないポルトガルに追い打ちをかけるようにアクシデントが襲います。クリスティアーノ・ロナウドが8分のパイエとの接触によって負傷交代を余儀なくされたのです。一度はピッチに戻りましたが、長時間のプレー続行は難しく、25分にピッチを去ります。

絶対的エースがいなくなった影響もあってか、ポルトガルの攻撃は決定力を欠き、前半は枠内シュートがありませんでした。一方の守備では、4-1-3-2から4-1-4-1にフォーメーションを変え、ペペ、ルイ・パトリシオを中心にフランスの攻撃を跳ね返しました。

エンドが変わり、有利と見られたフランスがさらに攻め立てるかに思われましたが、次第にポルトガルののらりくらりとしたサッカーに引き込まれてしまいます。

後半13分、悪化した状況を打開すべく、ディディエ・デシャン監督はパイエに代えて、キングスレイ・コマンを投入します。コマンは早速、期待に応えてグリーズマンやオリビエ・ジルーにラストパスを供給しました。

ただ、なかなかゴールには結び付かず、33分にアンドレ・ピエール・ジニャクがピッチに送り込まれます。そのジニャクが47分にパトリス・エブラからのボールを受け、ペペを鮮やかにかわしてシュートを放ちましたが、ポストに嫌われてしまい、劇的な勝利とはなりませんでした。

延長に入ってイエローカードが乱れ飛ぶ展開になる中、ポルトガルが決定機をつくります。延長前半14分にはリカルド・クアレスマのコーナーキックをエデルが頭で合わせます。ここは叩き付けすぎたこともあり、ウーゴ・ロリスがセーブします。

さらに延長後半3分、ラッキーな形で得たフリーキックをラファエル・ゲレイロが狙いましたが、クロスバーを直撃しました。しかし、こうしたセットプレーで流れをつかむと、歓喜の瞬間が訪れます。4分、エデルが放ったミドルシュートがゴールネットを揺らしたのです。エデルにはローラン・コシールニーがついていましたが、引きちぎってフリーになりました。

これが決勝点となり、ポルトガルは主要国際大会で初めてのタイトルを獲得しました。今大会はグループステージではロナウドのPK失敗などもあり、引き分け続きで一時的に崖っぷちに追い込まれたものの、グループ3位で突破。強豪不在の山を苦しみながら登っていき、最後も延長にもつれ込んだ末にホスト国を粉砕しました。それも早い段階でロナウドがピッチにいなくなるという、ポルトガルにとっては最悪の状況を乗り越えたのです。それだけに見事な、そして価値ある優勝と言えるでしょう。


ボールを保持する東京、ブロックをつくって守る甲府。案の定と言うべきか、そんな構図で試合は推移していきました。

その流れに拍車をかけるかのように、前半6分、河野広貴のコーナーキックを森重真人が豪快に頭で合わせ、ホームチームが先制します。

失点したことで甲府のプレッシャーに緩みが生じ、東京は果敢にパスを繰り出して攻めますが、肝心のフィニッシュまでは至りません。17分のカウンターもムリキがシュートを打てずに終わってしまいます。

やがて甲府の時間帯が訪れると、東京は守備陣が崩壊して失点してしまうことを恐れてか、慎重なディフェンスを始めます。

44分のフリーキックからの森重の丁寧に合わせたボレーシュートが決まっていれば、弱気な部分は確実に払拭されたかもしれません。

それでもハーフタイムでの修正が効いたのか、後半開始とともに東京は積極的に追加点を奪いに行く姿勢を見せました。後半5分には相手ゴール近くでのフリーキックのセカンドボールを拾った徳永悠平がクロスを上げ、丸山祐市が折り返してムリキがシュート。続く6分にはネイサン・バーンズがミドルシュートを放ちました。

守備でもJ1デビュー戦の室屋成が、河本明人のドリブルを阻止してカウンターの芽を摘むなど、意欲的な姿勢が見られました。

しかし、13分、米本拓司からボールを奪った稲垣祥がドリブルからクロスを入れ、田中佑昌がシュートを打って以降、試合の流れは甲府に傾いていきます。

両サイドの松橋優、橋爪勇樹がクロスを供給し、中央では途中出場の森晃太が積極的にシュートを放ちます。

次第に東京は前半の終わりごろと同様に、ディフェンシブで腰の引けた状態になってしまいました。おまけに森重が足をつらせてしまい、吉本一謙と交代せざるを得なくなりました。こうなると甲府は怯まず攻め続けます。

すると43分、アウェイチームに最大のチャンスが訪れました。橋爪の左足のクロスに稲垣が頭で合わせると、ボールはクロスバーを叩きます。こぼれ球に再び稲垣が飛び込み、生かすと、これを森が合わせてゴールを狙いました。しかし、今度は秋元陽太がゴールライン手前で辛うじてクリアしました。

この猛攻を凌ぎ、最後は米本がキープするなどして6分のアディショナルタイムを乗り切って、東京が2試合ぶりの勝利を収めました。過程はどうあれ、勝つことによって東京の選手達に自信が戻り、安定したプレーができるようになって、勢いを取り戻すことができるでしょうか。


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