22インチのフットボール

備忘録を兼ねて試合を振り返ります

2016年07月

前半は長沢駿、遠藤保仁らが高い位置からプレッシャーをかけ、広島に自由を与えないようにとプレーしていましたが、それでもミハエル・ミキッチ、柏好文のいるサイドにボールを持っていかれ、そこを有効に使われてしまいました。

開始早々の前半2分には、柏から丸谷拓也を経由して左から右に揺さぶり、ミキッチのクロスをピーター・ウタカが胸で落とし、最後は宮吉拓実がやや角度のないところからシュートを放つとクロスバーを叩きます。

さらに30分には柴崎晃誠、宮吉、ウタカによる連動した崩しから、ミキッチが低い弾道のシュートを放ちました。これは東口順昭がキャッチします。

裏に抜け出す選手はいるものの、なかなか前線にボールが出ないガンバが最初の決定機を迎えたのは、それから5分後のことでした。遠藤が下がって味方の押し上げを促してから得たフリーキックを林卓人がパンチング。こぼれ球をアデミウソンが落とし、阿部浩之が強烈なシュートを打ちますが、クロスバーに嫌われました。

41分にはルーズボールを奪ったアデミウソンが、柏と清水航平を振り切り右サイドからGKとDFの間を狙ったクロスを入れるも、足を伸ばして飛び込んだ阿部と長沢には合いませんでした。

ボールを保持する時間が長かったもののチャンスの数が少なかったガンバは、後半開始から長沢を下げて、大森晃太郎を投入。2列目のサイドを主戦場としながら、守備への貢献度が決して高くはなかったアデミウソンを最前線に上げます。

すると後半7分、アデミウソンと遠藤のワンツーが失敗に終わり、宮原和也に当たります。そのこぼれ球を拾った阿部が直接シュート。ミドルレンジからの強烈な一撃がゴールネットに突き刺さり、ガンバが先制します。

1点を追いかける広島は、ボールの散らしが巧みな青山敏弘、さらには新加入のアンデルソン・ロペスを入れて打開を図ります。ただ、運動量豊富な大森、阿部がサイドにいることで、前半は非常に効果的だった広島のサイド攻撃を封じます。

そこで残り15分を切ると、森保一監督は佐藤寿人を入れて、おなじみの3-4-1-2から青山を1ボランチにした3-5-2へとシステムを変えました。ディフェンスを手薄にしてまでも、得点を取りにきたのです。

前半以上に広島の攻撃への圧力が増し、ゴールに迫られるも、アンデルソン・ロペスの強引な左足でのシュートの連発によってガンバは助けられました。

34分の遠藤のクロスに倉田秋がファーサイドで直接合わせた場面をはじめ、何度かあったカウンターのチャンスを仕留められれば上出来でしたが、とにもかくにも逃げ切りに成功。見事に1点を守り抜きました。

 

無敵を誇ったステラシステムに森川竜司が加わり、ステラスポットが見えるヒクソン・シウバをも凌駕して、日本が難なくブラジル相手に3対3の同点に追い付きます。これで勝利が、そしてその先さえも見えてきました。

ところが、この試合が作中で描かれる最後の戦いになってしまいます。そうさせたのが、ホスト国のエースゆえのプレッシャーで追い詰められ、悪役に変貌したネストールでした。

後半アディショナルタイム突入間近にステラシステムの要である坂本轍平を負傷退場に追い込み、さらには巧妙にPKを獲得して西郷政光を2枚目の警告で退場させたのです。ネストールはPKを決め、ブラジルが勝ち越します。

1点ビハインドで主人公が大会を棒に振る負傷をして、ピッチからいなくなるという非常事態に陥るも、日本はサポーターからの熱い念を受け、「てっぺいさんなら…」という思いでプレーする残された選手の力でブラジルゴールに迫ります。そして最後は坂本琴音の愛の叫びを聞いた森川がゴールにねじ込み、同点に追い付きました。

試合はPK戦にもつれこみ、全員が成功する中、5番手のキッカーを務めたネストールが、先日のコパ・アメリカ決勝でのリオネル・メッシのような外し方をしたため、日本が念願の準々決勝進出を決めました。

しかし、どのような負け方をしたかは描かれませんでしたが、主力2人を失った影響は大きく、ドイツには1対6で敗れます。現実のブラジルより1点だけ失点が少ない敗戦でした。 

ファンタジー溢れ、世界から称賛を受けそうな日本の戦いは残念な形で幕を閉じました。ただ、草場道輝先生の「あとがき」によると、現実世界では未達のベスト8に進めることはできたものの、もともと「現実に即し」た作品にすることが求められていたとのことで、こればかりはどうすることもできなかったようです。

以前の「おまけまんが」から想像するに、『週刊少年サンデー』の方針転換の影響を受けて終わりを迎えてしまったのではないかと思っていましたが、どうやらそれは違うと言えそうです。てっぺいがピッチを去る時、「まだまだ上に行ける自信はあった…」という悔しい思いがこみ上げてきたのは、作者の思いの反映かとも思いましたが…。

ただ、実在の本田圭佑が作品の中にいたことで、最終話でSVホルン買収の話を出すことができ、日本サッカーの未来への希望が描かれて、きれいに終わることができました。


INACがセットプレーからの一撃に涙をのんだ、のは事実ですが、それよりも相手ゴール前でほとんど何もできなかったことの方が、この試合のみならず今後に向けて大きな課題となりました。

立ち上がりは中盤でダイレクトのパスを回せる場面もありました。ただ、バイタルエリアをなかなか攻略するまでには至らなかったため、次第に千葉の選手につかまり始めます。特にボランチのところで引っかかることが多くなりました。

前半32分にはチョ・ソヒョンが鴨川実歩にセンターサークルでボールを奪われ、最後は菅澤優衣香にシュートを打たれてしまいました。幸い、好守が光る三宅史織が体を投げ出してコースを消したこともあり、ボールは枠をとらえませんでした。

苦境を脱するため、前半の半ばに守屋都弥を右サイドバックから左サイドバックに移し、鮫島彩を一列前に置く形に変えたり、シュートなしで前半を終えると、インターバル明けには道上彩花に代えて、中島依美を入れるなど、松田岳夫監督は様々な手を打っていきます。しかし、それらは奏功しないまま時間が流れていきます。

そして後半2分、チョ・ソヒョンのパスを菅澤がカット。ボールを小澤寛に預けると、小澤はそのまま持ち込んでシュートを狙います。ここは守屋がブロックしますが、千葉のコーナーキックになります。

瀬戸口梢のコーナーキックは千野晶子が頭でそらし、深澤里沙がダイレクトで押し込みました。近賀ゆかりがゴールのカバーに下がっていなければ深澤の位置はオフサイドポジションでしたが、フリーの状態で決められました。

INACはサイドからのクロス、最終ラインの背後へのボールを駆使して同点に追い付こうとしますが、精度を欠いたり、オフサイドになったりして実りません。32分にようやく守屋のクロスがペナルティエリア内の中島に通るも、3人に囲まれてしまいシュートは打てませんでした。

千葉は34分に若林美里を入れて、5バックにして守備を固めます。1点差で逃げ切るには早いかに思われましたが、この日のINACはそれを押し切ることができませんでした。

結局、48分の中島のフリーキックも生かすことができず、0対1で敗れてしまいました。これでINACと千葉との勝ち点差は1に縮まりました。しかも千葉は1試合多く残しています。INACはこの日のような出来ですと、残された最終戦の日テレ・ベレーザとの試合も苦戦しかねませんので、準決勝進出が危うくなってきました。


試合が動いたのは、ややオープンな展開で始まった後半の5分のことでした。鎌田大地のファーストトラップが大きくなったところを見逃さずに田村友がカット。それを濱田水輝が前方に繋ぐと、金森健志がドリブルで仕掛けます。藤田優人を振り切ってクロスを上げると、ボールの先にいた平井将生に通すまいとした福田晃斗が、自陣のゴールに蹴り込んでしまいました。

しかし、ここから鳥栖の逆襲を食らいます。9分後の14分には先程ボールを奪われた鎌田が左に展開。吉田豊がスピードに乗ったドリブルからセンタリングを上げます。それをファーサイドに走り込んだ鎌田が合わせて同点となります。

その後は鳥栖の時間帯が続き、福岡はクリアするのが精一杯で、ボールを収めることができず、カウンターを仕掛けることもなかなかできません。できたとしても遅らされてしまい、形になりません。

押し込まれている中で井原正巳監督は、平井を下げて坂田大輔を送り込み、城後寿を最前線に配します。この積極策から流れを取り戻しかけた福岡は、サイドからのクロスに活路を求めるも、中の人数が足りず、林彰洋に難なくキャッチされます。

すると31分、駒野友一と藤田とのルーズボールの奪い合いで藤田が勝ち、こぼれ球をキム・ミヌが拾って持ち込みます。最後は藤田がゴールに迫ってフィニッシュ。鳥栖が逆転に成功します。

この失点が影響し、同点に追い付きたいという焦りと疲れが、福岡の選手達から見られるようになりました。また、集中の切れない鳥栖の守備に手を焼き、やがて全体のバランスは崩れ、途中出場の富山貴光にだめ押し弾を許してしまいます。

アディショナルタイムには5バックにして、手堅く逃げ切ろうとした鳥栖に対して、實藤友紀がゴールを決めて1点差には詰め寄りましたが、同点に追い付くには時間が足りませんでした。

前半は互いにハードワークができていて、鳥栖のポゼッションにも我慢強くブロックを敷いて応対していた福岡でしたが、後半になってからは次第に失速。ホームで痛恨の逆転負けを喫してしまいました。

 

リオ五輪を間近に控えたスウェーデンに対して、熊谷紗希をアンカーに置いた4-1-4-1で臨んだ日本でしたが、2列目の阪口夢穂が下がってボールを受けては散らす場面が多く、実質的には4-2-3-1のような形になっていました。

そんな中でなでしこジャパンはシュートまでつくることに成功し、前半12分には熊谷が展開して有吉佐織がクロスを入れ、増矢理花がトラップからゴールを狙い、20分には永里優季がループシュートを、21分には熊谷がミドルシュートを放ちました。

もっとも惜しかったのは32分のプレーでした。永里がコーナーキックでゴールライン手前を転がすボールを蹴ると、寄ってきた中里優が受けて落とし、最後は増矢がシュート。サインプレーがきれいにはまったのですが、ゴールの枠をとらえることができません。

一方でミスからカウンターをしばしば食らい、15分には宇津木瑠美のパスミスから、29分には熊谷のボールロストからいずれもシュートまで持っていかれました。幸い、最後のところの精度が低かったため、山下杏也加がキャッチすることができ、大きなピンチには至りませんでした。

ハーフタイムが明けると、スウェーデンは満を持してロッタ・シェリーン、コソバレ・アスラニら4人を一気に投入。サイドを広く使った攻撃で日本を脅かします。後半1分には早速、シェリーンがサイドから持ち込んでシュートを打ちます。

対する日本は、前半に相手の守備ブロックをなかなか攻略できなかったこともあり、中盤から早目に最終ラインの背後めがけてボールを供給していきます。しかし、これがシュートにまで結び付きません。

こうして決定機をつくれずに攻めあぐねていると、ラスト15分で3失点を喫してしまいました。まずは後半31分、阪口のパスをカットされたところから始まって、オリバ・スクーグ、アスラニと渡り、最後はシェリーンが村松智子を翻弄して窮屈なトラップから見事にフィニッシュ。均衡が破れます。

33分のピンチはなでしこらしい粘り強いゴール前の守備で凌ぎましたが、その8分後、熊谷が2人に囲まれてボールを奪われてしまうと、アスラニのラストパスを受けたフリドリーナ・ロルフェが決め、アディショナルタイムに入った48分には熊谷のバックパスをロルフェが拾い、最後はスクーグが加点しました。

失点はすべて中盤でボールを奪われてからのもので、こうした形はアメリカ戦から改善されているとは言えません。相手の執拗な寄せをかいくぐるためのすばやく冷静なパス回しが求められます。

また、ゴールに襲い掛かる迫力もいまひとつ足りず、なでしこジャパンは2試合連続の無得点に終わりました。結果的にはチームの完成度の差がそのまま出てしまった格好です。自信を取り戻し、勝利をつかむための模索はまだまだ続きそうです。

 

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