22インチのフットボール

備忘録を兼ねて試合を振り返ります

2016年06月

タイムアップ直後、鹿島の選手達は喜びを爆発させるというよりは、むしろ安堵の表情を浮かべていました。チャンピオンシップ出場権を獲得したものの、1stステージ制覇は年間優勝するための通過点にすぎないという思いが強いのでしょう。

試合はプレッシャーなく、のびのびプレーする福岡が右サイドを崩すなどして躍動していましたが、時間の経過とともに鹿島がペースを握るようになります。

前半16分には山本脩斗がドリブルで切れ込んでシュート、26分には遠藤康が西大伍のスルーパスを受けて、左足アウトサイドを使ってシュートを放つも、いずれもイ・ボムヨンに阻まれます。

それでも遠藤のシュートによってもたらされたコーナーキックを柴崎岳が蹴り、走り込んだ山本が頭で合わせ、鹿島が先制します。勝てば文句なしで優勝できるため、この得点で重苦しい空気が吹き飛びました。

37分にはカウンターから柴崎のクロスが流れたところを遠藤が拾って、金崎夢生に預けると、金崎がダニルソンを外してクロスを入れ、土居聖真が合わせて2対0とします。

福岡が頼りにしていたウェリントンはブエノ、植田直通の両センターバックがきっちり抑えます。うまくいかないウェリントンは、31分にアシスタントレフェリーに向かって苛立ちのジェスチャーを見せると、39分には小笠原満男を胸で突いてしまいます。その後、ウェリントンはハーフタイムにロッカールームに下がる際、小笠原と和解しようと歩み寄っていました。

後半は福岡が3点目をやるまいと守備から入ったこともあってか、見せ場の少ない45分でした。互いの好機をあえて挙げるとすれば、福岡は後半8分、古部健太のマイナスのクロスに城後寿が合わせに行った場面。鹿島は21分の杉本太郎のシュートシーンくらいでした。

30分を越えると暑さの影響か、両チームとも全体的に重たくなってきました。こうなると2点のリードはセーフティとなり、鹿島はアディショナルタイムに突入すると、この試合をもってチームを離れるジネイ、青木剛をピッチに送り出す余裕が生まれました。

無事、6連勝を飾った鹿島は、逆転で1stステージ優勝を成し遂げました。このポジションを譲る気はさらさらないようなので、鹿島を中心とした年間優勝争いはまだまだおもしろくなりそうです。


遠藤航、槙野智章からの大きなサイドチェンジを多用し、相手を押し込もうとする浦和に対し、東京はブロックを敷き、時には両サイドハーフの橋本拳人、羽生直剛が最終ラインまで下がって6バックを形成し、浦和にサイドを広く使わせまいとしました。

浦和の攻撃がやや単調になる中、東京は効率よく2点を先取します。

まず前半13分、阿部勇樹のパスを米本拓司がブロックして、ボールがネイサン・バーンズに繋がり、最後はムリキがワンタッチで鮮やかなフィニッシュ。見事なショートカウンターでした。

さらに31分、左サイドでテンポよくボールを回して、ムリキがフリーの徳永悠平にサイドチェンジ。徳永が中央のバーンズに預けると、バーンズは3人に囲まれる状況にもかかわらず突破を図ります。そのこぼれ球を橋本が右足アウトサイドで流し込み、リードを広げます。

浦和は27分に柏木陽介、関根貴大、武藤雄樹で崩してシュートまで持っていくシーンがありましたが、こうしたきれいな形はあまりつくれていませんでした。

また連戦に加えて、4連敗の危機に立たされたダメージが心身ともに大きいのか、前半の終わりは浦和の選手達の足取りが重くなっていました。

後半11分のムリキのシュートがポストに嫌われていなければ、そのダメージはさらに大きなものとなったかもしれません。 しかし、浦和は諦めていませんでした。

21分、コーナーキックのセカンドボールを浦和が回収。ボールを繋ぐと、興梠慎三が右サイドからクロスを上げ、槙野がそこに飛び込んで1点を返しました。槙野には森重真人がついていましたが、クロスボールへの対応に飛び出し、マークを丸山祐市に任せたようですが、結果的にフリーになられてしまいました。

6分後、今度は遠藤のサイドチェンジを駒井善成が頭で中央に入れ、興梠が落としたところに槙野が狙いすましたシュートを放ち、同点に追い付きます。東京は耐え切ることができませんでした。

同点にされたことで前半安定していた東京の固いブロックは完全に緩んでしまい、バイタルエリアを浦和に自由に使われるようになってしまいます。

そして33分、東京ゴール前での柏木のフリーキックの流れから、阿部が強烈なミドルシュートを放ち、クロスバーを直撃。こぼれたボールを李忠成が体で押し込んで、ついに浦和が逆転に成功します。

この時点ですでに交代枠を使い切っていた東京に追い付く余力はありませんでした。36分、ムリキはシュートを打たせてもらえず、42分の河野広貴のフリーキックは味方に合いません。東京にとっては痛恨の逆転負けとなりました。

逆に年間優勝を目指す浦和にとっては、悪夢の3連敗から脱出し、再び勢いを取り戻す勝利になりました。

 

中村憲剛の不在、前半半ばでのエドゥアルドの負傷離脱、2点のビハインド――と苦しい状況に追い込まれた川崎は、どうにか追い付くことができたものの、勝ち点3にはあと一歩及びませんでした。

開始15分で許した2ゴールはいずれもリスタートからでした。まず前半9分、イ・ボムヨンのゴールキックをウェリントンが頭で繋ぎ、邦本宜裕と車屋紳太郎が競ったボールが金森健志に通ると、金森はトラップから巧みにゴールに流し込みました。序盤からロングボールを使ってきた福岡でしたが、ウェリントンが飛んだ際、エドゥアルドは競っていませんでした。

6分後、今度はスローインが起点となります。ボールを受けた邦本がドリブルをスタート。川崎の選手の寄せが甘く、一気にバイタルエリアに進入します。そして金森と2人で難なく中央を崩し、最後は金森がゴールを決めました。川崎は立ち上がりのほんのわずかな、一瞬の隙を突かれてリードを許してしまいます。

反撃に出た川崎は大島僚太が前に出ていく意欲を見せ、23分には大久保嘉人が相手を引き付けて小林悠にパスを送ると、小林は中央に折り返し、大島がダイレクトでシュート。これはイ・ボムヨンに阻まれます。起点になったのは大島のボールカットでした。その後も大塚翔平や車屋がゴールに迫るも、福岡守備陣に止められてしまいます。

しかし42分、ショートコーナーの二次攻撃から生まれた大島のスルーパスに小林が反応。うまく抜け出して鮮やかなループシュートを決め、1点差に詰め寄ります。川崎はいい流れをつくった状態で前半を終えることができました。

後半開始とともに、ゴールが欲しい川崎の風間八宏監督は武岡優斗を右サイドバックに入れ、エウシーニョを一列前に上げました。後半1分と7分にはそのエウシーニョが早速シュートを放ちました。

それでもなかなか得点が奪えなかった中で、25分に大塚のシュートのこぼれ球に飛び込んだ大島が、キム・ヒョヌンに倒されてPKを獲得。これを大久保が冷静に転がして同点に追い付きます。

他会場の状況からもう1点が必要だった34分には田坂祐介を入れて、攻撃の活性化を図りました。ところがチームは決定機をほとんどつくれず、福岡のディフェンスを崩しきれないまま時間が経過していきました。また、試合を通してゴール前でのフリーキックも多かったのですが、生かしきれません。

結局、2対2で試合は終了し、ヴィッセル神戸に逆転勝ちした鹿島アントラーズに首位の座を明け渡すこととなりました。自力でのステージ優勝の可能性はなくなりましたが、次の1stステージ最終節、5位の大宮アルディージャとの一戦に望みを託します。

 

前半は主に広島陣内でゲームが進んでいきました。東京がボールを保持して攻め、広島はじっくりと後方でボールを回して相手の隙をうかがう展開でした。こうした広島のやり方に対し、東京は4-4-2の3ラインをきれいに保ち、焦れずに堪えていました。

広島がギアを少し上げ、縦への意識を強めたのは、前半30分過ぎでした。しかし、攻撃のスイッチを入れる役割の青山敏弘のミドルレンジのパスが思うように繋がらず、さらに何度かボールを奪われ、44分には千葉和彦が阻止したもののショートカウンターを受けてしまいました。

ただ、広島にまったくチャンスがなかったわけではありません。38分に柏好文の右からのクロスを橋本拳人がクリアし、こぼれ球を柴崎晃誠がダイレクトでシュートを放ちました。これは残念ながら秋元陽太の正面でした。

とはいえ、流れがあまりよくない広島は、ハーフタイム明けに宮吉拓実を下げて、スピードのある浅野拓磨を投入します。しかし、選手達は1対1の局面をなかなか打開することができず、東京攻略に手こずります。

一方、前半我慢を続けた東京は、今度は前線の高い位置からプレッシャーをかけていきます。そして後半4分にムリキが倒されて得たフリーキックを、米本拓司がずらして森重真人が強烈なシュート。ここは林卓人がセーブして、得点には至りません。

広島に流れが来たのは、14分。塩谷司がオーバーラップしてドリブルで持ち込み、ピーター・ウタカがゴールを狙ったシーンがきっかけでした。16分にはウタカからボールを受けた浅野がシュート。17分には千葉がミドルシュートを放ちます。

この流れをものにして、21分に先制点を挙げます。千葉のロングフィードを柴崎が落とし、それを拾ったウタカが東京ゴール前で粘って橋本をかわし、そのクロスを浅野がうまく合わせてゴールネットを揺さぶりました。

ところが3分後、コーナーキックからの二次攻撃で東京が同点に追い付きます。高橋秀人のふわりとしたパスを受けた河野広貴が左足で低く鋭いラストパスを送り、最後は先程ウタカにかわされた橋本が足を伸ばして押し込みました。

これで東京に勢いが出てきて、ネイサン・バーンズは果敢にシュートを打っていきました。46分には水沼宏太が惜しいシュートを放つなど、河野を含めて3人の交代選手が躍動していました。

広島は青山がポジションを前に上げて応戦しますが、先制点以降は決定機をつくれず、40分の塩谷のミドルシュートも枠をとらえません。

タイムアップの瞬間が近づくと、広島は最終ラインでゆっくりボールを動かしスローダウン。東京は森重が足をつらせて、高橋秀人がフォローのため最後尾に下がるという緊急事態でしたが、広島はマイペースを保って無理をしませんでした。最終的にはアウェイでの勝ち点1なら十分という判断だったのでしょう。結果、1対1の引き分けに終わりました。


2位、3位による注目の上位対決は、互いに最後のところで体を張り、緊迫感漂う前半となりました。浦和が長短のパスを巧みに使い分け、鹿島を押し込むものの、しばしばカウンターを繰り出したアウェイチームが決定機の数で上回りました。

前半37分には遠藤康のクロスをファーサイドでカイオがダイレクトで合わせるも、西川周作がセーブ。40分には速攻から金崎夢生が迷わず強烈なシュートを放ち、さらに48分には遠藤康が倒れながら入れたクロスを頭で合わせましたが、いずれもゴールポストに嫌われます。

後半の立ち上がりは逆に鹿島が攻勢をかけます。ボランチの柴崎岳がペナルティエリアに積極的に入っていき、後半3分、6分と立て続けにクロスを入れました。

試合の均衡は思わぬ形で破れます。7分、宇賀神友弥が味方が誰もいないところへパスを出してしまい、カイオに渡ってしまいます。浦和の守備の準備が整っていない中、カウンターとなり、カイオからまたもや前線に顔を出した柴崎にパスが送られ、柴崎がダイレクトでラストパスを出します。それを金崎が滑り込むような形で押し込んで先制しました。金崎にとっては三度目の正直でした。

1点を追いかける浦和は、早目早目の交代策をとり、24分までに3枚のカードを切り終えます。そして再び鹿島を押し込んでいきますが、混戦になってもしぶとく凌ぎ、昌子源、植田直通を中心としてゴール前をがっちり固めた鹿島のゴールを割ることができません。

そして運も味方しません。32分、曽ヶ端準が飛び出してがら空きになったゴールに向かい、途中出場の駒井善成がループシュートを狙うもクロスバーをヒット。35分のコーナーキックの流れからの遠藤航のシュートもポストに当たってしまいます。

一方の鹿島は、金崎も自陣でのディフェンスに貢献する中で、40分にはPKを獲得します。小笠原満男のクロスを受けた鈴木優磨を駒井が倒したとして、ベンジャミン・ウィリアムズ主審がペナルティスポットを指差しました。これを鈴木が決め、実に12試合ぶりの浦和戦勝利を大きく手繰り寄せる追加点が決まりました。

鹿島の集中力は最後まで切れることなく、浦和の猛攻を抑えきりました。これで先に試合を終えて勝利していた川崎フロンターレとの勝ち点差を1に保ったまま、ファーストステージ最終盤に突入することとなりました。


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