22インチのフットボール

備忘録を兼ねて試合を振り返ります

2016年05月

最終ラインを高く保ち、攻守ともに積極的に来た磐田に対し、ホームの川崎は窮屈な状態に追い込まれてしまいます。特に前半は思うようにパスが回らず、アタッキングサードへの進入もままなりませんでした。

そんな中、エースの大久保嘉人は一人気を吐き、果敢にゴールを狙ってシュートを打っていきました。前半7分にはエドゥアルド・ネットの長いスルーパスを受けて、得点を奪いに行きましたが、八田直樹の飛び出しによって防がれてしまいました。

43分には大久保が八田に倒されてフリーキックを獲得。これを中村憲剛が蹴り、谷口彰悟が頭で合わせるもボールはクロスバーをヒットして抜けていきました。

後半に入ってからは中村憲剛のプレーに凄味が増してきました。前半途中からボランチの位置に下がった背番号14の勝利への、そして暫定首位キープへの強い思いが込められたボールが幾度となく前方に送られました。特に右サイドバックのエウシーニョのところにボールを集めますが、シュートまで形をつくることはあまりできませんでした。

逆に後半22分、自分達のコーナーキックから磐田にカウンターを食らったものの、アダイウトンがボールキープにもたついている間に帰陣して、どうにか不発に終わらせました。

30分には登里享平から小林悠、中村憲剛、そして再び小林悠へとダイレクトで繋がり、小林悠はグラウンダーのパスを送ります。その先にいた大久保が飛び込みますが合いません。以前、別の試合で見たような、既視感を覚えるようなシーンでした。

39分、風間八宏監督は登里に代えて中野嘉大を投入。ドリブルが持ち味の選手を起用し、流れを変えようとします。するとこの交代が功を奏します。

43分、大塚翔平とのワンツーを決めた中野が、ドリブルで左サイドから中央に入り込み、大久保へ。パスを受けた大久保は外側を駆け上がるエウシーニョに冷静にボールを預けます。エウシーニョは勢いそのままに低いクロスを入れると、それが小川大貴の足に当たってゴールネットを揺らします。オウンゴールを決めてしまった小川大貴は思わず両手で顔を覆いました。

川崎は最後、大塚が下がって武岡優斗が入り、守備固めをして逃げ切りました。これで勝ち点を31に伸ばし、暫定首位の座を明け渡しません。勝ち点4差で3位の浦和レッズが2試合多く残しているとはいえ、価値ある勝利になりました。


時間が経つにつれて、苦境に立たされていたのはレアルでした。しかし最後に笑ったのはレアルでした。

前半に限って言えば、白い巨人が主導権を握っていました。前半15分にトニ・クロースのフリーキックをガレス・ベイルが頭ですらし、セルヒオ・ラモスが押し込んで先制点を奪うと、次第に落ち着いてピッチを広く使ってじっくりとボールを回すようになりました。

また、ディフェンスも慎重だったことから、アトレティコの選手はボールを持つと、パスの受け手を探して逡巡する場面が多く見られました。ファイトをしない、らしくない姿でした。そんな中、アントワーヌ・グリーズマンだけは34分、39分、43分と立て続けにシュートを放ち、切れ味の鋭さを見せていました。

アトレティコが本来の戦う姿勢を取り戻したのは、ヤニック・フェレイラ・カラスコが送り込まれた後半からでした。ディエゴ・シメオネ監督の檄がハーフタイムに飛んだのでしょう。

すると早速チャンスが到来します。後半1分、ペペがエリア内でフェルナンド・トーレスを倒してPKの判定が下されたのです。ところがグリーズマンのシュートはクロスバーを直撃してしまいます。同点に追い付く絶好のチャンスを逃してしまいました。その数分後、ダニエル・カルバハルが涙の負傷退場をしていた間に、グリーズマンはシメオネ監督に闘魂を注入されます。

好機を逸してもアトレティコの戦意は落ちず、レアルに圧力をかけます。繰り出すパスにも迷いがなくなり、攻撃に迫力が出てきました。

そして34分、ガビの浮き球のパスを受けたフアンフランがダイレクトでクロスを上げると、カラスコが合わせて試合を振り出しに戻します。鮮やかな崩しにレアルの守備陣は対応しきれませんでした。

すでに3人の交代枠を使い切っていたレアルは、前線でなかなかボールが収まりません。クリスティアーノ・ロナウドはケガの影響か、2年前の決勝以上に精彩を欠いており、この試合でいい働きをしていたベイルも延長に入ると足をつってしまいます。

どうにかシュートを打とうとしても、ボックス内を固めたいつものアトレティコの牙城を崩せません。そして試合はアトレティコペースで進んでいきました。ただスコアだけは動きません。

結局、120分で決着がつかずにPK戦に突入します。流れはアトレティコに傾いていましたが、この勝負は別物でした。アトレティコは4人目のフアンフランが失敗。逆にレアルは3人目のベイルが苦しみながらもゴールにねじ込み、最後のキッカーを務めたロナウドもきっちり決めて、2シーズンぶりにビッグイヤーを手に入れました。


立ち上がりは伊賀の選手がフルスロットルで高い位置からプレスをかけ、INACにパス出しの余裕を与えない時間が続きました。加えて、櫨まどか、小川志保が積極的にシュートを放ち、リズムをつくります。

前半10分あたりから伊賀のプレッシャーが緩み、最終ラインを高く保ちながらブロックを敷くようになると、ようやくINACも落ち着いてボールを回せるようになりました。ただ、前線での連動性に乏しく、ダイレクトプレーがほとんど見られない状態で、また暑さの影響もあってかテンポの速い展開には至りません。

最初の決定機は17分。ボランチの京川舞が右サイドからクロスを上げるとボールは宮迫たまみの頭上を越え、高瀬愛実がヘディングで合わせました。しかしこれは久野吹雪がキャッチします。

36分には、増矢理花のパスを受けた鮫島彩が切り返して大橋実生をかわしてシュート。久野が弾いたところを増矢が詰めますが、久野と宮迫が体を寄せてきたためシュートは浮いてしまいます。

試合が動いたのは後半14分。中島依美が左足でミドルシュートを打ち、これが久野の頭を越えて決まりました。得点が入った直後、中島は手を口に当てて、驚いたように笑っていましたので、もしかするとシュートではなかったのかもしれません。いずれにしても1点は1点です。

その後のINACはなかなかシュートの形をつくれず、前半から狙っていた最終ラインの背後をめがけた攻撃はことごとくオフサイドになってしまいます。

すると36分、自陣ゴール前での増矢のクリアが弱くなり、櫨が拾って落とすと、那須麻衣子が強烈なミドルシュートを叩き込みました。

首位の日テレ・ベレーザ追撃のためにもホームで勝ちたいINACは、41分、増矢のやわらかいパスを受けた京川がシュート。しかしボールはクロスバーを直撃して真下に落ち、ゴールラインを割ることができません。

2分後、松田岳夫監督は道上彩花を送り込み、その高さと強さを生かした攻撃を求めます。投入直後の中島のコーナーキックに早速頭で合わせましたが、久野に難なくキャッチされました。

INACが決勝点を奪いにやや前にかかっていた48分、途中交代で入った園村奈菜にスペースを突かれてドリブルで持ち込まれると、園村は中央に走り込んだ杉田亜未にラストパスを供給。INACの選手の戻りは間に合わず、フリーの杉田が確実に決めて、伊賀が逆転します。

野田朱美新監督の下、ラスト10分の攻防できっちり得点を奪った伊賀が勝ち点3を獲得。INACは痛い黒星となりました。

 

勝って暫定首位の座を確固たるものにしたかった川崎でしたが、最後まで運動量が落ちなかった新潟の前にスコアレスに終わってしまいました。

序盤は右MFにポジションをとった小林悠が積極的にゴール前に顔を出し、果敢にシュートを打っていきます。前半7分には登里享平のスルーパスに反応して左足を振り抜き、ポストをヒット。17分にもゴールを狙いますが、大野和成にブロックされます。

一方の新潟はロングボールからコーナーキックを獲得し、小塚和季のボールを舞行龍ジェームズが頭で合わせました。ここはチョン・ソンリョンがセーブし、こぼれ球がエドゥアルドに当たってオウンゴールになりかけましたが、これも防いで川崎は難を逃れました。

前半半ばからは二列目に入ったレオ・シルバが攻守にわたって存在感を増し始め、新潟の守備が安定していきました。結果、川崎は森谷賢太郎や大久保嘉人が遠目からのミドルシュートを打つくらいしかできなくなりました。

後半7分、中村憲剛の右サイドからのフリーキックに合わせた小林のヘッドもレオ・シルバが体に当てて、守田達弥がセーブ。さらに22分、カウンターから小林がシュートを打ちに行こうとするも、大野と小林裕紀が体を入れて阻止しました。

攻めあぐねていた川崎は、25分に登里に代えて中野嘉大を投入。中村をトップ下からボランチに下げ、4-2-3-1からボックス型の4-4-2にシステムを変えました。これで最前線の枚数を増やした形になりましたが、ホームチームの粘り強くしぶといディフェンスを前にシュートを打ち切れません。

すると次第にプレースピードが落ちてきて、新潟に走り負けるようになり、終盤は何度もカウンターを食らってしまいます。それでもチョン・ソンリョンを中心とした守備陣が凌ぎ切り、失点だけは避けることができました。

結局、試合は動かないままタイムアップを迎えました。川崎はかろうじて勝ち点1を積み上げたものの、名古屋グランパスに逆転勝ちした鹿島アントラーズとの勝ち点差が1に縮まってしまいました。


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