22インチのフットボール

備忘録を兼ねて試合を振り返ります

2016年03月

藤春廣輝、アデミウソン、パトリックをベンチ外としたガンバは、アウェイで甲府を1対0で退け、公式戦5試合目にして初勝利を飾りました。

前半は倉田秋が低い位置でボールを受け、遠藤保仁が高い位置をとるスタイルを選択し、甲府ゴールに迫ります。

前半8分、宇佐美貴史のロングボールに長沢駿が反応してシュート。9分には遠藤からパスを受けた宇佐美が新里亮をかわしてペナルティエリア内に進入し、やや角度のないところからシュート。いずれも河田晃兵のファインセーブにあいますが、攻撃の形はつくれていました。

対する甲府はクリスティアーノが、効果的なサイドチェンジをさかんに用いるなどしてガンバ守備陣を振り回します。

24分にはルーズボールを奪った土屋征夫のボールを受け、ペナルティエリア付近まで持ち込んで逆サイドにクロスを上げます。そこにオーバーラップしていた土屋が折り返し、最後は稲垣祥がゴールを狙おうとするも、ボールは戻ってきた長沢の背中に当たって東口順昭がキャッチします。

互いに持ち味を出す中で先制したのは、自陣から11本のパスを繋いだガンバでした。36分、遠藤が浮き球で左サイドに出すと、初瀬亮はトラップしてクロスを打ちやすい位置にボールを落とし、中央にラストパスを送ります。完璧な放物線を描いたボールの先には長沢がおり、軽くジャンプして頭を合わせてフィニッシュ。公式戦デビューを果たした左SBのすばらしいアシストで均衡を破ります。

さらに42分には、山本英臣のクリアが宇佐美に当たり、ボールが前方にこぼれ、宇佐美が河田と1対1になります。宇佐美は逆サイドネットに流し込むシュートを放ちましたが、河田がこれを防ぎます。絶好のチャンスを逸したため、宇佐美は思わず頭を抱えました。

後半は、甲府が16分に土屋と新里を下げて、福田健介と田中佑昌を同時投入し、選手の並びを変えるなどして状況の打開を図りましたが、35分の宇佐美のFKまで両チームにシュートのない展開となりました。

ガンバに決定機が生まれたのは43分、途中投入の3選手が絡んでの攻撃でした。阿部浩之のスルーパスを呉屋大翔が落として井手口陽介がシュート。河田がセーブしたボールを大森晃太郎が頭で押し込みますが、最後は新井涼平がゴールライン手前でクリアします。

1分後には大森が甲府の最終ラインの背後を狙ったボールを呉屋が受け、粘ってクロス。それをフリーで上がってきた井手口が狙うもブロックされてしまいました。

結局、2点目は遠かったガンバでしたが、危なげなく勝ち点3を獲得するのに成功しました。

 

前節、精力的な守備でサンフレッチェ広島をシャットアウトした川崎が、今節はこれぞ川崎という激しい打ち合いの末、ドローに持ち込みました。

開始早々は湘南にやや押し気味に進められますが、次第にリズムが出てくると前半13分に先制します。右サイドから狩野健太がクロスを入れると、森谷賢太郎がジャンプしてスルー。その先にいた大久保嘉人がゴールを決めます。

J1通算最多得点トップに並んだ大久保は、15分、17分にも迷いなくシュートを放ち、追加点を狙いました。

そんな流れの中、20分に事件が起きます。左サイドから高山薫がクロスを入れると、チョン・ソンリョンが空中でキャッチ。ところがそこにキリノが体をぶつけ、つかんだはずのボールがこぼれ落ちてゴールラインを割ってしまいます。判定はGKに対するファウルではなく、ゴール。チョン・ソンリョンのオウンゴールという扱いになってしまいました。川崎の選手は当然抗議しますが、判定は覆りません。思わぬ形で追い付かれてしまいました。

その後、38分からの7分間はスリリングな、目まぐるしい展開になります。まずは菊池大介が森谷につかれながらも懸命にシュートを放って湘南がリードを奪うと、1分後には大島僚太、大久保と繋がり、小林悠が同点弾を決めます。

41分には三竿雄斗のCKをペナルティエリア外から走り込んできたパウリーニョがジャンピングボレーで決めるも、45分に大島のパスを受けた小林が、足に吸い付くような絶妙なトラップから右足を豪快に振り抜き、再び同点に追い付きました。これで前半だけで3対3というスコアになりました。

ハーフタイム明け、風間八宏監督は森谷、狩野に代えて、中野嘉大、森本貴幸を投入。前半に引き続き、打ち合い上等の姿勢を見せます。

後半の川崎は中盤でパスを回して圧倒し、サイドからの崩しに活路を見出そうとしますが、湘南の守備はしぶとく、最後のところはやらせてもらえません。 後半13分の中村憲剛のアーリークロスからの中野のヘッドは、村山智彦に防がれました。

すると32分、湘南の走るサッカーが結実します。カウンターを仕掛けて、4対4の局面をつくり、三竿が左サイドからGKとDFの間を通すすばらしいクロスを入れ、そこに機を見て逆サイドから走っていた岡本拓也が合わせ、三度目のリードに成功します。

しかし川崎は46分、大島が左サイドの車屋紳太郎に預けると、車屋は逆サイドにクロスを上げます。それを小林が折り返し、最後は森本が確実に頭で決めて、スコアを4対4とします。左右の揺さぶりが見事に決まった形でした。

残りのアディショナルタイムは、ゴールからゴールへとボールが動くオープンな展開になり、5点目が入りそうな雰囲気になりましたが、劇的なドラマは生まれませんでした。


わずかな可能性に望みを託すなでしこジャパンにとって、絶対勝利が求められた一戦でしたが、韓国戦の立ち上がりのような鬼気迫る勢いがなく、終始焦りの色が消えなかった90分となってしまいました。

また、前半は高いラインを保った中国の速いつぶしに苦労し、思うように展開できず、パスミスやボールロストも目立っていました。

そんな流れを象徴したのが、前半14分の失点シーンでした。阪口夢穂からボールを受けた川村優理が中途半端なバックパスを出してしまい、それが田中明日菜と熊谷紗希の間を通すスルーパスのようになってしまいました。張睿はこのミスを逃さずに猛然とボールに向かって走り、追い付き、ゴールに流し込みました。これが中国のファーストシュートでした。

追いかける日本は、パスのズレがさらに目立つようになり、シュートまで持っていくことができません。28分、34分と横山久美がうまくすり抜けてエリア内に入り込むも、シュートを打ち切れませんでした。

それではと、なでしこは宮間あやのセットプレーで工夫を見せます。しかし、32分にはグラウンダーのFKで変化をつけるもクリアされてしまい、36分のCKでは後方にいた近賀ゆかりが走り込んで頭を合わせたものの、枠をとらえきれません。

なかなかうまく攻撃が形にならない日本は、後半開始とともに岩渕真奈を川村に代えて投入。宮間を左サイドハーフからボランチに下げます。

すると後半1分、大儀見優季がスライディングでルーズボールを奪い、宮間が強烈なミドルシュートを放ちます。趙麗娜に弾かれましたが、これで流れを引き寄せられるかに思われました。

ところが守備陣の寄せの甘さから、4分に古雅沙、8分に張睿と立て続けにかつ、あまりにあっさりとシュートを打たれてしまいます。

そして13分、王霜が持ち込んで左サイドの王珊珊に預けると、背番号11は逆サイドに展開。そこに走り込んでいた古雅沙のミドルシュートが決まってしまい、点差を2点に広げられてしまいました。

20分に横山がゴール前で李冬娜からボールを奪い、任桂辛をかわしてゴールを奪いますが、それでも最低2点が必要な状況下で焦りの色は隠せず、以降は攻撃に迫力がありませんでした。

特に30分以降は、前線の選手の多くが高い位置をとり、パワープレーを要求するような形になり、中盤に人がいなくなってしまいました。佐々木則夫監督も、高瀬愛実を送り出し、前線の高さを強化しました。

日本は後方からボールを入れ続けますが、実らず、試合は1対2のままタイムアップを迎えました。これで勝ち点を7に伸ばした中国が、日本戦の前に行われる次の韓国戦で勝ち点1でも積み上げてしまえば、なでしこジャパンの敗退が決定するという極めて絶望的な状況に陥ってしまいました。とにもかくにも無念としか言いようのない結果です。


初戦を落として後がなくなった日本は、宮間あやをトップ下に据え、左利きでテクニック抜群の上尾野辺めぐみ、攻守においてダイナミックなプレーが持ち味の川村優理をボランチに配し、攻撃に重きを置いた編成でこの試合に臨みました。

指揮官のメッセージを受け取った選手達は、立ち上がりからハイプレスをかけ、猛攻を仕掛けます。その中心にいたのが、この日先発起用された横山久美でした。

前半1分にチャン・スルギからボールを奪い、ドリブルで持ち込んでシュートを放つと、4分にはクロスバーを叩く一撃を、さらに13分にもゴールを狙い、得点への意欲を見せました。

その後は、両ボランチが前線に積極的に顔を出し、厚みのある攻撃で韓国を圧倒します。15分には十分ヒットしきれなかったものの、横山がチョ・ソヒョンをかわして上げたクロスに川村が飛び込み、39分には近賀ゆかり、宮間、川村で崩して、最後は上尾野辺がミドルシュートを放ち、キム・ドヨンに当たってCKを獲得しました。このCKは川村が頭で合わせ、ボールは惜しくも枠の外に飛んでいきました。

守備面では自陣でのミスから数回ピンチを招きかけたものの、大事には至らず、スコアレスとはいえ主導権を握った状態で折り返しました。

後半に入ってからはしばらく膠着状態が続き、後半14分に上尾野辺に代えて岩渕真奈がピッチに送り込まれます。ここで岩渕は最前線に入り、宮間がボランチの位置に下がります。前半、1.5列目でのプレーでやや窮屈そうだったキャプテンは、低い位置からタクトを振るうことになりました。

そんな中、24分に思わぬ形で最大のピンチが到来しました。代わって入ったばかりのチョン・ガウルの右サイドからのクロスに対し、チョン・ソルビンと近賀が競り合い、もつれて倒れた近賀の手にボールが当たってしまい、これがハンドの判定となりました。ペナルティスポットを指差したアンナマリエ・キーリー主審のジャッジは、なでしこにとって非常に酷なものでした。

しかし、チ・ソヨンのPKを福元美穂がファインセーブ。さらにこぼれ球に詰めてきたチョン・ソルビンよりも速くボールに反応してクリアします。守護神のビッグプレーで日本は息を吹き返します。

39分、中島依美がルーズボールを拾い、宮間が前線に力強く蹴り込むと、大儀見優季が安定したポストプレーで落とし、川澄奈穂美へ。川澄がすばやくアーリークロスを入れると、ボールはファーサイドに流れ、落下点に立っていた岩渕が頭で合わせて先制しました。残り10分を切った中での貴重なゴールでした。

ところがその3分後、チャン・スルギのクロスを福元がジャンプしてキャッチするも、熊谷紗希の肩にボールが当たってこぼれてしまいます。このこぼれ球に反応したチョン・ソルビンが体をひねって蹴り込み、同点に追い付かれてしまいました。ゴールラインには有吉佐織がカバーに入っていましたが、防ぎきれませんでした。

オーストラリアの攻撃を参考にしたと思しき韓国は、前半から再三狙っていた右サイドのクロスからゴールを奪うことに成功。日本はここまでペナルティエリア内でも人数をかけて粘り強く守っていただけに痛すぎる失点となりました。

何としてでも勝ち点3の欲しいなでしこジャパンは、懸命に韓国ゴールに迫っていきます。43分には中島のクロスに川村がヘッド、47分には宮間からのやさしいパスを受けた岩渕がシュートを打とうとしますが、ヒットしきれずキム・ジョンミにキャッチされます。

結果、1対1のドローに終わり、日本は勝ち点2を失ってしまいました。なでしこは攻守にわたって粘り強さ、勝負強さといった底力を見せたものの、終盤の大事な時間帯に失点を喫してしまいました。リオへの道はより一層険しいものとなってしまい、人事を尽くして天命を待つしかない状況に追い込まれました。


キックオフからしばらくは、シュートに持ち込まれることはほとんどなかったものの、オーストラリアに中央でプレスを簡単にかいくぐられて突かれてしまう嫌な展開でした。

前半16分に川澄奈穂美がシュートを打ち、日本はここから少しずつペースを取り戻します。21分には鮫島彩がクレア・ポルキホーンをかわして突破。フリーの阪口夢穂に低いクロスを入れると、阪口は相手が寄せきる前にシュートを放ちました。ここはリディア・ウィリアムズに防がれますが、いい形ができました。

こうして流れをつかんだかに見えた最中、日本は先制を許してしまいました。25分、なでしこらしいシュートブロックをした後、大野忍のヘディングでのクリアをポルキホーンに拾われ、ボールはカトリーナ・ゴリーに渡ります。ゴリーがすばやくクロスを上げると、中央にいたリサ・デ・バナが頭で合わせてゴールネットを揺さぶりました。

早い段階で追い付いておきたいところでしたが、攻撃はやや停滞気味になりました。すると佐々木則夫監督は早くも40分に大野を下げて、横山久美を送り込みます。 

さてここから、という状況になった中、思わぬアクシデントが起こります。阪口の中島依美へのパスがカリナ・ビトゥラノ主審に当たり、オーストラリアのカウンターが発動することになってしまったのです。ボールを持ったデ・バナはダイアゴナルに走ってきたミッチェル・ヘイマンにスルーパスを出し、ヘイマンは山根恵里奈をかわしてフィニッシュ。難なく2点目を奪ってしまいました。

それでも47分に反撃ののろしを上げます。中島がファーサイドの川澄にパスを送り、川澄は前を走る有吉佐織にボールを供給。有吉は冷静にマイナスのクロスを入れ、阪口がそれに合わせてシュート。最後は大儀見優季がコースを変えて1点を返します。

後半は勢いを持って日本が果敢にゴールを狙っていきます。後半4分には阪口、12分、13分には中島、そして17分には宮間あやがシュートを放ちました。

しかしこれ以降はシュートまで行けない展開が続き、逆に33分に痛恨のゴールを喫します。エミリー・バン・エグモンドがターンして中島をいなすと、ファーサイドにクロスを上げます。そこには川澄のマークを外してフリーになったゴリーがいました。そのヘディングはポストを叩いてゴールに吸い込まれます。

追い込まれたなでしこは、鮫島と川澄を下げて、岩渕真奈、川村優理を同時にピッチに送り込み、2点を奪いにいきました。しかしオーストラリアの集中した守備は最後まで切れず、日本はペナルティエリア内でなかなかシュートを打たせてもらえないまま、1対3で初戦を落としてしまいました。

6チーム中上位2チームにしかリオ五輪への切符がないという厳しい予選では、ダメージの大きい1敗です。また、単なる負けではなく、得点シーン以外ではなでしこらしい形がほとんどつくれなかった90分だっただけに、今後に不安の残る試合となりました。


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