22インチのフットボール

備忘録を兼ねて試合を振り返ります

2016年01月

リオ五輪出場を賭けた一戦は、シュートこそなかなか生まれないものの緊張感の高い入りとなりました。イラクは日本の最終ラインの背後を狙って攻め、日本は久保裕也、南野拓実が前線で積極的に仕掛けていきました。

そんな中で先制したのは日本でした。前半26分、自陣でアムジェド・アットワン・カディムのパスを遠藤航がカットし、そのボールを中島翔哉が前方へパス。そこにいた鈴木武蔵がファーストタッチでスアド・ナティク・ナジを置きざりにして突き進み、ディフェンスとGKの間を狙ったクロスを送ると、そこに詰めていた久保が押し込んでネットを揺らしました。

1点ビハインドとなったイラクは途端に前掛かりになりますが、日本は全員が落ち着いて冷静に対処し、チャンスと見るや中島、南野と2トップがうまく絡んでリズムよくゴールに迫りました。

しかし43分、CKから失点を喫してしまいました。アムジェド・ワリード・フセインのキックを鈴木武蔵がクリアするも、ボールはゴールに向かって飛んでいき、櫛引政敏がかき出します。それをナティクが粘り強く頭で押し込んだため、日本は同点に追い付かれてしまいました。

勢いに乗ったイラクは後半に入っても、鋭い攻撃で日本を押し込みます。後半5分にはアリ・ヒスニ・ファイサルがディフェンスを引き付けてパスを出し、アットワンのミドルが櫛引を襲いました。このようにしばらくの間、日本は我慢の時間帯が続きました。

苦しい中での攻撃は、カウンターに活路を見出したいところですが、なかなかうまく形をつくれず、勢いを取り戻すのに苦労していました。サイドからのクロスまでは行くものの、フィニッシュまで行けない場面が何度かありました。

そこで手倉森誠監督は、鈴木、久保の2トップに代えてオナイウ阿道、浅野拓磨をピッチに送り出し、前線の活性化を図ります。ただ、それでも決定機をつくれないまま時間が流れていきます。

どちらにも2点目が生まれず、延長突入が濃厚になってきた48分、日本にとって値千金のゴールが生まれます。相手陣内深いところで競り合いのこぼれ球を浅野が拾い、南野に預けると、南野はキープしてクロスを上げます。ボールはファハド・タリブ・ラヒームがパンチで逃れるも、落下地点にいたのはフリーの原川でした。原川は左足を振り抜き、試合を決めるゴールを奪いました。

試合はこのままタイムアップを迎え、日本は極めて厳しい戦いを勝ち抜くことに成功しました。週末は韓国とのアジアNo.1の座を賭けた決勝に臨みます。


前後半90分を通じて、試合をやや優位に進めていたのはイランの方でした。攻撃ではあまり時間をかけることなくシンプルに繋ぎ、最後は最前線のアルサラン・モタハリが日本ゴールに襲い掛かります。成功こそしなかったものの、カウンターもたびたび仕掛けてきました。

チャンスの数はイランが多く、後半12分にはアリ・アブドラザデのクロスをファーサイドにいたミラド・モハンマディが頭で合わせ、クロスバーを叩く場面がありました。

ディフェンスにおいては中盤でのつぶしが速く、遠藤航を軸にしたテンポのいいボール回しを許してもらえません。結果、攻めあぐねた日本は最終ラインから大きく蹴り出すだけというシーンも目立ち、なかなか決定機をつくることができずに時間が流れていきました。

膠着した状態が続き、試合は延長戦にもつれこみました。そこでようやく遠藤が攻撃に絡みだすようになり、攻撃にリズムが出てきます。

延長前半6分、遠藤から原川力、室屋成と渡り、室屋が左足で完璧なクロスを上げると、それに対して途中出場の豊川雄太が頭で合わせて先制します。 この試合でほとんど初めてと言っていい絶好機をものにしました。

あとがなくなり追いかける立場となったイランは、果敢にペナルティエリアに進入してきます。17分には中央を崩してセイド・モフセン・カリミがシュートを放ちますが、櫛引政敏が身を挺して防ぎました。

再び苦しくなった日本を救ったのは、中島翔哉でした。延長後半4分、5分と立て続けにペナルティエリアの角付近からシュートを放って決めました。どちらも思い切りのいいすばらしいゴールでした。

当然、前掛かりになるイランに対し、日本は浅野拓磨を生かす狙いもあって、最終ラインの背後を狙って攻め続けていきます。4点目は奪えなかったものの、相手の勢いと体力を奪うには十分効果的な攻めでした。

これでリオ五輪出場にまた一歩近づくことができ、6大会連続出場に向けて、チームに勢いのつく一勝となりました。


ガンバは悪くない入り方ができました。前半4分、宇佐美貴史が左サイドで浦和の選手達を引き付けて中央に送り、パトリックが右足を合わせると、西川周作がそれをブロック。ボールはクロスバーを直撃しました。

その後、米倉恒貴が負傷離脱で井手口陽介を投入せざるを得ないアクシデントに見舞われ、浦和がボールキープする時間が続くものの、そんな中で遠藤保仁は常に裏を狙って縦パスを供給していきます。

25分には遠藤のロングパスがペナルティエリアに進入していた宇佐美に渡り、一旦はゴール付近から離れましたが、そのパスを受けた藤春廣輝がクロス。パトリックが頭で合わせるチャンスが生まれました。

そして32分、阿部浩之が宇賀神友弥からボールを奪うと、すぐ近くにいた倉田秋が前方へ蹴り出します。その先にいたパトリックがドリブルで持ち上がると、並走してきた森脇良太を振り切り、先制点を奪いました。

これで勢いづくかに思われましたが、浦和は直後に同点に追い付きます。36分、梅崎司が右サイドからクロスを上げ、丹羽大輝の寄せに怯まなかった李忠成が飛び込むもボールはポストを叩きます。しかしそこに詰めていた興梠慎三が蹴り込み、クロスバーに当たってゴールに入りました。

浦和はさらにアディショナルタイムにピッチを広く使って二度のチャンスを迎えましたが、得点には至らず、1対1で折り返します。

すると後半8分、遠藤が誰もいなかったペナルティスポットを狙ってCKを蹴り、そこへファーサイドから回り込んできたパトリックが走り込んでダイレクトでシュート。浦和の虚を突いた勝ち越し点でした。

ミハイロ・ペトロヴィッチ監督は、12分に関根貴大、ズラタン・リュビヤンキッチ、24分には高木俊幸をピッチに送り込み、中央での見とれるような鮮やかな崩しよりもサイドでの仕掛けを優先させ、攻撃を活性化させようとします。

25分、高木が阿部浩之と今野泰幸につかれながらクロスを入れ、ズラタンが胸で落とし、最後は興梠がターンしてシュートを放ち、早速、形をつくります。

29分には浦和にビッグチャンスが到来します。高木が中央に入って浮き球のパスを入れ、李が頭で繋ぐと、丹羽とズラタンが競り合いボールがこぼれます。それを槙野智章が狙いますが、東口順昭がすばやく寄せてブロック。こぼれ球も東口がキャッチして押さえます。

以降も浦和は関根が果敢に仕掛け、森脇も積極的に攻撃に関与して攻勢を強めます。46分には高木が遠藤、阿部浩之を振り切って放ったシュートにズラタンがコースを変えるため飛び込む場面がありました。

シュートチャンスが少なくなったガンバでしたが、47分、ルーズボールを阿部浩之が拾い、長沢駿がサイドに展開。左サイドでフリーだった遠藤がゴールを狙います。しかしボールは枠を外れていきました。

50分、李が頭で出したボールを金正也がまさかのクリアミス。それを槙野が見逃さずシュートを打つも、またしても東口が防いでタイムアップを迎えました。

終盤、押し込まれて防戦一方になる時間帯がありながら、東口を中心に守り切り、ガンバは見事に天皇杯連覇を果たしました。タイトルに手が届きそうで届かなかった苦しいシーズンを、最後は笑顔で終えることができました。


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