22インチのフットボール

備忘録を兼ねて試合を振り返ります

2015年12月

押し込まれながらの快勝 ――天皇杯準決勝 ガンバ大阪対サンフレッチェ広島

前半7分、じわじわとボールを回しながら広島陣内に入っていくと、パトリックがオフサイドラインから戻ってきたのを見逃さずに倉田秋がクロスを入れます。パトリックの落とした先には宇佐美貴史がおり、宇佐美は打ちやすい位置にボールを置いてからすばやい振りでシュートを放ちます。千葉和彦の股の間を抜けたボールはゴールネットに到達しました。

9分にもパトリック、倉田、宇佐美でシュートまで持っていくなど、やや飛ばし気味で入った広島を押し返します。

前半のガンバは守備が安定していて、広島得意のサイド攻撃をほとんどやらせませんでした。また、パトリックも浅野拓磨を抑えるなどして大きく貢献します。

広島がチャンスらしいチャンスをつくったのは、42分のシーンくらいです。この時は佐藤寿人が米倉恒貴に倒されながらパスを出すと、それを受けた青山敏弘がミドルシュートを打ちました。ボールはゴールのわずか左に外れていきます。

いい状態で折り返したはずのガンバでしたが、後半になると状況は一変します。1点を取りに来た広島が攻撃への意欲を高めると中盤にスペースが生まれ、特に右サイドのミハエル・ミキッチが躍動し始めたのです。

後半2分、ミキッチがペナルティエリア内に進入してクロスを上げると、丹羽大輝と佐藤に当たり、東口順昭がキャッチ。12分には千葉のセンターサークルからのスルーパスを佐藤がキープ。それを受けたミキッチが中央に持ち込んでシュート。これは東口が右手を伸ばして防ぎます。

さらに森保一監督が皆川佑介、柏好文を送り出し、攻勢を強めにいきます。

22分には浅野、皆川、茶島雄介と繋がり、茶島はファーストタッチで丹羽をかわすと東口と1対1の状況になります。 ここで冷静だったのは東口でした。茶島が逡巡する中、落ち着いてそのシュートをセーブしました。

東口が好守で奮闘していると、今度は攻撃陣がそれに応えます。29分、柏から宮原和也へのパスを倉田がカットしてカウンターを発動。倉田は青山のタックルをかわし、宮原の執拗な追い込みにも粘り勝って長沢駿へパスを送ります。長沢がワンタッチで落とした先にいた宇佐美が、水本裕貴が寄せる中、体勢を崩しながらもフィニッシュ。際どいコースに決めていきました。

点差が2点に広がった広島は39分に宮原のクロスで、41分には茶島の落としで浅野にボールを集めますが、決定機には至らず時間が刻々と流れていきます。

すると46分、倉田の浮き球のパスを受けた長沢が宮原に競り勝ち、千葉をかわして抜け出すと、林卓人と1対1になり、落ち着いてだめ押し弾を決めました。前線で体を張り、ハードワークをいとわなかったストライカーが、試合を決定づけるゴールを奪ったのです。

特に後半は広島に押し込まれる展開が続きましたが、終わってみればチャンピオンシップ決勝で苦しめられた相手に対して3対0の快勝となりました。劣勢の中で決定力を見せた宇佐美もさすがでしたし、全得点に絡んだ倉田の奮闘も光っていました。


女王の歓喜 ――皇后杯決勝 アルビレックス新潟レディース対INAC神戸

序盤、前から圧倒してくる新潟に対し、INACは大野忍、高瀬愛実、中島依美が最終ラインの背後を狙って走り続け、そこを狙った攻撃を仕掛けていきました。

前半15分あたりからは、いつものポゼッションを高めるサッカーができるようになり、22分には大野の縦へのボールを高瀬が落とし、澤穂希、中島と繋いで、最後は高瀬がシュートを放ちます。また、30分には田中明日菜のロングパスを鮮やかなトラップで受けた鮫島彩が、カットインしてシュート。いずれも福村香奈絵がキャッチします。

44分にはさらなるビッグチャンスがINACに訪れます。川澄奈穂美のクロスに対して大野がしゃがんでスルー。流れたボールを中島が合わせましたが、またしても福村に阻まれ、こぼれ球も中村楓のカバーによって阻止されました。崩しにかかるINACに対して、新潟が体を張った守備をするという試合展開を象徴するような場面でした。

エンドが変わると後半3分、4分と立て続けに川澄のCKが澤に合います。準決勝は黒子に徹して、相手の攻撃の芽を潰す役割をまっとうしていた澤でしたが、この試合はセットプレーに限らず積極的に攻撃に絡んでいました。

32分、途中投入の増矢理花が粘って中村からボールを奪って持ち込み、大野にクロスを入れます。大野はトラップして落ち着いてシュートを打とうとするも、左山桃子がスライディングで阻みました。

ここで得たCKで決勝点が生まれます。川澄の完璧なキックに飛び込んだのは、ファーサイドから中央へポジションを移した澤でした。後半、再三狙っていたセットプレーの形が試合終盤の大事なところで実を結びます。

一方の新潟は前半24分の左山のクロスに小島美玖が飛び込んだシーン、そして後半45分の渡辺彩香のクロスを大石沙弥香がスルーして、フリーの上尾野辺めぐみがシュートを放ったシーンくらいしか決定機をつくれず、1点が遠い90分でした。準決勝で120分を戦った影響があったかもしれません。

結果、INACはなでしこリーグのエキサイティングシリーズで敗れたベガルタ仙台レディース、新潟を破り、皇后杯では女王の座に返り咲きました。歓喜をもたらしたのは、2011年FIFA女子年間最優秀選手の澤でした。期待はしていても実現は難しいようなことを現実化した、すばらしいフィナーレとなりました。


復活 ――天皇杯準々決勝 ガンバ大阪対サガン鳥栖

立ち上がりは鳥栖が両サイドの吉田豊、白星東を使いつつ、縦に速い攻撃を仕掛けていきました。ガンバはそれをしばらく耐える形で試合は進んでいきます。

流れが変わったのは前半19分に米倉恒貴がCKを獲得したあたりからでした。24分には宇佐美貴史のパスを受けた遠藤保仁が倉田秋とのワンツーを決めてシュートまでいく場面も生まれました。

ガンバが攻め込むことによって、鳥栖のディフェンスラインが下がりだした26分、倉田がハーフウェイラインからロングパスを送ると、宇佐美が右足トラップから早いタイミングで左足を合わせて先制します。

ゴールを決めたことで宇佐美のプレーにキレが戻ってくると、今度は最前線のパトリックにボールが収まるようになりました。29分、38分とポストプレーを成功させ、それぞれ宇佐美、倉田がシュートを放ちました。

後半に入ると鳥栖が再び前に出てくるようになりますが、1点をリードしているガンバはカウンターで応戦します。後半3分、6分、12分と三度にわたり仕掛けるも、シュートには至りませんでした。

すると17分、白星東のサイドチェンジに対し、吉田がダイレクトで折り返します。それを東口順昭がキャッチし損ね、後方に抜けたボールを早坂良太が押し込んで、鳥栖が同点に追い付きました。再三あったカウンターのチャンスを生かせず失点を喫するという嫌な流れになりました。

勢いの出てきた鳥栖は、水沼宏太を中心にして両サイドから押し込むようになりました。31分には途中出場の鎌田大地のシュートが惜しくもサイドネットを揺らしました。

そんな中、思わぬ形で試合が中断します。ガンバサイドのゴールネットがクロスバーから外れてしまったのです。スタッフによる応急処置には時間を要し、テープが10箇所以上巻かれる事態になりました。

再開して3分後、得点を奪ったのはガンバでした。右サイドで倉田がスピードを一気に上げてドリブルを仕掛け前方へパス。これを長沢駿がやさしく落とし、最後は宇佐美が左足を振り抜きました。

さらにその1分後、菊地直哉が長沢への対応を誤り、バックパスを緩く出したところを狙われ、ガンバのリードは2点に広がります。

一発勝負で後がない鳥栖の森下仁志監督は、小林久晃、藤田直之を同時投入するも奏功せず、点差を詰めることはできませんでした。

中断時間を含めて56分続いた後半はこのまま終わり、一度は追い付かれたガンバが準決勝に駒を進めました。何より大きかったのは、2得点を挙げたエース宇佐美の復活です。この勢いでサンフレッチェ広島とのリベンジマッチに臨むこととなります。


辛抱強く手繰り寄せた勝利 ――皇后杯準決勝 日テレ・ベレーザ対アルビレックス新潟レディース

準決勝第2試合は、北原佳奈、中村楓を中心に最後の最後まで耐え抜いた新潟が、ベレーザを退けて決勝行きのチケットを獲得しました。

耐えたといっても決して守ってばかりではなく、たびたびチャンスをつくっていました。前半5分には阪口夢穂のパスを山田頌子がカットして右サイドに展開。再び山田に戻るとクロスを上げ、これが村松智子に当たってこぼれると、山崎円美が頭で繋ぎ、最後は大石沙弥香がトラップしてシュートを放ちました。

そして6分後の11分、上尾野辺めぐみのFKから先制します。ファーサイドで左山桃子と田中美南が競ったあとのボールがさらに外にいた岩清水梓に当たり、それに反応した大石が押し込んで決めました。

以降の新潟は、豊富な運動量で人数をかけてしぶとくパスコースを消し、簡単にはベレーザに攻め込ませない守備を徹底して行いました。

しかし34分、上辻佑実のFKを岩清水が頭で落として中里優が頭で繋ぐと、田中がトラップしたボールに対して中里が寄せてきて豪快に同点弾を叩き込みました。岩清水の頭が今度は得点に結び付きました。

これで勢いづいたリーグ王者は、阪口夢穂も上がりを見せるなど、前に圧力をかけてきました。新潟はかなり押し込まれてしまい、最終ラインで何とか凌ぐ形になりました。

さらに攻勢に出たいベレーザは、後半開始時に清水梨紗を下げて左サイドハーフに長谷川唯を投入。上辻を左から右に移して、中里を右SBにコンバートしました。

ロングボールを織り交ぜながら、中盤でボールを収めて攻める相手に対し、新潟は両サイドのMFを含め、ラインが必然的に低くなりました。パスも苦し紛れになりがちで、しばらくは我慢の時間が続きます。

後半の終盤になって、ようやく攻めの形ができてきます。後半34分、大石が狙いを定めて原菜摘子からボールを奪って山崎に渡し、山崎は右を走る上尾野辺にラストパスを供給。打ちやすい位置にボールを動かして狙った上尾野辺のシュートはやや力なく、山下杏也加にキャッチされます。

さらに43分、ゴール前のこぼれ球を山崎がスライディングで上尾野辺に預け、上尾野辺がコースを狙ったシュートを放ちます。これも山下に止められてしまいました。

試合は1対1のまま動かず、延長に突入しますが、互いに決定機をほとんどつくれないまま30分が経過。勝者を決めるためにPK戦で決着をつけることになりました。

新潟はここまでチームを牽引してきた二人目の北原、三人目の上尾野辺が失敗するも、若き守護神、福村香奈絵が三本ストップ。見事なセービングで最後までディフェンスの粘り強さを見せ、4日後の決勝進出を果たしました。


一致団結 ――皇后杯準決勝 ベガルタ仙台レディース対INAC神戸

立ち上がりにペースを握っていたのは仙台でした。川村優理を含め、前から積極果敢にプレスをかけていくなど、全体のプレースピード、強さは確実にINACを上回っていました。

20分には川村が大野忍からボールを奪って繋ぎ、嘉数飛鳥がファーサイドにクロスを上げて、中野真奈美がトラップしてゴールを狙いました。両サイドの選手が絡んでのプレーでしたが、甲斐潤子がブロックします。

スペースを与えてもらえず、思うようにボールを保持できなかったINACは、最終ラインの背後を突いた攻撃を仕掛けていきます。26分には川澄奈穂美が自陣から縦パスを出すと、抜け出した大野が高瀬愛実に預け、高瀬がシュートを打ちます。ここは坂井優紀が絞って対応しました。

こうした背後を狙ったサッカーが奏功し、30分あたりからわずかではありましたがスペースができ始め、INACのパスが回るようになりました。川村のミドルシュートを海堀あゆみが防いだ3分後には、大野が中盤で粘ってボールを奪い、澤穂希がサイドに展開。それを受けた川澄が後方から猛然と上がってきた近賀ゆかりにパスを送り、そのクロスを川村が阻止する場面がありました。

これで得たCKで、高瀬が有町紗央里と競って流れたボールを大野が押し込んでINACが先制します。ペースを握り返した中できっちりと得点に結び付けました。

後半に入ると右足のテーピングが痛々しい鮫島彩がオーバーラップを見せ、より一層前への圧力をかけていきます。後半4分には高い位置でのプレスがはまり、高瀬がブリトニー・キャメロンのパスミスを拾うと、マイナスのラストパスを供給。大野がスルーして伊藤美紀がシュートを打ちました。

INACに躍動感が出てくる一方、仙台は明らかに動きが落ちてきました。やはり準々決勝で110分プラスPK戦を戦った影響が出てきたのかもしれません。

すると16分、自陣から左サイドを使いつつ11本のパスを回し続け、伊藤美紀のボールを受けた川澄が井手上麻子の背後にパスを通すと、近賀がマイナスのクロスを入れ、最後は中島依美がフィニッシュ。山本りさが体を投げ出しましたが及びませんでした。

点差が2点に広がり、千葉泰伸監督は20分からの10分間に三枚の交代カードを切ります。しかし川村からのダイナミックな展開もほとんど見られないなど、全体の運動量が再び活性化するには至らず、逆に勢いを増したINACのプレスが効くようになりました。

48分には澤のカットから川澄がドリブルで持ち込んで相手を引き付けてパスを送り、途中出場の増矢理花がポストをかすめるシュートを放ちました。こうして最後まで攻撃の手を緩めなかったINACが決勝進出を果たします。今大会での現役引退を表明している澤のために、チームが一致団結しているという印象を抱かせた90分でした。


ギャラリー
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