22インチのフットボール

備忘録を兼ねて試合を振り返ります

2015年11月

立ち上がりの日本は、人工芝でのボールの転がり方を確かめるように後方でパスを回していました。やがて後方から前線に浮き球のパスを送るようになり、攻めだします。

しかし、多い時では8人のフィールドプレーヤーがペナルティエリアの中に入って守備を固めるカンボジアをなかなか攻略できません。ゴール前で泥臭くゴールを狙う岡崎慎司をめがけてしきりにクロスを上げるも、ことごとく阻止されてしまいます。また中央では細かなパスで崩したい日本の前線の選手達が、人工芝に適応するのに苦労していました。

すると前半22分、この日最大のピンチが訪れました。相手陣内にボールを運んだ槙野智章のパスがクチ・ソクンペアクに渡り、カウンターを仕掛けられたのです。ソクンペアクはすかさず前線のクオン・ラボラビーに預けると、背番号9はスピードに乗ったドリブルで突き進み、シュートを放ちます。幸い、ボールは枠の外に飛んでいきました。

30分には槙野がラボラビーをペナルティエリア手前で倒してFKを与えました。ケオ・ソクペンのキックは吉田麻也がクリアして逃れます。いずれにしても、埼玉スタジアムでは個々の存在感がほとんどなかったカンボジアの選手達が、ホームでは守備に追われながらも躍動していました。

日本が決定機をつくったのは46分を迎えてからで、香川真司の中央からの斜めのパスに走り込んだ藤春廣輝がダイレクトで合わせました。しかしボールはゴールポストに嫌われてしまいます。

流れの悪い日本は遠藤航を下げて、シンガポール戦で活躍した柏木陽介を投入します。技術の高い柏木は人工芝にすぐさまアジャストして、プレッシャーの緩い中盤下がり目の位置から効果的なパスを供給し続けました。

まずは後半1分、左足から繰り出されたやわらかい縦パスを岡崎が落とすと、そこに走り込んだ香川に対してネン・ソテアロットがファウルを犯し、PKを獲得します。岡崎のPKはウム・セレイラスに止められてしまい、先制のチャンスを逸しました。セレイラスの顔からは笑みがこぼれていました。

6分にはFKで先制点に結び付けます。右サイドから上げたボールが岡崎と競り合ったラボラビーの頭に当たり、カンボジアゴールに突き刺さりました。柏木はしてやったりの表情で高々と拳を上げました。

先制して優位に立った日本はシュートまでの形をつくれるようになりました。たとえば14分には原口元気が右サイドから左サイドへとピッチを横断してクロス。この日は右SBだった長友佑都がファーサイドで頭を合わせるも、セレイラスがセーブします。

そして17分、本田圭佑が宇佐美貴史に代わってピッチに登場。本田は積極的にゴール前で絡んでシュートを放ち、追加点を狙いにいきます。

それが実ったのは交代してから30分近く経った45分でした。長友のサイドチェンジが原口に渡ると、その左を駆け上がってきた藤春にパスを出します。藤春はラインぎりぎりのところで追い付きクロスを上げると、カンボジアディフェンスの間に入った本田がヘディングでフィニッシュ。勝利を決定づけるゴールを奪いました。

危ない場面もありながらも終わってみれば2対0と順当な結果に終わり、シンガポールに2対1で勝ったシリアとの勝ち点差1をキープ。グループ首位で年内の試合を締めました。ただ、試合直後のヴァイッド・ハリルホジッチ監督は浮かない表情でベンチに座っていました。柔軟な試合のコントロールや選手層に厚みを出すことなども含め、まだまだ改善の余地はありそうです。


負傷などによる欠場者はいたものの、両チームともほぼベストメンバーで迎えた注目の一戦。序盤はガンバの労を惜しまぬ集中したディフェンスがはまり、チャンスをつくりだします。

前半7分には中野嘉大のパスを西野貴治が自陣でクリア。このボールを倉田秋が拾い、ドリブルでカウンターを仕掛けます。ここは武岡優斗に進路をふさがれますが、近くにいた阿部浩之に預けると、阿部は逆サイドを上がってきた大森晃太郎にパスを供給します。最後は大森のパスを受けたパトリックがシュートを放ちました。

一方の川崎は得意のパスでリズムがつくれず、しばしば大きく蹴り出すというらしくない場面も見られました。25分に大島僚太がミドルシュートを放ち、ようやくスイッチが入ります。

また、このあたりからガンバの守備の勢いが落ち始め、中盤が空き、川崎が主導権を握るようになります。

40分、大島からのボールをペナルティエリア内で受けた杉本健勇がヒールで流すと、ボールの行き先に走った中野が折り返します。しかし、ファーサイドで待ち構えていた大久保嘉人には合わずゴールには至りません。 

川崎優勢のまま折り返すかに思われた47分、前半最後のプレーでガンバが先制点を奪います。中盤で倉田からのボールを受けたパトリックがドリブルで右サイドに流れると、谷口彰悟のタックルが間に合う前にクロスを上げます。これを大森が合わせて決めました。

ハーフタイム直後、風間八宏監督は田坂祐介をピッチに送り出し、中野を主戦場の左サイドに移します。田坂は後半4分にシュートを打ち、7分には杉本へのクロスを供給するなど期待に応える働きを見せていました。

勢いの出てきた川崎が前線に重きを置き始めた8分、エウシーニョのパスを丹羽大輝がカットしてガンバのカウンターが始まります。丹羽、阿部、倉田と繋がり、倉田は自陣のセンターサークル付近から独走。前半の時とは違い、今度は追いかけてくる武岡の前を走り続け、車屋紳太郎が寄せてくる中でシュートを決めました。

追い込まれた川崎は、中村憲剛、大島、田坂を中心に攻めますが、ゴール前を固めてパスコースを狭めるガンバの守備網を崩せません。次第に大久保がいらだったようなしぐさを見せだします。

31分、より攻撃的にしようと、風間監督はボランチの位置に橋本晃司を入れ、中村をトップ下に上げます。それでも交代は奏功せず、決定機をつくれぬまま試合は終わってしまいました。

ガンバは川崎の攻撃を最後まで封じ込め、危なげなく勝利を収めました。タイトな日程の中、疲労が隠せなかった1ヵ月前の対戦のリベンジを果たしました。

 

時折サイドチェンジを織り交ぜつつ、リズムよくショートパスを多用して崩しにいく柏と、5-4-1の守備網を敷き、足を止めずに守り続ける甲府という構造になったこの試合。地道に攻めるも甲府攻略に手こずった柏でしたが、前半はセットプレーで決定機をつくります。

前半4分、クリスティアーノの強烈なFKが河田晃兵を襲い、40分には秋野央樹のCKにエドゥアルドが体を当て、あと一歩でゴールという場面をつくりました。

一方、甲府は伊東純也のドリブルに活路を見出そうとしますが、決定機には至りません。互いにゴールを奪えず、スコアレスで前半を折り返しました。

試合が動いたのは後半8分でした。自陣から粘り強くボールをキープし、チャンスをうかがっていた柏。しばらくして秋野が鋭い縦パスを出してスイッチを入れると、それを受けたクリスティアーノが大谷秀和とワンツー。クリスティアーノのリターンパスは甲府ディフェンスの背後を狙った浮き球のボールで、大谷が抜け出しに成功します。最後は大谷のやさしいパスをフリーの工藤壮人が押し込んで先制しました。柏のよさが存分に出た1点でした。

当然、甲府は反撃に出ます。12分、伊東が鈴木大輔に倒されて得たFKを橋爪勇樹が打ち、あとわずかでゴールという際どいボールになりました。さらに20分、新井涼平の縦パスを受けた阿部拓馬がドリブルでうまく間合いをとりながらシュート。これは菅野孝憲が触って防ぎます。

ここでいい感触をつかんだ阿部拓馬は27分、柏の中盤と最終ラインの間でボールを受けるとドリブルをスタート。囲まれながらも秋野をかわしてすばらしいシュートをサイドネットに決めました。

その後はしばらく膠着状態が続きましたが、47分、鈴木が阿部拓馬に奪われたボールを取り返そうとして倒してしまい、2枚目のイエローをもらい退場処分となります。延長突入の可能性が高まっている中、柏は10人での戦いを強いられることになりました。

結局、後半アディショナルタイムではスコアは動かず、試合は延長に入りました。CBを一枚欠いた柏は中盤で途中出場した茨田陽生を鈴木のポジションに下げて対応します。

甲府が我慢の守備を続け、大きな動きのなかった延長前半を終えると、エンドの変わった後半は甲府が攻勢に出ます。7分には石原克哉と堀米勇輝のシュートが柏守備陣にブロックされるも、下田北斗がミドルシュートを放ちます。途中交代の選手達による波状攻撃でしたが、最後は菅野が正面でキャッチしました。

しかし勝利を手繰り寄せたのは柏でした。15分、クリスティアーノがドリブルで粘っていると、10分前に入ったばかりの右SB、今井智基が猛然と上がってきて、クリスティアーノのパスを受けるとダイレクトで返します。畑尾大翔が今井につられ、フリーになったクリスティアーノがフィニッシュ。劣勢の中で貴重な決勝点を奪いました。

延長までもつれた試合でしたが、これで柏はタイトル獲得の可能性を残すことができました。優勝、そしてAFCチャンピオンズリーグ出場へ希望を繋いだ勝利でした。


神戸は前半7分、8分と立て続けに自陣でのボールロストにより横浜に攻め込まれるという、立ち上がりとしてはあまりよろしくない展開でしたが、幸い失点にはつながりませんでした。

15分には天野純のクロスを徳重健太がセーブするも、アデミウソンにシュートを打たれます。ここは守備陣の懸命のディフェンスで乗り切り、岩波拓也が大きくクリアして逃れます。

思うように形がつくれない神戸の選手はストレスがたまってしまっていたのか、22分に渡邉千真が藤本淳吾に、26分には安田理大が天野にタックルをしてそれぞれ警告を受けてしまいます。 

31分には三門雄大のシュートがポストを強烈に叩き、失点は時間の問題かに思われたところ、ネルシーニョ監督が動きます。二枚のボランチのうち、前田凌佑を一列前に上げて4-1-4-1にシステムを変更したのです。

これが奏功し、35分には右サイドから崩し、ポジションを移した前田がターンしてシュートを浴びせます。飯倉大樹はキャッチしきれなかったものの防ぎました。その後はゲームをコントロールする森岡亮太のボールタッチが次第に増えていきました。

左右のMF、ペドロ・ジュニオールと石津大介のポジションを入れ替えた後半は、ボールが回るようになってきましたが、フィニッシュまで繋げていたのは横浜の方でした。後半6分にはカウンターから齋藤学がシュート、15分には天野のパスを受けたアデミウソンがダイレクトでシュートを放ちます。いずれも徳重が阻止しました。

するとエリク・モンバエルツ監督は18分に伊藤翔と中村俊輔を同時投入し、さらに流れが横浜に傾くかに思われました。ところが中村が前線であまりボールに絡めずにいると、神戸に待望の瞬間が訪れました。

30分、石津からのリターンパスを受けた森岡がドリブルをスタート。最後は中澤佑二をかわしてシュートを決め、先制します。ノエビアスタジアムのピッチ状態が思わしくなく、バウンドしたボールをうまくとらえた一撃でした。

得点が活力になった神戸は勢いを増し、シュートにこそ至らないものの、たびたび横浜のペナルティエリアに進入します。またボールへの寄せも厳しくなり、中盤で奪えるようになりました。

負ければ終わりのカップ戦ということで、横浜は右SBの小林祐三を下げて、前線に矢島卓郎を送り込みました。このメッセージを受け取った選手達は、前掛かりになり矢島にボールを集めます。44分には伊藤の落としを矢島がシュートし、ポストを叩きました。どうもこの日の横浜はゴールに嫌われていたようです。

最後は横浜陣内でボールキープした神戸が逃げ切り、流れの悪い時間帯が多かった中でベスト8入りを果たしました。準決勝進出を賭けた次の相手は、来週のリーグ最終戦で対戦する浦和レッズとなりました。


前半7分、武藤嘉紀のクロスに本田圭佑が飛び込むもイズワン・マフブトがセーブ。金崎夢生も詰めていましたがセーブによってボールのコースが変わって届きません。前回対戦同様、好調なイズワンがゴール前に立ちはだかり、またしても日本は苦労するのではないかと少しばかり不安を抱かせました。

それを打ち破ったのは金崎でした。20分、本田のクロスを武藤が頭で折り返すと、トラップしてハーフボレーを決めたのです。比較的早い段階でのゴールに金崎は喜びを爆発させ、ベンチへと走っていきました。

イズワンは引き続き、本田のFKをセーブするなどいいプレーを披露していましたが、フィールドプレーヤーは守備に回るとボールを見ずに後ろ向きに走るようになり、失点によって少なからずダメージを受けていたように映りました。

そんな状況の変化を見逃さず、日本は追加点を奪います。26分、酒井宏樹が相手陣内でボールを奪い、本田、長谷部誠、金崎、清武弘嗣と繋ぎ、清武の横パスを武藤が体を張って落とそうとし、こぼれたボールを本田がシュート。ボールは武藤について中央に絞っていた右SBのナズルル・ナザリに当たってコースが変わり、ネットを揺らしました。長谷部からの縦へのボールを交えた、鮮やかなパスワークからの得点でした。

これで安心した日本はゴールこそ奪えなくなりましたが、フィジカル勝負で圧倒し、中盤では幾度もボールを奪って攻め込みました。上々の45分でした。その中心になっていたのが、広範囲に動いてリズムをつくった柏木陽介や清武でした。

エンドが変わっても、長谷部のミドルシュートに始まり、本田や武藤、金崎がシュートを放って3点目を奪いにいきます。ただ、暑さの影響か、後半半ばあたりから前線の選手を中心に運動量が落ちてきました。

するとこの環境に慣れているホームのシンガポールがチャンスをつくります。後半20分、イズディン・シャフィクのFKをサフワン・バハルディンが、27分には右サイドからのクロスにハフィズが頭で合わせてゴールを脅かしました。いずれも枠をとらえることはできず、日本は難を逃れます。

ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は停滞ムードに手をこまねくことなく、後半目立たなくなってきた清武に代えて香川真司を、本田に代えて原口元気を送り込みます。

原口投入の4分後、ようやくとどめの1点が生まれました。柏木のCKを吉田麻也が頭で合わせるも、ゴールライン上でナズルルが阻止。これをサフワンがクリアしますが小さくなってしまい、途中出場の宇佐美貴史が迷わずシュートを放つと、その軌道にいた吉田に当たってコースが変わり、決まります。

終わってみれば3対0の無難な勝利でした。ただ、ここ最近の試合とは異なり、前半の出来がよかっただけに、コンディションの厳しさがあったにせよ停滞した後半の戦いぶりには課題が残りました。最終予選に向けては、90分を通じての安定したゲームマネジメントが求められます。

 

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