22インチのフットボール

備忘録を兼ねて試合を振り返ります

2015年11月

なでしこリーグで終盤失速したINAC神戸所属の常連組が多く外れ、リーグで好パフォーマンスを見せた非常連組が加わったオランダ戦でしたが、あまりいいところなく敗れてしまいました。

特に前半は人工芝と強烈な向かい風へのアジャストに苦しみ、阪口夢穂、宇津木瑠美らのパスミスが目立ちました。そして失点もミスからでした。

前半4分、宮間あやから宇津木へのパスがずれたところをビビアネ・ミーデマに拾われ、ダニエレ・ファン・デ・ドンクに繋がり、最後はリーケ・マルテンスが冷静にフィニッシュ。なでしこがリズムをつかめない中、最初のピンチで先制されてしまいました。

さらに21分、サリ・ファン・フェーネンダールのロングキックをマルテンスが倒れながら繋いだボールは、鮫島彩のもとに転がりましたがトラップミス。そこをマノン・メリスに奪われて、山根恵里奈の股の間を通すシュートを決められてしまいました。

そんな中、一人気を吐いていたのが大儀見優季でした。23分、シェリダ・スピツェのバックパスを狙い、27分にもファン・フェーネンダールにプレスをかけ、キックに反応してゴールを狙いました。また42分には宮間あやとのワンツーで抜け出し、体を投げ出してシュートを打ちました。ゴールこそ奪えませんでしたが、悪くない流れでした。

そして終盤、宮間のCKの流れから中島依美が、角度のないところから強烈なシュートを打つ場面が二度生まれました。しかし、いずれもファン・フェーネンダールにセーブされます。

エンド代わって追い風となった後半、有町紗央里、中島を下げて、菅澤優衣香、増矢理花がピッチに送り込まれます。それとともに鮫島を一列上げて、宇津木をボランチから左SBに下げ、宮間をボランチに配しました。

すると後半4分、増矢が高い位置でボールを拾って阪口に出し、懸命に体を張った菅澤とのワンツーを決めた阪口が反撃ののろしを上げるゴールを決めました。

このゴールでなでしこジャパンらしさが戻りだし、キープのできる大儀見が中盤に下りてパス回しに絡む場面も増えてきました。しかしオランダゴールに迫り、決定機をつくりだすまでには至らなかったこともあり、それも長くは続きません。さらに選手交代を続け、17分から30分にかけて杉田亜未、川村優理、山下杏也加、横山久美を投入しますが、劇的な変化は生まれませんでした。

膠着状態が続いていた33分、日本ゴール前でボールを繋がれていたところ、増矢がマルテンスを倒したとしてPKをとられます。これをメリスに豪快に決められ、1対3となりました。

その後の見せ場は終了間際の47分、阪口のロングフィードを菅澤が落とし、宮間がワンタッチでボールを配給。それを受けた大儀見がDFを振り切りながら左足を振り抜いたシーンでした。ここもファン・フェーネンダールに防がれます。

結局、点差を詰めることはできないままタイムアップを迎えました。主力と合流すると非常連組がなかなか活躍しきれないという、見慣れた光景が続いた試合となってしまいました。その意味では収穫はありませんでした。

ただ、これまでもフレンドリーマッチで思うような成果をあげられなくとも、大事な勝負どころでは強さを発揮するのがなでしこジャパンでした。リオ五輪出場を賭けた最終予選では、世界トップクラスの実力と、ピンチを防ぐ粘り強さを見せてくれると信じたいものです。


フィギュアスケートのNHK杯と同日開催だったのがそもそもよくなかったのか。いや、もしTBSテレビに地上波放映権があったとして、ナイトゲームになったのか――。ふとそんなことを考えてしまった14時3分、チャンピオンシップ準決勝が始まりました。

前半攻勢に出たのは浦和でした。ディフェンスも積極的で、セットプレーも数多く獲得しました。前半14分には柏木陽介のCKを東口順昭がパンチングで逃れたものの、こぼれ球を梅崎司がボレー。叩きつけられたボールを阿部勇樹が頭で合わせ、わずかにボール2つ分外れるというチャンスがありました。

ただ、カウンターがなかなかはまらなかったガンバは、チャンスの数では上回っていました。19分、阿部浩之のシュートがポストをかすり、39分には宇佐美貴史のスルーパスに遠藤保仁が反応。後者は西川周作が判断いい飛び出しで阻止しました。

すると後半2分、那須大亮から森脇良太へのパスを大森晃太郎がカット。中央でフリーの今野泰幸に預けると、今野はやや体勢を崩しながらフィニッシュ。槙野智章の必死のスライディングも及ばず、ガンバが先制しました。

ここから浦和が猛攻を仕掛け、宇賀神友弥や森脇がサイドからクロスをしきりに上げます。それらを凌ぐ間にアウェイチームには心理的な余裕が生まれたように感じられました。

しかし27分、宇佐美貴史に代わって倉田秋が投入された直後のCKで浦和が同点に追い付きます。柏木のCKに森脇が頭で合わせるとクロスバーをヒット。こぼれたボールにズラタン・リュビヤンキッチが頭で合わせてゴールネットを揺らしました。ただ、これを阻止しようとした東口を李忠成が妨害したようにも見え、東口も抗議をしていたようでしたが、ファウルにはなりませんでした。

アディショナルタイムには、浦和が二度のビッグチャンスを迎えるも、東口の好セーブによってガンバは乗り切ることができました。49分の武藤のシュートには、遠藤も守備に返って援護しました。

延長に突入すると、前半のうちに関根が足をつってしまいます。結果論になりますが、後半30分に切った最後のカードが宇賀神でなければ……という流れになりました。

延長後半にはさらに森脇も足をつります。残り10分になった段階で、この機を逃さずガンバが攻めます。延長開始とともに投入された井手口陽介がサイドチェンジのパスを出すと、右サイドにいた遠藤に渡り、遠藤がダイレクトでパスを出すと、米倉恒貴が抜け出してシュートを放ちます。2対1の局面で放った一撃は西川の正面でした。

延長後半12分、丹羽大輝がズラタンのプレスに慌てたのか、バックパスをミスしてあわやオウンゴールという場面になりました。幸いボールはポストに当たって難を逃れます。

一瞬焦ったであろう東口は、しかし冷静に前方のオ・ジェソクにすばやくボールを預けます。そしてそのボールを受けた遠藤が再びダイレクトでパトリックにパスを出しました。パトリックは米倉に渡すと、米倉はやわらかいボールをファーサイドに上げます。そこに上がってきた藤春廣輝がボレーシュートを決めました。大ピンチから1分後のできごとでした。

最後は遠藤がFKで間合いを取って時間を稼ぐと見せかけてパトリックにパスを出すと、ブラジル人ストライカーはそれを押し込み、決勝進出を決定づけました。

大事な一戦で勝利を手繰り寄せ、120分を戦い抜けたのは、準決勝まで進んだAFCチャンピオンズリーグを含め、やはりタフなシーズンを戦ってきたことが生きたのでしょう。試合の中では一時的な失速も見られたものの、選手達の運動量は終盤に来ても落ちませんでした。

次戦は中3日でのサンフレッチェ広島との頂上決戦。年間勝ち点差11をひっくり返すチャンスが巡ってきました。


最初の15分は完璧でした。前半2分の武藤雄樹のヒールシュートに始まり、9分の李忠成のスライディングシュート、13分には永田充のロングフィードを起点に宇賀神友弥、李、槙野智章と繋ぎ、柏木陽介が押し込んだすばらしい崩しからのフィニッシュに至るまで、攻守にわたって神戸を圧倒しました。

いきなり3点のビハインドを背負った神戸は、たまらず3バックの中央を務めていた北本久仁衛を下げ、ボランチの前田凌佑を投入。チョン・ウヨンを北本のいたポジションに下げたほどです。これで多少落ち着きを取り戻したアウェイチームは、徳重健太の好守もあって4点目を許しません。

すると26分、中盤で粘って武藤を振り切った石津大介が渡邉千真とのワンツーを決め、コースを狙ったミドルシュートを決めました。まだ点差があったため、石津の喜び方はとても控えめでした。

以降は決定機こそ生まれなかったものの、柏木が前後左右にボールを巧みに動かしてリズムをつくり、浦和が主導権を握った状態で前半を終えました。

ところが後半はハーフタイムで目を覚ました神戸が積極的に出ていきます。後半3分には、森岡亮太の丁寧なパスを受けた石津が槙野をかわして強烈なシュートを放ちます。ここは西川周作がセーブして難を逃れました。

その後しばらくは互いにサイドからのクロスに活路を見出そうとしますが、なかなかシュートには結びつかず、スコアは動きません。

動いたのは20分、森岡が永田からボールを奪取し、フリーになって難なくシュートを決めました。浦和にとっては序盤には想像だにしなかった状況に陥りました。

思わぬ形で1点差に詰め寄られると、ミハイロ・ペトロヴィッチ監督は武藤を下げて、青木拓矢を送り込み、柏木をシャドーの位置に上げました。ただ、30分に加賀健一が負傷離脱したため、その際に柏木は再びボランチに下がります。

32分、青木、柏木、そして加賀に代わって入った梅崎司で田中英雄を囲い込んでボールを奪い、李からのパスを受けた青木がフィニッシュ。再び2点差に突き放すゴールが生まれました。アクシデントもありましたが、指揮官の交代策がはまった形です。

とどめは39分。ズラタン・リュビヤンキッチが粘ってチョン・ウヨンと田中を振り切ると、柏木、李と渡り、最後は梅崎がボールを転がして勝利を確実にする1点を決めます。

一時は追い詰められかけましたが、交代出場した選手達がチームに大きく貢献し、結果的には5対2と完勝しました。次なる相手、ガンバ大阪とのチャンピオンシップ準決勝に向けて弾みのつく一勝となりました。


勝てば文句なしで自力でのチャンピオンシップ進出が可能なFC東京でしたが、モチベーションの低くない鳥栖の水沼宏太を中心とした攻撃と寄せの激しい守備に苦しめられました。

それでもどうにかこじあけようと攻め、前半9分、左サイドの深い位置でボールを受けた東慶悟がキム・ミンヒョクを切り返しでかわすとグラウンダーで中央にパスを出します。それを受けた前田遼一のシュートはクロスバーを越えていきます。

前田は河野広貴とともに前線からの守備でも貢献し、ファーストディフェンダーとしての役割もこなしていました。

23分、今度は高橋秀人が右サイドに散らし、上がってきた徳永悠平がクロスを上げます。ボールはファーサイドまで流れ、それを受けた河野がシュートを放つも、吉田豊に阻まれました。

なかなか先制できずにいた29分、鳥栖がカウンターを仕掛けます。中盤からの縦一本のパスで最終ラインを破られると、水沼がドリブルで突き進みます。太田宏介が追いかけ、味方が戻るだけの時間を稼ぐのに成功しましたが、最終的に早坂良太にシュートを打たれてしまいました。

その後、マッシモ・フィッカデンティ監督が4-3-1-2から4-2-3-1にシステム変更するも、なかなか効果が表れないまま前半を終えました。

後半は鳥栖のブロックの外でボールを回しながらチャンスをうかがい、サイドに散らして徳永、太田を生かし、攻撃を仕掛けていきました。ベンチからは中島翔哉、林容平が送り込まれ、さらなる活性化を促します。

しかし、林彰洋を脅かすほどの決定機をつくれぬまま時間は経過。チャンスと呼べるような機会が訪れたのは、後半27分になってからでした。

高橋の浮き球のパスが東に通り、東はトラップしてやわらかいクロスを送ります。ここに林が飛び込むもボールはゴールに向かって飛ばず、それを拾った前田も、エリア内にもかかわらず吉田を中心とした激しいディフェンスの前にシュートが打てません。これを凌いだ鳥栖は水沼と吉田がハイタッチを交わします。

終盤は東京のストロングポイントである太田からのクロスを多用しますが、流れの中からのクロスはことごとく跳ね返されてしまいます。一方、セットプレーでは森重真人の頭に合うものの、ゴールには至りません。

逆に39分、水沼の背後を狙ったパスに抜け出した鎌田大地が右足を振り抜くと、ボールがゴールポストを叩きました。両チームを通じて、この試合最大の決定機でした。

4分あったアディショナルタイムの最後は中島のパスが乱れ、クリアされたところでタイムアップ。スコアレスドローで終わりました。この結果により、モンテディオ山形を4対0で下したガンバ大阪に年間勝ち点で並ばれ、得失点の差で4位に転落。あと1点が遠く、最後の最後で頂を目指した戦いに挑む権利を失ってしまいました。

また、試合後のセレモニーではフィッカデンティ監督が、就任してからの「この2年」という言葉を多用。話の内容からは、別れの挨拶のように聞こえました。天皇杯は残っていますが、FC東京にとっては一つの時代が終わろうとしているようです。


立ち上がりは湘南が勢いよく攻めていました。前半4分には広島のCKを阻止してカウンターを発動。ドリブルで持ち上がった遠藤航のパスはミハエル・ミキッチにカットされましたが、湘南らしい形を見せました。

しかし、佐藤寿人もディフェンスに貢献するなどして、積極的な湘南の攻撃を凌ぐと、広島は最終ラインを中心にじっくりとボールを回しだします。決して慌てることなく、ゲームを落ち着かせにかかります。次第に清水航平とミキッチの両サイドを使えるようになり、そこからのクロスでチャンスをつくろうとします。

24分、その形が先制点に繋がります。湘南ディフェンスの背後を狙った塩谷司のロングパスがミキッチに通ると、ミキッチは菊池大介を切り返してかわし、マイナスのクロスを入れます。そこに走り込んだドウグラスが合わせてゴールを奪いました。

さらに1分後、中盤で柴崎晃誠がボールを奪い、左サイドを追い越してきた清水に預けます。清水は冷静にぽっかり空いた中央のスペースにボールを転がします。そこへ入ってきた青山敏弘がフリーの状態で右足を振り抜き、加点に成功しました。

その後は緩急をつけた攻撃と安定した守備で広島が優位に立ち、42分には長らく待ち望まれていた佐藤寿人のゴールが生まれました。佐藤は中盤でのパス回しに絡むとそこから一気に前線に上がり、清水のクロスに頭を合わせます。マークについていたアンドレ・バイアの視界からうまく消えてのフィニッシュでした。

これでJ1通算得点トップタイとなり、広島の選手達は佐藤を胴上げして称えました。歓喜のセレモニーが長引き、副審らしき人物の「ダメだよ、次は。頼むよ」と注意する声がマイクに拾われていました。

後半は互いにシュートを打ち合う展開になりますが、3点リードしているにもかかわらず守備にもぬかりのない広島はゴールを許しません。後半16分に佐藤が下がり、浅野拓磨が投入されると、浅野のスピードを生かそうとした攻めに切り替えます。

そして27分、清水が藤田征也を振り切ってクロスを上げ、そこにドウグラスが三竿雄斗より前に飛び込んで4対0とします。44分にも柏好文のパスを受けてシュートを決め、ハットトリックを達成しました。この場面では浅野が湘南DFを引き付けてできたスペースに走り込んでいました。

湘南も大差をつけられはしましたが、選手交代で配置を変えるなどして、最後まであきらめずに攻めていました。38分、39分と立て続けに途中出場の藤田祥史がヘディングシュートを放つシーンもありました。しかし、林卓人が好セーブを見せて完封。最後まで隙を見せなかった広島が完勝で2ndステージ優勝と年間勝ち点1位の座を獲得しました。


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