22インチのフットボール

備忘録を兼ねて試合を振り返ります

2015年09月

ともにモチベーション高く入ったレギュラーシリーズ最終節の前半は、枠をとらえた際どいシュートこそ少なかったものの、ゴール前での激しい攻防が見られました。

前半39分には大野忍と高瀬愛実が高畑志帆、北川ひかると2対2の状況になりますが、大野のシュートは高畑がブロックし、続く高瀬のシュートは威力が弱く、池田咲紀子が難なく正面でキャッチしました。

逆に浦和は42分、柴田華絵が自陣からのドリブルでカウンターを仕掛け、最後は猶本光がクロスを上げるもゴールラインを割ってしまいます。

INACは後半15分の段階で伊藤美紀に代えて、川澄奈穂美を投入。攻撃への圧力をかけにいきました。その川澄のプレーで得たCKが2回続き、2回目は中島依美の鋭いストレート系のボールに澤穂希が頭で合わせましたが、ボールは枠の外に飛んでいきました。

22分から23分にかけては、高瀬、中島、川澄が立て続けにミドルシュートを放ちます。いずれも枠をとらえられず、工夫のない攻撃が続いてしまい、焦りの色が見えてきました。勝ち点1差の日テレ・ベレーザが下位のスペランツァFC大阪高槻相手に取りこぼす可能性は低いことを考えると、レギュラーシリーズを勝ち取るためにゴールが欲しいという気持ちが先走ったのかもしれません。

その後も右サイドの川澄を中心に攻め込みますが、浦和守備陣に阻まれ、決定機さえつくれません。交代出場のチャン・スルギ、仲田歩夢も効果的な働きができないまま時間が流れていきます。特に41分に入った仲田は残された時間が少なかったためか、自分に与えられた役割の重さにやや空回りしているように見えました。

またアディショナルタイムには田中明日菜のパスを吉良知夏にセンターサークルの中でカットされ、岸川奈津希、白木星と繋がれてしまいました。田中が戻ってシュートこそ阻止しましたが、一気にペナルティエリアまで持ち込まれてしまいます。

結局、1点を求めた懸命の攻撃も実らず、INACは2試合連続のスコアレスドローに終わりました。前節は山根恵里奈の好セーブに阻まれたがゆえの結果でしたが、今回は焦りが出たことによる引き分けでした。これで6対1で圧勝したベレーザにレギュラーシリーズ優勝を明け渡してしまいます。中断明けは、奇しくも上位リーグ進出の5チームとの対戦となったわけですが、2勝2分1敗というエキサイティングシリーズに不安を残す結果になってしまいました。


試合が動いたきっかけは、副審の判定のめまぐるしい変化でした。

前半32分、最初はキム・チャンスのオフサイドの判定になっていたのが、ゴールキック、CKへと旗の向きが変わっていったのです。どうやらエデルソンのパスと思われたシーンが、実は宇佐美貴史がボールをつついていたという理由で柏のCKとなった模様。しかし、オフサイドの旗が上がっていなければ、オ・ジェソクがクリアできた可能性もあっただけに、ガンバの選手がナーバスになってしまってもおかしくないところでした。

このCKからの一連の攻撃を凌ぐと、ガンバは一気にカウンターを発動。パトリックから倉田秋へとボールが渡り、倉田はスピードに乗ったドリブルで周囲を見ながら次の一手を考えます。そしてペナルティエリア付近に到達したところで、ファーサイドへのクロスを選択します。そこにはフリーの阿部浩之が待ち構えており、阿部は落ち着いてかつ豪快に左足を振り抜き、ネットを揺さぶりました。負けたくないという意思の表れか、序盤は両チームとも動きの少ない試合でしたが、これで試合の流れが激しくなります。

先制点が入った2分後の36分、再び阿部がゴールを奪います。ペナルティエリアの前で近藤直也がボールコントロールを誤ったところを逃さず拾って、フィニッシュを決めたのです。キム・チャンスの横パスが少しアウトにかかって近藤が受け辛かったのもガンバには幸いしました。 決まった後、菅野孝憲はボールを思いきり蹴って怒りをあらわにしました。

その後はガンバがチャンスをつくりつつもしっかりとディフェンスを固め、柏がそれを攻略できないまま前半を終えました。

劣勢に立たされた吉田達磨監督は、ハーフタイム明けにエデルソンを下げて太田徹郎を投入し、右サイドにいた工藤壮人をセンターに配します。

すると後半8分、工藤が今野泰幸に倒されたとして、柏がPKを獲得。クリスティアーノがこれを確実に決めて1点差にされてしまいます。

それでも7分後、ガンバが突き放します。岩下敬輔のサイドチェンジを起点にボールを動かし、米倉恒貴がドリブルでサイドラインを駆け上がります。背後にはクリスティアーノがぴったりついていましたが、体をうまく使ってあきらめさせました。そして倉田とのワンツーを成功させ、パトリックに預けると、パトリックはすぐうしろにいた宇佐美に落とします。宇佐美のシュートは右のポストを直撃してゴールに吸い込まれていきました。

以後は24分の工藤のシュートを東口順昭が防ぎ、28分のパトリックのシュートがクロスバーを豪快に叩くなど、両チームにチャンスが生まれるもスコアは動きません。終盤になると倉田、宇佐美、パトリックを下げ、相手にシュートを打たせない守備をしてうまく試合を終わらせ、ガンバは5連戦の初戦を見事に飾りました。


前半のINACは最終ラインでボールを回すことこそできていたものの、そこから先の攻めがうまく組み立てられませんでした。スピードは上がらず、らしくないパスミスを連発し、なかなか前線にボールが収まらないのです。当然、攻撃には迫力がありません。

反対にジェフはDFラインを高く設定し、ロングボールを織り交ぜながらINACゴールに勢いよく攻め込みました。前半19分には左サイドの増矢理花が中央に絞っていてできたスペースを突いて、カウンターを仕掛けます。最後は保坂のどかがクロスを上げ、菅澤優衣香が悠々と頭で合わせました。ボールは惜しくも枠を外れてしまいます。

さらに42分、山根恵里奈のパンチングのこぼれを拾った瀬戸口梢が前方へパスを送り、菅澤に渡ります。INACが前掛かりになっていたため、対応するのは甲斐潤子ただ一人。菅澤はドリブルしながら間合いを取って、田中明日菜が援護で近寄る前にシュートを放ちました。ところがシュートに力がなく、海堀あゆみが正面でがっちりキャッチします。

流れの悪いINACは、ハーフタイム明けに近賀ゆかりを下げて鮫島彩を投入。左SBの中島依美を右に移して、攻撃の活性化を図ります。また前半あまりかけていなかったプレスも、後半序盤は積極的にかけていきました。

それでもリズムはジェフの方がよく、後半6分には鮫島のコントロールミスを逃さず保坂がシュートを打ち、9分には瀬戸口の際どいFKもありました。

王座奪還を狙うINACが目覚めたのは残り20分を切ってからでした。まずは29分、ルーズボールを拾った澤穂希が増矢にボールを預けると、増矢は相手最終ラインの背後を狙ったスルーパスを供給します。すると絶妙な抜け出しを見せたチャン・スルギが山根と1対1になりました。ここは冷静に対処した山根が止めます。先制する絶好のチャンスを逃したチャン・スルギは、両膝をつき、両手で顔を覆いました。

36分、今度は伊藤美紀の前方への浮き球のパスに中島が中央に走り込んで反応するも、体を投げ出した山根に防がれます。その後のチャン・スルギのシュートも山根は落ち着いてセーブしました。

最後は41分、投入されたばかりの高瀬愛実がやや角度のないところからスライディングシュートを打ちますが、またしても山根に右足でセーブされました。ただこの場面は、マイナスのクロスを入れて、中央でパスを待っていた増矢を選択する方法もあったかもしれません。もちろん得点を求められているFWとしては、判断は間違っていないのですが。

結局、再三の決定機を山根に阻まれて生かせなかったINACは、勝ち点1を積み上げるにとどまりました。レギュラーシリーズ首位の座を守るには決して悪くない結果です。ただ、これから突入するエキサイティングシリーズを考えると、得点を奪えず勝ち切れなかったというのはもどかしさが残ります。


勝って首位INAC神戸との勝ち点差1をキープしたいベレーザと、エキサイティングシリーズ進出のために勝ち点を積み上げたい浦和との激突は、スコアレスに終わったものの最後までテンポの落ちない白熱した90分となりました。

序盤から互いに球際の激しさを見せ、中盤での潰し合いが繰り広げられる中、先にペースを握ったのはどちらかと言えば浦和でした。ベレーザは細かくパスを繋いで打開を図ろうとはしていましたが、浦和守備陣を混乱させるような崩しはできていません。

思うような形がつくれずにいると、浦和にカウンターを食らって臼井理絵にシュートを打たれたり、加藤千佳にクロスを上げられたりしました。前半28分には中盤で岸川奈津希が上辻佑実からボールを奪い、パスを受けた加藤が阪口夢穂の股を抜くドリブルでエリア内に進入。マイナスのクロスを送ります。ここは清水梨紗と有吉佐織の両サイドバックが絞って、さらには原菜摘子も戻って懸命のディフェンスで阻止しました。

かろうじて難局を乗り越えたベレーザが、次第にギアを上げて攻勢に出ます。前半40分以降は主導権を握り返し、ビッグチャンスをつくりました。

43分、清水の右からのクロスを田中美南がスルー。阪口が池田咲紀子とほぼ1対1の状態になります。絶好機を逃すまいと阪口はシュートを放ちますが、池田が左足のつま先にボールを当てて防ぎました。

後半に入ってもベレーザの勢いは落ちません。ただ、浦和のようにミドルシュートを打つ場面はほとんどなく、ペナルティエリアに入っても繋ぐサッカーを継続。あくまでも完璧な崩しにこだわるがゆえか、決定的なシュートを打つところまでは行きませんでした。

しかし残り時間が少なくなってきたところで、田中がようやくFWとしての力を発揮します。まず41分、上辻が柴田華絵のクリアをカットすると、投入されたばかりの木龍七瀬に預けます。エリア内に入った木龍のパスを受けた田中がターンして体勢を少し崩しながら強烈なシュートを放ちました。ボールは池田の頭上を越え、惜しくもクロスバーを直撃します。

さらにアディショナルタイムに入った47分、有吉のクロスをファーサイドで待ち構えて頭で合わせるも枠をとらえられませんでした。このシーンは臼井が田中にきっちり体をつけていたため、自由を奪われていたことも影響しました。

これがこの試合を通じて最後のシュートとなり、タイムアップを迎えます。その瞬間、両チームの選手の多くがうなだれていました。どちらも負けはしなかったものの、望ましい結果ではなかったということです。そしてレギュラーシリーズ残り2試合という中で、INACとベレーザとの勝ち点差は再び3に広がってしまいました。


準決勝進出を賭けた一戦は、ガンバにとって不運な判定から動きました。前半12分、左サイドからのレオナルドのFKがゴール前で混戦を生むと、こぼれ球をパク・ウォンジェがシュート。このボールが丹羽大輝の腕に当たったとして全北のPKとなったのです。丹羽の腕は体から離れておらず、露骨なファウルには見えませんでした。

このPKをレオナルドに確実に決められ、痛恨のアウェイゴールを許します。これでガンバは90分で勝たなければならない状況に追い込まれるも、すぐさま同点に追い付きました。

14分、ゴールから遠い位置から遠藤保仁がFKでクロスを上げると、全北の選手がGKクォン・スンテ一人をペナルティエリアに残す豪快なオフサイドトラップを仕掛けます。それをかいくぐった阿部浩之がフリーでボールを収め、パトリックにラストパスを送ります。パトリックは押し込むだけでOKでした。

ガンバはピッチにいる全員が常にパトリックを見ながら攻撃を仕掛け、得点には至らなかったものの37分には相手CKからのカウンターアタックで、パトリックがシュートを放つビッグチャンスをつくるなどしました。ペースとしては決して悪くありません。

それでも何が何でも2点目が必要なガンバは、攻撃にさらなる勢いをもたらすために長谷川健太監督が後半20分に動きます。オ・ジェソク、そして大一番で起用された二川孝広に代えて、米倉恒貴とリンスを送り出しました。

すると31分、バイタルエリアがぽっかり空いていたのを見逃さず、倉田秋が左足を振り抜きます。ボールはチェ・チョルスンの体に当たりコースが変わって、貴重な勝ち越し点となりました。クォン・スンテが一歩も動けないシュートでした。

逆に後がなくなった全北はCBを2枚削って、長身のウルコ・ベラとキム・ドンチャンを入れるというなりふり構わぬ作戦に出ました。この無謀とも思われる交代が43分に実を結びます。

右サイドからイ・グノがふわりとしたクロスを上げると、ベラが頭で合わせました。このボールの軌道上にキム・ドンチャンが飛んできたことによって東口順昭にはブラインドとなり、ボールはファーサイドのネットを揺らします。ベラが入った後で金正也を入れ、守備固めをしたガンバにとってはあまりに痛い失点でした。

絶体絶命のガンバは前線に人数をかけます。全北はCB不在の中、ベラも守備的なポジションをとって守ります。そんな中で47分にはパトリックの落としを受けた倉田が抜け出してシュートを打つも、枠をとらえられません。時計の針は進み、敗色濃厚となる中、最後に笑ったのはホームチームでした。

48分、遠藤のセンターサークルからのパスを受けた金正也が巧みなコントロールで前にボールを送ると、急造CBの間を抜けた米倉が、バランスを崩しながらも左足でボールに触れてゴールネットを揺らしました。アディショナルタイム残り1分という時間帯での決勝点となりました。

あまりにも劇的すぎて、喜びすぎたという長谷川監督が退席処分を食らいはしたものの、最後の最後でゴールを奪ったガンバが準決勝に駒を進めました。シーソーゲームを制したこの勢いで、柏レイソルを下したアジアの巨人、広州恒大との準決勝を乗り越えてほしいものです。

 

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